2011年6月 紙パ技協誌
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第65巻 第6号  和文概要


木質バイオマスエネルギー活用の実際
―その全体像と事業化に向けた課題―

公共投資ジャーナル社 「環境施設」編集長 篠田 淳司

  2002年の新エネルギー法政令改正に伴い,木質バイオマス発電施設建設への助成策が講じられ,企業や自治体,森林組合などによる施設整備が相次いだ。また,2003年にはRPS法が施行され,木質バイオマス発電施設の建設が加速された。さらに,セルロース系バイオエタノールなどの次世代バイオ燃料開発,バイオマス熱の利用拡大,バイオマス混焼による石炭火力発電などの木質バイオマスエネルギー利用に関する計画が幅広く進められている。不況などの影響で木質チップへの需要が緩和する事態が続いていたが,昨今,バイオマス混焼による石炭火力発電やバイオマス専焼の大型発電所などが計画されるようになり,再び需給がタイト化すると予想されている。森林資源のカスケード利用の観点からは,エネルギー利用は最終的な手段と位置づけられるが,昨今ではESCO,カーボンオフセット,CO2排出量取引などの新たな付加価値を付加したビジネスモデルも相次ぎ発表され,さらには木質バイオマス発電の固定価格買取制度の導入も見込まれている。こうした情勢変化は,最大の課題となっていた事業採算性にも期待をつなげる雰囲気を創り出しつつある。
  木質バイオマス利用による産業化はなかなか容易でないことも確かだが,一方ですぐにでもできることがあることも確かだ。CO2削減などを目的にいくつかの事業が動き出しているタイミングをとらえ,地域にバイオマス活用の道筋をつけていくことが必要だろう。2020年の木材自給率50%・低炭素社会実現を謳った『森林・林業再生プラン』の有効な促進策としても,強力に推進すべき時を迎えていると言えるだろう。
(本文3ページ)


大竹工場の省エネルギーへの取り組み

日本大昭和板紙株式会社 大竹工場 工務部動力課 赤村 仁志

  日本大昭和板紙鰍ナは,環境行動計画に基づき,2010年度までに製品あたり化石エネルギー起源CO2排出原単位を1990年度比で16%削減,化石エネルギー原単位を1990年度比で20%削減を目標に掲げ省エネルギー活動に取り組んでいる。
  大竹工場においても,試行錯誤を繰り返しながら,種々の省エネルギーへの取り組みを行っている。
  今回その中から,以下の四つの代表的な省エネルギーに向けた取り組みを紹介する。
    ・エネルギー活動の最新の活動状況を簡潔に把握するための「省エネルギー対策工事計画」
    ・投資効果の向上を図るために作成した「省エネルギー対策検討書」の積極的な活用
    ・省エネ工事を効率よく立案するために実施している「省エネヒアリング」
    ・全員参加型の省エネ活動に繋げていくことを目的にした「落穂ひろい」
(本文14ページ)


ダブル冷却のび太くん
―電気を使わない凝縮促進装置―

新菱電気保安協会株式会社 森元 友絵

  近年,地球温暖化防止をキーワードに政府政策として“エネルギーの使用の合理化に関する法律”が出来,2010年4月より,CO2排出量の報告が義務付になりました。この様な背景のもとあらゆる電気設備に於いて省エネルギー開発の導入が加速して参りました。日本の電力消費量の内空調機が占める割合の多さ(全体の約30%(推測)2,666億kWh・空調機の占めるCO2排出量約1億4,796万トン)に着目をし,空調機器の革新的省エネ装置としてこのたび電気を使わない凝縮促進装置「ダブル冷却のび太くん」,空調設備の省コスト・省エネ・長寿命化を実現致しました。従来の機器そのままに熱交換(凝縮促進部)を追設するだけで年間の消費電力量を削減し,電気代を15%〜25%削減が可能になりました。CO2削減にも大きく貢献します。“のび太くん”は,CO2特定排出業者に指定されている大手企業から中小企業まで取り上げられ今日まで約7,000台以上の実績を積み上げ,その効果は実証されて参りました。
  ダブル冷却のび太くんはエアコン(冷房),ショーケース,冷凍・冷蔵庫,冷凍車など冷凍に関わるすべての機器に適応する新システムです。エアコン(冷房)を24時間稼動する店舗・コンビニエンスストア・病院・老健施設や,冷凍冷蔵庫や冷凍車などの流通・物流施設におすすめです。
(本文19ページ)


