2012年7月  紙パ技協誌
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第66巻  第7号  和文概要


新潟工場の省エネルギーへの取り組み
―KP用役部門の省エネ―

北越紀州製紙株式会社 新潟工場 工務部 パルプ課 野崎 健

  2011年3月11日に発生した,東日本大震災と東京電力福島第一原発の大事故の影響により夏場の電力不足が懸念され,工場のみならず家庭においても電力節減対策が実施された。産業界・家庭・地域社会が一丸となって取り組んだ結果,計画停電も無事回避され,改めて省エネの重要性が認識されたと同時に,省エネを今後推進する上にも大きな経験となった。
  新潟工場も2009年にプロジェクトを立ち上げ,大型抄紙機を中心とした省エネルギー活動も2010年12月には省エネ目標値を達成し,エネルギー使用量の削減,コスト低減に大きく寄与している。
  なお,今回のプロジェクト活動の特徴及びガイドラインに関して一部紹介すると,
  1)  高圧モーターのインバーター化の検討。流量変動の多い所の高圧インバーターの採
算検討。
  2)  省エネ実施判断基準5倍以下。判断基準は投資額÷年間増加収益で5倍以内を目処にする。これは,大型抄紙機プロジェクトの時と同じ数値である。
この事を前提に省エネ案件を検討した結果,195件の各職場から出された案件の内,実施可能の案件は78件となり,目標省電力である3,000kWを達成し,3,097kWの省エネ予想値を出す事が出来た。
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ベルト駆動式脱水機の真空Box化による省エネ

王子板紙株式会社 釧路工場 角屋勘一郎

  王子板紙葛路工場L-1マシンはライナー原紙を日産1,370t/日で生産している国内最大級のライナーマシンである。L-1マシンの抄造するライナーは3層で構成されており,裏層がフォードリニア,中・表層がベルボンドフォーマーの抄き合わせ構造である。また,1974年の稼動よりフォードリニア部にはベルト駆動式の脱水機が設置されていた。
  本ベルト駆動式脱水機に使用されるゴムベルトは,年平均1.5反使用していたが,非常に高価であり,用品費の約1割近くを占める上,取替え作業負荷は高いことから,コストが安く,人手の掛からない設備の導入が望まれた。
  そこで我々は,以下のことを検証し,実施した。
  1) ベルト駆動式脱水機の駆動電流状況の調査等を行い,昨年5月に撤去
  2) フラットサクションボックスの脱水能力の選定を行い,同箇所にセラミック製フラットサクションボックスを導入
  3) 真空風量減少による真空源見直し
  結果として,ルーツブロワー電力として190kWの省エネを図ることが出来ている。
  本報ではその検討と操業経験および効果について報告する。
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DDRローター駆動接合部のスプライン化による高効率化

日本製紙株式会社 北海道工場 工務部 田中 隆光

  地球温暖化防止対策が急務となっている昨今,とりわけCO2排出量削減が重要視されている。当工場においても,更なる省電力への取り組みが求められている。
  製紙工程の中でも,特に大きな動力を消費する叩解工程は,これまでも日々改善を積み重ねられているが,この工程も省電力対象の例外ではない。
  そこで,2009年9月に新たに省エネ専門の臨時プロジェクトチーム(メンバー8名の内,6名が専従者)を発足させ,省エネ案件の発掘と実施に取り組んだ。2010年度にはチームの活動の一環として,外部より省エネを専門とするコンサルティング会社と契約し,新たな手法や観点で省エネ実施方法の改善に取り組んだ。
  そのような状況の中,GL&V社において,DDRローター駆動接合部のスプライン化という高効率化技術に関する知見を得た。その改造は,以下に示すような様々なコスト削減が可能という。
  1) 省電力
  2) プレート延命化
  3) 処理能力アップ
  4) 軸磨耗の低減
  5) 摺動部故障皆無
  6) モータベアリング延命化
  7) パルプ品質の均一化
  そして,海外での数百件の実績がそれを実証していた。   そこで,白老10マシン調成DDRに対し,GL&V社によるスプライン化改造を国内初導入することとし,2011年2月に改造を実施後,1年が経過している。
  本報では弊社で実施したこの改造の概要,工事効果,及び競合機械メーカ(相川鉄工,アンドリッツ)のスプライン化技術などについて,ユーザーの視点からご紹介する。
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地中温度再生型・地中熱利用システムの紹介
―浅層部の地下水強制流動による地中熱交換効率の増大―

