2008年2月 紙パ技協誌
 
紙パ技協誌 2008年2月


第62巻 第2号 和文概要


紙器加工技術のポイント

共同印刷株式会社 技術統括本部 片山  洋

 最近の環境問題が取り上げられや社会問題となった事や容器リサイクル法制定及び改定などの追い風もあり,廃棄が容易でリサイクル性に優れた紙器が見直されてきた。今回,当社の工程を中心に紙器の製造工程及び加工技術のポイントを紹介して紙器の材料であるコートボール紙などの使用上留意点を述べる。
 1)印刷では紙器加工に主に用いられる印刷方式としてオフセット印刷,グラビア印刷の概要や印刷機の特徴及び加工上の留意点をまとめた。また,紙器加工のポスト印刷機と期待されるフレキソ印刷の概要及び特徴にも触れている。
 また,ニス引き加工,プレスコート加工,ビニール引き加工など代表的な表面光沢法やプラスチックフィルムとの複合するためのラミネート加工法,その他エンボス加工,箔押しなど代表的な華燭加工法を紹介し加工上の留意点をまとめた。
 2)抜き加工機として平台打抜き機及びロータリーダイカッターの特徴の紹介及び抜き加工に使用する抜き型(雄型,雌型)のノウハウ及び使用上のポイントなどの紹介を行い加工上の留意点をまとめた。
 3)貼り加工についてサック貼りを事例として貼り加工の特徴及びその種類についての紹介を行った。
 以上紙器加工の一連の工程を順に紹介するとともに,ユーザー側から見たコートボール紙に望む品質についても述べてみた。
(本文1ページ)


スキット包装機と仕上げ設備について

有限会社ジェイテック 渡部 英之

 平判包装形態の中で250枚,500枚などの単位でクラフト包装する平判包装機は,国内海外問わず普及している。しかしパレットの上に紙を一定量積層された製品をフィルムを使用しないでクラフト紙で包装するスキット包装機は,まだ発展途上にある。フィルム包装に比べ破れやすい紙という素材で,タイト性良く安定した品質で包装できることが,スキット包装機に求められている。環境破壊問題や資源の有効利用活動などにより,スキット包装の分野でもリサイクル可能な紙で包装する機械化は急務となってきている。製紙メーカーによる防湿紙の開発により,フィルムを使用することなく防湿紙だけでスキット包装された製品の流通が可能となった。スキット包装機を導入することにより包装のタイト性が良くなるためバンド掛工程を省いて国内流通させる製紙メーカーもある。スキット包装ラインを帽子包装,反転装置,胴巻包装装置といった形で,工程別で役割分担させる装置にすることにより,工場のレイアウトや仕様に合わせやすく包装能力も向上することができた。また製紙メーカーの省人化計画や設備予算に合わせ安く設備できる特長もある。
 今回は,このスキット包装機を中心に仕上げ設備について紹介する。
(本文7ページ)


平判半自動給紙装置の操業経験

株式会社ピーコム 工務部 仕上課仕上係 不藤  司

 平判包装給紙作業は積層上紙,下紙の除外,不良リームの除外や紙厚の変動等による紙癖に合わせた給紙などオペレーターが介入する要素が多い。特に紙癖はその都度状況が変化するため,紙に合わせた調整が必要となる。カッターマシン紙揃えを例に取っても未だ,紙のコシ,カール等に合わせたオペレーターの技術に頼る部分が多い。ありとあらゆる癖の紙をすべて自動給紙することは非常に難しい。仮に,全てを自動化した場合,装置の多軸化による開発コストの増や生産性の低下が予想された。重労働な上に付帯作業も多く,しかも機械化しにくいパートでありながら,給紙作業を自動化する場合には完全自動化が求められる。これらファクターの為,手の出しにくい設備であったが諸問題をクリアする為に開発した『半自動給紙装置』の開発経緯と操業経験を紹介する。導入後は重労働から解放され,平判製品監視,他付帯作業への従事が可能となっている。尚,『半自動給紙装置』は日本大昭和板紙東北株式会社,株式会社ピーコム,株式会社サーボアームと共同開発した。
(本文14ページ)


