2012年11月  紙パ技協誌
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第66巻  第11号  和文概要


バイオマスエネルギー産業の将来展望
Asia-Pacific Biomass Community構想 ―

三菱商事株式会社 新エネルギー電力事業本部  澤  一誠

  IEAによればバイオ燃料は2010年輸送用燃料の3%を超え6兆円規模に達しポートフォリオの一角を占めるに至ったが,2035年に8%,2050年27%になると予想され,今後は航空機,船舶でも普及する見込み。一昨年Shell,BP等オイルメジャーがブラジルエタノール産業に本格進出。同分野で先行すするADM等穀物メジャーに続きビッグプレーヤーが出揃った。
  バイオ燃料は,エネルギー・農業・環境の3つの政策と産業政策の観点から人為的に市場が形成された欧米主導の新戦略産業であり,世界規模で普及・拡大している。
  世界一のエタノール国家米国では政府主導で石油・自動車両業界に誘導的規制を課して市場を作り2011年には140億ガロン(53百万kl)3.2兆円の産業となった。トウモロコシには150億ガロンのキャップを設け,それ以上はセルロースエタノール等を導入し2020年360億ガロン(1.3億kl)8兆円超の産業迄拡大する計画。
  この様に本格大規模グローバル市場が形成されつつあるバイオマスエネルギー分野で,日本は現在後発ポジションで3.11以降注目される再生可能エネルギーの中での注目度も低い。
  今後,日本が取るべき方向は,バイオマスエネルギーを将来有望なグローバル産業と捉え,資源ポテンシャルの高いアジア・大洋州地域で官民連携で製造事業展開を図ることである。また,G-Gベースで事業推進の土台となるインフラ・環境を整備し,日本企業が現地企業とWin-Winの関係を構築して共同でバイオマスリファイナリー(エネルギー/ケミカル/マテリアル製造)を推進。開発輸入+地産地消型産業を展開して持続可能なサプライチェーンを構築することである。
(本文14ページ)


製紙スラッジの酸加溶媒分解によるバイオレブリネートの直接調製

独立行政法人 森林総合研究所  山田竜彦,菱川裕香子,久保智史
愛媛県産業技術研究所 紙産業技術センター  山口真美

  バイオ由来の液体燃料として,バイオエタノールは,デンプン等の糖類由来は既に商用化され,加えてセルロースからも糖化・発酵法等で製造可能であり開発が進んでいる。一方,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料に相当する液体燃料は,パームオイル等の植物油や微細藻類の産するオイルの研究開発が進んでいるものの,地上に最も多量に存在する有機化合物であるセルロースから直接に製造した例はほとんどみられない。
  我々は,セルロースから誘導可能なディーゼル油相当液体燃料としてのポテンシャルを持つ有用化合物として「バイオレブリネート」なる物質を見いだし,検討を進めている。バイオレブリネートとは,糖の酸加水分解物により得られる有機酸である「レブリン酸」とアルコール類がエステル結合したレブリン酸エステル骨格を持った化合物である。レブリネート類の燃料としての物理パラメータ(沸点や引火点)は,石油化学でいうケロシンに相当し,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料源として期待されている。加えて,MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)やETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)に替わるクリーンなガソリン添加剤(ブースター)としても期待される。
  本報告では,紙パルプ産業分野への技術の応用を見据え,種々の製紙スラッジを用いた,簡易な酸加溶媒分解法でのバイオレブリネートの調製について紹介する。反応としては,硫酸を含むn-ブタノールで抄紙スラッジを還流するだけあるが,ブチルレブリネートの生成率は抄紙スラッジのヘキソース基準で50-70%と高収率であった。
(本文22ページ)


