2007年8月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2007年8月


第61巻 第8号 和文概要


プレスパート改造と省エネ型プレスロール

三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部 伊澤 明峰
                    広島研究所 谷本 光史

 近年,CO2の排出に伴う地球温暖化といった環境問題は日増しに深刻となって来ており,さらに原油価格の高騰が追い討ちをかけ,製紙産業においても省動力化及び高効率化をはじめとした各種の取組みが積極的になされている。弊社では,これらニーズに対して,抄紙機の中でも駆動動力の占める割合が高いプレスパートにおいて,ロール内部の潤滑油の攪拌動力に注目した動力低減型プレスロールの開発を進めた。一方,抄紙機の高効率化(断紙低減)対策として,プレスでの搾水性能向上を狙った改造,即ちシュープレスの採用が加速されているが,これは反面,@改造範囲の増加 A工期の拡大 B天井クレーンの改造 C駆動動力の増加等の欠点も少なくない。この様な背景から,弊社ではお客様の事情に合わせて,よりコンパクトで改造範囲が狭く,比較的安価に適用が可能なミニシュープレスをシュープレス化改造提案として取り揃えている。
 本稿では,ミニシュープレス及び省エネプレスロールとして開発した排油パン付きMHシュープレス―Cロールの特徴を説明し,実機適用例及びその効果についても紹介する。
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フォイト(Voith)社の新しいR&Dセンター
 ―ライフサイクルパートナーシップ―

アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 抄紙機技術部 泰井  修

 近年,世界中で高速広幅の最新抄紙機が次々とスタートアップし,スピードレコードを塗替えてきている。これら最新抄紙機の新設では事前にテスト抄紙機での高速運転時の品質確認が欠かせない。Voith社では世界中の製紙会社各社の高度な要求に答えるため今年5月に新しいR&Dセンターを完成させた。新しいテスト抄紙機はギャップフォーマー,タンデムシュープレス,シングルティアドライヤで構成され,高速運転に対応したオープンドローのないレイアウトとなっている。最高抄速は次世代の抄紙機をにらんで3,000m/minである。
 ここではこのVoith社の新しいR&Dセンターを紹介する。この紹介を通して製紙会社,関係会社の方々がVoith社の新しいR&Dセンターに興味を持っていただければ幸いである。Voith社では新しいR&Dセンターのテスト原質機,テスト抄紙機とともに旧R&Dセンターのテスト塗工機,クレフェルドにあるR&Dセンターのテスト仕上機をあわせてトータルで製紙技術の革新に取り組んでいく。多くの製紙会社,関係会社の方々がVoith社のR&Dセンターでのテストに参加していただけるよう期待している。
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ウェットエンドの最適化
 ―メリットをもたらす持続的プロセス―

BTG Mutek ローランド・ビァガー,ダニエル・ヴェーツィグ
スペクトリス株式会社 BTG事業部 石原 健一

 生産性や紙質を大幅に向上させるのは,システマティックで持続的なプロセスです。製紙工程のウェットエンドについても,まさに同じことが言えます。多くの戦略的添加物が導入されて,機械の操業性や紙質に影響を与えています。同時に,自動制御を利用しない製紙工程の領域はわずかしかありません。この文書では,Papierfabrik Palm社のEltmann工場で,ウェットエンドの制御を改善した古紙ベースの新聞用紙抄紙機に関する2つのケーススタディを紹介します。
 3年前には,280,000t/年(トン/年)のPM3における電荷制御が最初の目標でした。2003年のTAPPI Conferenceで発表した文書では,電荷制御を実施する方法を段階的に説明し,プロセスに対するメリットについて詳しく述べています。
 PM3で凝結剤制御を確立した後,技術者は歩留,脱水向上,およびガス含有制御システムを導入しました。その過程について,正しい測定技術の選択から,プロセスへの実装,そして最終的にはさまざまな薬品のクローズド・ループ制御まで詳しく説明します。また,実現時間,薬品削減,および費用対効果分析についても評価します。
 PM3のトータルシステムが稼働すると,技術者は完成したソリューションをPM1(工場にあるもう1台の古紙ベースの機械)に適用しました。2台の製紙機械における運用コストの削減と製品品質の向上によって,Palm Eltmann工場の生産能力は強化され,厳しい競争市場で成功を収めています。
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有機高分子凝結剤のピッチ低減効果について
 ―マイクロピッチの不活性化による抄紙系内の安定化―

