2007年6月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2007年6月


第61巻 第6号 和文概要


2006年度フォローアップ結果とエネルギー関連情報

日本製紙連合会 稲田  治

 日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め,積極的に活動している。その中の1つである地球温暖化対策目標は2004年11月に改定した次の2項目で,1990年度を基点とした実績についてフォローアップ結果を毎年公表している。
 @ 2010年度までに,製品当り化石エネルギー原単位を1990年度比13%削減し,CO2排出原
    単位を10%削減する。
 A 2010年までに,所有または管理する国内外植林面積を60万haに拡大する。
 2005年度実績は,省エネルギー投資に加え,化石エネルギーから再生可能エネルギーおよび廃棄物エネルギーへの燃料転換投資により2年連続して大幅改善され,化石エネルギー原単位は86.5%で目標を若干上回り,CO2排出原単位は90.8%で目標に近づいた。また,今後の各社の投資計画を踏まえて2010年度を試算した結果,化石エネルギー原単位とCO2排出原単位ともに目標を達成できる見通しである。
 一方,植林面積の推移も順調で2005年度末で国内外合わせて536千haで目標の89%となり,達成は問題ないと考える。
 併せて,日本におけるエネルギーバランス,紙パルプ業界のエネルギーバランス,全産業のCO2排出量およびそれに占める紙パルプ産業の位置づけとともに,関連法律情報も報告した。
(本文1ページ)


回収ボイラーEP灰溶解液省エネルギー型脱塩素分脱カリウム分装置紹介
 ―回収ボイラー電気集塵機捕集灰(EP灰)の溶解液より塩化物イオン及びカリウムイオンを除去する
  装置のエネルギー消費に関する考察―

日本錬水株式会社 機能品事業部 岡村 恒則

 クラフトパルプ製造における蒸解薬品回収工程において,原料チップから混入した塩素分,カリウム分が,回収工程循環プロセス内で徐々に蓄積・濃縮されることが知られている。黒液中に濃縮されたCl,およびKは,同工程の回収ボイラー内において,燃焼灰の溶融温度を低下させ,燃焼ガスに同伴し,過熱管等に付着し,燃焼ガス通路を閉塞させ,ボイラーの操業を阻害すると共に,熱効率の低下や,高温部位の腐食速度を増進させることが問題提起されている。このため,多くの回収ボイラーにおいては,過熱管等に付着した溶融灰を蒸気スーツブローにより飛散除去すると共に,本来黒液に再溶解し回収されるべき燃焼ガス電気集塵機補修灰(EP灰)を一部系外に抜き出すことにより,回収工程内に蓄積・濃縮されたCl,K濃度を調整している。しかしながらこのEP灰の系外廃棄操作により,チップ蒸解に有用なNa,Sも同時に廃棄するため,薬品ロスを生じる。 
 本発表は,平成17年・第9回省エネルギーセミナーにおいて,北越製紙株式会社新潟工場殿,片岡陽一氏より講演発表頂いた,北越製紙株式会社新潟工場殿と弊社により共同開発し,平成16年1月より,同新潟工場殿に実機を導入頂き,稼働している,『イオン交換樹脂法・脱Cl脱K装置』の省エネ事例を,特徴とするイオン交換樹脂による,「Cl」分離,「K」除去原理を紹介すると共に,その有効性を省エネルギーの観点から,考察するものである。
(本文13ページ)


スクリーンLP化による省エネ事例

王子板紙株式会社 松本工場 西田 厚志

 古紙を再生利用して,古紙パルプを生産する原料工程には,特に大きなエネルギーを消費するパートとして3つのパートがある。それは,離解工程のパルパー,精選工程のスクリーン,叩解工程のリファイナーの各パートである。エネルギー多消費型の紙パルプ産業においては,省エネルギーを積極的に推進し取組むことが,コスト低減に繋がる大きなポイントとなる。
 松本工場の原料工程は抄物により多少の違いはあるが,大きく分けて表系,表下系,中裏系の3系統に分かれる。今回,取組んだLPスクリーンは処理量の最も多い中裏系の精選スクリーンを低動力型スクリーン(LPスクリーン)に改造して省エネを図るものである。LPスクリーンに改造する考え方としては,通過効率のアップ(処理量アップ)が図られることにより,スクリーン台数の削減,ローターの周速低下,付帯機器の削減による省エネ効果を得るところにある。松本工場では既に,C―bar化により周速低下対策を実施していたため,スクリーン台数の削減をして省電力を図ることとして取組んだ。結果としては,2台のスクリーンで運転していたのを1台での運転が可能となり39kWの電力削減効果を得た。
 これにより,二酸化炭素排出量を169.4T/年あまり削減できた。またスクリーンリジェクトの濃度を比較した所,改造後は濃度が低くなっており,希釈水の使用が中止でき,LPスクリーンのプレート表面原料の均質化効果を確認した。今後も,更なる省エネを目指した取組みを継続して行く。
(本文19ページ)


