2008年8月 紙パ技協誌
 
紙パ技協誌 2008年8月


第62巻 第8号 和文概要


QualiFlexTMプレススリーブ
―Voith社におけるスリーブ開発の歴史―

株式会社アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 国内営業部 井崎 洋輔

 Voith社は24年前に,密閉型シュープレス及びシュープレス用スリーブの技術を確立した。シュープレスの登場によってハイスピード化など,抄造過程で求められる様々な要求を実現することが可能となった。また近年のエネルギーコストの高騰化により,エネルギーコストの抑制がビジネス成功の大きな要因ともなっている。
 QualiFlexTMは,独自の製法と多様な素材及び表面仕様で,様々な抄造条件下で安定した脱水能力を実現可能である。2007年末には,シュープレス採用マシンの数は世界中で600以上に達する。Voith社は現在,そのうちの約60%のシュープレスを供給し,約40%にプレススリーブを供給している。
 Voith社はシュープレスの発明当初から,スリーブを要具ではなくシュープレスの一部と認識しており,現在シュープレス及びスリーブを双方とも開発,製作する唯一のメーカーである。Voith本社に設置されている開発・テスト用NipcoFlexTMシュープレスは,抄速30〜3,000m/分,ニップ線圧50〜2,000kN/mでの運転が可能であり,このテストマシンを使用してニップ圧・抄速の変化によるスリーブへの影響,操業中の内部温度の変化等をテストし,さらなるスリーブ品質の改善,様々な操業条件・紙種への最適化を目的に,研究・開発を続けている。
(本文1ページ)


ブラジルのユーカリパルプ

BRACELPA ルードヴィッヒ モルダン

 ブラジルは,技術者の創造性と技術知識のお陰で,50年前に工業スケールでのユーカリパルプとそのユーカリパルプ100%からなる紙を世界に先駆けて世に送りだした。新規な繊維を市場に導入することは,最初は大変な仕事であったが,振り返ってみれば非常に遣り甲斐のある仕事であった。そして,森林研究の投資により,森林生産は2倍になり,ブラジルがこの分野で注目されるようになった。1970年の終わりには,短繊維パルプのマーケットパルプを世界に供給することを狙って,莫大な投資がおこなわれ,最新の製造プラントが設置された。それ以来,ブラジルは生産設備に投資を続け,その結果,ユーカリパルプでは世界一の生産国となり,パルプ全体では世界6位の生産国となった。  
 ブラジルは,先端的な技術開発により,森林技術で有意義な競争をすることを楽しんでいるとさえ言える。そのお陰で,コスト競争力のある高い生産性を得ている。これは,社会性,環境性および経済性の3つの観点から持続可能性の原理に,全面的に合致するものである。
 ブラジル製紙産業が今も発展し続けていることは,最も需要の高いヨーロッパ,それから北米,およびアジアの市場においてブラジルが世界的に認知されていることを反映している。又, 現在の投資プログラムによれば,2003―2012年の間に森林,紙パルプに140億ドルが投資される予定で,その半分は既に投資済みである。  
 我々の植林した森林は生産性が高いので,パルプの他に,木材そのものへの利用や,エタノール生産への利用さえも考えることができるようになった。勿論,我々は木材をパルプに利用することがメインであることを決して忘れるものではない。
(本文6ページ)


ウエットエンドの最適化による抄紙マシンの汚れ対策

ソマール株式会社 技術開発部 但木孝一,朝田知子,川上秀明,春日一孝,黒瀬 茂

 近年の抄紙マシン汚れの原因は,原料事情の悪化や中性抄紙化等の影響で大きく変化してきている。中でもDIP等の古紙の高配合化による抄紙マシン系内への多量の夾雑物の混入は,汚れトラブルの大きな要因になっている。そして抄紙マシンの操業性・生産性向上のためには,この汚れ対策が重要なポイントになっている。  
 これまで弊社では,抄紙マシンの汚れについて化学的,微生物的な分析手法を用い原因物質を特定し,同時に対応薬剤の選定を迅速に行なってきた。古紙由来の疎水性ピッチに対して有効な高機能凝結剤として開発を続けている「リアライザーAシリーズ」と繊維及び填料等の微細成分の歩留り向上に有効な高機能歩留り剤「リアライザーRシリーズ」,「レクサーFXシリーズ」の組み合わせからなるウエットエンド改質システム「アクシーズシステム」は多くのマシンで使用され効果を発揮している。また昨年発表した次世代型ASAサイジングシステム「レグシス」によるサイズ剤定着性の向上は,ウエットエンドの最適化と同時に抄紙マシンの汚れ対策の面で大変重要な役割を果たす。更に上記システムに新規微生物コントロールシステム「キュアサイドシステム」を組み合わせることにより化学的・微生物的両面から抄紙マシンの汚れ対策を大きく改善できる。
(本文15ページ)