最新のロール包装・搬送設備について

伊藤忠産機株式会社 生活産業機械課 芝木 雅史

 今日のロール包装・搬送設備に対する要求は湿気,破れ,汚れなどからの保護のみならず,作業効率,小ロット多品種などシビアで多様化しつつある。それらの要求を満たす為にRCS社はその前身会社から数えて35年以上の長きに渡りロール包装・搬送設備のみに特化している会社である。
 本稿ではRCS社の技術,及び製品を通して最新のロール包装・搬送設備について紹介する。
(本文19ページ)


巻取自動包装機の操業経験

勿来十條紙工株式会社 齋藤 正行

 勿来工場で製造されるノーカーボン紙は,当初,衝撃による品質不良を保護するため,手包装によるダンボールケース詰で出荷されていた。ノーカーボン紙の生産量が増加するに伴い,手包装では間に合わなくなったため,巻取り包装機を使用したストレッチフィルム包装に切り替えた。しかし,最近の環境保護意識の高まりから,ユーザーではフィルムごみの処理問題が深刻化した。そこで,勿来工場では新しく環境にやさしい包装荷材を開発した。新荷材の特長はフィルムレス,再生可能,防湿,耐衝撃性などの性能が挙げられる。さらに,この荷材を用いて,ノーカーボン紙分野では他社に類を見ないフィルムレス包装の自動ラベル貼り付け装置,自動パレット積み装置などを持つ完全自動巻取り包装機を稼動させた。
 本報ではノーカーボン紙の斬新な包装仕様と巻取り自動包装機の操業経験について報告する。
(本文23ページ)


仕上工程における中間倉庫の活用事例と最新技術動向

石川島播磨重工業株式会社 物流システム事業部 大橋  司,菅  洋輔

 スタッカークレーンを用いた自動倉庫システムには保管効率の向上・荷役作業の低減・在庫管理のコンピュータ化などのメリットがある。この特長を生かし,出荷前の製品を保管するだけでなく生産ライン間の中間バッファを自動化・効率化することが可能となる。
 本稿では生産ラインへの自動倉庫システム納入実績から,製紙工場仕上工程への活用事例についてとりあげ,その特徴を紹介する。
(本文28ページ)


GL&V/川之江造機の最新技術
―パルプ製造設備(セレコ,インプコ,他),BTFヘッドボックスシステム―

川之江造機株式会社 矢野順一,岸田幸三,宇多津誠一郎

 日本国内においてGL&V社との技術提携のもと,川之江造機が製作販売を開始したBTFダイリューションシステムは,現在納入実績が8台となっている。いずれも既設ヘッドボックスはそのままに,BTFシステムの導入によりCP化するという改造導入である。改造導入による成果は,CDプロファイルの著しい向上をはじめとした製品品質の向上や製品取り幅を広くする,抄き替え時間を短縮するといった操業効率の向上などに大きく寄与している。ここにその事例を紹介する。
 さらに川之江造機はGL&V社と共に,抄紙機技術だけでなくケミカルパルピングにおける世界の最新技術を取り扱っている。世界的にも極めて知名度の高い2つの技術ブランドである旧セレコ,旧インプコ社の製品の中から,省エネを目的に開発されたセレコツイスタークリーナー,及びハイキューノッター,スクリーンをご紹介する。また旧アーカークヴァナ社の蒸解,パルプ洗浄,酸素脱リグニン及び漂白にまで及ぶ技術を取り扱うこととなった。これらの技術の中から今回は特にコンパクトプレス及び,その前後の設備についてご紹介する。
(本文31ページ)


ストック中の気泡による抄紙工程への影響と超音波によるオンライン測定

日本サブコール株式会社 花岡  健     
サブコール・プロセス社 マッティ ハッキネン

 抄紙工程におけるストック中の気泡が,抄紙機の運転に与える影響は,マシンの高速化,高い製品品質,故紙比率の増加,閉鎖循環水ラインの採用等さまざまな要因により,以前にもまして大きくなってきている。しかし,気泡の原因やそれが与える影響を検証するとき,非常に多くの要因が複雑にからみあっている事実に行きあたる。
気泡量のデータだけで,問題点を検証し,マシンの安定操業や製品品質の向上に役立てることはきわめて困難である。この測定データを,他のさまざまな運転データと比較して検討することで,はじめて役立つデータであるといえる。
 本稿で紹介する,超音波を用いた気泡量測定技術では,安定した連続測定により,オンラインでのリアルタイムデータを提供できる。これまで欧州,北米を中心にこの技術を用いてリアルタイムで連続測定した気泡量のデータと,他のさまざまな運転データとを照合した事例およびそれに対する検討を紹介する。
(本文37ページ)


