2007年3月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2007年3月


第61巻 第3号 和文概要


メーカ講演にあたって,計装30年の歩み

紙パルプ技術協会 自動化委員会

 自動化委員会は,1968年に設立され,その活動の主力であるこの大会は1976年に「第1回紙パルプ計装成果発表会」として開始された,その後「計装ショー」が同時開催され1981年に現在と同じ大会名である「紙パルプ計装技術発表会」となった。今回の紙パルプ計装技術発表会のテーマは,この30回の記念大会として「進化する計装システム,その歴史と将来」と題し,主要計装機器ごとに各メーカからの講演を計画した。これからを担う計装技術者を対象に,諸先輩方が築かれた計装の歴史を知ってもらい,さらにこれからの計装の進むべき方向と新技術,将来の計装のあるべき姿について考えていただく講演になれば幸いである。
 また,この機会にあわせて計装メーカのご協力のもと「紙パルプ計装技術年表」を作成したのであわせて掲載する。
(本文12ページ)


進化するQCS,その歴史と将来

ハネウェルジャパン株式会社 プロセス・ソリューション事業部 紙パルプ部 中村  哲

 QCS,クオリティ・コントロール・システムは約40年前に開発され現在では抄紙機,塗工機,スーパーカレンダーなどの製造・加工工程の要所,すなわち紙の品質管理が必要とされる操業現場で多く使用されるようになった。現在は坪量,水分の計測のみならず厚み,灰分,カラー,光沢,その他操業者が必要とする品質を計測可能なセンサーが開発されて現場にて使用され,品質や生産性の向上,原料,エネルギーの節約などに貢献をしている。
 本稿ではQCSの起源と現在のQCSの働きと動向,そして顧客の声を元にサプライヤーとしてどのようなものを開発することが操業者の方々のお役に立てるのかを考え将来の展望として発表したい。
(本文23ページ)


進化するDCS,その歴史と将来

横河電機株式会社 PAソリューション部 中原 正俊

 DCS(Distributed Control System)は,パネル計器の置き換えや,DDC(Direct Digital Controller)を分散化したシステムとして登場した。その創生期においては,あらゆるプロセス産業の顧客での厳しい評価やフィードバックを受けて成長し,プロセス産業にとって必要欠くべからざる設備のひとつとしての地位を確立した。この間のコンピュータの技術進歩は著しく,オフィスの作業環境は一新されたが,DCSの基本的なアーキテクチャは変わっていない。これは,DCSがその出発時点で,必要とされる機能を高度に抽象化し,組み込んでいた証といえる。現在,会社の生産活動はひとつのシステムとして捉えられるようになった。会社の中にあるあらゆる機能は,会社全体の利益への貢献をその存在意義として評価されるようになった。当然,DCSに期待される役割も,単なる制御装置の枠を超え,工場の運転を担う重要なプラットフォームとして進化することが求められる。
(本文28ページ)


進化するWIS,その歴史と将来

オムロン株式会社 営業統轄事業部 ITソリューション事業部 中田 雅博

 弊社として30余年の事業の歴史と約2,500台納入させていただいた,その歴史の概要と現在における“スーパーNASP”の特徴について述べる。
 要求スペックをいかに実現していくかは世の中の技術の進歩とユーザ様のご支援によるものがベースにある。本文では“WISの歴史と将来”を技術あるいは要求スペックをキーワードあるいは,その狙いがご理解いただけるように記載している。また,将来について紙の生産ラインの特質である高速・連続24時間稼動などそのWISへの期待レベル高さに対して課題と一般的に言われている生産ラインの発展の方向性を見据えながら記載している。“スーパーNASP”を軸に将来へ向けて弊社の方向性とユーザ様の期待とでWISが発展していくものと考える。
(本文33ページ)


