2006年8月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2006年8月


第60巻 第8号 和文概要


エンバイロスキャン™とフェルトビュー™を用いた効果的なプレス部の操業管理

フォイトペーパーオートメーション株式会社 内河 英臣 
フォイトペーパーオートメーションGmbH. & Co. KG  R.ミュラー

 ワンニッププレスの構想が現実的になってきた。この構想に基づき,ヨーロッパの製紙工場Ruzomberokではすでに1,400m/minの速度でコピー紙を生産している。
 この構想を実現するためには関連する周辺機器や抄紙用具,特に湿紙とフェルトの特性等をオンラインで熟知する必要がある。その為に開発された湿紙の水分と湿紙温度のプロファイル測定装置,エンバイロスキャン™とフェルトの透気度,水分,温度プロファイル測定装置,フェルトビュー™を生産ラインに採用している。
 本稿では,プレス構成,乾燥度のデータ,エンバイロスキャン™及びフェルトビュー™によるプレス部の効率的操業管理などを紹介する。
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板紙用MJフォーマ初号機スタートアップ
―Hamburger社 Spremberg工場 PM1―

三菱重工業株式会社 紙印刷機械事業部 永野 明仁
                   広島研究所 増田 和彦

 製紙産業において益々激化する生産効率化と品質差別化に貢献すべく,当社では高速安定性と優れた紙品質との両立を実現するMJシリーズを2001年度にリリース,今日までに各パートでの成功を収めてきた。
 板紙向けフォーマに関しては,昨年の紙パ年次大会において板紙用新型MJ―Formerの特長及びテスト機による検証結果などを紹介し,@大径サクションフォーミングロール,A高開口率デザインのフォーミングシュー,B位置調整が容易な“コントロールド・ブレード”などの特長により,安定運転及び原料性状に見合った紙強度物性を引き出すことが可能であることを述べた。
 本報では,その初号機として本年4月より稼動した欧州Hamburger社Spremberg工場PM1についてMJ―Formerを中心にその結果概要を報告する。本M/Cは予定より一週間早くスタートアップし,その直後から商業生産に入っている。現在,Brown Gradeは稼動2ヶ月で設計抄速に達し,品質についても概目標値をクリアしており順調な稼動状況にある。
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濃度調整型ヘッドボックスの操業経験

王子板紙株式会社 佐賀工場 中里  覚

 王子板紙佐賀工場5マシンは,1985年にハイスピードウルトラフォーマー(5層抄き)を導入したが,増速に伴い,ヘッドボックス流量が設計流量を超え,幅方向のBDプロファイルに悪影響を及ぼし,リッジ(ドラム缶ジワ)の問題が顕在化した。この問題を解決すべく,1997年より計画的にヘッドボックスを更新し,2002年にはマイクロロッドによる幅方向BDプロファイル調整装置付のヘッドボックスを導入した。そして今回,最終段階として,濃度調整型ヘッドボックスを導入することとした。
 濃度調整型ヘッドボックスの導入により,BDプロファイルで最大48%,キャリパープロファイルで最大25%向上した。さらに,紙替時間を1回あたりの平均で2.4分,抄出時間を平均で3.8分短縮することができた。
 本報では,5マシンに導入した濃度調整型ヘッドボックスの概要,これまでの操業経験と導入の効果について紹介する。
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高効率洗浄機「ゼクー」の開発と操業実績

株式会社大善 秋山紗衣子,井出丈史,與田 清

 近年の古紙処理技術は,当社が最も得意とするニーディングによるパルプ化が主流になっており,この技術により古紙パルプの品質が飛躍的に向上している。古紙パルプ工程の洗浄機としては,横型ドラムの「タイゼン式濃縮洗浄機」が,平成11年度に日本紙パルプ技術協会より最も栄誉のある佐々木賞を受賞している。
 現在,製紙業界において,引き続き古紙の有効利用や品質向上のための技術発展が望まれる中,古紙の軽量コート紙の増加とUVインクの増加及び完全には取り切れていない粘着異物等が古紙処理設備の工程で問題となっており,将来的にもますます古紙処理パルプの品質の向上が困難になっていくと考えられる。そのための対策として当社では,軽量コートのクレー分の洗浄機による除去,ニーディングでのUVインクの微粒形状化による洗浄とフローテーションでの除去,ニーディングでの粘着異物の粒状化によるスクリーンでの除去等の方法を考えている。
 その中の一つとして,我々は更なる古紙パルプの品質向上のための濃縮洗浄機が必要であると考え,繰り返し追求と開発を重ねてきた。その結果,遠心力脱水,揉み作用,乱流,高効率の置換洗浄の組み合わせによる高い洗浄機能を備え,横型ドラム洗浄機の約1/2程度の低清水使用量,簡易化された作業性とメンテナンス,幅広い用途等の有益な特徴を持つ縦型分離・洗浄機「Zekoo」を開発するに至った。
 本稿ではこの新しい濃縮洗浄機について,操業実績を含めて紹介させて頂く。
(本文19ページ)