ウェットウェブ強度に関する基礎検討

日本製紙株式会社 総合研究所  橋口桂子,間篠智恵子,近藤裕介

  近年の紙の軽量化・高填料化の進行に伴い,抄紙機における断紙増加が懸念される。断紙の低減には,プレス等のウェットパートに相当する固形分濃度が低い領域での湿紙強度(=ウェットウェブ強度)の向上が重要である。このため,ウェットウェブ強度の評価法の確立,及び影響因子を解明することは,断紙低減を進めるために非常に重要となると考えられる。
  しかしながら,ウェットウェブ強度の評価・解析手法や,強度向上技術については,広く研究が進められているものの,製紙原料としてごく一般的に用いられているパルプや填料,薬品等がウェットウェブ強度に与える影響を総合的に評価した検討はまだ十分でない。
  そこで本研究では,固形分濃度の異なる手抄きサンプルのウェットウェブ強度を測定し,一般的な製紙原料とウェットウェブ強度との関係を調査した。その結果,@固形分濃度によって,各パルプの強度の優劣や傾向に違いがあること,A填料添加に伴いウェットウェブ強度が低下するものの,低下幅はドライ強度と比較して小さいこと,B薬品(カチオン化PAM,キトサン,PVA)の添加により,ドライ強度だけでなく,ウェットウェブ強度も上昇すること,が確認された。
  今後は,引き続きウェットウェブ強度向上の手法について検討を行うとともに,ウェットウェブ強度と断紙との関係についての検討を進め,断紙低減へと繋げたい。
(本文25ページ)


原料チップの分析による蒸解助剤SAQ® の効果の推定

川崎化成工業株式会社 技術研究所  田中潤治

  広葉樹パルプの原料として使用される木材チップは,近年では植林木の割合が多く占められており,ユーカリを主として多くの樹種が用いられている。現在の国内クラフトパルプ工場においては,複数の樹種を混合して蒸解に供しているのが一般的である。この原料チップ中の化学成分(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)の比率は樹種によって異なっているため,原料チップの混合比の変動が,工場におけるパルプ品質の変動の原因の一つと考えられる。
  このような原料チップの化学組成の違いは,蒸解助剤の効果にも影響することが分かっている。ある特定の樹種をパルプ化する際,与えられるパルプ収率・カッパー価を正確に知る方法として蒸解実験が用いられる。しかし,蒸解実験は大変煩雑な作業であるため,簡便な蒸解結果の推定法が求められている。
  広葉樹クラフト蒸解における蒸解助剤SAQ® の効果を推定する手法として,熱分解GCの適用を検討した。
  パルプ原料として5品種の広葉樹チップを用い,熱分解GCで分析した結果と蒸解によって得られたパルプの測定による結果を比較した。
  結果として,原料チップの熱分解GC分析によって,多くのリグニン由来の熱分解物が同定され,シリンギル型化合物とグアヤシル型化合物のピーク面積比(S/G比)が求められた。今回用いた全品種において,S/G比と蒸解を行って得たSAQ® 添加による脱リグニン度の変化(カッパー価低減効果)とに良い相関が得られたことから,原料チップのS/G比を分析することによって,蒸解を行わずにSAQ® によるカッパー価低減効果を推定できる可能性が示唆された。
(本文29ページ)


Smart Sizer
― 最新式ロッドメタリングサイズプレス ―

株式会社小林製作所  加藤育洋

  1980年代後半,ヨーロッパで最初のロッドメタリングサイズプレスが設置され,現在では,200台以上が世界中で運転され,過去20年以上にわたり設計上の多くの開発,改良が行われた。
  「スマートサイザー」は,米国のベロイト社と三菱重工業株式会社によって共同開発されたMJサイザーの経験を生かした,新しいロッドメタリング方式のサイズプレスである。ベロイトの研究開発部門に従事した主席研究員らによる独自の改善で「スマートサイザー」として完成した。
  本機器の開発コンセプトは,よりシンプルな構造で,周辺の汚れ防止,そして安価な機器の提供を目指して開発され,高濃度塗工の高品質上質紙からスターチ塗工のライナーボードまで,様々な品種を製造するために使用されている。
  特徴をまとめると以下のようになる。
  ・ロッドメタリングヘッドのデザインは簡素化した機構で,熱安定性に優れている。
  ・アプリケータロールの加圧は,フィードバック機能を備えた比例制御弁を採用して,高精度の加圧制御が可能。
  ・メタリングロッドとモータの連結に,クイックカップリング付きユニバーサルジョイントを採用することにより,工具を使うことなく容易に着脱できる。
  ・ソフトバッフルの採用により,アプリケータロールの損傷が低減した。
  ・非接触式のエンドダムを採用したことで,塗工幅のコントロールは容易となり,ロール被覆材の磨耗も低減できた。その結果,従来のエッジワイパー機構は不要となった。
  本報告では,「スマートサイザー」の構成要素設計にあたり考慮した事柄や機器の特徴について説明する。
(本文34ページ)


