2012年2月 紙パ技協誌
[プリント用ページ]

第66巻  第2号  和文概要


中国南通1号マシンの操業経験

王子製紙株式会社  統括技術本部  技術部  木阪弘太郎

  当社は,中国江蘇省南通市において,パルプ紙一貫生産の大規模工場建設プロジェクトを推進中である。
  現在,その第1期工事が終了し,2011年1月より1号マシン,コーターの本格的生産を開始し,A2塗工紙および非塗工の上質紙を生産している。
  抄紙機はA2,A3塗工原紙および非塗工の上質紙を生産する。ワイヤー幅約8m,抄速1,600m/分の高速・高効率で高品質な紙を安定して生産が可能なように,ロール+ブレード式ギャップフォーマやタンデムシュープレスなど最新鋭の技術・機器で構成されている。
  塗工機はオフマシンコータで,高品質コート紙生産に適したジェットファウンテン型2段ブレードコータ方式を採用し,A2,A3塗工紙を年間40万t生産する。
  本稿では,試運転から現在の営業運転にいたるまでのマシン操業経験について報告する。
  具体的には,以下に示す3点の取組みに関する。
  1)  良好な地合形成の取組み
  2)  塗工紙の品質向上に向けた取組み
  3)  プレス搾水性向上の取組み
  中国南通事業は当社が中国で実施する初めての本格的大型投資であり,日本企業の中国投資としても過去最大規模である。試運転から今日に至るまで種々のトラブルが発生し対応してきた。
  今後も中国国内ユーザーのニーズにあった製品を高効率で生産するとともに,現在中国で大きな関心を持たれている環境問題に対しても,日本の製紙産業が過去経験し克服してきたノウハウを活かして,中国の製紙産業における環境保護モデル工場を目指し,プロジェクトを推進したいと考えている。
(本文1ページ)


薄型カートリッジ式デュアルシール

イーグル工業株式会社  技術本部  高橋  秀和

  紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,水ポンプ,パルプ用ポンプ,各種薬液用ポンプなど,多数のポンプが使用されている。これらポンプの軸封部には,メカニカルシールが標準的に採用されるようになってきている。
  より具体的には,取扱いの容易さ,組立誤り防止の目的で,カートリッジ式メカニカルシール(以下カートリッジシールという)が普及してきている。
  更にその中でも,スタフィングボックス外装型が装着性や改造計画を立てやすいことから急速に普及してきている。大多数がメカニカルシール1個使いのシングルシールである。シングルシールでの適用範囲拡張も急で,水を使わない無冷却仕様カートリッジシールも実用化されているが,負圧や高濃度パルプ・スラリー液などの水を使わざるを得ない仕様の場合には,ベアリングの保護,水の回収・再生,予備を持たないポンプにおけるバックアップ機能の目的で,メカニカルシールを2個使いしたカートリッジデュアルシールの開発が待望されていた。
  ここでは,イーグル工業が開発した節水や省エネ,バックアップ機能による信頼性向上に貢献するスタフィングボックス外装型の薄型カートリッジデュアルシールを紹介する。近い将来,メカニカルシールの予備品・貯蔵品の圧縮にも目が向けられ,本稿で紹介するようなカートリッジへの集約化・統合化が求められるようになっていくものと予測される。
(本文5ページ)