工場における省エネソースの発掘方法
―生産現場におけるテーマ発掘の仕組みと方法―

株式会社 テクノ経営総合研究所 西山 哲司

  省エネ推進で,継続的なテーマ発掘が活動の成否を決定付ける最も重要なステップである。製造現場は省エネの「宝の山」と言われる一方,活動現場においては常に「テーマの枯渇感・諦め感」が発生しているが,テーマ発掘に必要な仕組みと発掘の視点および手法を理解することで継続的,自主的な発掘が推進できる。
  潜在能力の顕在化を図れるグループ編成と努力が報われる外乱の少ない目標値の設定の下で,原単位削減の実績および単価表を用いたテーマ登録台帳で評価し,管理していく。
  テーマ発掘は「もったいない」思想で,エネルギーのJITによる固定エネルギーテーマ発掘,エネルギー使用状況の見える化,適正な指標による日々の管理,各種管理値の見直し,外部情報の適応,等々により多くのテーマを発掘できることを報告する。
(本文24ページ)


パルプ洗浄工程及び黒液濃縮工程の改善による省エネルギーへの取り組み

北上ハイテクペーパー株式会社 パルプ製造部 原質課 永尾 伸尚,斉藤 賀裕

  本報告では,以下に示したパルプ製造設備における洗浄工程の洗浄液流量制御改善による黒液濃度アップと,黒液濃縮工程(VE工程)の詰りによる能力低下の防止の2つの取り組みについて述べる。
    1) パルプ洗浄工程の改善
  VE工程で黒液濃縮に要する蒸気使用量の削減を図るためには,濃縮前の黒液濃度を少しでも上げることが重要となる。この黒液濃度を上げるためには,当然ながらパルプ洗浄工程で使用する洗浄液量を小さくすることが必須であるが,洗浄液量を小さくするとパルプ洗浄度の悪化をもたらす方向となる。そこで,現状の洗浄度を維持させながら,黒液濃度をアップさせるための課題を抽出し,洗浄液流量の制御を従来のフィードバック制御による制御からフィードフォワード制御を中心とした制御に変更した結果,黒液濃度アップを図ることができた。
    2) 黒液濃縮工程(VE工程)の改善
  VE工程は,従来から5〜7ヶ月間の連続操業において,エレメント汚れや詰り等による黒液濃縮能力の低下が問題となっており,定修毎の点検,洗浄を実施してきた。特に平成22年2月頃,VE工程の黒液濃縮能力が低下してパルプ生産量にまで影響する問題が発生したことから,更なる対策が急務となった。運転状況や開放点検結果から,
    @ 中間黒液濃度上限値を55%に設定
    A 詰り防止シャワーの設置
の対策を実施し,効果が現れた。
(本文30ページ)


画像特徴量の組み合わせ最適化による紙の自動分類

独立行政法人国立印刷局 研究所 石川  卓
横浜国立大学 大学院環境情報研究院 矢田 紀子,長尾 智晴

  紙幣や諸証券等のセキュリティ印刷物において,偽造品との差別化は重要な課題である。しかしながら,セキュリティ印刷物に新たな特徴的な要素を追加することは,コストの増加に繋がるため容易ではない。そこで,印刷物の基材となる「紙」がもつ情報を利用する分類手法に注目した。材料や製造条件等が異なることによって生まれる紙の特徴の違いを利用することが紙の分類において有効であると考えられる。
  現在までに,紙の分類方法として,紙の画像に現れる周期的な特徴の違いに注目した手法が提案され,その有効性が示されているが,より多様な紙の特徴の変化にも対応した分類方法として,紙の画像から算出可能な複数種類の特徴量を組み合せる方法が有効と考えられる。
  本報では,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)とサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)を組合せた分類器作成手法である特徴量選択型SVMを用いて,撮像された紙の画像から算出可能な複数種類の特徴量を基に学習を行い,材料や製造条件等が異なる紙の分類を行う分類器を自動的に構成する方法を提案する。分類器の構成に用いる画像特徴量は,階調値を用いた特徴量,2値画像から得られる特徴量,分割した画像から得られる特徴量及びGray Level Co―occurrence Matrix(GLCM)から得られる特徴量を用いた。提案手法の能力を確認するために,メーカーの異なる紙及び作製条件の異なる手すきシートを用いて分類器を構成する実験を行った。その結果,材料や制作方法の違い等,様々な条件が異なる紙に対応した高精度な分類器を自動的に構成することができ,提案手法の汎化性と有効性を確認することができた。
(本文49ページ)