ロジン系サイズ剤とその技術動向

ハリマ化成株式会社 製紙用薬品事業部 技術開発部  糸瀬龍次,酒井一成,内田貞幸

  世界のロジン生産量(2009年)は約113万トンで,国内では当社が唯一トールロジンを製造している。また米国化学会社モメンティブ社からロジン関連事業を買収してローター社を設立したことにより,ハリマ化成グループのロジン取り扱い量は世界のトップレベルになった。
  ロジンを原料とするロジン系サイズ剤と硫酸バンドとを組み合わせたサイジングシステムは,酸性から弱酸性領域での抄紙条件において効率良く紙へサイズ性を付与することができ,日本では最も普及している。しかし当社がサイズ剤を供給している国別で見ると,日本やブラジルでは,ロジン系サイズ剤が製紙用サイズ剤の主流となっているが,米国ではロジン系サイズ剤は市場の3割を占めるにとどまり,中国ではAKDサイズ剤が主流となっており,各国でのサイズ剤の使用状況は異なる。
  当社の弱酸性から中性系を対象としたロジン系エマルションサイズ剤は,“填料(炭カル)とのイオン的な相互作用を抑制すること”を開発コンセプトの一つとしている。填料は比表面積が大きいことに加えて,ワンパスリテンションの低い抄紙系では,エマルションサイズ剤の填料への吸着特性がサイズ剤の歩留りに対して無視できない因子になるためである。また効果的にサイズ性を発現させるためには,硫酸バンドを介した定着機構を有効に利用することや,抄紙条件に応じた歩留り剤を選定することが重要である。
  当社では,ロジン系サイズ剤の使用環境が今後も変化していくと予想しており,抄紙系全体での薬品の最適化を考慮した製品の開発に取り組んでいく所存である。
(本文39ページ)


製紙用変性ベントナイトのクリーンアップシステム

クニミネ工業株式会社 開発部  黒坂恵一,内田秀行
関東ベントナイト鉱業株式会社 営業部  渡辺浩樹

  ベントナイトは粘土鉱物スメクタイトを主成分とする岩石の名称であり,その産地は世界各地に分布し,日本国内では山形県や新潟県などで産出する。ベントナイトは工業製品として土木,鋳物,化成品分野など様々な用途で利用されている。ベントナイトは水を吸い込んで膨張したり,カチオンを吸着するなど特異な性質を示す。それらの性質は永久電荷を有するスメクタイトの結晶構造に由来する。
  近年,板紙業界では,排水処理費用の高騰などから排水を工程外に出さない,いわゆる白水のクローズド化が進む傾向にある。しかし,クローズド化されることで,白水中にはサイズ剤や歩留剤,粘着物質などの溶存物質が蓄積し,水質の悪化へと向かう。水質の悪化は設備の汚染を招いたり,多量の薬剤添加が必要とされ,それが更なる水質の悪化を招くなどの弊害を生じている。
  本稿では,優れた吸着能により,既存の薬剤では困難であった系内のクリーンアップを可能にする無機材料である,ベントナイトを使用した製紙工程のクリーンアップシステムについて紹介する。
(本文45ページ)