株式会社エコ・パワー 角田 正

  地中の熱エネルギーを利用する場合,短期間で地中熱を採取してしまうと,地中熱採熱管まわりの温度が温熱利用では急激に低下し,冷熱利用では急激に上がってしまう。このような変化に地中エネルギーの追随が出来なくなり採熱効率が急低下し,その回復に数十日の日数を要する場合があり,その間は低効率の運転が余儀なくされるため,結果的に省エネ運転が出来なくなることが起こる。
  また長期間の連続運転によっても地中からの採熱効率が徐々に低下する傾向があり,その回復にかなりの時間を要する場合がある。「地中温度再生型・地中熱利用システム」は,地中深さを30m前後の浅層部に限定した垂直孔の中に,「波付硬質合成樹脂管」を挿入したボアホール方式で地中熱の採熱を行う方式であり,地中熱採熱管同士の熱干渉を防ぐための距離を1〜1.5m程度として,建設費を抑えながら設置面積を狭小化している。
  さらに,長期間の連続運転で地中熱採熱管の採熱効率が低下した場合,その地中熱採熱管を敷設した中心部の揚水浅井戸から,地中温度再生用ポンプで地下水をくみ上げて,地中採熱管周辺の地下水を強制流動する事で地中の温度を回復させ,連続運転による効率の低下を補う方法を採用している。
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製紙工場向け省エネ技術
―エネルギの有効利用による経済性・環境性の両立―

株式会社日立プラントテクノロジー 環境システム事業本部 技術本部 高石 優

  2012年は,京都議定書の第一約束期間が終了する年であるが,昨年の震災以降原子力発電が機能しなくなってきていることからCO2排出量の増加が予想される。また,今年も厳しい電力環境の継続が予測され,省エネルギ活動(CO2削減)に加えて,特に夏季の電力需要増大を和らげることに注力しなければいけない状況となっている。
  弊社の省エネルギ活動としては,当初は半導体工場,液晶パネル工場など,大クリーンルームを有し空調システムに多大なエネルギを消費する工場を主体に取り組んできた。そして,近年では食品・化成品などを初めとする,他の業界での省エネルギ活動にも積極的に取り組んでいる。中でも,1980〜1990年代に建設された製造工場は特に省エネ対策が遅れている傾向にあり,機器の老朽化更新を含めて省エネ改善が必須である。
  本稿では,以下に示す各項目に関して,紙パルプ技術協会の皆様の省エネルギ活動の一助となればと思い報告させて頂く。
  1) エネルギ削減活動の基本的な考え方
  2) 半導体工場での省エネ活動の事例報告
  3) 他業界工場での省エネ活動の事例報告
  4) 今後の省エネツールとしてのヒートポンプ紹介
  5) 弊社の主な省エネ技術紹介
  この機会をスタートとして,皆様と製紙業界の省エネルギ活動に取り組んで行くことを祈念しています。
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省エネ・省電力・CO2削減を追求する空気圧縮機

三浦工業株式会社 金子智宏,田中靖国

  当社ではボイラメーカとしてボイラ単体/運転効率のさらなる向上に取り組んでいるが,一方,ボイラシステム,更には工場全体の熱利用・動力システムを俯瞰すると,省エネに向けて様々な改善課題が残されていると考えられる。例えば多くの製紙工場の蒸気プラントにおいては,ボイラから発生する蒸気を一旦減圧弁で減圧して負荷機器に投入する場合が殆どである。
  他方,ボイラ同様広く工場で使われている空気圧縮機の消費電力は,民生部門を含めた日本全体の消費電力の約5%,一般的な工場の消費電力の20〜30%を占めると言われ,空気圧縮機のエネルギー消費効率改善は省エネ・CO2削減において非常に効果的であることが知られている。
  しかしながら,ボイラはもとより空気圧縮機も単体のエネルギー利用効率は極限まで達しており,現状はその運転手法の改善,
  1) 使用空気圧力の低減
  2) インバータ機/台数制御の導入
を図ることが残された省エネ手段となっていた。
  そこで,この2つの問題に対するソリューションとして,減圧弁で発生する蒸気差圧を空気圧縮機の動力源として用いることができないか,という検討を進め,2009年4月に「省エネ・CO2排出低減型スクリュ式蒸気駆動空気圧縮機」を発売開始した。従来型の電気駆動型と比較して約85%のランニングコスト削減・約90%のCO2削減という究極の省エネ効果・環境負荷低減が可能となる。
  本稿では,省エネルギー・省CO2を実現する高効率蒸気システムとして,蒸気エネルギーの高度利用方法として,プロセス蒸気差圧を利用した蒸気駆動式空気圧縮機(圧縮熱回収型)の省エネルギー効果及び導入事例を紹介する。
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メッツォの最新エアーシステム技術
―抄紙機の省エネルギーと環境改善―

