2012年9月  紙パ技協誌
 
第66巻  第9号  目次


最新カーテン塗工技術

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー  片野敏弘

  弊社のカーテンコータであるDF(Direct Fountain)コータは,理想的な輪郭塗工ができるといった多くの優れた特徴を持つ。そのため,これまで主に優れた被覆性が求められる特殊紙向けに採用されてきた。近年では,機械および塗料両面での改良が進み,印刷用紙,塗工白板紙およびコートライナー等の顔料(ピグメント)塗工用コータとして,採用が進んでいる。
  本報では,それらピグメント塗工製品向け弊社DFコータの実績について触れるとともに,近況と今後の展望について報告させて頂く。具体的な進め方を以下に示す。
  1)  DFコータの基本原理とそのメリットについて述べる。
    ・物理的メータリングプロセスを持たないことが最大の特徴であり,正確に塗工量を決定することができる。
    ・塗工層は膜状に原紙の凹凸に沿うように形成され,その膜厚は非常に均一であり,カバーリングが非常に良い塗工量ムラの無い面が得られる。
    ・膜厚の変動が無いため,印刷機能に必要な塗工量を最少に設定できる。
  2)  カーテン塗工方式の一般的な問題点と,その解決法について述べる。
    ・同伴エアー由来の欠陥とエアカット装置
    ・泡欠陥と脱泡機
    ・カーテン割れによる欠陥と界面活性剤の選定
    ・ピンホール欠陥と増粘剤
  3)  2009年からコーテッド紙において採用され,2010年には板紙分野でも採用された。ここでは,特に板紙分野におけるDFコーターの近況について詳しく述べる。
  4)  今後の展望について述べる。
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N9マシン  オンマシンコーター設備の操業経験

北越紀州製紙株式会社 新潟工場 工務部抄造第7課  細坪純也

  新潟工場N9マシンは,広幅・高速・薄物A3専抄マシンとして,2008年9月1日より営業運転を開始した。営業運転から約3年半が経過し,N9マシンは幾多の課題を乗り越え,常用運転最大速度である1,600m/minを達成し,日産量は1,100tを越えてきている。その中で,コーターパートは新潟工場既存マシンであるN7・N8マシンの操業経験を踏襲し,より広幅・高速化に対応した設備となっており,これまでに大きなトラブルも無く,順調に運用出来ていると言えるであろう。特にブレードコーターは広幅・高速という点が勘案された設備となっており,10m巾のN9マシンにおいても塗工プロファイルは数分以内に収束している。
  本報告では,コーターパート(サイザー・ブレードコーター)の設備概要や操業経験について紹介する。
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ブレード塗工技術
- ブレード塗工の基礎理論とブレードデザイン -

スペクトリス株式会社 BTG事業部  安西誠一

  近年,あらたに設備投資される塗工機は世界的に大型化,高速化しており,日本の製紙業界においても既に大型,高速の最新塗工機が稼動している。また,従来稼動していた塗工機についても,生産性向上目的から増速化の改造を行うものもある。日本の場合,このような大型化や高速化という操業条件下においても,さらに塗工製品の高品質化ということがつねに望まれている。その一方で,製造コストの面から原材料の見直しや変更が進んでいるが,その方向性としては,そのような高品質化を安定的に求めるには概ね厳しい条件となってきている。
  塗工用ブレード(コーティングブレード)は,ブレード塗工における操業の安定性,生産性と塗工製品の品質に直接かかわる重要な役割を担っているため,このような使用環境の変化に対応できる機能を備えたブレードのデザイン・材質を提供することが求められている。
  本稿では,ブレード塗工技術についての基礎的な理論と塗工技術として,以下の項目を掲げて説明する。
  1)  ベベル塗工方式とベント塗工方式の概説
  2)  多段カットのブレードデザイン  『DUROBLADE(デュロブレード)』
  3)  ブレード塗工による塗工層の形成過程
  4)  ブレードデザインの選定
  5)  ブレードホルダーの設定と調整
  次に,当社のコーティングブレード製品の中で,輪郭塗工を行えるという特色あるブレードとして『ソフトチップブレード(DB―ST)』タイプについての紹介を行う。一般的にブレード塗工により形成される塗工層は紙面と平行に直線性が高く形成されるため,輪郭塗工を要望されるアプリケーションには不向きであるとされており,輪郭塗工においてはエアーナイフの使用が代表的であるが,このタイプは,塗工紙面のファイバーカバレッジと印刷適性が向上することが大きな特長である。
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最新のブレードコーター用バッキングロールゴム材質

