2011年1月 紙パ技協誌
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第65巻 第1号  和文概要


低動力スクリーン LPスクリーンの紹介
―古紙処理システムの省エネと合理化―
株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 原質機械技術部 岩重 尚之

  LPスクリーンは,約40年間の弊社ノウハウを注ぎ込み完成させた,超低動力スクリーンである。低動力の秘密はその内部構造にあり,スクリーンプレートに設けられたすべての開口部を,均一に原料スラリーが均一な速度で通過すること,処理原料の濃度を高くすることができるような工夫が盛り込まれている。今回は,佐々木賞受賞記念講演として,この画期的スクリーン技術の紹介をする。
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高効率4軸ニーダー(UVブレーカー)
―難脱墨インキスペックの省エネルギー分散―
相川鉄工株式会社 営業・技術本部 青嶋 和男

  世界的に省エネルギー,省資源が叫ばれ続けている。その中で脱墨工程を考えると,原料を選んで使う時代から何でも受け入れしかも完成品質は下げない技術が要求される。具体的には雑誌古紙,MOW,込頁古紙などを脱墨原料として有効利用せざるを得ない原料事情から,これらの古紙に含まれるUVインキ,樹脂コート,トナー,昇華性インキなどの難脱墨性印刷物対策が重要になってきた。
  UVインキに対しては弊社の高濃度パルパーシステムにてバッチ運転の特性を生かし,早期探知と緊急回避システムを提案してきた。また昇華性インキも禁忌品として扱っているが原料に混入する事もあり,特に白板紙においては数カ月後に表面に浮き出てきて大きな問題を発生する事がある。混入する可能性がある難脱墨性印刷物対策はやはり強力に分散し,フローテーション工程で除去出来る高濃度分散機を備える事である。
  弊社では既存の高濃度分散機では満足できないこれらのインキ分散効率向上の為に新たに高効率4軸ニーダー/UVB型UVブレーカーを開発したので報告する。
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2号抄紙機 プレス改造による操業経験
レンゴー株式会社 金津事業所 製紙工場製紙部 製紙課 大田 純司

  レンゴー(株)金津事業所製紙工場2号抄紙機は,坪量115〜200g/m2の中芯原紙を抄造している。
  同抄紙機は1969年より稼動を開始し,1989年に3Pプレスのシュープレス化等で,抄速アップを図り操業してきたが,稼動当初より使用している機器は老朽化が著しく,No.1,2プレスはフレーム自体が歪み操業上問題があり,2009年8月から9月にかけて,新規プレスに改造を行い,プレス出口の湿紙水分が低下し生産性が向上した。
  本報告では,2号抄紙機のプレス改造の概要,効果及びトラブル事例について紹介する。
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クヴァナ連釜の操業経験
北越紀州製紙株式会社 新潟工場 工務部 パルプ課 佐藤 武志

  北越紀州製紙叶V潟工場は9号抄紙機を新設し,2008年9月より営業運転を開始した。9号機は年産35万tで計画され,それを含む工場バランスによりLBKPの増産も計画,2008年5月にパルプ関連設備の新設・増強工事を終え増産体制を整えた。
  連釜設備の増産改造は,1997年に稼動した通称クヴァナ連釜で実施した。主な工事内容は,大気圧型浸透釜の設置と,それに伴うチップ供給フローの変更,蒸解釜内のストレーナー増設であり,生産量は1,430T/Dから1,930T/Dへ500T/Dの増産計画であった。これにより,新潟工場のLBKP生産能力は,1985年稼動の通称カミヤ連釜と併せ2,670T/Dとなった。
  今回は増産改造から2年が経過したクヴァナ連釜の操業状況について報告する。
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日南工場の省エネルギーへの取り組み
王子製紙株式会社 日南工場 施設部 電気計装課 中野 賢治

  王子製紙グループ各工場では,省エネ量目標を,「対総エネルギー割合(省エネ率)1.5%以上」として活動に取り組んでいる。日南工場においても,目標達成のために,インバーター化やプーリー変更,間欠運転,高効率機種への変更,フロー改善など,さまざまな手段を実施してきた。
  今回は,過去1年に実施した,「パルプ・動力設備ライン併用による加工設備コンプレッサー負荷減少による省電力」,「2マシン主力DDR変更による省電力」,「2マシン調成原料混合叩解による省電力」,「2マシンプレス真空系変更による省電力」の4件の事例を紹介する。
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オーストラリアンペーパー社の紹介
―メアリーベール工場の概要―
オーストラリアンペーパー社 メアリーベール工場 永田 耕司

  2009年,日本製紙は,オーストラリアを本拠地とする世界有数の紙専門商社PPX社の子会社であるオーストラリアンペーパー社の全株式を取得する株式売買契約をPPX社と締結し,同年6月に株式取得完了,オーストラリアンペーパー社は日本製紙グループの一員となった。
  オーストラリアンペーパー社は,オーストラリア最大の印刷用紙メーカーとして50年以上の歴史を持つ。主力ブランドであるコピー用紙「Reflex¥外字(8064)」は,オーストラリアにおいて約60%のシェアを有している。そのメアリーベール工場は,オーストラリア大陸南東部のビクトリア州にあり,メルボルンの東約160kmに立地している。現在,洋紙生産能力は5台の抄紙機で年産約57万t(日産約1,600t),パルプ生産能力は,LBKPとNUKP,NSSCの3系列で日産約1,400tである。パルプ製造設備は,約3億4千万豪ドル(約270億円)を投じた生産能力増強を含む大規模工事が2008年12月に完成したばかりで,LBKP工程はオゾンECF漂白を採用した最新設備が導入された。
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ライムキルン低周波音・振動対策
中越パルプ工業株式会社 高岡工場能町 原質部 久次米智文