あらゆるユーザー環境でボイラ運転効率を最大値で自動制御する蒸気システム

三浦工業株式会社  MIソリューション統括部  村上  雅彦
ボイラ技術統括部  熱機器特需部  大久保智浩

  省エネルギー,地球温暖化防止に向けたCO2削減が地球規模で急務である。
  近年,貫流ボイラは高出力化の技術開発が進み,当社ではこのほど業界初となる1台あたりの出力が小型貫流ボイラ枠で相当蒸発量3,000kg/h,小規模ボイラ枠で同7,000kg/hの機種を発売した。
  従来から貫流ボイラの多缶設置システムは,大規模な炉筒煙管/水管ボイラと比較して取扱資格が不要で,保有水量の少ない高効率な貫流ボイラの特性を活かし,製紙業界様をはじめ,産業用熱源として広く普及している。
  省エネルギー・省CO2を実現する高効率蒸気システムとして,貫流ボイラの多缶設置システムをベースにそのシステム効率を極めて高く維持する検討をした。
  結果,ボイラ単体の効率特性は運転条件により最も効率が高くなるボイラ負荷率(エコ運転ポイント)が存在し,主に給水温度条件に依存してエコ運転ポイントが変化することが分かった。そして,貫流ボイラの台数制御運転においてエコ運転ポイントで燃焼するボイラ台数を最大数とするように台数制御することでシステム効率を飛躍的に向上させる方法(特許第4661993号)を開発したので,本稿で紹介する。
(本文9ページ)


縦型分離・洗浄機「バーチカルZ」の概要と操業経験及び展開

株式会社  大善  石川  稔,井出丈史,與田  清

  資源の乏しい日本に於いては,古紙の利用が盛んで種々の技術開発が成されてきている。一方,地球温暖化対策,資源リサイクルによる環境改善と叫ばれ,古紙の利用拡大が進み,従来廃棄されていた難離解性の古紙分野への技術開発が望まれている。
  当社は,古紙処理に於いて,ニーディング技術による古紙パルプの離解・異物の軟化分解等を開発,更に全く新しい縦型洗浄機「バーチカルZ」の開発に至っている。
  本設備は従来の横型洗浄設備と比較し,@省スペース,Aドラム表面積の有効利用,Bシャワー水量の削減,C重力効果,Dパルプ挙動等,特徴ある機能を備えている。
  原理的には洗浄すべきパルプスラリーは下部より上部に移行し,その間に回転する円筒型のスクリーンを経由して繊維質と不純物を効率的に分離するものである。
  本設備は横型洗浄設備に比べ据付面積は1/9,スクリーン面積は1/3,使用水量は1/4,電力1/4に削減することが可能で,仕上がり品質も白色度も向上し,更に歩留り向上を達成することが可能である。更には,本設備スクリーンは約9年間同じものを継続使用中で,メンテナンス費用も低く抑えられている。
  弊社は今後,これらの技術を更に展開する予定である。
(本文14ページ)


連続加圧するライナ抄造用ギャップフォーミング
―シューブレードパイロットマシンでの運転結果―

株式会社  小林製作所  製紙機械営業部  橋本  雄輝
ジョンソンフォイル社  ボーン  J.  ワイルドフォング,クラエス  ホルムクヴィスト,
ジェイ  A.  シャンズ,ジェイ  A.  ロニング

  最近の段ボール原紙の軽量化傾向は,マシンスピードの増速を押し上げ,ギャップフォーマ採用の検討段階にある。
  段ボール原紙(ライナ,中しん)を抄造する抄紙機のフォーミングセクションは,長網フォーミング,ハイブリッドフォーミング,ギャップフォーミングに大きく分類できる。
  各フォーミングの特徴をまとめると,それぞれのフォーミング形態は紙の品質,運転上の柔軟さ,運転効率などの特性,そしてメンテナンス費や設備費などを考慮すると,利点と欠点を併せ持っていることが判る。
  本報では段ボール原紙用に検討されたシューブレードギャップフォーミング技術の応用と,パイロットマシンでの運転テストを行ったので報告する。
  結果としては,段ボール原紙の抄造にとって最新の技術であるシューブレードフォーミングに関して,地合いは現在運転されているギャップフォーミングと比較して同等あるいはそれ以上であり,SCT比が低く長網マシンでの抄造に近似していることが判った。その上,良好な地合いが通常のヘッドボックス濃度より高くしても得ることができ,歩留りも向上した。
(本文20ページ)