紙質に及ぼす紙中填料の影響について

荒川化学工業株式会社 製紙薬品事業部 研究開発部 島本 勝浩

 日本の製紙メーカーの動向としては,世界的な環境保全のための森林資源保護や国際競争力アップのためのコストダウンの観点から,DIPや無機填料の増配を進めている。それに伴い紙中填料は増加し,填料が繊維間結合を阻害することに起因する紙力低下問題を引き起こす。本報では,紙中填料(軽質炭酸カルシウムを使用)が紙質に及ぼす影響を明らかにするために,ESEMによる紙断面の動的観察結果及びPAM系乾燥紙力剤と填料の添加方法を種々変更した紙質評価を行った結果について報告する。  
 ESEMによる紙断面の動的観察結果より,紙中填料が均一に分散する場合,紙の破壊は紙全体で略同時に起こることが明らかとなった。それに対して紙中填料が凝集し局在化している場合,主に填料が集中しているところで紙の破壊が起こっていることが明らかとなった。灰分が存在しない部分での繊維間結合は維持されていた。また紙質評価においては,繊維間結合の阻害の程度を数値化するために,繊維間の相対結合面積の概念を導入し,相対結合面積と裂断長の関係を明らかにした。さらに薬品添加処方の違いによるパルプや填料の凝集状態の違いが紙の相対結合面積に影響を及ぼすこと,また紙の相対結合面積当りの紙力に影響を及ぼすことが明らかとなった。
(本文23ページ)


炭酸カルシウム単独塗料における白紙光沢の発現に関する検討

日本エイアンドエル株式会社 研究所 ラテックス研究グループ 実綿  浩

 近年,高炭酸カルシウム配合化がすすんでいるが,白色度が向上するとともに塗料コストが削減されるが白紙光沢が出にくいという問題がある。そこで今回は,炭酸カルシウム単独系で塗料処方の影響を確認するとともに,ラテックスの影響について検討を行った。  
 今回の検討から,炭酸カルシウム単独系塗料においては,澱粉の代わりにCMCを使用し,さらに固形分を上げることで白紙光沢が改良されることが確認できた。  
 このような塗料においては動的保水性が悪化することから,ブレード刃先での脱水をシミュレートしたところ,ハイシェアー粘度はそれほど高い値にはならなかった。しかしながらブレード刃先での固形分(計算値)が固化濃度と近くなるため,操業面を考えると合成保水剤など動的保水性のコントロールが必要となる可能性がある。  
 また炭酸カルシウム単独のこのような塗料においても,ラテックスの粒子径が白紙光沢に大きな影響を与え,大粒子径化することで白紙光沢が改善されることが分かった。  
 ハイシェアー粘度,動的保水性,白紙光沢のバランスを考慮すると,炭酸カルシウム単独系のこのような塗料において,粒子径が80〜100nmで高官能基のラテックスが有効であると考えられる。
(本文30ページ)


ミクロな相分離構造を形成する表面処方

星光PMC株式会社 研究開発本部 梅内士郎,浜谷英二,茨木英夫,河野宏治

 近年,中性抄紙化と炭酸カルシウムを含む古紙の使用比率の増加が進んでいる。これに伴い,硫酸バンドが減添され,紙中の炭酸カルシウム量が増大してきた。このような状況により,イオン性の相互作用に基づくサイズ性能の発現機構を持つ従来タイプの表面サイズ剤は,サイズ性能を発現し難くなってきている。  
 そこで,我々は紙中硫酸バンドおよび炭酸カルシウムの影響を受けにくい表面処方の開発を行ってきた。その結果,特殊変性ポリアクリルアミド系表面紙力剤(以下,表面PAMと略す)と新規アニオン性表面サイズ剤(以下,新規表サと略す)を組み合わせることで,紙中硫酸バンドおよび炭酸カルシウムの影響を受けにくく安定したサイズ性能を発現可能であることを見出した。  
 本処方のサイズ発現の機構が,表面PAMと新規表サのどのような特性によるのか調べるために,これら表面PAMと新規表サのキャストフィルムおよびスピンコートフィルムを用いたモデル実験を行った。フィルムの光学顕微鏡と原子間力顕微鏡の観察結果から,表面PAMと新規表サの混合フィルムがミクロに相分離した海島状の凹凸構造を形成することがわかった。紙において,この凹凸構造が優れたサイズ性能を発現することが示唆された。
(本文35ページ)


