2007年1月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2007年1月


第61巻 第1号 和文概要


プレスロール用溶射皮膜「KX ROCK」の創造技術

倉敷ボーリング機工株式会社 田尻登志朗,峪田 宜明,荒川  進

 製紙業界では,生産性向上のため抄紙機械が大型・高速化し,それにともないプレスパートでは,搾水用のプレスロールに耐久性と安定性が求められるようになる。その結果,天然資源である花崗岩を用いた「ストーロール」からセラミックへとプレスロール表面材質が転換した。
 弊社では,いち早く,この製紙業界のニーズに応えるためプレスロール用セラミック皮膜へ溶射技術を適用し,「KX ROCK」溶射皮膜を開発し,現在まで,100本以上のプレスロールを国内外を問わず製紙メーカへ納入させて頂いている。
 花崗岩ロールの代替品としてのプレスロール用セラミックス皮膜には,安定操業を達成するための機械的強度,耐摩耗性あるいは耐食性が要求されるとともに,製造紙の品質を向上させるために,ロール表面への粘着物が付着しない非粘着性や最適ドロー特性,いわゆる良好な“紙離れ”性が絶対条件となる。
 弊社が開発した「KX ROCK」溶射皮膜の最大の特徴は,天然花崗岩と同等あるいはそれ以上の“紙離れ”をその表面に有することである。優れた紙離れ性は,セラミックの材料選択,溶射条件,機械加工による表面性状調整によって達成される。その結果,ドロー特性が飛躍的に向上し,抄紙機械の安定操業に貢献することが可能となった。加えて,「KX ROCK」皮膜は,耐摩耗性と耐食性にも優れ,長期間のメンテナンスフリーを達成し,ロールを長寿命化することでランニングコストの削減でも評価されている。
 そこで,本報では,弊社における「KX ROCK」溶射皮膜の開発過程で得られた知見と実機でのその効果について紹介する。
(本文36ページ)


既設PSスクリーンのID化
 ―最新型スクリーンとしての再生と大幅な省エネルギー―

相川鉄工株式会社 技術本部 金澤  毅

 最近のスクリーン技術の進歩は目覚しく,急速に従来技術を陳腐化させてきている。一方,これらの最新技術は,従来型スクリーンを再度,最新型に生まれ返らせる手法の一つとして注目されている。その代表的な技術が,2005年度の日本紙パルプ技術協会,佐々木賞の栄誉を頂戴した,PS―ID改造と略称で呼ばれる技術である。この技術は,弊社の最新スクリーン技術の三要素,@省エネ型USOローター,Aウエッジワイヤーバスケット,B希釈分散機構付きバスケットの組み合せからなっている。この驚異的な省エネ効果は単に,一つの要素だけから成り立っているものではなく,これら三要素の相乗効果によるものである。
 代表的な使用結果では,既存PSスクリーンの改造例において,従来の標準的な動力原単位の実に75%を削減(1/4に低減)することができた。更に,粘着除去の改善,操業性の向上など,広く高い評価を頂くことのできた技術である。さらに,この技術開発を通して,超省エネルギーのスクリーン,MaxFlowが誕生した。
 本稿では,これらの技術についてその概要をご報告する。
(本文42ページ)


嵩高紙 ―日本製紙の挑戦―

日本製紙株式会社 技術研究所 越智  隆

 紙需要で最も多い市場をもつ印刷・出版用紙においては1996年をピークに縮小傾向にあり,厳しい環境下にある。このような状況において,日本製紙は嵩高軽量紙を積極的に開発・上市し,その販売量を大きく増やしている。
 嵩高軽量紙とは,軽くても紙厚のある紙,即ち同じ紙厚では従来の紙より軽く出来る点に大きな特徴がある。このため木材パルプの使用量が少なくて済むなど省資源にもつながり,単に品質的に軽いという位置づけではなく,今後,一層重要となってくる環境保全への取組みに貢献することが出来る省資源紙との位置づけで積極的に開発を進めている。単純に坪量を減じれば品質も低下する。また,特に上質系の紙では嵩高な機械パルプ配合も難しく,各種軽量化技術が必要である。嵩高軽量化のために填料面,薬品面での検討が行なわれてきた。従来填料配合は紙の密度を上げる方向であったが,形態や粒径を適正にした軽質炭酸カルシウムでは密度への影響が小さい,あるいは密度を下げる。更に,製紙薬品では嵩高化薬品が開発されている。これは繊維間結合を阻害要因であり,配合により紙の強度が低下する。従来,このような薬品の使用はされてこなかった。嵩高軽量紙開発にあたっては,従来の常識では難しかった技術をいち早く導入し,また設備面でも改良を進めてきた。この結果,日本製紙では非塗工紙から塗工紙,またキャスト紙までこの嵩高軽量紙をラインナップ可能となった。これら嵩高軽量紙は品質面だけでなく,環境面からも大いに貢献出来る製品であり,今後も積極的に開発を進めていく。
(本文50ページ)