モデル駆動型PID制御によるボイラ主蒸気安定化と省エネルギー

日本製紙株式会社 藤山 道博      
東芝三菱電機産業システム株式会社 江木 博志,重政  隆
東芝ITコントロールシステム株式会社 小島 文夫

 わが国は,1997年京都で開催された気象変動枠組条約第3回締約国会議(COP3,京都会議)の温室効果ガス削減に関する京都議定書(Kyoto Protocol)に基づき,省エネルギーを法制化し推進している。これを受け,産業界は省エネルギーに向けたさまざまな努力を行っている。
 エネルギーコスト高騰のなかで,比較的安価な石炭の使用量は,特に工場のボイラでは増加している。石炭炊きボイラは,ガス炊きや重油炊きボイラに比べ,燃料輸送から燃焼,更に蒸気発生までに係わるむだ時間が長いので,主蒸気圧力や主蒸気温度が変動しやすい。もしこれらの変動幅を小さくすることができ,運転限界値に余裕があるなら,主蒸気温度設定値を上昇させることにより,タービン入口の蒸気エンタルピを上昇することができ,エネルギー効率を向上させることが可能である。
 モデル駆動型PID制御(MD―PID)は,むだ時間の長い制御対象に良好な制御性能を示しており,既にいくつかの実績が出ているが,今回発生蒸気量が440t/hの微粉炭炊きボイラに適用し,予想通り良好な結果を得たので報告する。
(本文24ページ)


段古紙処理ラインにおけるパルパーの省エネ事例

レンゴー株式会社 八潮工場 製紙部製紙課 堀川 健也

 レンゴー株式会社八潮工場は首都圏に立地し,都市近郊の資源リサイクル拠点として循環型経済社会に貢献し得る,都市型の製紙工場としての更なる飛躍を目指している。05年生産量約77.8万tの当工場では,5台の抄紙機が全機稼動すると抄造銘柄によっては,電力と蒸気の消費バランスが変わり,エネルギー効率が低下して原単位が悪化した。この状況を改善するために,日産820tの中芯専抄の1号抄紙機において生産量に上限設定をし,1号抄紙機に使用しているパルパーを1台停止する事にした。これによりエネルギー効率は良くなり原単位は改善されたが,この状態を維持しさらに1号抄紙機の生産性回復のために,既存パルパーの能力増強と省エネの取り組みを開始する事となった。
 本稿では,これまでに行なった3台の20尺パルパーにおけるボークスローターのボルテックローター(相川鉄工梶jへの入替えと,3台のうち1台の20尺パルパーへのバッフルプレート(蟹HI・フォイト)設置による処理量増加と省エネの実績について報告する。3台の20尺パルパーで大きな省エネが得られ,今後も20尺と27尺パルパー各1台へのボルテックローター導入及びバッフルプレート設置の計画を進めている。
 レンゴーでは「エコチャレンジ009」を制定し,省資源・省エネルギーの取り組みを行っている。その中の省エネルギー目標に関しては,「2009年度までに全社のCO2排出量を1990年度比12%削減する」として掲げ,達成に向け取り組んでおり,今回の省エネ事例がCO2排出量の削減にもつながり,地球温暖化防止対策の一環として貢献しているという事を世の中に認知してもらい,紙パルプ産業界の推進に少しでも役立てればと考えている。
(本文32ページ)