脱墨パルプ用填料歩留り向上剤

ハリマ化成株式会社 製紙用薬品事業部 技術開発部 稲岡 和茂

 2006年には紙向けの古紙消費実績は699万tに達しており,古紙利用率でも38.1%になっているが,ここ数年はほぼ横ばいで推移しており,環境循環型社会の更なる発展と構築を図るには新しい取り組みが必要な時代に差し掛かってきている。
 印刷用紙には紙の光学特性や印刷適性向上を目的とした,填料と呼ばれる無機粒子(クレイ,タルク,炭酸カルシウムなど)が添加されている。しかし,古紙からインクなどの不要成分を除去し漂白洗浄した脱墨パルプ(DIP)製造工程において,填料はその大部分がパルプから用水中へ脱離し,排水処理を通じて焼却灰になり,廃棄物となっている。弊社では,この製紙会社における排水処理汚泥焼却灰の削減をコンセプトとした研究開発を進め,「DIP用填料歩留り向上剤ハリアップAC」を開発した。これは紙の品質向上を目的とする従来型の製紙用薬品ではなく,“環境改善型”薬品という新しいラインナップの製品である。
 ハリアップACは,一般的な凝結剤や凝集剤に比べてカチオン強度や分子量は低いものの,灰分や微細繊維の歩留りに特化した機能を有する両イオン性高分子として設計している。このため,DIPスラリー中でのパルプへの灰分歩留りにおいて,カチオンまたはアニオンの片方の電荷しか有していない凝結剤や凝集剤に対して,優れた効果を発現したと考えている。また実機においても,本来の設計コンセプトである灰分歩留り効果が確認され,古紙の有効利用と製紙会社での廃棄物削減に貢献できると考えられる。
(本文42ページ)


紙パルププラント用カートリッジ式メカニカルシール

イーグル工業株式会社 営業技術部 高橋 秀和

 紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,水ポンプ,パルプ用ポンプ,各種薬液用ポンプなど,多数のポンプが使用されている。これらポンプの軸封部には,メカニカルシールが標準的に採用されるようになってきているが,取扱いの容易さ,組立誤り防止の目的で,カートリッジ式メカニカルシールが普及している。さらに,ポンプ内に注水しない無注水仕様ばかりか,水を全く使わない無冷却仕様,メカニカルシールが故障した時にも一定期間の使用を可能にした緊急用シール付きカートリッジ式メカニカルシールも開発されている。ここでは,紙パルププラント用カートリッジ式メカニカルシールについて最新の技術動向を紹介する。
(本文47ページ)


欠点検出装置に求められる性能と機能
  ―MaxEye. nextとMaxEye. REVO―

株式会社ヒューテック 営業本部 新製品統括部 杉野 欣伸

 これまで「QCインライン」をコンセプトとして製造工程中の品質状態を検査するとともに,それらの情報を収集・分析することで工程全体の生産性を向上するシステムを提案してきた。今年ラインナップされたMaxEyeシリーズは要望の異なるお客様個々の満足度を更に上げるため「さらに薄いムラ,スジを…」の要望には高感度タイプ“REVO”を,「さらに小さな欠点を…」の要望には高分解能タイプ“CORE”を,そして「もっとリーズナブルな価格で…」の要望にはフレキシブルタイプ“next”を提案する。
 周辺機器も充実してきており光源ではLEDを実用化した。特に照度の均一性を保ち照度を上げる設計,温度上昇を抑え寿命を長くする設計がなされている。また,検査データを有効に活用することにより以後の工程の効率化を図ることができるカッター支援システム,ワインダ制御システムも提供する。
(本文54ページ)