新規クレープコントロールコンセプトによるYD保護と品質の改善

株式会社  メンテック技研  開発チーム  芹澤  将幸

  成熟化した日本市場においては,商品の品質向上・高付加価値化と製造コスト(原単位)削減を両立させつつ,生産ロスを最小限に抑え安定した操業を実現することが家庭紙メーカーの最重要課題である。特に,クレープ品質を決定づけるヤンキードライヤー(以下YD)の管理およびクレーピング操業の最適化は,これら課題を解決するためのキーポイントと位置付けられている。
  当社は,二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤の特性を生かして,YDとドクターブレードの摺動性を向上する「潤滑クレーピング」を2000年に提唱,コーティング剤『ヤンキーガード?』および剥離剤『DSL®/ソフリース®』を開発した。
  近年,さらなる品質・生産性の向上要求の高まりにより,操業条件・原料配合が複雑化し,当社の技術を含め,従来のコーティング技術だけでは,十分な効果が得られないケースが増えている。これらの中には,柔軟剤配合や水分調整による皮膜の不安定化に起因するカカレやYDキズ,その対策として過剰に皮膜形成させることによるチャターマークの発生や,紙質の低下,YD研磨による頻繁な生産停止など,発生する現象や問題もマシンの操業条件や原料により異なるが,一般的には,要求される紙質と生産性とがトレードオフとなるものが多い。
  当社は,従来の潤滑クレーピングに改良を加えることで,新たなクレープコントロールコンセプトを構築し,これらの多様化する問題にも対応できるようになった。
  本稿では,当社薬品のコンセプトと効果発現メカニズムについて述べ,併せて紙質・生産性向上などの課題に対する実機での3つの適用事例について具体的に紹介する。
(本文24ページ)


製紙用スプレーノズルの紹介
株式会社  共立合金製作所  西山  貴史

  葛、立合金製作所は1938年に創立し,自社製超硬合金を活用してスプレーノズルの製造を開始した。そして,今日に至るまで様々な産業で使用されているスプレーノズルを製造している。大きく分類すると以下のようになる。
  ・液体のみを噴射する一流体ノズル
  ・空気を噴射するエアーノズル
  ・液体と空気を混合して噴射する二流体ノズル
  ノズルはオリフィス形状や内部構造を変化させることにより噴射パターンの形を変化させることができ,ニーズに合わせた噴射パターンが求められている。
  この噴射パターンにはストレートパターン,フラットパターン,フルコーンパターン,ホロコーンパターンなどがある。
  近年,抄紙機の大型且つ高速化によってノズルに対する要求は益々厳しくなり,今や精密部品の一つとして考えられるようになった。
  本稿では,抄紙機に使用されるストレートパターンノズルとフラットパターンノズルを性能・特徴を中心に紹介する。また,ノズル特性を把握するために様々な試験を行っているが,代表的な実験設備を併せて紹介する。
(本文29ページ)


段原紙の薄物化処方提案

荒川化学工業株式会社  製紙薬品事業部  研究開発部  榮村  拓史

  製紙業界では,段原紙の薄物化が検討されている。これは,環境に配慮すべくCO2削減や省資源化の流れと一致したものである。
  一般に,紙の強度への坪量の影響は大きく,薄物化にともなう坪量の低下は紙の強度を著しく低下させる。その中で原紙の強度を維持しつつ薄物化するという課題がある。
  この課題の解決には紙力増強剤(例えば,ポリアクリルアミド系ポリマーや変性澱粉)の効率的な添加が不可欠になる。当社でもこの課題に対応すべく,紙力増強剤の効率的な使用方法について検討を進めている。ここではその一環としてラボ実験で検討した内容を以下の項目に沿って紹介する。
  1)  坪量低下の圧縮強度や引張強度への影響
  2)  段古紙/LUKP配合比の影響
  3)  内添法や塗工法およびその組み合わせによる紙力増強剤の強度向上効果
  4)  PAM系紙力増強剤と併用して添加する内添用助剤の効果
  結果として,効率的に高い強度を得るためには,紙力増強剤の最適な添加量を見極めて,内添法と塗工法を組み合わせることが有効と考える。また,内添法において紙力増強剤の効果を引き出すために,適切な助剤を併用することが望ましい。
(本文32ページ)