進化するMES,その歴史と将来

東芝三菱電機産業システム株式会社 
産業第一システム事業部 産業システムソリューション部 永井 泰樹

 MES(Manufacturing Execution System)とは,工場における生産管理レベル(生産システム基幹系)と各工程での設備・機器レベルとの中間に位置する製造現場での情報システムである。具体的な機能としては,作業指示作成から実績データ収集,品質管理,文書管理,設備保全管理などが挙げられる。本稿では,まず,そのMESの変遷について,紙パルプ工場内で構築されてきた実施例をプロコン時代のシステムからミルワイドシステム思想を取り入れたシステムまで説明する。
 また,MESの最新技術の紹介として,アプリケーションソフトを開発・構築する方法としてWebアプリケーション技術を取り上げる。この技術の特長として,@ OS等のプラットフォームに依存しないMES機能のアプリケーションソフトを構築することで,極力,アプリソフトの作り直しを低減し,長期にわたって使用することができる,A クライアントPCのメンテナンスの簡素化が可能,等を示す。
 最後に将来の姿として,RF―IDによる現品管理の確立,アプリケーション構築の面からSOA(Service Oriented Architecture)について言及する。
(本文37ページ)


進化するフィールド機器,その歴史と将来
 ―流量計測に着目した技術イノベーション―

株式会社山武 アドバンスオートメーションカンパニー 
IPマーケティング部 野沢 文峰

 差圧発信器は,汎用性の高い工業計器であり,古くから製造プロセスに数多く使用されてきた。当初は空気式が主流であったが,その後電子式へと移行し,さらに80年代に入り,アナログ式から,デジタル式へと発展していった。これにより,メンテナンス性,操作性,安定性などが飛躍的に向上し,小型・軽量化,機能の向上,高性能・高精度化が進められてきた。電磁流量計は1970年代,非常に頑丈・高価な流量計として部分的に適用され,配合器との組み合わせで適用されることもあった。1980年代中盤からのウエハ形検出器の登場による小型化,軽量化が一気に進むこととなり,同時に紙パルプにおけるふらつきのない安定した測定,長期の耐久性,メンテナンス性の向上などが課題となって浮上することとなった。2000年代に入り,差圧発信器や電磁流量計だけでなく,渦流量計,圧力発信器,レベル発信器などに関しても従来の安定性や耐久性などに加えて,フィールド機器には故障履歴や診断,耐久性向上などへの要求などが高まり,求められる仕様が複雑化している。
 本稿では,特にパルプ液の測定に適用されることの多い電磁流量計,およびオリフィスやベンチュリー管などによる蒸気やパルプ液の測定の多い差圧流量計などに焦点を定め,流量計測の歴史と将来の展望に関し述べていくこととする。
(本文43ページ)


モデル予測制御を用いた晒白色度の多変数制御

王子製紙株式会社 春日井工場 施設部電気計装課 川北 真裕
王子製紙株式会社 製紙技術研究所 森  芳立
横河電機株式会社 産業ソリューション事業本部 西村  淳

 近年紙パ業界においてもより一層のコスト削減が求められており,それにつれて制御の最適化の重要性が益々高まってきている。しかし紙パプロセスは本質的な特徴としてむだ時間が大きく,またより厳密な制御の為には多変数入出力を扱う必要もあり,従来の制御システムで最適化まで扱うには困難が大きい。これらを解決可能な制御アルゴリズムとして近年,「モデル予測制御(Model Predictive Control:MPC)」が紹介されており,他業界では既に多くの応用例がある。
 当工場ではN系ECF晒設備においてMPC制御の適用に取り組んでいる。その目的は操業状態を保ちつつ制御を最適化し二酸化塩素添加量削減を実現することである。当工場のN系ECF晒設備は[D1―E/O―P―D2]シーケンスである。まずMPCの有効性を計るため,最終の二酸化塩素晒段であるD2段に適用し,仕上がり白色度の制御に効果があることを示した。さらに経済運転の実現の為に,N系晒プロセス全体のMPCによる最適化に着手した。本報文においてこの取り組みについて紹介する。
(本文50ページ)


