2008年9月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2008年9月


第62巻 第9号 和文概要


中国製紙産業のレビューと展望

中国造紙学会(CTAPI)・中国国立紙パルプ研究所 曹  振雷

  中国製紙産業は,この十年の間,確実に成長し続けてきた。紙・板紙生産量は2006年には6,500万トン,消費量も6,600万トンに達した。これは年間の成長率では,それぞれ16%と11%になる。環境保全に対する厳しい政策と省エネの取り組みがなされている中でさえ,今日に至るまで成長が停滞する兆候はみられない。将来に目を向けると,中国製紙産業は,消費材の輸出と国内消費の成長によって,今後は比較的穏やかに成長するものと思われる。生産量と消費量が一億トンに達するのは時間の問題であり,2010年までに達成できなければ,2015年までには確実に達成できる。
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有機高分子凝結剤のピッチ低減効果について PartU
  ―マイクロピッチの不活性化による抄紙系内の安定化―

ハイモ株式会社 湘南研究センター 坂本 英俊,境  健自

  粘着性ピッチが原因のピッチトラブルを防止するためには,カチオン系凝結剤を使用することが有効である。カチオン系凝結剤は,抄紙工程内の粘着性ピッチの粘着性を封鎖し,ピッチを粗大化させずにパルプに吸着させる。そしてプレス・ドライヤー工程で,定着した粘着性ピッチが紙層から剥離することを低減させることができる。
  今回,「ヘマサイトメーターを使用した画像解析法」と,粘着性ピッチの粘着性を直接評価する「熱転写法での画像解析法」を用い,設計思想の異なる性質のカチオン系凝結剤の効果を確認した。
  本報告では,イオン性,分子量,疎水基と親水基のバランス等を制御することにより合成した数種のカチオン系凝結剤が,それぞれ異なる粘着物封鎖力,イオン封鎖力,凝結・凝集力を示すことを報告する。
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非塩素系脱蛍光システム

日本化薬株式会社 機能化学品事業本部 色材事業部 渡邉 雅史

  現在,市場にある古紙再生処理に関する薬剤は脱墨剤や漂白剤など,目的や用途に応じて多くの種類が存在する。古紙再生処理に使用される脱蛍光処理剤もその中の一つである。蛍光発光の消去を行う脱蛍光処理剤には,マスキング剤と塩素もしくは塩素を含む薬剤がある。しかし,マスキング剤は後処理や経時による再発光を引き起こし,塩素もしくは塩素を含む薬剤はAOX(有機ハロゲン性吸着物質)の生成などの問題を有している。そこで日本化薬は蛍光増白剤の製造技術とパルプの染色ノウハウを生かし,化学的な蛍光発光の消去を行う非塩素系のKayaclean AWとKayaclean IKを開発した。
  Kayaclean AWは少ない使用量でも大きな効果を示し,短時間,広いpH範囲での処理が可能である。脱蛍光処理剤としてKayaclean AWだけでも充分な効力を有しているが,さらにKayaclean IKを併用することで,その効力はより強力なものになる。また処理後に得られたパルプのL,a,b及び白色度は,未処理のパルプとなんら変わらない値を有している(黄色化しない)。Kayaclean AWとKayaclean IKは,再生処理コストや環境問題を解決しながら,古紙の蛍光発光を消去できる,今まで市場に無かった新しいタイプの脱蛍光処理剤である。
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填料・顔料の分散用アイリッヒミキサーについて

日本アイリッヒ株式会社 冨田 和夫

  アイリッヒミキサーはドイツの独自技術による逆流式高速攪拌機として様々な産業界の原料処理分野で使用され,その混合性については定評がある。
  近年,紙パ業界においても,炭酸カルシュームケーキの解砕・分散剤との均一混合・凝集体の分散の一連過程を短時間で一台のミキサーでこなし,その能力,高分散性については高い評価を得る事ができた。
  本文では,弊社内の実験機でテストした結果について,粒度,粘度測定並びに電子顕微鏡による写真等を交え,その結果について分析報告する。
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TopBrane™:多分岐高分子のインクジェット用紙への応用

ディー・エス・エム社 マンタイン ファン レウベン

  紙塗工分野に利用するための新しい多分枝高分子で,DSM社によって商品化されたTopBrane(日本では,東永産業鰍ェ販売展開を行っている)のインクジェット用紙への応用について紹介する。TopBraneは受容層に添加することで印刷適性を向上させ,さらに印刷後の乾燥速度の短縮を図ることができる。
  インクジェット用途でのTopBraneの特徴として,TopBraneを添加することによりインクジェット受容層で一般的に用いられるピグメントとの相互作用により,良好な凝集プロセスが得られる。その結果,印刷適性を改善するという効果をもたらす。さらにTopBraneを添加することで塗工液の粘性低下と固形分濃度を高めることができ,最終的に操業性の改善と操業上のコスト削減につながるメリットを得ることができる。
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最新のファイバーライン