ライナー原料パルプ中の粗大粘着異物の定量的評価

日本大昭和板紙株式会社 生産技術部 技術研究所 矢口 忠平

 ライナー原料パルプ中の粘着異物量は,@ライナー表層への古紙増配,A使用古紙の低グレード化,B段ボールへの粘着剤加工品使用量増加,C段ボール古紙のリサイクルに伴う蓄積,により増加傾向にあると考えられる。粘着異物に対する様々な対策も講じられてきているが,粘着異物が品質及び操業性の阻害要因となっている抄紙機もまだ多く存在している。ライナーを始めとした板紙の抄紙機において,粘着異物対策が未だ十分進んでいない一因として,その定量的評価法が確立されていなかったことが挙げられる。
 古紙パルプ中に含まれる粘着異物はその大きさに基づき,微細粘着異物と粗大粘着異物とに分類される。両者は,それぞれ様々な形でトラブルに関わるが,当社のライナー抄紙機における経験からも,粘着異物に起因するトラブルには,粗大粘着異物がより深い関わりを持っていると考えられる。粗大粘着異物の定量的試験規格としては,ISO15360にPart1:目視法,Part2:画像解析法(ISO画像解析法)がある。しかし,これらの試験方法に従うと,段ボール等の板紙を原料とした古紙パルプには,精選処理後でも多くの未離解片,結束繊維,非粘着異物が残るため,これらが障害となり分離される粗大粘着異物は一部にとどまってしまう。そこで,ISO画像解析法を基に,未離解片,結束繊維,非粘着異物を多く含む板紙原料パルプであっても,粗大粘着異物の分離が可能となるよう改良を行った。そして,この改良法により,ライナー抄紙機の原料処理工程における精選スクリーン及び高濃度処理機による粗大粘着異物の除去・分散について評価を行ったので,その結果を報告する。
(本文54ページ)


ECF漂白パルプの褪色防止について

王子製紙株式会社 研究開発本部 製紙技術研究所 河江 綾乃,内田 洋介

 ECF漂白LBKPをベースとした酸性紙の熱湿褪色機構について調査すると共に,その機構を利用した褪色抑制方法について検討した。調査の結果,ECF漂白LBKPをベースとした酸性紙の熱湿褪色は,LBKP中に含まれるヘキセンウロン酸が原因物質であり,熱湿条件下で酸加水分解により2―フランカルボン酸あるいは5―ホルミル―2―フランカルボン酸に転換し,重合あるいはパルプ中の酸性糖と反応して着色物質を生成し,褪色することがわかった。前記2種のフラン化合物の反応阻害による褪色抑制方法について検討した結果,クエン酸,リンゴ酸,等のカルボキシル基を複数持つ化合物の添加が有効であることがわかった。
(本文59ページ)


高品質新聞用紙の優れた印刷効果について

日本製紙株式会社 技術研究所 河崎 雅行

 中性抄で炭酸カルシウムが高配合であることを特徴とした高品質新聞は,当社の全工場で従来品からの切り替えをほぼ完了した。これまでの市場評価から断紙,紙粉など印刷作業性に関しては従来品と同様に問題のないレベルであることを確認している。これに対して,印刷品質に関しては従来紙に比べ「裏抜け」をはじめ「網点再現性」,「色再現性」などカラー印刷での品質面で高い評価を受けている。これらのカラー印刷面の品質は光学散乱性の高い炭酸カルシウムを填料として高配合していることが寄与していると考えられた。本報告では,高品質新聞の特徴および印刷適性について紹介するとともに,とくに従来紙に比べカラー印刷で優れた印刷効果を発現するメカニズムの解析結果について説明する。
(本文63ページ)