メッツォペーパージャパン株式会社 エンジニアリング本部 高橋 徹

  製紙業界は従来から省エネルギーを推進してきた。その中で,抄紙機のエアーシステムは紙・板紙の乾燥プロセスにおいて,エネルギー消費に大きな影響を与えている。特にドライヤ工程で紙を乾燥させたエネルギーは,蒸発水分として多量に排気エアーに含まれているので,そのエネルギーを回収するエアーシステムは重要な役割を果たす。抄紙機工程内の温水,温風やマシン建屋内の暖房にも一次エネルギーを使用することなく,熱回収するだけで必要なエネルギーを得ることができる。
  このように,全ての紙・板紙抄紙機には,ドライヤを中心に潜在した省エネルギーの要素があると言え,エアーシステムの省エネルギーは大きな設備投資を行うことなく,抄紙機の運転を最適化することで成果を期待できる。
  一方,短期的な省エネルギーに目を向け過ぎて,抄紙機及び建屋内の環境を疎かにするケースが,特に日本には多く見られる。例えば,建屋換気の給排気ファンの運転を停止することは,それ自体はエネルギー消費を抑制することになるが,建屋内の高温高湿をまねき,作業環境の悪化と同時に制御機器の短寿命や操業効率の低下,建屋の腐食といった問題を加速させる。このように長期的に見た場合,気付かない内に大きな損失となっていることがある。
  本稿では,紙・板紙マシンにおけるエアーシステムという観点から,省エネルギーと環境改善について,Metso社の最新のエアーシステム技術を紹介する。
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低級古紙を高品質原料に変えるパルピング技術
―アンドリッツ ファイバーフロードラムパルパー技術―

アンドリッツ株式会社 奥西 敏夫

  アンドリッツの古紙処理技術は,DIPおよびOCC処理のシステム全体をカバーしており,設備全体のターンキーベースの納入実績も数多い。その中で,FibreFlow® ドラムパルパー(FFD)は,アンドリッツ古紙処理技術の基幹技術である。すなわち古紙処理で最初のプロセスであるパルピング工程でFFDを採用することで,後工程の除塵負荷を低減し,異物の多い古紙から良質のパルプを製造できる品質とコストに優れたシステムを実現することができる。
  古紙回収率の向上と未利用古紙の資源化,企業・自治体等からのオフィス古紙や機密古紙の増加,家庭からの雑かみの増加等を背景とする古紙品質の低級化に対して,異物の多い古紙から良質のパルプを製造できるFFDのパルピング技術が今後とも生かされる機会が増えると考えている。
  本稿では,FFDの実施事例として,オフィス古紙を活用するSCAバートン工場(米国,アラバマ州)と機密古紙の利用を可能とした丸富製紙鰹タ津工場における再生トイレットペーパーへの適用,レンゴー鰍フ子会社である中山聯興造紙(中国,中山市)における,多様で異物の多い段ボール古紙を処理する事例を紹介した。
(本文40ページ)


エクスペリオンMX

ハネウェルジャパン株式会社 紙パルプ営業技術部 小島 幹郎

  2010年9月の「チャイナペーパー2010上海」で約10年ぶりとなる新型QCS“エクスペリオンMX”を世界に先駆けて発表した。
  ハネウェルがQCSを世に送り出してから約半世紀が経つが,当初から標榜していた“卓越した測定(Measurement Excellence)”の“MX”をその名前に冠した。この新型QCS開発にあたり特筆すべき点は,ユーザーの声を多く取り入れたQCSということである。まず,多くのリサーチを行いユーザーが望んでいることをシステムに反映させることからはじまった。
  その結果,エクスペリオンMXは,以下に示す3つの大きなテーマ(課題)をクリアした。
  1) Easy to Operate(分かり易いオペレーション)
    新しい情報の見え方(Visibility)としてカラーマップ画面,カメラセンサ,アイコン表示の操作パネル
  2) Easy to Service and Maintain(分かり易いサービスとメンテナンス)
    専門知識を必要としない容易な保守性,最新診断機能とハネウェルVPNを介し,セキリュティ機能の強化された次世代リモートメンテナンス機能
  3) Lowest Total Cost of Owner(トータルコストの削減)
    “マルチバリアブルコントロール”機能の熟成により,製品安定化と省エネルギー化の実現
  本稿では,上記3つのテーマについて“エクスペリオンMX”が取り組んだことを整理して紹介する。
(本文45ページ)