メッツォペーパージャパン株式会社 設備サービス部 山下  宏

  近年,南米や東南アジアを中心とした大型のパルププラントの相次ぐ稼動によってチップの集荷が非常にタイトになっている。その結果,原料となるチップの価格ばかりでなくチップの品質への影響が懸念され始めている。原料チップの品質低下は釜の操業にも大きな影響を与えかねず,その対応が求められるところである。
  一方,環境問題に目を向けると,地球温暖化をはじめとした環境に対する意識の高まりから環境保全に対する要求は日々,厳しさを増している。特に排水への量的,質的な規制の強化は漂白工程に影響を与えている。事実,環境に対する意識の変化がパルプの漂白技術の発展を促した。酸素脱リグニン設備,ECF漂白の普及などがその顕著な例である。
  このように今日のパルプ工場はさまざまな課題を抱えている。本報では蒸解工程,漂白工程を中心に考えうるいくつかの課題の解決策を最新のファイバーラインの例や傾向を挙げながら紹介する。
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最新の排水処理技術

住友重機械エンバイロメント株式会社 中野  淳

  紙パルプ工場の製造工程から排出される排水は,汚濁物質濃度が低いが,排出水量が非常に多く,大量の汚濁物質を除去しなければならない。近年は環境負荷の低減や設備コストの低減のために,酸素曝気法や担体処理の導入が進められ,さらに,排水中に含まれる有機性汚濁物質を分解してバイオガスを発生させ,熱あるいは電気としてエネルギーを回収できる嫌気性処理の適要が検討されている。
  本稿では,弊社で取り組んできた新しい排水処理技術の中から,嫌気性処理システム,および省スペース型凝集活性汚泥処理システム(スミスラッジ¥外字(8064)システム)について,処理法の概要,処理システムの構成,適用例について紹介した。
  嫌気性処理システムは,設備容量,設置スペース,所要動力が小さく,汚泥発生量も少ない。バイオガスからエネルギーが回収でき,ランニングコストの低減が計れるシステムである。
  スミスラッジ¥外字(8064)システムは,活性汚泥と凝集沈殿を組み合わせて沈殿槽を削減し,さらに高速型凝集沈殿スミシックナー¥外字(8064)を適用することにより,大幅な省スペースを実現したシステムである。
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ディジタルpHセンサの紹介
  ―保全経費を削減する画期的なpHセンサ―

メトラー・トレド株式会社 渡辺 泰生

  ディジタルpHセンサは従来のpH電極と測定理論およびガラス電極,比較電極などの構成要素は全く同じであるが,センサ内部にICチップを内蔵し変換器との信号の受け渡しをディジタル化しているところが大きな相違点である。このため従来のpH電極では不可能とされていた自己診断機能と使用履歴の情報をすべてセンサ内に保持できることである。この機能を利用することにより必要最小限のメンテナンスで精度高いインラインpH計測を可能とし,製造工程のダウンタイム削減や最終製品の品質向上などに役立つことは必至である。ここではこのディジタルpHセンサの紹介と,これとは別にpHとSS濃度計測に関して最近新たに紙パルプ製造工程において成功した実例を紹介する。
(本文37ページ)


印刷業界における検査動向
  ―検査機から見た品質要求の移りかわり―

株式会社ヒューテック 営業本部 新製品統括部 技術統括課 児島  透

  弊社の市場は30年前金属業界の外観検査からスタートし,紙パルプ業界,そしてフィルム業界,非鉄金属業界など無地シート全般へ拡がり,製造業としては川上の業界に展開した。その後,時代の要求により,川下の業界である加工業界へと展開してきた。加工業界には印刷,フィルムの塗工,ラミネート,粘着塗工などがある。この間「画像表示ボード(30年前)」「印刷検査機」「欠点画像表示機能」「ムラ・スジの専用検査」「軟エックス線フィルム厚さ計」などは業界に先駆けて提供してきており,お客様のご支援も頂き納入実績5,500台に至っている。
  これまで「QCインライン」を当社のコンセプトとして製造工程中の品質状態を検査するとともに,それらの情報を収集・分析することで工程全体の生産性を向上するシステムを提案してきた。最近ではお客様が信頼を得るための装置,利益を出すための装置としてなくてはならない重要な位置づけになっている。このため弊社もこれから必要とされる検査装置とは何かを追求し産業界に貢献していくつもりである。そして2007年,これまで様々な業界(紙パ業界,フィルム業界,非鉄金属業界,印刷業界など)で培った技術,顧客からの要求,潜在している問題点をまとめ,印刷検査装置20年目の集大成であるEasyMax. GSをリリースした。本稿では,これら最新型検査装置の特徴と印刷検査の品質要求の移りかわりについて紹介する。
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既設圧送配管への更生工法について