アンドリッツの最新ファイバーライン技術
―特長,実績―

アンドリッツ株式会社 プロジェクト・エンジニアリング部 大久保正広

 連続蒸解装置が発明されてから50年以上経過した。その根幹技術のひとつは高圧フィーダーと呼ぶロータリー式のチップ供給バルブである。ユニークなロータリーバルブであるが,チップの供給システムが複雑であった。アンドリッツでは従来方式から全く異なるチップ供給システム,TurboFeed System,「ターボフィード供給システム」を開発した。蒸解釜に必須の高圧フィーダー,低圧フィーダー,スチーミングベッセルを不要とし,代わりにポンプを用いてチップスラリーをダイジェスターに供給する極めて単純なシステムとした。2002年の1号機以来14基の実績を数える。既設連釜の増産,改造に有効な技術でもある。  
 アンドリッツはLo―Solids蒸解技術を更に発展させ,木釜後半部分を並流蒸解ゾーンとするDFLS Lo―Solids蒸解技術を開発した。これにより,連釜操業はより安定し,釜内洗浄の向上,増産,品質改善などのメリットが得られている。Lo―Solids蒸解法は80基の実績があり,そのうち41基がDFLS Lo―Solids蒸解法となっている。既設連釜の改造にも簡単に応用できる。  
 アンドリッツはDDウォッシャーを用いた漂白プロセスにより,省漂白薬品のプラントも多く稼動させてきている。  
 本報では,これらアンドリッツの最新設備について報告する。
(本文42ページ)


廃棄物固形燃料化技術について

JFE環境ソリューションズ株式会社 環境計画部計画室 野村 卓朗*
*現所属:エンジニアリング本部 CFB技術室 

 都市ごみから高品質のRDF(Refuse Derived fuel)を製造する技術を紹介する。JFEエンジニアリンググループは,国内最大のRDF製造設備をはじめ,23施設の建設実績を有しており,これは受注件数,処理トン数とも業界第1位である。  
 プロセスの特長は,乾燥工程を選別工程の前に行って選別精度の向上が図られていることで,破砕・乾燥・選別・圧縮成形により製造された円筒状の固形燃料は,16,500〜23,000kJ/kgの発熱量を持ち,低水分率,低灰分,高強度で均質な燃料として,各種ボイラーに使用可能である。
(本文49ページ)


高速広幅マシン用サクセスフォーマ

株式会社小林製作所 製紙機械設計部 佐野 秀樹,加藤 育洋

 国際的な競争がますます激化する紙パルプ業界にあって,板紙の生産性と品質を併せて向上させ,競争力を強化するために有効な抄紙機として「サクセスフォーマ」がある。  
 このフォーマは,省エネルギーで優れた品質特性を実現し,国内外で広い範囲の板紙の生産に採用され高い評価を得ている。  
 このフォーマは「K―FLOW」シリーズのヘッドボックスと組み合わされ,フォーミングワイヤ,メーキングワイヤ,トランスファフェルトで構成されており,ヘッドボックスは中速用のエアクッションチャンバ付きと,高速用のハイドロリック型があるが,いずれも特殊設計のタービュレンスジェネレータによって,均一で良好な繊維分散効果が得られる。フォーミングワイヤには各種のフォイルを,メーキングワイヤにはダンディロールとデフレクタなどが備えられており,ダンディロールの効果により,優れた地合を得ることができる。  
 近年このフォーマが中国でも高い評価を得て注目され,理文造紙へライナボード抄紙機として2000年に東莞PM3そして2003年に常熟PM5を納入し,円滑な立ち上がりと優れた製品品質が評価された。 さらに2006年には高速広幅マシンとして,オクトパスストックアプローチシステム付きヘッドボックスを備えたサクセスフォーマが,PM10,PM11,PM13として採用された。PM11は2007年8月の稼動予定である。  
 製品の高品質と円滑な立ち上がりの決め手は,抄紙機本体のみならず,プロジェクトの計画当初から参画し,エンジニアリングサービスとしてプラント全体の設計や,付属機器等について適切な指導助言をおこない,機器の製作や現地工事についても管理を徹底させることであると考えている。
(本文54ページ)


製紙スラッジ焼却灰(PS ash)からハイドロキシアパタイトの合成

愛媛県紙産業研究センター 福垣内 暁*,森川 政昭 リンテック株式会社 京極 昌一, 永島 孝作
愛媛大学農学部 松枝 直人, 逸見 彰男 *現所属:愛媛県産業技術研究所