排水中の化学物質のGCMSによる多成分一斉分析

株式会社 日本紙パルプ研究所 藤田啓子,岩田ひろ,岡田比斗志

  紙パルプ工場排水には様々な化学物質が含まれ,工程内で非意図的に発生するものも含め,その種類と量が不明なものが多い。これまでAOXをはじめとする有機塩素化合物など発生源が比較的明瞭な化学物質について分析を行っていたが,対象物質は排水に含まれる有機分のごく一部に過ぎないので,より多くの化学物質を効率よく分析する方法が望まれていた。
  最近,食品中に残留する農薬についてポジティブリスト制が施行され,多くの成分を簡便,迅速に分析する方法が提案されている。そこで,GCMS向けに開発された約800種類の環境関連物質を登録した多成分一斉分析システムを導入した。木材由来成分など紙パルプ工場特有の化学物質16種類も追加登録し,紙パルプ工場の総合排水中に含まれる化学物質の分析を試みた。
  その結果,データベースに登録されている化学物質がすべての総合排水から数十種類検出された。しかし,いずれも極低濃度(ppbオーダー)で,環境省,厚生労働省で定められている法的な規制値や国内外の文献値と比較しても全く問題はなかった。
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バイオリファイナリー研究の展望

独立行政法人 森林総合研究所 大原 誠資

  地球温暖化軽減に貢献するため,木材自給率の拡大と共に木質バイオマスのエネルギーや石油代替のマテリアルとしての有効利用の推進が,国の施策として定められている。本セミナーでは,木質バイオマスの蒸煮・爆砕法,アルカリ蒸解法及びイオン液体を用いたバイオリファイナリー技術に関する最近の研究動向及び今後の展望について紹介する。
  蒸煮・爆砕法はある種の広葉樹の成分分離に適した方法であるが,最近では孟宗竹からの機能性化学物質の生産やバガスからの多機能性食物繊維の製造にも適用されている。
  アルカリ蒸解法はエタノール製造の前処理法としてだけでなく,リグニン利用の面でも優れた利点を有するバイオマスリファイナリー技術である。イオン液体を用いたバイオリファイナリーは未だ基礎研究の段階であるが,繰り返し利用の可能な環境調和型媒体として注目されている。
  樹木には人間の健康増進機能を有する精油が含まれており,減圧マイクロ波水蒸気蒸留による精油採取を組み込んだバイオリファイナリーの構築が期待される。
(本文56ページ)


パルプのヘキセンウロン酸含有量と加速劣化における白色度安定性の関係

筑波大学 大学院生命環境科学研究科
桑原英子,周  欣,本間光子,橋史帆,梶山幹夫,大井 洋

  本研究では,白色度70-88%ISOの原料に着目し,六種類のパルプ(広葉樹材酸素漂白パルプ二種,TMP二種,古紙パルプ二種)を中性または酸性で抄紙し,加速劣化処理による黄変挙動等について検討を行った。つぎに,広葉樹材酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)から調製した無塩素(ECFおよびTCF)漂白パルプについて,パルプのヘキセンウロン酸(HexA)含有量と黄変挙動との関係について検討を加えた。さらに,LOKPからの新規ヘキセンウロニダーゼを含む粗酵素液によるHexA除去について,探索試験を行った。
  HexA含有量が高いLOKPを酸性抄紙したパルプの湿式加速劣化試験では,乾式加速劣化試験に比べるとパルプ白色度の低下が大きかった。一方,日光照射劣化試験では白色度が向上する現象が認められた。日光照射劣化試験では,木材とほぼ同じ特徴のリグニンを有するサーモメカニカルパルプ(TMPとBCTMP)のリグニンは着色構造に変化するが,酸性抄紙による白色度低下への影響は小さかった。古紙含有のコピー用紙(PPC)と新聞古紙(NP)には,化学パルプと機械パルプの両方が配合されていると考えられ,加速劣化処理条件および抄紙時のpHにかかわらず,白色度は比較的安定性であった。
  中性抄紙の場合では,どの加速劣化処理条件でも同じHexA含有量でLOKPの白色度低下が一番小さく,TCFおよびECF漂白パルプはほぼ同じ程度であった。酸性抄紙の場合,これらのパルプのHexA含有量が高いほど黄変が大きい傾向がみられた。白色度の安定性が高い順から高白色度TCF≒ECF(A−Dシーケンス)>ECF(D−Aシーケンス)>半晒TCF>LOKPの順になった。
  ヘキセンウロニダーゼ(Δ−X3活性)粗酵素液を用いたLOKP中のHexAの除去効果については,酵素添加量0.24U/g,pH5.5,40℃,6時間のパルプ処理を行うと,最も良い結果が得られた。パルプから約20mmol/kgのHexAが除去される時に,約40mmol/kgのキシロースが生成した。
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