ハイモ株式会社 湘南研究センター 境 健自,藤本貴洋,古塩弘行,小野元輔

 ピッチトラブルを防止するために,凝結剤を用いてマイクロピッチ(ピッチ発生の原因となるミクロン単位の物質)を,成長,粗大化させることなくパルプに定着させ,抄紙系外に排出する方法が有効である。
 我々は以前,マイクロピッチの分析および凝結剤の評価法として,「マイクロピッチの画像解析法」および「フィルム吸着法」を提案した。そしてその評価法で,異なる性質の凝結剤はピッチへの選択性,作用の仕方が異なることを示した。また,異なる性質の紙料に対しては,それぞれ適切な凝結剤を選定する必要がある。
 本報告では,イオン性,分子量,疎水基と親水基のバランス等を制御することにより合成した数種のピッチコントロール用有機高分子凝結剤が,それぞれ異なる粘着物封鎖力,イオン封鎖力,凝結・凝集力を示すことを報告する。これら凝結剤を,紙料の性質,ピッチトラブルの種類,目的に応じて適切に使い分けることにより,多様化する抄紙系内の安定化に寄与できるものと考える。
(本文18ページ)


種々のシーケンスによるECF漂白後のユーカリパルプの白色度低下について

エカケミカルス株式会社 クリスチャン・ブロム,ジリ・バスタ,マグヌス・ビョルクルンド,
               トーマス・グレシク,坂本宗男

 三種類の酸素漂白ユーカリパルプを使用し,標準的なECFシーケンスD(OP)Dn Dを基準として,前段をD*,A*D,もしくはZに変更したシーケンス及びそれぞれのシーケンスの最終段をPに変更した八つのシーケンスで漂白を行い,各シーケンスでの薬品必要量,漂白パルプの性状,排水性状及び白色度低下を比較した。特に白色度低下に焦点をあて,叩解前後並びに乾燥及び湿り状態双方での白色度低下を検討した。
 標準的なDシーケンスと比較してD*前段もしくはA*D前段の導入により漂白薬品消費量(OXE)をそれぞれ5―17%及び16―24%節減できた。Z前段の導入ではオゾン添加率が低い場合は漂白薬品消費量が増加し,かつ目標白色度に達することが困難であった。漂白薬品消費量は使用したパルプにより異なっていた。
 乾燥状態での白色度低下では前段の違いによる差は小さかった。白色度低下は叩解により変化したがシーケンス間の差は見られなかった。湿り状態では最終段でのD段の使用が白色度低下を減らすのに最も効果的であることがわかった。湿り状態での白色度低下と最終パルプ中のHexA含有率との間には明らかな相関がある。エカケミカルスの改良Dシーケンス(エカD―D法)では高温処理を使用しなくても二酸化塩素ベースで乾燥状態と湿り状態の両方での白色度低下を減少させられることがわかった。乾燥状態と湿り状態での白色度低下の評価は,前段の選択,最終段の選択,及び叩解の効果について異なった結果と異なった結論が得られた。また乾燥状態と湿り状態での白色度低下の間には一般的な相関関係はなかった。
(本文24ページ)


