2008年12月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2008年12月


第62巻 第11号 和文概要


間違いだらけの環境対策

株式会社 循環資源研究所 村田 徳治

 昨今の日本の環境問題への対応を見ると,数々の矛盾に満ちたいわゆる間違いだらけの研究や計画が進行しつつある。
 本稿では地球温暖化対策としての水素,バイオ燃料に関わる問題点について解説し,今後期待される人造石油,廃木材などの展望について述べる。
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わが国の環境法規制の動向

王子製紙株式会社 環境経営部 今宮 成宜

 1990年代に入り,環境関連で多くの法律が公布・施行されてきたが,一部を除き全体としては規制強化の方向にあり,その傾向は今後もしばらく続くものと思われる。またわが国の環境法の大きな流れは 微量化学物質対策 温暖化・省エネ対策 廃棄物・リサイクル対策に区分される。今回の報告では,本区分の中で,ここ数年動きがある法律及び対応に注意を要する法律について紹介する。
 その中で廃掃法については,法が適切なリサイクルを逆に妨げる事態が生じており,早期の廃棄物定義の見直し,枠組み見直し等の抜本改正が望まれる所である。又,現在,環境コンプライアンスの重要性が言われているが,そのためにはまず関連する環境法をきちんと理解・把握し,そのレベルを上げていくことが必要である。
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欧州のREACH規則と富士フイルムの対応

富士フイルム株式会社 CSR推進部 環境・品質マネジメント部 山口  潤

 2006年12月18日に欧州が発行し,2007年6月1日から施行になったREACH規則(Registration, Evaluation, Authorisation of Chemicals)の概要紹介を行い,産業界および富士フイルムの対応について触れる。
 REACH規則は,有害な化学物質から人間の健康と環境を保護する事と欧州の競争力の維持とを目的とし,製造・輸入する化学物質の登録(Registration),安全性の評価(Evaluation),発がん性を有するなどの非常に高い懸念がある物質は,個々の用途毎に上市を認可(Authorisation),リスクの高い物質は禁止等の制限(Restriction)を行う,ことを骨子とした総合化学物質管理の法律である。REACH規則は従来の化学物質管理政策を発展させた新しい施策が数多く導入されており,企業は新しい考え方での対応システムの構築をせまられている。
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製紙を巡る世界の話題
―環境を中心に―

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 世界の製紙産業を概観すれば,昨今は北米の凋落,北欧の強さ,中国の台頭が目につく。今後,製紙産業は,資源と環境に対応していくことが必要である。
 環境に関しては地球温暖対策として化石燃料の削減,古紙の回収と利用の推進,森林問題への対応である。森林減少と産業植林については多くの誤解があり,製紙産業に携わる者は自信を持って誤解を解いてもらうように説明できることが必要である。
 日本への影響が大きい中国の現状を,直近に山東省済南市で開催した第2回2008年日中技術交流シンポジウムとともに紹介する。さらに,中国の次に注目されるインドについても2007年に開催されたPaperex2007に参加した体験をもとに国情と製紙産業について紹介する。
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メタン発酵排水処理について

日本製紙株式会社 技術研究所 環境プロセス研究室 濱田  薫
日本製紙株式会社 岩国工場 環境保全課 藤田 英昭
日本製紙株式会社 勇払工場 環境管理課 村田 雅広

 メタン発酵処理技術は,排水中の有機物からエネルギーを回収できるだけでなく好気性処理に比べて余剰汚泥の発生量が少ないことなどが特徴であり,非常に有用な技術である。この技術は,UASB法の開発などにより処理効率が飛躍的に向上したことから食品をはじめとする多くの産業に導入されている。紙パルプ産業においてもメタン発酵設備は欧州を中心に導入されており,当社でも平成16年に勇払工場,平成17年には岩国工場に実機設備を導入している。両工場ではメタン発酵処理をクラフトパルプ製造工程で発生する黒液の蒸留液(KPエバドレン)に対して適用しているが,この排水への適用は国内初である。
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ボイラのNOx発生原理とその低減技術及びNOx排出の安定化