製紙用モニタリング装置について

FAG インダストリーサービス株式会社 製紙・鉄鋼部 オリバー・マッサ

 旧来の保守の概念は,火事が起こってから火を消すという発想であり,これは損害が発生した後で対策を講じることであり製紙業界にとって最善の方法とは言えない。製紙産業の目標稼働率は95%以上と高いので稼動期間内でのシャットダウンは許されることではなく,この結果,作業者は有ってはならない危険な操業を場当たり的に行ってしまい,結果的に予定外の操業停止に追い込まれてしまう。
 モニタリングによる保守では現時点あるいはある期間内で装置の運転状態が把握できれば,差し迫った損傷のシグナルが有った時点で部品を交換することが可能でき,そして残された部品の寿命を充分に利用することが出来る。今日,多くの作業者がオフライン用モニタリング装置を使用し,個々の機械の振動を決められた間隔で測定し,その結果をデーターコレクターに集め,それから機械の状態を確かめるために測定値を解析している。
 オンライン用モニタリングシステムでは,ドライヤーセクションのように危険で近づくことが出来ない測定箇所には,恒久的に組み付けたセンサーを使用する事により,小刻みなデーターの収集が可能になり,しかもこの装置によってモニタリングデーターの継続的な使用ができるようになる。また,極々初期の破損あるいは運転状況の変化が非常に早い段階で発見することが出来るようになる。これは保守にとって最善の方法であり,高い信頼性を得る事ができ,結果として起こった原因の分析と適切な対策を取った場合,製紙機械のダウンタイムを効果的に減少させる事ができる。
(本文25ページ)


板紙抄造系における硫酸バンドを削減したトータルウェットエンドシステム

ハリマ化成株式会社 製紙用薬品事業部 瀬崎 崇生,吉本 康秀

 製紙業界では近年,地球環境問題に対する配慮が必要不可欠になる一方で,収益改善を目的とした合理化,コストダウンを余儀なくされており,製紙工程の環境が急激に変化している。板紙に着目すると,雑誌古紙の配合比率が増加するなど原料事情が変化し,抄造系への炭酸カルシウムの混入量が増加する傾向にある。そのため,抄造系のpHが上昇し,それを抑えるために過剰な硫酸や硫酸バンドを使用している現状がある。また,石膏スケール問題が頻繁に発生したり,電気伝導度が上昇し内添薬品の効果が低下したりするなどの弊害が生じている。
 このような状況の下,板紙において硫酸バンドを削減しながら,いかに有効に使用するかを模索することが今後重要となる。硫酸バンドを減少するだけではデメリットも生じるが,トータル処方としてのウェットエンドシステムを適用すれば,それらのデメリットを解消できるだけでなく,相乗効果による品質向上が見込まれる。本報では硫酸バンド量を削減し,地球環境への配慮,品質向上,生産性の向上といった現代の板紙抄造が抱える課題を同時に解決することができるトータルウェットエンドシステムについて紹介する。
(本文29ページ)


ウエットエンドの最適化による環境負荷低減

ソマール株式会社 製紙薬品技術部 但木孝一,朝田知子,加藤美穂,黒瀬 茂

 近年,製紙業界では生産性,操業性,品質の向上だけでなく地球環境への配慮が大きな課題となっている。そのため抄紙系内では,工場排水に起因する環境への負荷低減のためのクローズド化が急速に進んでいる。また地球資源及び環境面から古紙配合率が高まり,抄紙系内のピッチ成分やアニオントラッシュ等の夾雑物が増加している。このように抄紙条件は,年々厳しさを増しており,ウエットエンドでの各種薬剤の本来の効果を発揮するのが難しくなっているため,これまでに無い高機能な薬剤が必要とされてきている。
 弊社では,厳しいウエットエンド条件下で各種添加薬剤の効果を最大限に引き出すために高機能化した凝結剤として,ウエットエンド改質剤「リアライザーAシリーズ」を開発してきた。更に微細繊維や灰分の歩留りに効果的な高機能な歩留り剤「リアライザーRシリーズ」,「レクサーFXシリーズ」の開発にも最新のポリマー合成技術を導入して取り組んできた。これらの最新の薬剤から構成されるウエットエンド改質システムが「アクシーズシステム」である。更に長年に亘り培ってきた抄紙工程でのスライムコントロール技術を集約した微生物コントロールシステム「キュアサイドシステム」を構築し,ウエットエンドのトータル的な最適化を検討している。これらは,最小限の添加量で最大限の効果を発揮し,同時に各種ウエットエンド添加薬剤の削減も可能であるため環境負荷低減に貢献できるシステムである。
(本文38ページ)