アンソニーロス自動スパウトクリーナ

アンソニロスカンパニー 技術部 ケン・ピンゲル,ダン・ヒギンズ
ノースウッド パルプ アンド ペーパ カンパニー 回収プロセス イプ・トレヴァル

 アンソニーロスでは,カナダにあるノースウッドパルプ社に初めてスメルトスパウトクリーナシステムを販売納品致した。ノースウッド社はこのスメルトスパウトクリーナの開発とテスト段階から参加し,この度およそ3ヶ月の期間でNo.1回収ボイラーにプロトタイプシステムの導入と運転評価を行った。
 この装置は,自動でスパウトのトラフと取り口を効率的な動作により清掃する。このスパウトクリーナの設計にあたりアンソニーロスは,長年の自動ポートクリーナの設計ノウハウをベースに,クリーニングランスの移動方式,折り畳み式のアーム設計,又スパウト床での移動性の高い構成などの特徴ある機能装置の実現を図った。
 クリーニングの動作や周期は調整可能で,対象ボイラの特性や運転状況に順応できる機能を実装し,さらにアラーム通報やカメラ監視などの運用管理機能も備えている。
 この論文では,本自動スメルトスパウトクリーナの開発経緯を述べ,又現状の各装置の動作と特徴を設計方針とともに公開する。テスト段階の終端として,ケーススタディとなるように回収ボイラーでの適用設計図や写真も記載した。
(本文32ページ)


軽質炭酸カルシウムと高アスペクト比顔料のシナジー効果について

株式会社イメリス ミネラルズ・ジャパン 本間 太郎
イメリスピグメンツフォーペーパーヨーロッパ ベニー ハラム,クリス ナットビーム

 近年の各製紙メーカーによる新しい塗工紙の開発にとって,顔料も重要な役割を占めている。これまでに我々が開発したシェイプエンジニアードカオリンは,まさしく塗工表面に与える被覆性や光沢の発現性により紙に付加価値を持たせることのできる顔料であり,洋紙・板紙問わず広く用いられている。また塗工紙が優れた表面特性を持つことは紙の品質にとって非常に重要であるが,しばしば高価な顔料の使用が必要となる。現在製造コスト削減が急務な中,このような高価な顔料,特に二酸化チタンやプラスティックピグメントなどを低減し品質維持するような顔料または顔料配合は,製紙メーカーにとって力強いツールとなる。よってどのような顔料特性が塗工構造とパフォーマンスに影響するかを理解すること特に顔料配合カラーにおいては,顔料自体の本当の価値を理解するために必要不可欠である。
 本稿では顔料配合における特性の変化について,粒子の細かさとスティープ性を兼ね備えた塗工用軽質炭酸カルシウム(PCC)の塗工紙に与える影響と,PCCと粒子形状に特徴のある微粒高アスペクト比カオリンContour Xtremeとの配合によるシナジー効果が塗工層に与える影響を光学特性,特に白色度,不透明度,光沢の面から検証を行った。
(本文38ページ)


自己診断機能を有する次世代pH計測
 ―メンテナンス軽減の提唱―

メトラー・トレド株式会社 渡辺 泰生

 製紙工場内の各プロセスにおいて正確なpHの計測制御を実施するには,定期的な電極の洗浄,校正あるいは電極交換などのメンテナンスが不可欠である。また,これらのメンテナンス作業を実行するのに伴い,現場では次のような
 @ メンテナンスのために,プロセスの流れや操作を一旦停止する必要がある。結果的に「ダウンタイム」が増加する。
 A 作業環境によっては事故につながる危険性が潜んでいる。「安全性」が損なわれる。
 B 作業環境によっては作業員のモチベーションが低下し,メンテナンス作業がおざなりになる。結果,pH計測制御の精度が低下し,薬品使用量の増加,製品の品質低下などにつながる。
などのことが起こっている。
 メトラー・トレド社はpH電極のメンテナンス作業は必要なときに簡便かつ短時間に済ますことができる画期的なpH電極を開発した。この電極は自己診断機能と使用履歴の記録を有しており,メトラー・トレド社特有の「着脱式ホルダー」を組み合わせて使用することにより,メンテナンスのための「ダウンタイム」をゼロにすることができる。ここでは新型pH電極の概念と,実際の紙パルプ製造プロセスにおいてメンテナンス作業を劇的に低減させたpH計測制御システムの例を紹介する。
(本文44ページ)