三菱重工業株式会社 ボイラ技術部 横式 龍夫,田口 雄三

 2007年は電力及び動力用にボイラ設備を設置している一部事業者において,大気汚染防止法や水質汚濁防止法等の公害防止法令の不適切な設備管理の事例が発生し,社会的にも大きな関心事となった。その後,法令順守徹底の観点から,環境省検討委員会や事業者毎の調査検討が行なわれ,不適正事案の分析及び今後の取り組み指針が整理されている。
 窒素酸化物(以下NOxと称す)は,大気汚染防止法のばい煙の一つとして,規制されている物質であるが,環境省検討委員会や各社公表資料においても最も多くの不適正事案が紹介されている。
 NOxの発生原理やその低減技術はボイラメーカ各社や各種公知文献等でも過去に数多くの発表が行なわれているが,ここでは今後の法令順守や環境対策への取り組みの一助とするために改めて整理してみたので紹介する。
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住友化学の環境経営について

住友化学株式会社 レスポンシブル ケア室 奈良 恒雄

 住友化学は従来から,製品のライフサイクルで,安全・環境・健康・品質を確保する自主的なレスポンシブル・ケア活動(RC)に取り組んでいる。この自主的な活動は,国内の工場,研究所のみならず内外のグループ会社を含めグローバルに展開されている。さらにRCの概念にとどまらず,化学製品の社会的な価値や影響力,経済的な付加価値を総合的に高める取り組み「サステイナブル・ケミストリー」を積極的に推進している。住友化学は企業活動のあらゆる場面で,「RC」「社会」「経済」に配慮しつつ,サステイナブル・ケミストリーの実践から生まれた製品,サービスで社会に貢献するCSR経営(環境経営)を進めている。本稿では当社の環境経営とRCの取り組みについて紹介する。
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地球温暖化対策の方向性について

成蹊大学 理工学部 小島 紀徳

 COP3,第3回気候変動に関する枠組み条約締約国会議,いわゆる京都会議から8年近くたって,京都議定書が発効した。その枠組み条約から見れば十数年である。そしてその約束期間,2008―2012という期間には既に突入してしまった。この状況の厳しさは,オゾン層破壊に関するモントリオール議定書が発効したのは,ウィーン条約からたったの4年であることと比べると良く理解できる。
 地球温暖化対策,特に二酸化炭素問題の解決策は,o)温暖化対策(対症療法など),a)1次エネルギー源の転換,b)エネルギー転換およびエネルギー利用における高効率化,省エネルギー,c)エネルギー以外からのCO2排出,d)二酸化炭素の分離・回収・隔離・固定,そして利用,e)大気からの吸収・固定,自然放置,そして少し毛色は違うが,f)政治経済的手法に分類される。そしてそれらのすべてを,非再生可能資源の使用量の抑制,ほかの環境問題への良い影響,という2つの観点から作成したマップにプロットすると,後悔しない対策技術すなわちもし仮に二酸化炭素問題が大きな問題とならなくとも実施すべき対策と,二酸化炭素問題故に取るべき緊急避難的対策でありもし大きな問題にならなかったときには実施したことを後悔する対策に大別される。このような状況下で,どのような政治的経済的枠組みが取られるべきか?筆者は,バージン資源に課税することが最も理にかなっているのではないかと考えている。
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TAPPI Advanced Coating Fundamentals Symposium '08参加報告

日本製紙株式会社 研究開発本部 技術研究所 川島 正典

 2008年6月11日から13日にかけてカナダケベック州のモントリオールでTAPPI Advanced Coating Fundamentals Symposium '08が開催された。今回のSymposiumには米国,カナダをはじめヨーロッパやアジア(日本,韓国,タイ,インド)などから約85名が参加した。業種別では,資材メーカー,製紙会社,大学,研究機関,測定機器メーカー等からの参加があった。今回は11のセッションからなっており,口頭発表が28件とポスター発表が10件報告された。ここではその一部を紹介する。
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2008Pan Pacific Conference/Control Systems2008報告
―2008年6月16日〜18日バンクーバー(カナダ)にて開催―