フォイト社製抄紙要具の最新技術
― 製紙機械メーカー・フォイトによる抄紙要具 ―

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 営業部ファブリックグループ  味岡信明

  2011年4月,株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジーは,日本でフォイト製ファブリックを取り扱っていたフォイトペーパー株式会社を統合し,製紙機械と合わせて抄紙要具の供給を開始した。この機をもって,「製紙機械メーカーによる抄紙要具」であるフォイト社製ファブリックとその最新技術についてご紹介させて頂きたい。
  日々進歩する抄紙技術,高まる生産効率や品質への要求に応えるべく,フォイトの抄紙要具は世界に広がる研究・開発ネットワークと抄紙機・設備部門との協力体制,最先端フルラインテストマシンを筆頭とする実際的な試験環境の元,進化と発展を続けている。
  今回はその一例として,
  1)  独自の縦糸コンセプトによりさらなる高機能を実現させた次世代SSBワイヤー「プリントフォーム/マルチフォームIシリーズ」
  2)  素早い初期馴染み・搾水改善・紙品質の向上・摩耗耐性向上・優れた回復性等,ライフを通じた性能改善をもたらすフェルト樹脂加工「Eフレックス」
  3)  新設計によりシートコントロール装置の真空を効率的に伝達する表面配列を持つとともに,汚れを捉えにくく洗浄が容易な構造を持たせたシングルドライヤー用防汚・高シートコントロールキャンバス「プリントテック/マルチテックPR」
の特長と利点,実際の適用事例について紹介する。
(本文48ページ)


新エネルギーボイラーの操業経験

王子製紙株式会社 富岡工場  田代淳一

  王子製紙グループは地球温暖化防止の取組みとして,化石燃料の使用量削減を目的に,新エネルギーであるRPFや廃タイヤなどの廃棄物,再生可能エネルギーの一つであるバイオマス由来燃料を有効利用できる新エネルギーボイラーの導入を積極的に行っている。
  富岡工場では,フラフ状廃プラスチック,木質,RPF,排水スラッジ及び石炭を燃料とする循環流動層ボイラーを設置,2008年12月に営業運転を開始した。これらの新エネルギー燃料は性状が一定でないことに加え,高混焼利用では塩素の増加等の問題点も内在している。
  これまでに耐圧部の局部的な減肉や,バグフィルター設備の腐食,耐火材の脱落による水冷壁の噴破が発生しているが,燃料管理や補修方法の検討,日々のボイラー状態の監視強化等により,現在までに半年間の連続運転を実現している。
  今回の発表では,この新エネルギーボイラーの概要及び,発生した問題を事例に挙げながら運転実現の報告をする。
(本文53ページ)


丸石−ピザラト  フルシンクロ大判カッター

株式会社丸石製作所 営業技術部  榊原正行

  当社は1989年よりドイツ,ビロマティック社と大判フルシンクロカッターでの技術提携をしている。またビロマティック社がヤーゲンベルグ社のカッター部門を買収し,ビロマティック−ヤーゲンベルグという新会社を立ち上げ,2005年5月に新たな技術提携を締結し,ビロマティック−ヤーゲンベルグ社デザインのシートカッターも国内に3基納入してきた。
  そのような状況の中,コストダウンが図られた小幅〜幅広の大判カッターの要求が国内外より寄せられており,昨年4月,1945年創業の歴史あるカッターメーカーで,幅広く多数の納入実績があるイタリアのピザラト社の全商権を譲り受け,新たに“丸石−ピザラト高速フルシンクロ大判カッター”をラインアップに加えた。   これまで高性能機を中心に展開してきた同事業において,設備の品質を維持しつつ汎用型の大判カッターを提供する体制も確立し,これにより紙パルプ産業はもちろん,断裁加工工場など幅広い客先のニーズに対応していく。
  今回はこのコストダウンが図られた小幅〜幅広の大判カッター“丸石−ピザラト高速フルシンクロ大判カッター”の特徴を発表させていただく。
(本文58ページ)