省エネ発掘チームの活動について

日本製紙ユニテック株式会社 技術・調査支援室 高橋  啓

 「省エネ発掘チーム」は日本製紙ユニテック梶@技術・調査支援室に属し,日本製紙鰍P2工場を対象に省エネ推進を目的とした活動を行なっている。
 チームは2004年12月に発足した。今後,日本製紙グループとしての省エネ推進にあたって,機動性のある外部機関に発掘業務の一部を委任したということも発足の背景にある。人員は原動・環境部門担当1名,原質・抄造部門担当1名の計2名での活動となっている。
 活動の中心は1回/年の全工場訪問・打合せで,問題提起・情報紹介・具体的提案など1工場約30件のテーマについて,その実現性を打合せ,確認し,省エネ計画に寄与することである。2005年度,日本製紙全体の省エネ計画における省エネ発掘チームの貢献度は約8%であった。
 本稿では,石巻工場での発掘事例を中心に,その活動内容を紹介する。
(本文38ページ)


ファイバープロパティーズ/多次元ファイバー特性
 ―紙の品質について―

BTG Pulp and Paper Sensors AB バーティル・オルソン
スペクトリス株式会社 BTG事業部 前川 卓彌

 本論文は,紙の特性を定義するパルプ繊維の様々な特性をオンラインによりリアルタイム測定する利点を説明すると共に,パルプ単繊維特性にも基づくパルプ繊維特性を特徴づける利点を従来の手抄きによるラボ測定と比較して考察する。
 今日の最新技術に基づく次世代分析装置による知識と制御アプリケーション用の新ツールの組み合わせによる,繊維品質の最適化を図る監視制御システムを提示する。これは,生産コストの削減と品質のさらなる安定化の両方による付加価値をもたらす。
(本文43ページ)


最新技術による抄紙機ドライヤの走行改善と乾燥能力向上

メッツォペーパー社 カリ・ユッピ
メッツォペーパージャパン株式会社 エンジニアリング本部 結城 幸一

 既設抄紙機を改造する場合の目的は主として生産量の向上又は品質改善にあり,多くはウェットエンドのみ改造し,ドライエンドの改造は行わない。これによって今度はドライヤが生産又は品質向上のボトルネックになることがある。ここでは走行性と乾燥効率向上のための新しい方式について紹介する。初めに新しい走行改善機器について紹介し,その効果と紙の品質についてパイロットテスト機と実機の運転結果を記載する。次に紙及び板紙に適用する新しいインピンジメントドライヤコンセプトを紹介する。
 高速抄紙機に於いては乾燥工程の初期に於いて走行性の問題を起こすことがあり,その高いドローによって紙の品質低下を引き起してしまうことがある。ドローを低くするには通常,効果的なブローボックスの設置によって行われるが,シリンダドライヤ入口での紙のドライネスを高くする方法もある。つまり温度の低い紙が温度の高いシリンダドライヤ表面に接触する前に,インピンジメントドライヤを適用することで行われる。新しく開発されたインピンジメントドライヤはプレス直後に設置されシリンダ入口でのドライネスを向上させている。従って紙のドライネス,温度が上昇することで紙の強度は向上し走行性は従来よりも良好となる。
(本文49ページ)


微弱線源を用いたガンマ線密度計・レベル計

ナノグレイ株式会社 宮下  拓

 製紙工業で現在,放射線障害防止法上の許可や届出を必要とする放射線源を用いた厚さ計,レベル計,レベルスイッチ,密度計が使用されている。2005年6月に放射線障害防止法の改正があり,許可や届出を必要とする線源の強度が引き下げられ,放射線管理がさらに厳しくなった。一方,一定レベル以下の微弱線源を用いた機器の内,認証を受けたものについては,主任者の選任・管理区域の設定が不要という「設計認証制度」が新設された。
 今回,我々は上記設計認証に適合した微弱線源を用いたレベル計TH―1000,レベルスイッチTH―2000,密度計PM―1000を開発した。これらは弊社の技術陣が有する10年を越える放射線計測技術を用いて最新の検出システムを構築したもので,コンパクトで軽量な検出部・線源部からなる。TH―1000及びTH―2000は,従来の数千分の1の強度の線源(100MBq)を用いながら,約1.5mスパンの(例えば木釜の)レベル計測,約10mスパンの(例えば晒タワーの)レベルスイッチとして使用できる。応答時間は最短0.5秒の設定が可能で,すばやい制御ができる。PM―1000も従来の数千分の1の強度の線源(3.66MBq)を用いながら,±0.4%(2σ値)の精度で密度を計測でき,黒液,緑液,炭カル,ホワイトカーボンなどのスラリー濃度の計測に使用できる。20〜350Aの配管で直管部長さが約220mmあれば既設配管に簡易に取付可能であり,接液部が全くない完全非接触なので,メンテナンスフリーである。5年間無償保証。配管表面温度180℃まで使用でき,防塵・防水性能はIP66準拠である。
(本文57ページ)