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 森  芳立

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

 2008Pan Pacific Conferenceがカナダのバンクーバーで15th Control Systems2008に併設して(6月16日〜6月18日)開催された。紙パルプ技術協会の代表として,豊福専務理事が参加した。Pan Pacific Conferenceは環太平洋の加盟8カ国の技術協会が2年に一度持ち回りで開催する会議で,2006年は韓国で行われた。今回はControl Systems Conferenceとの併催のためプロセス制御分野での発表がほとんどであった。日本からは企業から3件の発表が行われた。Pan Pacific Conferenceとしての概要とControl Systems Conferenceの発表概要について紹介する
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2008年TAPPI Research Management Committee参加報告

日本紙パック株式会社 藤原 秀樹

 カナダ,ケベックで開催された2008年TAPPI Research Management Committee秋季会合に出席した。モントリオールからケベックに至る道筋に,FPInovations PAPRICAN,CIPP(Centre Integre en Pates et Papiers),CIC(Centre International de Couchage)などの研究施設があり,それらを見学しながらのツアーである。高速パイロット設備が印象的であった。2日半のケベック市での会議は,バイオリファイナリー関連の公演が多数をしめた。
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高濃度ポリサルファイドを用いた新蒸解システムの開発(第1報)

―広葉樹材蒸解における木材液比および硫化物濃度の影響―

日本製紙株式会社 技術研究所 渡部 啓吾,南里 泰徳*
日本製紙株式会社 石巻工場 岡本 康弘,清水 正裕 
筑波大学生命環境科学研究科 大井  洋       
*現所属:株式会社日本紙パルプ研究所 

 クラフトパルプの収率向上技術の一つとしてポリサルファイド(PS)蒸解がある。PS蒸解液の調製方法には種々あるが,工程内のナトリウムとイオウの比率(Na/Sバランス)を崩さないためには,白液からPSを調製する必要がある。また,実機の連続蒸解釜を用いる広葉樹材の通常蒸解では,蒸解液量の木材重量に対する比(液比)が2―3L/kg程度である。しかし,静置釜を用いるラボ蒸解では,チップを蒸解液に浸すために,液比を4L/kg程度に上げる必要があり,その結果,ラボでは実機よりも蒸解液の薬品濃度が低い条件で蒸解試験を行うのが通常であった。本報告では,回転型オートクレーブを用いて低液比(2.5L/kg)で蒸解試験を行う条件を確立し,蒸解初期のPS濃度とNa2S濃度に着目し,空気酸化法を想定したPS蒸解について評価した。その結果,PS濃度を上げれば,PSによる収率向上効果は大きくなるが,PS生成に伴って蒸解液中のNa2S濃度が低下するため,蒸解初期のNa2S濃度が6―9g/L(Na2O当量)以下となった場合には,カッパー価と粕率が顕著に上昇する事が示された。PSの効果を最大限発揮させる蒸解を行うには,白液中の限られたNa2Sから,その損失が少なく,効率の良くPSを生成する方法が必要である。
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王研式透気度・平滑度試験機と関連試験機との測定値比較

紙パルプ技術協会 加納  直

 我が国では,紙の平滑度測定は,主に王研式平滑度試験機,ベック平滑度試験機及びプリントサーフ試験機を用いている。また,紙の透気抵抗度測定には,主として王研式透気度試験機及びガーレー透気度試験機が使用されており,プリントサーフ試験機で透気度を測定することも行なわれる。
 王研式試験機は,日本で開発されたもので,平滑度はベック相当値を,透気抵抗度はガーレー相当値をそれぞれ極めて短時間で測定できる。平滑度測定用ヘッドは,ベック機のヘッドとは異なり,多重リング構造が特徴である。一方,透気抵抗度測定用ヘッドは,ガーレー機と同一構造である。
 これら試験機の対応試験規格は,ベック,プリントサーフ(表面粗さ)及びガーレーについては,ISO規格及びJISがある。しかし,王研式試験機は,JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法に規定されているだけである。そこで,紙パルプ技術協会では,業界で最も広く使われている王研法による平滑度試験方法及び透気抵抗度試験方法のJIS化作業を行なっている。さらに,王研法をISO規格として制定することについても,提案作業を開始した。
 王研式試験機は,欧米では殆ど知られていないので,ISO提案に当たり,他の関連試験機との測定値の関係を提示する必要がある。このたび,日本製紙株式会社のご厚意によって,同社研究開発本部所有データの公開許可を頂いたので,紙パルプ技術協会で報文を作成した。
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