ファジィ制御による排水pH制御実施事例

王子板紙株式会社 佐賀工場 大倉 孝之

 王子板紙株式会社佐賀工場は,2系列の排水処理設備を有しており,1系列が古紙処理プラント排水を活性汚泥+加圧浮上で処理し,もう1系列が抄紙プラント排水を活性汚泥+凝集沈殿で処理し,工場西側を流れる福所江川に放流している。
 これらの排水処理設備には,排水pHの調整用にPID制御が7ループあるが,その制御性は決して満足いくものではなかった。一般的にpH制御の中和反応は非線形であり,更に排水プラントの場合は,pH計設置場所の制約によりむだ時間が長く,排水量変化によりむだ時間も変化する。従って,pH制御に時間をかけてPIDパラメーターをチューニングするがその結果は,あくまでもチューニング時の排水プラント状態における代表パラメータを求めているだけで,全てのプラント状態を満足できるものとはなっていない。
 本稿では,このpH制御7ループの内,制御性が悪く,かつ改善要求が強かった2ループにファジィ制御を導入し,排水流量やむだ時間の変動に対して非常に良好な制御性を示し,薬品費削減につながったことを報告し,併せて導入した2ループのファジィ制御の原理について報告する。
(本文55ページ)


DCS老朽化更新における,他社製DCSの採用について

日本大昭和板紙関東株式会社 草加工場 工務部動力課 田中 宏和

 草加工場で最初に導入したDCSは稼働後20年を経過し,メーカーより部品供給や保守期限の問題も提起され,延命対策と平行しシステム更新の検討に入った。
 当初は,予算,工事期間の関係から同一メーカーによる段階的な部分更新を検討していたが,他メーカーより制御ステーションのキュービクルはそのまま残し,内部を入れ替えるマイグレーション方式による更新を提案され検討を行った。その結果,外部配線を取り外すことなくシステム全体の更新が可能になることや,工事が短縮できることで比較的短時間で切換が出来ると判断し実施に踏み切った。
 他社によるマイグレーションということで不安もあったが,入念な現場調査と打合せを重ねた結果,予定期間内で切替え工事が終了し,ループチェックを経て順調に操業に入ることができた。
 本稿ではマイグレーションの具体的な更新事例について報告する。
(本文60ページ)


コンピュータ室の環境改善によるDCSの延命化

大王製紙株式会社 三島工場 電気計装部パルプ電気課 三木 靖博

 三島工場では,DCS(分散型制御システム)を基板が故障しても操業への影響がないように制御制御コントローラ2重化のシステム構成としており,更に事故防止のためにコンピュータ室で温度管理をしてきた。
 しかし,4〜5年前からクラフトパルプ製造設備以外でのDCS故障件数が増加し,修理復旧時間・修理費の増加に現れてきた。設置20年前後のシステムだけでなく10年以内に設置したシステムの故障も目立ってきており,再度DCSトラブル原因調査と対策をメーカーとともに開始した。
 今回,対象設備はパルプ設備で6設備(コンピュータ室・中央操作室・電気室含む10箇所)を調査した結果,3設備で制御装置にダメージを与える厳しい雰囲気環境(総合クラスV)と測定された。その設備の改善に着手し,まだ改善途中であるが中間結果を報告する。
(本文64ページ)


次世代欠陥検出器の導入と性能検証

日本製紙株式会社 石巻工場 動力部 工藤 智義

 紙の用途は多様化し抄紙機も高速・幅広に大型化され,ユーザの品質要求が厳しくなる中で,欠陥検出器も抄造における品質管理と欠陥原因究明のツールとして,無くてはならないシステムの1つになった。
 欠陥検出器はステンレスブラシによる穴検査から始まり,現在の主流となっているCCDカメラを使用した検査器の登場により技術的大転換が図られ,多ビットカメラの採用,録画機能,薄汚れ検査機能強化を経て,現在はデジタルカメラ採用によるオールデジタル検出器として技術的に再転換が図られている時期である。
 欠陥検出器の位置付けは年々重要視されてきており,現在ではQCSと並ぶ抄紙機の最重要付帯装置になっている。
 この様な背景のもと,「より高い検出性能」「より高い信頼性・メンテナンス性」「より高いオペレータの作業性・操作性」をコンセプトとした欠陥検出器の開発をオムロン鰍ニ2005年3月から本格的に行ってきた。
 本稿では,今までのアナログ検出器の弱点の克服と日本製紙からの要求仕様を加味した次世代システムを導入・運用開始したので,経緯と現段階までの性能評価,そして今後の展望について述べる。
(本文73ページ)