ワインダー支援システムの操業経験

中越パルプ工業株式会社 能町工場 工務部 大河内哲弥

 近年,紙面欠陥に対するユーザーの品質要求は高まるばかりであり,欠陥検出器の感度を上げ欠陥の数が増える方向にある。一方ではマシンの高速化はますます進展している。この状況の中ワインダー工程の能力向上が強く求められている。ワインダー作業の中で欠陥処理方法については大きな変化がなく,人に頼る部分が多くワインダー作業にロスの発生する一因となっている。
 今回,欠陥位置停止のドライブ制御に対して,前工程で紙端にインクジェットプリンターにより印字した距離情報をワインダーでCCDカメラにより読み取り,自動で補正して欠陥位置で正確に止めるシステムを導入した。この結果,ワインダーにおける欠陥処理作業について人に頼っていた部分に自動化がなされ,ワインダーの処理能力が向上した。この方式は紙の巻長が変化しやすい塗工紙工程では特に有効であろう。現在,ワインダーの能力向上はスピードのアップや巻取取卸作業の短縮で図られているが,当システムもこの一助となっていくと思われる。
(本文68ページ)


バイオマスボイラーの操業経験

東海パルプ株式会社 原動部動力課 牧田 陽介

 当社島田工場は,紙・パルプの製造を主とするもので,製造過程において多くの電力と熱を利用する。このため,これまでは,電力をタービン発電機及び水力発電による自家発電と中部電力鰍ゥらの購入により賄い,熱については重油ボイラー,回収ボイラー及び廃棄物ボイラーによって賄ってきた。しかし,必要なエネルギー消費を可能な限りバイオマス燃料等の新エネルギーに転換し化石エネルギーの利用を削減することがCO2排出量の削減とエネルギーコストの削減となる。このため,バイオマスボイラーの設置を計画し,2005年5月より木質チップを主燃料とした11号ボイラーと5号タービン発電機の建設工事を開始し2006年1月に完成した。
 本報告では,2006年2月より本格運転を開始したバイオマスボイラーの概要と,これまでの操業経験について報告する。
(本文72ページ)


材質改良に向けた育種戦略

王子製紙株式会社 研究開発本部 森林資源研究所 佐藤  茂

 王子製紙(株)では,「森のリサイクル」として2010年度までに植林面積30万haを目指し,ユーカリ属等の早生樹を中心とした海外植林事業を積極的に展開している。現在のユーカリ植林事業では,実生苗を中心とした植林が主流であるが,最近は成長や材質の良いいわゆる優良木のクローン植林が行われ始めている。今後,ユーカリクローン植林が主流となってきた場合,天然木や実生由来植林木と比べ比較的均質な原材料木を得ることができると考えられることから,成長量だけでなく材質の育種もますます重要となってくる。
 材質(容積重やパルプ収率,木繊維性質等)は,植林事業と製紙において大変重要な要素であるが,多くの植林事業で使用されている優良木は,ほとんどが成長性を指標に選抜されものである。したがって,必ずしも材質面で全てが優れているわけではなく,容積重やパルプ収率が極端に悪い植林木や,極端に繊維長が短い植林木の存在が,植林現場や製紙工場で問題となっている。
 このような状況の中で,当社では成長性だけでなく材質も優れたユーカリ優良木の作出を目的とし,材質を指標にした育種に様々な形で取り組んでいる。本稿では,当社が取り組んでいるユーカリ植林木の材質改良「材質育種」を目的とした2つのアプローチ(優良木間の人工交配と遺伝子組換え研究)について紹介する。
(本文79ページ)


仕上工程省力化の歩み

北越紙精選株式会社 カッター第2課 中村  弘

 近年,製紙業界において仕上工程の省力化は大きな課題とされ,各社とも機械化や組織の再構築等で推進してきている。カッター,平判自動包装機,巻取包装機等は装置が進歩し,設備投資による生産性の向上は一定の成果をあげている。しかし,仕上工程の中で,不良紙の混在した平判を,女性を主とした作業員で検査・選別して製品とする工程は最も省力化しにくい工程として残っている。弊社は20年来「工程間品証活動」と称する意識改革により,この工程の省力化に取り組んできた。各種センサーの発達により,抄紙機にて欠陥を正確に検知してマーキングすることが可能な時代である。各工程で欠陥を適切に処理することにより,検査・選別を廃止することは充分可能となった。
 弊社での,検査・選別作業を廃止するまでの歩みと,その効果についての経験を報告する。
(本文84ページ)