kajaaniWEM及びkajaaniRM3
 ―製紙工程の最先端ソリューション―

メッツォオートメーション株式会社 プロセスオートメーションシステム事業部  
ユッカ ノケライネン,佐藤 武志

 ウェットエンド管理用の最新のモジュラー式の多機能分析器kajaaniWEMと濃度センサーkajaaniRM3について紹介する。kajaaniRM3は,1つのサンプルポイントから連続的な全濃度及び真の灰分濃度測定を実施するスタンドアローン装置である。kajaaniWEMは,抄紙機に対して,世界で初めての総合的なウェットエンドの測定手段(電荷,レドックス,pH,伝導度,温度,濃度)を提供するものであり,1台で最大6箇所のサンプル測定が可能である。その活用とは,最初にRM3を使用して,ウェットエンドにおける全濃度及び灰分濃度を安定させ,これにより,リテンション制御,ウェットエンドの安定化を実現する。次に,パルプ工程,調成工程及びウェットエンドの全ての重要なパルプフローにおいて,WEMを使用して,カチオン要求量とその他の基本的化学反応を測定,制御するものである。
 本稿では,製紙工場における電荷,濃度,濁度及びレドックスのオンライン測定結果,更に濃度制御,電荷制御及び濁度制御の経験について報告する。また,これらの濃度制御,電荷制御をさらに押し進めた多変数制御について,その原理,SC紙用抄紙機における改善レベルの経験について報告し,最後にそれらのソリューションから得られる情報,プロセスの安定性,抄紙機の運転性,使用薬品,人的資源に関する利益についてまとめる。
(本文59ページ)


衛星画像を利用したユーカリ造林地の材積評価

三菱製紙株式会社 経営企画部 桂   徹
東京大学 生産技術研究所 プラナブ J. バルア,遠藤貴宏,安岡善文

 衛星画像による生態系リモートセンシング技術を応用した簡便で効率的な樹木材積計測システムの開発を行った。衛星画像としては中解像度の地球観測衛星(Landsat ETM+)のデータを用いた。Landsatは185kmの幅で地表を走査し,地上分解能30mの精度で,可視域から熱赤外域まで8スペクトル帯のデータを取得しており,1枚の画像で広い面積をカバーすることが可能である。実測データとして,過去4年間に造林地の標準地(約11ha毎,面積0.02ha)において実測した材積(単位面積当たりの材容積)を用い,標準地と同位置の衛星データと相関を検討した。
 衛星データから導かれる比葉面積指数(SLAVI)が,材積と相関の高いことが判明し,両者の回帰式(R2=0.64)を用いて衛星画像データから材積を推定することが可能になった。2004〜2005年に伐採した造林地について,衛星画像による推定値と伐採後の実材積を比較した結果,実用上十分な精度(R2=0.87,RMSE=2,972m3)の得られることが明らかになった。また,回帰式を使い,衛星画像データを材積に変換することにより材積を空間的な分布図としてとらえることが可能になった。分布図は成長が劣った部分を特定する上で有用であり,施肥,改植等の対策を検討する上で重要である。また,分布図をもとに標準地の設定を最適化することで,実測作業の効率化を図ることも可能になる。
 過去の造林地の材積データと中解像度衛星画像を利用することにより比較的安価で簡便な材積計測システムを組み立てることができた。将来,造林地における二酸化炭素吸収/固定量算定システムへと発展させることも考えている。
(本文70ページ)


TOF―SIMSによるパルプ樹脂成分の紙表面へのブリード現象分析

王子製紙株式会社 分析センター 東 洋渡,中村桐子,尾松正元

 “ブリード”とは,樹脂高分子中の低分子量成分が,内部から表面に滲み出る現象をいい,プラスチック等では良く知られた現象で表面物性に大きな影響を与えるといわれている。我々は,紙の表面物性が,経時または製造条件により変化することに着目し,パルプシート加熱時における物性変化の原因のひとつにパルプ樹脂成分(直鎖脂肪族)の繊維表面へのブリードがあることをSPM,XPSによる表面分析で推定した。本研究では,SPMやXPSに比べて,成分情報の多い表面分析装置TOF―SIMSを用いて加熱による紙表面の成分変化を分析してブリード成分の特定を行った。また,一度ブリードが発生した表面からブリード成分を除去したあとで,再加熱した場合にブリードが再現するかどうかについて実験を行ったので,それらの結果について報告する。
 TOF―SIMS分析結果は,アカシアUKPを原料とする手すきシートにおいて,80℃以上の高温環境下でパルプ樹脂成分がパルプ繊維表面へブリードすることを示した。主なブリード成分として,CH3(CH2)22COOH,CH3(CH2)24COOH,CH3(CH2)26COOHの3成分が特定された。これらの成分は,有機溶剤で表面から除去できるが,再度80℃以上の高温で加熱すると再びブリードが起こることもわかった。一方,有機成分全体量は,環境温度の上昇により徐々に減少するが,パルプ主成分であるセルロース,リグニンは環境温度に影響されることなく安定していた。
(本文82ページ)