5号コーター ゲルビューセンサーの現状と今後の展開

三菱製紙エンジニアリング株式会社 八戸事業所 保全技術部 前村  豊

 八戸工場5号コーターにおいて,BM計システムを05年8月にハネウェル製QCS MX―2002ETシステムを同社製DaVinciシステムへ更新した。
 DaVinciシステムには同社のゲルビューセンサーが接続でき,コーターヘッド後のエアードライヤーでの塗工層の乾燥状態を監視することで流れ方向の乾燥速度,塗工速度の最適化による塗工品質の向上と乾燥エネルギーの削減が期待できることから,06年6月にゲルビューセンサーを導入した。
 本稿では国内でまだ実績の無いゲルビューセンサーの導入経験と設置状況及び今後の展開について紹介する。
(本文79ページ)


2006TAPPI Engineering, Pulping & Environmental Conference報告

王子製紙株式会社 研究開発本部 製紙技術研究所 木皿 幸紀
日本製紙株式会社 研究開発本部 技術研究所 小野木晋一

 2006年11月5日から8日まで,米国ジョージア州アトランタにて,TAPPI Engineering, Pulping & Environmental Conferenceが開催された。本学会はTAPPI主催で2005年からそれまで別々に開催されていた3つの学会を同時開催する形で毎年開催されている。発表内容は,KP,漂白,回収工程,DIP,操業技術,エンジニアリング,シミュレーション,環境技術など多岐にわたり,口頭発表110件,パネルディスカッション5件,ワークショップ4件と様々な講演が行なわれた。本稿では本学会および発表の概要を紹介する。
(本文84ページ)


高品質苛性化軽カルの開発(その2)
 ―アラゴナイト結晶の生成挙動―

日本製紙株式会社 技術研究所 金野晴男,南里泰徳,後藤任孝
日本製紙ケミカル株式会社 江津事業所 高橋一人          
兵庫県立大学 大学院工学研究科 北村光孝

 炭酸カルシウムは,石灰石を粉砕して製造する重質炭酸カルシウム(重カル)と,人工的に炭酸ガスの吹き込み法等により製造される軽質炭酸カルシウム(軽カル)に分類され軽カルは填料としての使用量が特に大きく伸びている。
 著者らは新技術としてクラフトパルプの苛性化工程を利用した高品質軽カルの製造技術の開発を検討した。クラフトパルプ工場の苛性化工程においては,蒸解白液と伴に炭酸カルシウムが副生するが,この炭酸カルシウム(苛性化軽カルと呼ぶ)を製紙原料として用いることができれば,安価な軽カルが得られるだけでなく,キルンの焼成負荷を軽減する事ができる。しかし,苛性化軽カルをより多く填料・顔料に使用するには品質が良好でなければならないが,現状の苛性化軽カルは形態が塊状であるため,填料・顔料としての品質は十分ではなかった。そこで苛性化反応を用いた高品質軽カルの開発を行ない,針状・柱状形のアラゴナイト結晶が得られ,非常に高品質な填料となることを見出した。また,アラゴナイト結晶は塗工用顔料としても白紙光沢発現性・不透明度向上などに効果があることが知られている。しかし,なぜ苛性化反応でアラゴナイト結晶が析出するのかは分かっていなかった。
 そこで本報文で試薬を用いた実験を行ない,苛性化反応でのアラゴナイト結晶の生成挙動について基礎的に検討したところ,白液の主成分である水酸化ナトリウム存在下でアラゴナイト結晶が生成しやすいことが分かった。この事から苛性化反応はアラゴナイト結晶を生成させるのに適した製造方法だと考えられた。さらにこの結果をもとに工場でアラゴナイト結晶を高純度で安定的に製造するために緑液を用いた検討も行なったところ,緑液でもアラゴナイト結晶を高純度で生成できることが分かった。
(本文90ページ)