西武ポリマ化成株式会社 技術部 技術開発チーム  青山博光

  塗工設備に使用されているバッキングロールは,原紙に塗工液を供給後,適当な塗工量になるようかき落とす際,紙を背面から支持するためのゴムロールである。これは,数ヶ月にわたり安定して均一な塗工が可能であること,維持管理が極めて容易に行えることが求められており,それらの要求を満たすべくバッキングロールカバー材質はこれまで様々な改良がなされてきた。
  近年,従来の多品種少量生産から少品種大量生産への転換を図り,これまでにないコスト競争力を備えることを目的にオンマシンコーターの高速広幅抄紙機が増強された。
  こうした最新設備のコーターにおいても使用されているバッキングロールの最新カバー材質は耐摩耗性に優れ研磨周期,巻き替え周期の延長に効果を発揮した。又,非汚れ性についても顧客でのサンプルによる試験,並びに実機での評価で良好な結果が確認されている。更に,耐摩耗性でありながらオンマシン上のサンディンク゛においても,その作業性の容易さが評価されている。
  本稿では,最初に,ゴム配合,ロール製作工程,バッキングロールの要求性能(コンセプト)という基本的な項目を分かり易く整理した。次に,従来材質と開発材質(最新材質)を比較しながら,新材質の開発経緯,上記効果をもたらした最新のカバーに関する特徴(耐水・耐薬品性,非汚れ性,耐摩耗性,耐熱性),実機での評価等の現状を報告している。
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N1マシン  オンマシンコーター設備の操業経験

王子製紙株式会社 富岡工場 抄造部 第二抄造課  山本昭彦

  王子製紙兜x岡工場N1マシンは,薄物塗工紙(微塗工,A3)の競争力強化のため建設され,2009年2月より営業生産を開始し,これ迄に抄速1,700m/min連続操業を達成した。
  当マシンは,オンマシンコーターと高いグロスを発揮するオンマシンマルチニップカレンダーで構成するオールオンラインコンセプトにより,高い生産性とコスト競争力,品質競争力の強化が図られているワイヤー幅10,200mm,製品最大取幅9,180mm,駆動能力1,800m/minの最新鋭高速広幅オンマシンコーターである。
  本セミナー(製紙技術セミナー)のテーマである「最新塗工技術」に該当するオンマシンコーター設備の最大の特徴は,片面塗りロールコーターとブレードコーターという特徴の異なるコーター設備を有していることである。
  ブレードコーターは優れた面品質を得ることが出来るが,低米坪・低塗工量品においては高速運転中のブレード断紙リスクが高くなる。一方,表裏単独の片面塗りロールコーターでは,ブレードコーターに比べると高速運転中の断紙リスクは低く,高効率での薄紙の高速塗工を実現する。これら特徴の異なる塗工設備を併せ持つことで,様々な塗工パターンが可能であり,顧客ニーズに合った製品を効率良く生産することができる。レイアウトは,ブレードコーターと同パートにロールコーターを配置することで,ドライヤー乾燥ゾーン,カラー給液設備の共有による省スペース化を図り,また通紙性や切替え時のロスについても配慮している。
  本稿では,上記国内初の採用であった片面塗りロールコーターの話題を中心に,振動や汚れの問題など,試運転を開始してから現在に至るまでの操業経験について紹介する。
(本文21ページ)