 四国中央市内の5つの事業所から排出された製紙スラッジ(PS)を電気炉で焼成し,製紙スラッジ焼却灰(PS ash)を得た。得られたPS ashについて,蛍光X線分析装置を用いて化学組成分析を,X線回折法を用いた鉱物組成分析を行った。化学組成分析結果から,いずれのPS ashにもカルシウム成分が含まれており,含有量は,CaO換算で24.5〜36.2wt%であった。鉱物組成分析結果から,これらのカルシウム成分は炭酸カルシウム(カルサイト)であり,PS ash中には,約50wt%以上の炭酸カルシウムが含まれていた。CaOを34.1wt%含有するPS ashを原料とし,リン酸水溶液を加えた後に,沸点維持条件で,アルカリ水熱反応を行い,カルシウムを主成分とするハイドロキシアパタイト(HAP)の合成を試みた。得られた生成物についてX線回折法で分析した結果,HAPとゼオライトAのピークが確認され,HAPとゼオライトを同時に合成することができた。SEM観察により,微結晶HAPとゼオライトAを確認することができた。評価試験として,アセトアルデヒド吸着試験及びメチレンブルーの吸着試験を行った。アセトアルデヒドの吸着試験結果から,原料のPS ashには,アセトアルデヒドの吸着力が弱いが,このPS ashから合成されたHAPにはアセトアルデヒドの吸着能を有する結果を得た。メチレンブルーの吸着試験結果から,PS ashから合成されたHAPにはメチレンブルーの吸着能を有する結果を得た。以上の結果より,PS ashから合成されたHAPは環境浄化剤への利用が可能である結果が得られた。
(本文60ページ)


新世代のカラー欠陥検査装置

オムロン株式会社 ITソリューション事業部 品質ソリューション部  石島 範和,友村  匡

 オムロンは,この度最新のカラー技術を取り入れた“スーパーNASP<カラー>”を発売した。最近はモノクロ検査の検出能力が格段によくなり,従来ではカラー検査でなければ検出できなかったような淡色欠陥もかなり検出できるようになった。しかし,「黒色では不良品にならないような小さな欠陥でも赤色欠陥は検出したい。」「欠陥画像を見て欠陥発生原因をつかみたいが,カラーでないと区別がつかない。」という課題があり,その解決のためにカラー検査へのニーズが高まってきた。  
 本稿では,新世代カラー検査装置“スーパーNASP<カラー>”で取り入れた技術とその特長について紹介する。
(本文64ページ)


ラボの自動化に対する柔軟なアプローチ
―モジュール式全自動紙物性試験機プロファイル/プラス―

テクニダイン社 ポール M. クロフォード
株式会社マツボー 横山 勝彦       

 Technidyne社は2000年より全自動測定システムにモジュール式を採用し,より柔軟でユニークなアプローチを市場に提供している。従来の一体型全自動紙物性試験機の場合,大幅な初期投資費用・サービス費用が掛かる上,故障時や将来のニーズ変更に対応する柔軟性に欠ける面があった。Technidyne社製プロファイル/プラスの場合,各モジュールは単体の試験機として利用できるため,段階的な全自動測定システムの導入を提案できる。更にベースフレームを必要としないため,導入計画の変更やサービス時にも柔軟に対応する。専用のソフトウェアではCDストリップサンプルの測定ゾーン設定や,工場サーバーとのデータベースの共有ができる。  
 本稿では「柔軟性」というキーワードに焦点を当て,プロファイル/プラスの特徴及びその利点,設置事例・導入効果実例について紹介する。
(本文68ページ)


紙製食品容器包装の蛍光物質新検査法の検討

王子製紙株式会社 分析センター 直原孝之*,唐 晨瑩,外崎英俊,宮川 孝*
* 現所属:株式会社日本紙パルプ研究所

 紙を白く見せるため日常的に蛍光染料(蛍光増白剤)が使用されているが,食品添加物としての認可を受けていない蛍光染料は合成着色料の一種として扱われ,食品用器具・容器包装への使用は規制を受ける。検査法は昭和46年5月8日に出された環食第244号である。04年1月7日付けの厚生労働省課長通知で染着pHや判定するための参考事例として蛍光発色の写真が添付されるなどの改善が施され,現在も微アルカリ水で器具・容器包装からの蛍光染料の溶出を調べる検査が行われている。一方,米国,ドイツでは蛍光増白剤の使用が認められており,用途による使用規制が行われている。そのための検査法としてドイツ,EUではEN648法が定められているが,環食第244号法との大きな違いは使用用途が考慮され,乾燥食品が検査対象外となっていることである。  
 我々は海外の動向を踏まえ,安全性が十分に確保され,また海外の規制とも調和がとれた検査法について検討を行った。環食第244号とEN648法の比較検討の結果,環食第244号法では蛍光染料のヘキサ体蛍光染料が検出できない可能性があることがわかった。この問題を解決するため,EN648法をベースに化成品工業協会標準蛍光染料を標準蛍光染料として用い,操作等についても一部変更を加えた修正法を作成した。この方法によれば使用実態に即した食品分類別にきめ細かく対応できると同時に環食第244号法では検出しにくいヘキサ体蛍光染料も検出でき,より安全性を確保できると考えられる。
(本文77ページ)