新型ウェットエンド化学分析計(ゼータ電位計/SZP10及び粒子電荷計/PCD04)の性能及びその開発の歴史

スペクトリス株式会社 BTG事業部  石津義男

  製紙とは,繊維とフィラー等を含む紙料液から均一なシートを製造するものである。そして,通常,抄紙直前の繊維濃度は,約1%以下になる。目的とする紙の特性と生産工程をコントロールする為に,製紙会社は,抄紙工程で繊維懸濁液に機能的な添加剤や工程処理の為の化学薬剤を投入する。しかしながら,良品を製造する為には,これらの化学薬剤が,十分に繊維と相互作用をしなければならない。
  紙繊維自体は,通常のフィラーのようにマイナス電荷を生じる。これらの事実により,製紙でのウェットエンド化学は,プラスに電荷した粒子を極性結合により繊維表面に吸着させることにある。
  このような理由で,事実,抄紙のウェットエンド工程で使用されるたいていの化学添加剤は,プラスの電荷をもつものが多い。極性結合は,強い結合で,速い反応を示す。化学薬剤と紙繊維との電荷を測定することは,製紙工程を決定づけるこれらの極性結合状態を分析,評価,コントロールさらには改善する為に非常に重要となる。そして,これらの結合状況を詳細に分析する為の一つの指標として,古くから「ゼータ電位」がある。
  また,ウェットエンド工程中のコロイド物質の電荷(粒子電荷量やカチオン要求量等と呼ばれている)を測定するには,「コロイド滴定法」が古くから使用されている。
  BTG社は,25年以上も前から,これらのラボ分析機器を開発して製紙のウェットエンド化学分析を行っている。本分析機器の使用により,製紙工程内での化学薬剤等の反応メカニズムを詳細に究明でき,製紙ウェットエンド工程で発生している諸問題を解決できる。
  ところで,製紙工場の現場では経験的に各工程内で多種の化学薬剤が投与されているが,実際にはその薬剤がどのように効いているかを知らずに使用している場合が多く,また,その薬剤があまり効かなくても使用されている場合や薬剤の過剰投与のまま使用している場合も多いと聞いている。
  粒子電荷計PCDやゼータ電位計SZPのようなウェットエンド化学分析機器は,それらを詳細に究明し,最適化し問題解決するためのツールとなる。
  今回,その開発の歴史と最新機種の性能を紹介する。
(本文63ページ)


竪型ミルの現地ミル内肉盛溶接による再生

株式会社ウェルディングアロイズ・ジャパン 技術部  福本宏昭

  竪型ミルは,幅広い分野で各種材料を粉砕する効率的な粉砕装置である。セメント業界,石炭火力発電(自家発電含む)および製鉄業界(製銑工程)の石炭粉砕工程で多くの実績をもっている。
  一般的に,一定期間の使用で粉砕部材が摩耗し,粉砕性が低下するため,新品への交換または摩耗面の肉盛再生による保守が行われている。
  近年,低炭素化社会の実現に向けての取組みとして,石炭火力発電でも建築廃材,木屑,RPF等またはこれらをペレット化したバイオマス燃料の専焼あるいは石炭との混焼が行われている。このような状況より,これらの被粉砕物を取扱う竪型ミルでは従来と比較して摩耗による損耗が激しく,機械部材の保守期間が短くなっている。
  当社では,このような環境下で使用されている竪型ミルに対して,継続的に肉盛再生を実施し,機器の延命に力を注いでいる。
  本稿では,肉盛り金属の特徴や完全自動化(スマートウェルディング)およびトータルメンテナンスコスト削減に向けた取組み等,現地(ミル内)での肉盛再生の実績を基に延命策を紹介する。
  製紙業界においてもこの種の竪型ミルを数多く活用されており,当社の新しい耐摩耗肉盛溶接技術による再生が製紙業界のメンテナンスに活かされることを強く望む。
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2012 TAPPI International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials
参加報告
― 2012年6月4日〜6月7日カナダ(モントリオール)にて開催 ―