  当社高岡工場能町の苛性化工程は,No.2ライムキルン(φ2.7m×55mL)及びNo.3ライムキルン(φ3.0m×65mL)の2基のロータリーキルンを有している。一般的に,ロータリーキルンは,燃焼・共鳴による空気振動から低周波音振動及び駆動部から振動を発生させる機器として知られている。当工場では,平成17年から同20年に掛けて,工場周辺住宅地の住民の方から建具や薄型テレビが揺れる,また時には家の軋むような大きな振動がある等の苦情が寄せられた。調査により,振動は@建具の微振動,A家具の揺れる振動,B家屋の軋む様な大きな振動の3種類に分類され,それぞれは,キルン周辺から発生している低周波音による建具等の共鳴,微振動及びキルン駆動部を起振源とする振動が,周辺住宅へ伝播共鳴し,家具,家屋等の振動として発生している可能性が高い事が確認された。
  低周波音対策として,建屋開口部の閉塞工事及びチップスクリーンの更新を図った事,また,振動対策として,No.2ライムキルン駆動部整備,及びNo.3ライムキルンの回転数制御による振動の低減を図った事により,周辺家屋振動問題の改善,地域環境レベル改善を図る事が出来た。
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省エネプレートの操業経験
日本製紙株式会社 石巻工場 原質部 志村 和哉
  日本製紙叶ホ巻工場は微塗工紙,上質紙,中質紙などを中心に月間10万トンの紙生産能力を有し,そのうちLBKP・NBKPの使用比率は約50%であり,KP叩解工程の省エネ推進は環境面・コスト面から重要な課題となっている。こうした背景から,これまで叩解工程の省エネ対策として叩解機(ダブルディスクレファイナー,以下DDR)の省エネプレートの検討・導入を進めてきた。
  今回石巻工場で新規省エネプレートとして導入したファインバーは,従来の鋳物プレートからステンレス製となったことで従来にないプレートパターンを実現し,LBKP叩解工程で大きな省エネ実績を上げてきた。本報では石巻工場のLBKP叩解工程で約3年間ファインバーを使用してきた実績及び操業経験について報告する。
  【ファインバー導入効果と操業経験(まとめ)】
  ・省エネ効果:約2〜3割の省電力化を達成(叩解原単位良化,処理量アップによるDDR集約)
  ・ファインバー寿命:約3倍(鋳物プレート;10ヶ月,ファインバー;32ヶ月)
  ・プレート磨耗時の叩解能力:省エネ効果・叩解後品質とも変化無し
  ・プレート破損時の状況:一部刃が折れ曲がるだけで,そのまま継続使用可能
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間伐材の利用促進の取り組み
―「森の町内会」による「間伐に寄与する紙」―
三菱製紙株式会社 洋紙事業部 直需開発営業部 田中 俊有

  日本は,国土面積の約70%を森林が占めている世界でも有数の森林大国であるが,一方で,輸入木材との価格競争や山間部の人手不足等により一部の森林では適切に管理されず,特に針葉樹の人工林では,健全な樹木の生育に必要な間伐が実施されておらず,森林が荒廃し,土砂崩れ,土石流等の災害の一因になっている。
  このような状況下,針葉樹の人工林で必要な間伐を継続的に実施して森林を健全化する取り組みとして,三菱製紙では2005年より環境NPOオフィス町内会などと協働で「森の町内会 間伐に寄与する紙」を立ち上げた。この「間伐に寄与する紙」の特長は,間伐費用の不足分を補完するために紙代に「間伐促進費(紙1kgあたり15円)」を付加していることである。ユーザー(間伐サポーター企業)はこの紙を購入・使用することで,間伐促進費全額が間伐と間伐材の有効利用に充てられ,間伐促進に貢献できる仕組みになっている。本稿では,「森の町内会 間伐に寄与する紙」の仕組みと普及状況などについて紹介する。
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ブロークパルパー用温水製造設備の電化事例
王子特殊紙株式会社 東海工場 施設動力部 蜂谷 孝司

  王子特殊紙株式会社東海工場には,「ブロークパルパー工程」と呼ばれる紙を再利用する設備があり,ここでは温水が使用されている。従来,温水の熱源としてブロークパルパー工程から,380m離れたボイラーより蒸気が供給されており,その間の長距離配管で相当量のエネルギーが失われていると懸念されていた(配管表面の放熱とトラップからのドレン排出及び蒸気漏れによるエネルギーロス)。
  我々は,これらの状況を鑑みエネルギー消費を低減させるため,現状のボイラーよりエネルギー効率が高いことで知られている,ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入を決めた。
  これは,ヒートポンプ給湯機がボイラーに比べて小型で,管理区域やボイラー技師など必要とせず,ブロークパルパー工程に隣接した設置が可能となり,結果として,長距離配管によるエネルギー損失の低減が期待できるからである。なお,ヒートポンプ給湯機の導入時には運用パターンの厳密なシミュレーションを行い,温水使用量の最適化を図った(ブロークパルパー工程の温水使用量は処理する紙の種類によってバラつきがある。そのため,温水使用量を平準化するように運用パターンを最適化することで,ヒートポンプ給湯機の導入台数・容量を抑え,設備稼働率を高めることができる)。
  その結果,我々は省エネルギーおよびCO2排出量の削減とイニシャルコストの最小化を同時に実現することができた。本稿では,その詳細について報告する。
(本文75ページ)