省資源化に対応した高性能ポリマーの設計

JSR株式会社  機能高分子研究所  小林  邦彦,松田  信弘,山下  隆徳

  近年,省資源化に対応した循環型社会を形成していくために,3R(リデュース・リユース・リサイクル)が推進されている。その一環として我々は少ないポリマー使用量で十分な塗工層強度を発現する環境に優しい高性能ポリマーを開発しており,本稿においてその設計,並びに性能について報告する。
  塗工紙製造には変性スチレン―ブタジエンポリマーラテックスが使用されており,これは塗工層中で連続フィルムを形成することでピグメント等を接着する。従ってポリマー使用量を削減するとポリマー粒子数が減少し連続フィルムを形成できなくなり,塗工層強度が低下する傾向となる。
  そこで我々は,単位体積当たりのポリマー粒子数を増やす,つまりポリマー粒子を小粒子径化することでこの課題に取り組んだ。その中で,小粒子径ポリマーは使用量削減に効果的であることを確認できたが,安定性や粘度の面から商業ベースでの生産,使用が困難であることが確認された。
  この課題に対して,我々はポリマー粒子の変性状態に着目し,水溶性官能基含有モノマー由来の水溶性ポリマー量減少,および水溶性官能基含有モノマーの粒子グラフトを促進することで対応を可能にした。
  結果,従来使用されているポリマーに対し10%以上のポリマー使用量削減が可能な高性能ポリマーを開発するに至った。
  現在,この高性能ポリマーは実プラントレベルでの提供が可能になっており,今後,循環型社会へ貢献できることを期待する。
(本文37ページ)


包装されたロール紙の全自動開梱機

株式会社  丸石製作所  青木  紀男

  包装されたロール紙端面の当て紙を,特殊ナイフを用いて製品に傷を付けることなく,全自動で開梱する新しい技術を紹介する。
  「全自動開梱機」の特徴を以下に示す。
  1)  完全無人化により開梱能力も向上し,省力化に繋がる
  2)  シンプルな構造で安価な設備
  3)  ロール紙端面の中心を自動計測し,特殊ナイフにて製品に傷をつけることなく安全に端面の当て紙をカッティングすることが可能
  4)  ナイフがロールエッジ部分に到達した後,先端ナイフの反対側にある特殊なカッティングプレートにより容易に当て紙を剥がすことが可能
  昔は,ロール紙を保護するために木材及びスチールストラップを用いたロール包装形態であったが現在では,胴及び端面をクラフト紙,ダンボール等を使用した包装形態となっている。
  また,ロール紙を開梱する加工工場及び印刷工場においては,オペレーターの負担を軽減し,効率良く且つ安全に開梱することが必要である。
  丸石製作所は,スウェーデン国コアーリンク社とコア関連及び損紙ロールハンドリング設備について技術提携しているが,コアーリンク社は,自動でロール紙端面の当て紙を開梱する技術に関して長年に渡り研究開発を行ってきた。そして,この度新開発の全自動開梱機を製作し,1号機をフィンランド国某大手製紙会社に納入し順調に稼働している。
  また,開梱機に具備して納入した「自動キャップ除去装置」についても合わせて紹介する。
  この自動キャップ除去装置は,既にロール紙中心の位置を正確に把握しているため,端面の当て紙を自動開梱後,継続してキャップを自動で除去することができ,オペレーターへの負担を軽減できるのである。
(本文40ページ)