製紙工場で使用される軸受について

シェフラージャパン株式会社 産機HI営業部 大崎 邦男

 INA社は,FAG社を吸収合併し,Schaefflerグループを形成し,軸受の総合メーカーとして,軸受製品の製造,販売,技術サポートを行っている。製紙機械プラントでは,多種類の回転設備が使用されておりこれら回転設備を効率的かつ理想的に回転させるため,軸受に特殊な要求がされることが多い。
 弊社は総合軸受メーカーとして製紙機械,特に抄紙機に使用される軸受を数多く手掛けてきた実績があり,ここ数年の間にドライヤー,カレンダー,スプレッダロール,シュープレス等に使用される特殊軸受を開発した。
 本報では,4つの特殊軸受に的を絞り,
 @ ドライヤーロールで高温化時に発生するアキシャル方向の熱膨張,そしてロール同士の押付け荷重で
    発生する撓みを合理的に吸収する機能を備えたSACR(Self Aligning Cylindrical Rolling bearing)
 A カレンダーロールの撓み補正ロールで発生する,両端軸受の滑り現象を解決したASSR(Anti 
    Slipping Spherical Rolling bearing)
 B 回転部分の軸受メンテナンス時に必要となる歯車,カップリング,モーターシャフトなどの取付け・
    取外しを省略できる2つ割自動調心ころ軸受
 C スプレッダーロールに要求される,高速回転,長寿命,グリース長寿命を独自の設計,製造技術に
    より満足させたハイブリット軸受
 について説明を加え,その技術的特徴あるいは予想されるメリットについて述べる。
(本文61ページ)


次世代検査装置に求められる性能と機能

オムロン株式会社 営業統轄事業部 ITソリューション事業部 宮本 晃成

 初期の頃のシート表面欠陥検査装置は,欠陥を検出すれば単純にブザーやランプでそれを知らせ,欠陥個所にマーキングをするだけのものであった。その後,欠陥位置や大きさ,種別名などの欠陥情報が加わり,オムロンが1988年に開発した欠陥録画システムも,今ではあるのがごく普通の機能となった。さらに,FCSやWCSのように,検査データを次工程に伝送することにより,次工程の生産性向上や製品管理も行うようになってきた。 また,現在ではパソコンやネットワーク技術の進歩と汎用化により,大容量の欠陥画像も扱えるようになった。その結果,検査データの情報量が飛躍的に大きくなり,その存在価値もさらに大きくなったといえる。このように,シート表面欠陥検査装置は製紙工程におけるソリューションの核に位置付けられてきた。そのシート表面欠陥検査装置に対する市場環境の変化の中で,オムロンの“次世代検査装置”の性能と機能を,とくに検査性能と信頼性向上の機能という観点から紹介する。
(本文65ページ)


共焦点蛍光顕微鏡を用いた塗料沈み込みの観察

日本製紙株式会社 商品研究所 平井 健二        
メイン州立大学 ダグラス バウスフィールド

 塗工層の品質や塗工の効率性は,支持体への塗料沈み込みによって大きく左右されるが,塗料沈み込みを調査する手法は限定されている。共焦点蛍光顕微鏡(CLSM)と画像処理を組み合わせることにより,非破壊で塗工層が分析可能な手法の開発を試みた。
 塗工層厚みの測定に関し,従来手法の走査型電子顕微鏡(SEM)と本手法を比較した結果,両者の傾向は一致し,本手法の有意性が確認された。また,本手法では塗料中に蛍光染料を添加することにより,水系成分の原紙への浸透が分析可能であることが示唆された。
(本文74ページ)