芦森工業株式会社 防災・パルテム・ジオカンパニー  パルテム・ジオ技術ユニット 瀬下 雅博

  産業の効率を良くするために,様々な分野,場所で非常に多くのパイプが使用されている。パイプの種類としては,ガス導管,上水管,工業用水管,排水管,油導管などがあり,経年劣化が進んでいる。ホースライニング工法は,シールホースを空気圧の作用で「反転」させながら既設管に挿入する工法であり,空気圧を保持した状態で,あるいは,蒸気を用いて加熱硬化させることで,接着材を硬化させ,既設管の更生,更新を行う工法である。パルテムHL(ホースライニング工法)工法は,このような老朽化した既設管の延命,漏水防止,管補強,耐震性付加を目的とした管更生,更新する工法である。この中で特にホースライニング施工を行うことによる特性は既設管に耐震性が付加されることである。
  兵庫県南部地震による被害状況から,ホースライニング施工管の耐震性を検証し,その測定結果では管路は継ぎ手部から破壊しており,平均的な開口部の最大変位は約100mmであった。しかしながらホースライニング施工をした管路では,漏水等の発生はなかった。この現象を理論的に解析した結果,ホースライニングに使用されているシールホースは,高い強度とひずみ吸収性能があるため,地盤変動により埋設管やその継ぎ手部分に亀裂や局部的な変形が発生し,開口部の変位が100mm程度になっても,シールホースはこの変形に追随し切断等によって機能が損なう事がないとした。 
  本報では既設圧送管への更生工法としてのホースライニング工法の概要について報告する。
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製紙産業技術の特徴:他産業と比較しての一考察

紙パルプ技術協会 製紙産業技術遺産保存・発信プロジェクト 飯田 清昭

  技術の概念は人により大きく異なっている。したがって,技術を論ずるには,その定義を明確にする必要がある。そこで,産業技術を「産業として生産活動を発展させるために必要な活動を支えるもので,その背景に技術的な知識・蓄積を必要とするものを包括的に含む」と定義し,二つの視点から実例を参考に考えてみる。一つは,生産活動に沿って技術を分割し,それぞれの領域で論ずることで全体像がとらえられる。その例を日本の製紙産業で検証する。もう一つは,産業が発展するための重要は技術要件を抽出することで,産業の特徴を明らかにし,技術発展に方向性を与えることができる。これにより,他の産業との比較で製紙産業の特徴が把握される。
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2008International Pulp Bleaching Conference参加報告

東京大学 大学院農学生命科学研究科 横山 朝哉
王子製紙株式会社 製紙技術研究所 木皿 幸紀,友田 生織
日本製紙株式会社 技術研究所 黒須 一博,勝川 志穂
三菱ガス化学株式会社 東京研究所 吉田  浄
株式会社日本紙パルプ研究所 高木  均      

  2008年国際パルプ漂白会議(International Pulp Bleaching Conference)が6月2日から5日にかけて,PAPTACの主催でカナダのケベック州ケベック市で開催された。この会議は3年に一度,主要国の持回りで開催されている。世界各国から200名程度の参加者を得て,10のセッションで35件の口頭発表(日本から6件)があり,さらに18件のポスター発表があった。酸素脱リグニン,二酸化塩素漂白,オゾン・過酸化物漂白,酵素その他の漂白,色戻り,パルプ物性,漂白排水に関する発表の概要を報告する。
(本文57ページ)


コロナ放電処理を行った紙の表面分析

国立印刷局小田原工場 杉本 和子
国立印刷局研究所 尾崎  靖

  マスキングを施した印刷用紙にコロナ放電処理を行い,用紙の一部だけのぬれ特性を変えた印刷用紙を作製した。この印刷用紙にインクジェットプリンター等で印刷を行うと,インキのドットの大きさを部分的に変えることが可能なため,新たな画像表現方法として期待できる。そして,最適な印刷条件を得るために,コロナ放電処理と印刷用紙の表面改質状態との関係を明確にする必要があった。
  そこで,コロナ放電処理を行った数種類の印刷用紙を,水との接触角,走査型電子顕微鏡(SEM),走査プローブ顕微鏡(SPM),X線光電子分光分析装置(XPS)により観察及び分析を行うことによって,その表面改質メカニズムを考察した。
  その結果,低エネルギーでのコロナ放電処理ではいずれの印刷用紙も,表面における親水性基の生成が表面のぬれに影響していた。しかし,コロナ放電処理エネルギーが高くなると,塗工紙とIJP用光沢紙では表面のバインダー成分の消失による構造破壊が表面のぬれに大きく影響していた。それに対して,上質紙は表面の構造変化と表面における親水性基の生成の両方の現象が同時に進行し,ぬれが大きくなっていた。
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