電子書籍とデジタル読書
- ペーパーメディアとデジタルメディア -

専修大学  植村八潮
東京電機大学  矢口博之

  デジタル技術,ネットワーク流通の急速な普及・進展により,デジタルコンテンツの流通量が増大し,印刷物から変換されたコンテンツ(turned―digital)を電子ディスプレイに表示して読む機会も増えている。但し,タブレット型端末の販売は好調であるが,日本語縦組み読書が可能な電子書籍専用端末は,市場に受け入れられたとは現時点で言い難い。
  しかし,これをもって「日本では電子出版が成功していない」ととらえるのは早計である。電子書籍がブームになる以前から,携帯電話でマンガを読むケータイコミックや,電子辞書端末が普及している。道路地図はカーナビに置き換わり,場所を確認するのにはデジタルマップを利用することのほうが多い。電車であれば,時刻表よりも乗換案内ソフトが便利である。映画の上映案内やレストランは,情報誌に頼ることなく日常的にネットで探している。このように本の内容(コンテンツ)を,デジタル複製技術やネットワーク伝達によって読者に送り届けるサービスを電子出版と呼ぶならば,すでに,十分普及しているといってよい。一方,印刷複製技術と紙による伝達の衰退は明らかで,前述した辞書・事典,地理情報,時刻表,ガイドなどの情報検索はネットサービスの方が市場規模は大きい。
  電子書籍ブームで注目されたコンテンツは,文字による文芸作品が中心である。検索コンテンツが,印刷技術では不可能な利便性を提供したのに対して,文芸コンテンツでは,文字を読むことが主である。ディスプレイで読むだけであれば,紙の読みやすさに置き換わるデジタルの利便性はない。   そこで考えられたのが,「電子書籍専用端末」である。専用端末の長所は,たくさんの本を持ち歩くだけでなく,いつでもどこでも,しかも紙の本より安く購入できる点である。それでも市場はいっこうに立ち上がっては来ない。
  現状では,汎用タブレットのコンテンツとして電子書籍があるのであり,相変わらず有力ではあるもののアプリの一つとして話題が移ったとも言えよう。
  ブームは必ずしも実体を伴わないものであり,むしろ実体に先行して,あるいは成果の前触れとして牽引役を担うのがブームである。市場が立ち上がらないまでもブームが続いていることは,それだけに期待が高いとも言ってよい。
(本文26ページ)


表面サイジングによる異なるプレメータリング技術の分析

メッツォペーパージャパン株式会社  倉持守男
メッツォペーパー社  ユッカ  ヴィルタネン

  狭いスロット幅のウエッジワイヤスクリーンバケットの導入はスクリーン技術の顕著な進歩であった。それ以前のデザインでは激しい摩耗の問題に晒され,損傷に対して非常に繊細だったが,ウエッジワイヤバスケットは開口面積を従来の切削式スクリーンバスケットの2倍とし,スクリーニング効率を高めてパルプ特性を強化した。
  強固さを増したバスケットデザインの進歩によりワイヤ幅を細くすることが出来たが,供給される原料内の異物の増加に対してアクセプトパルプ品質を保証するために非常に狭いスロット幅が必要となった。「細いワイヤ」と「狭いスロット」によるスクリーニングはある意味挑戦であった。   従来のワイヤデザインでの,特に高濃度での非常に狭いスロット幅の使用は,スクリーンバスケットでの急激な圧力低下をもたらしスクリーンの処理能力を著しく制限する。この場合,望まない繊維損失と共に強い濃縮傾向が高まる。
  そこで,非常に狭いスロット幅のスクリーンバスケットを使用しながら設計通りの操業性を維持するために,メッツォは次世代のラミナデザインワイヤを開発した。このNimaxワイヤはその性能と耐久性において確固たる評価を得ている。この新しいワイヤ形状の主なアイデアは狭いスロット直後のアクセプトチャンネル側において不都合な逆流渦巻き運動を大きく減少させることである。滑らかな,開口角度を徐々に変えた後流側に広がった形状はメッツォが特許権を持ち,高いスロット流速でも逆流渦巻き運動を最小にすることが計算流体力学(CFD)シミュレーションによって証明されている。
  また,同じスクリーンを使用し,他社のバスケットとラミナフローワイヤを用いたメッツォNimaxバスケットとの比較テストを行った。その結果,ラミナデザインワイヤは,仕様のスロット幅が広いにもかかわらず,ダート,粘着異物,ワックスの除去を改善することを確認した(0.28mm対他社0.22mm)。最も大きな違いは,古紙パルプ工場で最も重要な値であり,直接抄紙機の操業性に結びつく粘着異物とワックスに現れたのである。
(本文31ページ)