予察型の防虫管理

アース環境サービス株式会社 開発部 黒田 芳弘

 製紙工場の防虫管理のレベルアップを効率的に達成するためには,欠点検出機での内部クレームの活用が有効である。欠点検出機のデータは時間単位でデータを分析することができるため,製造作業所内の昆虫モニタリングにつても,一ヶ月単位のデータ分析でなく,時間単位の分析を実施することが望まれる。リアルモニタリングシステムは,捕虫器での虫の捕獲を時間単位でカウントし,シートシャッターやマンドアの開放回数や時間を定量評価することが可能である。そのため,リアルタイムシステムを導入し,データの相関分析を実施することにより,リールやワインダーなど重要工程での虫の混入原因を絞り込むことが可能となる。
(本文48ページ)


紙パルププラント用メカニカルシールの技術動向と蒸解用メカニカルシールのエロージョン対策事例

イーグル工業株式会社 営業本部 営業技術部 高橋 秀和

 紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,水ポンプをはじめとして,パルプ用ポンプ,各種薬液用ポンプなどの多数のポンプが使用されている。これらのポンプの軸封部には,省エネルギ,省資源,省メンテナンスなどの経済性追求及び環境保全の目的で,多数のメカニカルシールが採用されている。また,攪拌機,スクリーン,リファイナ他,多種多様の回転機の軸封部にも採用されるようになっている。それらの中でも蒸解用メカニカルシールは,紙パルププラントにおける最初の工程で使用され,故障がプラントの稼働率にも影響しかねないので,特に重要である。これらは,使用条件が過酷であるばかりでなく,サンドエロージョンによってメカニカルシールのシールリングやメカニカルシールカバーが損傷することが時々発生する。ここでは,蒸解用メカニカルシールの故障・対策事例を紹介する。
(本文54ページ)


塗工紙の光沢に対する表面構造の影響

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 見門秀幸,滝川敬朗,鈴木由紀子,平林哲也

 印刷用コート紙において,白紙光沢と印刷光沢は重要品質となっている。本研究では,キャスト紙からマット紙,微塗工紙までの表面平滑性が大きく異なるコート紙について,表面構造の調査を行い,白紙光沢と印刷光沢の要因解析を行った。
 コート紙の表面構造を考えたとき,印刷光沢と白紙光沢に影響を与えるパラメーターは,表面凹凸を構成する微小平面の傾斜角と,表面顔料層の顔料粒径と考えられる。特に,微小平面の傾斜角は,曲平面の微分値で表すことができると予想される。そこで,コート紙表面層の微分値および顔料粒径と,印刷光沢および白紙光沢との関係を調査した。その結果,以下のことが明らかになった。
 印刷光沢について,同一インキを用いて比較した場合,印刷光沢と印刷面微分値の平均値と高い相関を示した。これは,印刷光沢が印刷面の凹凸を構成する微小面の傾斜角のバラツキに依存するためである。また,印刷面の凹凸について,主要因は,印刷前の白紙面の凹凸であり,副要因はインキ層の凹凸である。このインキ層について,A2マット紙では表面凹凸に影響を与えないが,A2グロス紙,A3グロス紙,微塗工紙,白板紙では表面凹凸を緩和し,キャスト紙では表面凹凸を強化・形成すると考えられる。
 モデルコート紙の解析結果から,白紙光沢は,白紙面の微分値平均値と表面顔料層(表面塗工層)の顔料粒径とで決定された。これは,白紙光沢が,表面凹凸を構成する微小平面の傾斜角のバラツキと,表面顔料層の散乱光強度に支配されるためと考えられる。
(本文65ページ)