王子ホールディングス株式会社 開発研究所  盤指  豪

  2012TAPPI International Conference on Nanotechnology for Renewable Materialsが2012年6月4日〜7日の4日間に渡ってカナダのモントリオールで開催された。カンファレンスの開催地であるカナダをはじめ,北米ではArboraNano(カナダ),CelluForce(カナダ),Agenda2020(アメリカ)といった産学官のプロジェクトがNano Crystalline Cellulose(以下NCC)を中心にナノセルロース研究を進めている。中でもCelluForceは1t/日の製造能力を有するNCCプラントを完成させ,世界的に注目を集めている。今回は初日にCelluForceのNCCプラントツアーが組まれ,希望者のみの参加であったが,当日はキャンセル待ちが出るほどの人気を博した。
  カンファレンスには北米,欧州を中心に20カ国から200名以上の参加があり,口頭発表,ポスター発表,パネルディスカッション,ワークショップなど計60件を超える発表が26セッションに分けて執り行われた。昨年同様,ナノセルロースの基礎研究,応用研究,標準化,安全性評価など多岐に渡る報告がなされ,各国の注目度の高さが伺えた。本稿では,CelluForceのNCCプラントツアーおよびカンファレンスの発表の中から数報を抽出し,その概要を報告する。
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ドイツ  Kanzan社より

Kanzan Spezialpapiere GmbH  R&D  田原  大

  カンザンは,ドイツ西部のノルトラインヴェストファーレン(NRW)州,デューレン(Duren)市に位置し,1990年,日系企業では欧州で初めての感熱紙製造会社として,神崎製紙(現王子製紙)とザンダース社(Zanders Feinpapiere AG)の合弁により設立された。現在は,王子グループのイメージングメディア事業における欧州の生産拠点(とくに感熱紙,インクジェット紙)として,欧州およびその周辺地域で営業活動を行っている。
  今回の海外駐在員レポートでは,海外勤務での私自身の体験をもとに,周辺地域の風土,人,弊社の海外展開等についてご紹介した。海外勤務は,生活環境が日本とは大きく異なるが,開発した技術をいかに事業に展開するか,上司や同僚と共に考え,真剣な議論を重ねていく過程が重要であることは,日本でも海外でも同じである。赴任当初は,英語だけでなく,現地の言葉に慣れる苦労もあったが,生活に慣れ,異なる文化に触れる機会を得たことは,かけがえのない経験であると感じる。この記事を元に,海外勤務に興味を持って頂き,少しでも皆様のご参考になれば幸いである。
(本文78ページ)


共焦点レーザー顕微鏡を用いた塗工層の均一性評価法

日本製紙株式会社 総合研究所  茶谷明伸
メイン州立大学  Douglas W. Bousfield

  共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)を用いて,新規の塗工層均一性評価方法について検討した。
  塗工層を蛍光物質にて染色する事により,塗工層観察が可能である事は従来から知られているが,塗工層の均一性の評価として有効性については不明な点も多い。   本検討では,従来から使用されているバーンアウトテストと比較して,その妥当性について評価を行っている。パイロットコーターを用いて,塗工方式,塗料配合,塗工量を変更する事により,塗工層構造の異なる塗工サンプルを作成した。CLSMを用いて塗工層均一性を,バーンアウトテスト結果と比較したところ,蛍光染料を用いたサンプル処理の方法により結果の相関性が異なるものとなった。
  既知の方法である,塗工層を蛍光物質で染色後にエタノール洗浄する処理法では,バーンアウトテストとは,殆ど相関がなかった。
  一方,エタノール洗浄を省いたところ,相関係数は高くなった。また,実際に塗工層厚さをCLSMにて観察した結果,SEMとの観察結果とほぼ同じ結果であった。   本検討により得られる方法では,従来の方法より,簡便かつ非破壊にて塗工層厚さを測定出来ると考えられる。
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