高圧水型抄紙用具洗浄装置,POM/Wet End System,白水処理技術紹介

相川鉄工株式会社 技術営業部  岩谷陽一郎

  省エネ化が必須の現在,抄紙関係の省エネ,かつ品質向上の提案をする。
  抄紙機における用具の洗浄を適切に行う事は,製品の品質向上・コストダウンの面から見て非常に重要である。そして,洗浄装置はより確実な洗浄・自動化・省力化を満たす為,日々進歩している。その最新型が以下の機種である。
  1)  スーパークリーナーWET…吸引式超高圧水型カンバス洗浄装置
  2)  スーパークリーナーDRY…ブラシ式無水型カンバス洗浄装置
  3)  スマートクリーナー…高圧水型フェルト洗浄装置
  4)  FFクリーナー…高圧水型ワイヤー洗浄装置
  これら洗浄装置の特徴や,導入におけるメリット,純国産の洗浄装置である事のメリットについて紹介する。
  また,多品種小ロットマシンにおいて,抄き替えに要する時間というのは非常に重要である。その応答性を最速にする為に,「プロセス容積が小さいWet End System」として,「POM/Wet End System」を提案出来る。
  その基本設計概念は以下の通りである。
  1)  希釈前原料(Thick Stock)の容積を最小限とし,抄紙機に送られる原料の調合は,可能な限り抄紙機前でおこない,貯留容量を最小限とすることで,切り替えのレスポンスを高める。
  2)  アプローチ循環系の容積は最小限とし,循環系は全てインライン化。各種サイロやチェスト,シールピットやリジェクトタンク類を省略することで,白水の貯留容積を最小限とし,レスポンスを高める。
  3)  白水内のエアーは循環前に脱気する。大量にエアーを含むマシンからの白水は,インライン化されたアプローチ系に戻る前に脱気して,エアーによる障害を防止する。
  それから,POM System機器の応用として,コンパクト化した白水回収システムも紹介する。
(本文35ページ)


複合センシングを用いた省スペース欠陥検査装置“スーパーNASP−SF”
- LEDの波長差を利用し,省スペース化を実現 -

オムロン株式会社 検査システム事業部シート検査事業推進課  渡辺和明

  コート紙等の高級紙の検査は,「表面反射+裏面反射+透過+正反射」の多フレームの検査など,複数の検査方式ニーズが強いが,カメラや光源フレームを多数設置しなければならず,設置スペースの確保ができないことが多い。
  やむなく「透過/反射併用+反射」などのシステムにする場合があるが,透け欠陥や淡欠陥など原理的に検出できない欠陥もあり,不良流出原因となることがある。
  そこで今回,複合センシングの考え方を取り入れた,2フレームのスペース・カメラ数で3フレーム以上の検査を実現する,“スーパーNASP−SF”を開発した。
  本稿では“スーパーNASP−SF”で取り入れた技術について,以下の内容に沿って報告する。
  1)  複合センシング(センサフュージョン)の紹介
  2)  全体構成  特徴
  3)  導入効果  省スペースについて・検査性能について
  4)  拡張性(バリエーション)  カラー検査+透過検査・3パターン検査
(本文40ページ)


水冷壁パネルの耐食・耐摩耗肉盛溶接

株式会社ウェルディングアロイズ・ジャパン 技術部  後藤武俊,福本宏昭

  2004年以降の原油価格は高値が推移している状況,さらに原子力発電所70基で総需要の40%のエネルギを賄うとするエネルギ行政が今回の3.11の東日本大震災により根底から見直さざるを得ない状態より,バイオマスボイラによる発電は発電方式の多様化にも寄与するもので,我国にとっては貴重な発電形態である。
  しかしながら,このようなバイオマスボイラとその補機に発生している腐食・摩耗に因る問題は稼働率低下,コストアップ等の企業経営課題を引き起こしていると言え,当社は保有する要素技術をベースにバイオマスボイラの耐食・耐摩耗策を試行している。
  本稿では,限られた事例ではあるが,火炉における水管の損耗現象とその対策として,「ボイラ水冷壁パネルの損傷事例とその対策」,「バイオマスボイラにおける減肉現象とその対策」を紹介。バイオマスボイラ水冷壁用肉盛溶接材料と肉盛溶接部の特性に関する知見を具体的に説明した。
  また,燃料の性状が変わり,運転当初は予測していないような腐食が進行し始めた場合など,既存の水冷壁の損傷を防ぐために,現地での肉盛による表面改質が費用対効果で優れていると考えられる。当社ではそういったニーズに応えるために,施工方法の新たな試みとして,現地施工用の小型自動肉盛溶接装置を開発した。現在,試験的にAlloy625の肉盛を実施し,その効果を検証しているところである。
(本文44ページ)