紙産業特別コースを立ち上げて

愛媛大学大学院  農学研究科  紙産業特別コース  内村  浩美

  平成22年4月,愛媛県四国中央市に全国初の紙産業に特化した大学院が開講した。愛媛大学大学院農学研究科修士課程「紙産業特別コース」は,愛媛県産業技術研究所紙産業技術センター内の一角に設置され,現在2年生5人と1年生4人(社会人学生を含む)が学んでいる。この大学院の設置は,紙産業の盛んな地元産業界からの要望に応える形で,愛媛大学と国・県・市の行政サイドが連携して実現した。このように本格的な人材育成拠点の設置は,紙産業としては全国でも珍しい。
  小稿では,紙産業特別コース設立の背景と経緯,当コースでの教育概要と研究の取り組み状況などについて紹介する。要点を以下に述べる。
  1)  四国地域の紙産業規模は,製紙業・紙加工業等合わせて紙製品製造出荷額9,400億円で,静岡地域と並ぶ紙産業の集積地である(平成20年工業統計)。この業績を持続していくためには人材育成が必要であり,永年にわたり地元紙産業界から大学院設立の強い要望があった。
  2)  近年の技術開発の進歩やグローバル化などにより,今後ますます国際的な競争が激化することは必至であり,地元の紙産業界では,@現場の様々な問題を解決できる人材,A将来は幹部となって産業界をリードする人材の育成が求められていた。
  3)  「紙産業特別コース」の設立は,紙産業の盛んな地元産業界からの要望に応える形で,愛媛大学と国・県・市の行政サイドが連携して実現した。
  4)  紙産業界における地域発展を支えるためには,@紙産業技術・経営の深い知見とグローバルで幅広い知識・教養を備える人材の育成,A紙産業界の変革や創造に主体的に取り組むスペシャリストの育成が必要である。
  5)  紙産業特別コースの教育方針は,@課題の発見・解決能力を養う教育を行うこと,A現場密着型の実践教育を行うことである。このような教育を行うために,当コースでは専門教育プログラムと現場密着型実践教育プログラムでカリキュラムを構成している。
  6)  専門教育プログラムでは,「製紙概論」「専門技術」「技術経営」等について学び,将来の紙産業企業幹部としての資質を形成していく。
  7)  現場密着型実践教育プログラムでは,製造現場の工程や設備等について学び,課題解決手法の習得や実施計画の立案等を実践していく。
  8)  学生たちは自分自身のスキルアップを図るとともに,紙産業界に貢献できるネットワークを築き上げていこうという意識が芽生えている。
(本文44ページ)


酸素晒における無機硫黄分の挙動

王子製紙株式会社  基盤技術研究所  友田  生織,内田  洋介
王子製紙株式会社  機能材研究所  高草木絵美

  通常,酸素晒ではアルカリ源として,蒸解用白液を酸化した,酸化白液が使用される。これは,以下の二つの理由による。
  一つは,蒸解白液をそのまま酸素晒に使用すると白液中のSH-が酸素と反応し,酸素晒効率を落としてしまうためであり,もう一つは,酸素晒後の廃液は蒸解黒液と共に回収し,蒸解白液として再生するので,白液中のNa/Sを維持するためには苛性ソーダのようなアルカリを使用するよりも酸化白液を使用したほうが有利だからである。
  一般的に,酸化白液は蒸解黒液などの触媒存在下で常圧空気酸化をしてSH-をチオ硫酸イオン(S2O32-)に酸化する方法で製造する。酸化白液中のS2O32-は酸素晒条件では安定であり,酸素晒性に悪影響を与えないと考えられていたためである。ところが,最近になって,S2O32-が,酸素晒時に酸素を消費し脱リグニンを阻害している可能性が指摘され,実際に酸素晒後にS2O32-量が減少することも報告されている。逆に,高温高圧条件下で白液を酸化して,予めSH-を硫酸イオン(SO42-)まで酸化しておけば,酸素晒効率が向上し,苛性ソーダ使用時と同等以上の効果が得られることが報告されている。
  本研究では,酸化白液中の無機硫黄分が酸素晒時にどのような挙動を示し,それが酸素晒の効率にどのような影響を及ぼすか調査した。
  具体的には,無機硫黄分の定量法の検討,実機酸素晒での無機硫黄分の挙動調査,酸素晒におけるチオ硫酸イオンの影響とチオ硫酸イオンの酸化反応に及ぼすパルプの影響を調査し,チオ硫酸イオンの酸化が酸素晒性に与える影響を調査した。
  結果,以下に示す知見が得られ,可能性が示唆された。
  1)  酸素晒においてS2O32-は安定ではなく,SO42-に酸化される。
  2)  酸素晒時のS2O32-の酸化にはパルプ・リグニンの存在が必要である。
  3)  酸化白液中のS2O32-の酸化によって,酸素晒時にパルプに添加した酸素の約15%,アルカリの約20%が最大で消費されている可能性がある。
(本文59ページ)