白板紙マシンへの光学式キャリパー計導入事例

王子板紙株式会社 富士工場  清水博文

  近年,抄紙工程におけるオンライン紙厚測定装置として,光学原理を応用した両面または片面非接触のキャリパー計がQCSメーカー各社よりリリースされてきた。   王子製紙グループにおける白板紙主力マシンである富士工場第一工場N2マシンでは,既設接触式キャリパー計(以下GT計)による圧接痕由来の筋入り,また目玉欠点や耳カールへの引っ掛かり断紙が問題となっていた。   そこで上記課題の解決を目的に,昨年横河電機製光学式キャリパー計を導入した。設置後約1ヶ月間位置調整など各種調整を行い,その後吸着圧調整,GT計と併用しての24時間連続測定を経て,約2ヶ月後にはGT計を切り離し,単独での運用を開始した。1年以上経過した現在まで安定した測定を継続し,GT計起因の損抄・断紙削減に大きな効果が得られた。   本報では測定原理,吸着圧調整(紙面に傷入りなし・測定値が安定・接触面汚れが少ない)概要と導入効果について報告する。 (本文48ページ)


抄紙機の高速化・大型化に対応した製造設備

株式会社野村鍍金 営業部  辻  征樹,石見真一

  近年,製紙業界では生産の効率化や国際競争力の維持など様々な要因の中で抄紙機の高速化・大型化が進められている。抄紙機の大型化に伴い,各パートに設置されているロールもますます大口径化,長尺化している。
  弊社では業界に先駆けて,大型ロールに対応した製造設備を保有し,設計から鉄芯製作,めっき等の各種表面処理までロールの一貫生産により業界のニーズに答えてきた。現在では,直径で4m,面長で12mのロールまで製作することが可能である。また,さらなる高速化,顧客ニーズに対応すべく様々な新規設備の導入,新技術の開発を続けている。
  本稿では弊社の保有する大口径,長尺ロールに対応した製造設備や技術を下記項目に従って紹介する。
  1)  ロール製作の流れについて概略を述べる
  2)  鉄芯製作について説明
    ・ターニングセンター
    ・内径ボーリング加工装置
    ・大型円筒研削盤
    ・バランシングマシン
  3)  表面処理について説明
    ・鍍金(めっき):タフクロム鍍金
    ・テフロンコーティング
    ・溶射:タングステンカーバイド超鏡面ロール
    ・表面仕上げ加工
    ・熱間研磨
  4)  アフターサービス:出張鍍金補修作業について紹介
(本文52ページ)


東日本大震災による津波被災紙中に存在する糸状菌の同定

東京大学大学院 農学生命科学研究科  東嶋健太,和田朋子,五十嵐圭日子,江前敏晴,
鮫島正浩,磯貝  明

  洪水や津波で水害被災した紙文書類や紙文化財をすぐに乾燥できない場合において,紙を塩水に浸漬するという簡便な処置でカビの繁殖を防ぐ緊急保存法の確立を目指している。本研究では,非特異的DNA増幅法を利用して極微量の糸状菌を同定できる手法を用いて,東日本大震災による津波被災紙中の糸状菌の存在の確認および菌種同定を行い,塩水保存法の実用化に関する考察を行った。
  日本製紙石巻工場の倉庫内で津波に一度浸水し自然乾燥した塗工紙および上質紙の試料では菌は検出されなかったが,倉庫内で津波による浸水を免れた塗工紙の試料ではPenicillium属菌を中心とした糸状菌が検出された。津波に一度浸水したことで塩水の浸透圧によるカビ抑制効果が発現し,紙が濡れてから乾燥するまでにカビの繁殖が抑えられた可能性が示唆された。一方,倉庫内で津波に浸水して泥が付着したまま自然乾燥した上質紙の試料では多種の糸状菌が検出された。泥中には非常に多くのバクテリア・菌が存在し,かつ豊富な栄養分が存在するため,泥の付着した津波被災紙は湿度が高くなると菌が非常に成長しやすい状態であったことが考えられる。この結果から洪水や津波で水害被災した紙に泥が付着している場合は,泥中に存在する菌や栄養分を除くために塩水か真水で泥を洗い流す工程が必要であることが判明した。
  三菱製紙八戸工場の敷地内で津波に浸水し約3か月間屋外放置された非塗工紙の試料では,Alternaria属菌を中心とした糸状菌が検出された。屋外放置された津波被災紙は雨水や結露などの影響で紙中の塩が流出し,塩濃度の著しい低下が起こったためカビが生えたと考えられる。この結果から塩水保存中には塩濃度の低下に気を付ける必要があることが判明した。
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