紙用低密度化剤
 ―マスクートシリーズ―

日華化学株式会社 研究開発本部 スペシャリティケミカル開発部 紙パルプグループ  
友田裕一,田中多加志,向川陽一

 近年,嵩高紙と呼ばれる低密度化してある紙が登場し,書籍用紙や板紙等多くの用途で使われている。嵩高紙とは,嵩の出るパルプを多量に配合したり,嵩の出る薬品や填料を添加したりして,低密度化した紙の事をいう。
 日華化学はサイズ付与型のカチオン系低密度化剤の開発を先駆けて行い,マスクートK―300を市場に投入した。マスクートK―300は,低密度化作用の他にサイズ付与,不透明度・白色度向上,柔軟性付与などの紙の改質効果がある。また,操業での発泡性が低く,ピッチトラブルが少ないなどの特徴がある。また,当社ではカチオン系低密度化剤にこだわり,更なる低密度化の性能向上を求めて開発を行っている。これまで,カチオン系低密度化剤はエマルジョンが主流であったが,固体のカチオン系低密度化剤マスクートKF―2000を開発したので,その特徴と応用例を報告する。
(本文47ページ)


欠陥検査システムのデータ管理とオープン・アクセス

コグネックス株式会社 SISD 営業部 黒崎  篤

 コグネックス社の欠陥検査システム「SmartView(スマート・ビュー)」は,Windows PCサーバを中心としネットワークでオープン化されている。OPC/ODBCや独自のソフトウェア・ツールを利用して,各工程・各セクションにおいて必要な検査データを自由に取り出し活用することができる。例えば,@欠陥種類や位置情報に基づきワインダーを自動停止させる,A加工部門において小巻ロールごとに欠陥情報を編集する,B品質管理部門において欠陥のトレンドやプロファイルを解析し発生原因を解明する,など。欠陥検査システムの持つ豊富な情報をいかに活用していくかの視点から,「SmartView(スマート・ビュー)」が持つ情報技術を説明する。
(本文53ページ)


塗工顔料のアスペクト比と塗工物性―II

株式会社イメリス ミネラルズ・ジャパン 三沢 悦也    
イメリスピグメンツフォーペーパーアメリカズ ラジャン アイヤー

 白紙・印刷光沢,不透明度など,塗工顔料としてのカオリンのメリットがその扁平な粒子形状にあることは比較的古くから知られてきた。粒子が扁平(=アスペクト比が高い)であることで,より被覆性が高く平滑な塗工表面が得られるほか,その塗工層構造は印刷光沢に寄与する。
 低塗工量域において高アスペクト比の顔料(Contour1500)が塗工紙に与える被覆性・光沢の発現性については確認したが,高塗工量域の白紙光沢には,一般的に顔料粒子の大きさが寄与すると考えられているため,顔料の微粒化が進められている。その傾向に対し,Contour Xtremeは新シェイプエンジニアード・カオリンとして,粒子の扁平度および細粒度の調整により印刷光沢および白紙光沢,特に高塗工量域での発現性を改良する目的で設計された。
 ここでは,Contour Xtremeを使って粒子の大きさ・アスペクト比が与える白紙光沢/印刷光沢を含めた塗工物性およびそのメカニズムについて報告する。
(本文59ページ)


視感印刷光沢に及ぼす拡散反射光の影響

JSR株式会社 高分子研究所 渡辺 武,松田信弘,松井 尚

 塗工紙の正反射光沢度測定による印刷光沢と視感による印刷光沢では位置付けを異にする場合がある。我々は,視感印刷光沢を鮮映感と光沢感に分けて検討した。鮮映感は,正反射光沢度と相関が高く,従って印刷表面の粗さと非常に相関の高いことが分かった。一方,光沢感と正反射光沢度との相関は鮮映感ほど高くはなく,印刷表面がより平滑であるにも関わらず光沢感の低い塗工紙も見受けられた。そこで,これらへの,特に光沢感への拡散反射光の影響を,三次元変角光沢計を用いて検討した。その結果,拡散反射光が強いほど光沢感は低下する傾向にあることが分かり,更に,偏光を使用して測定した内部拡散反射光強度と光沢感は,極めて強い逆相関の関係にあることが分った。インキセットの遅い塗工紙は視感印刷光沢が良好であるが,インキのスプリットパターンを小さくして印刷表面を平滑にする効果もさることながら,表面のインキ層が厚くなって内部拡散反射光強度が小さくなる効果もあると考えられる。
(本文66ページ)


光ファイバを用いた耐環境型水分センサ

ハネウェルジャパン株式会社 営業開発部 中濃礼二郎
                  営業技術部 小島 幹郎

 既に多くのマシンで導入がすすんでいるCD(幅方向)水分アクチュエータは,一部の上質紙でサイズ塗工前の水分プロファイルから制御されているが,ほとんどの場合リール前で測定された水分プロファイルから制御されている。しかし近年になってプレス出口においてフラットな水分プロファイルを得たいとする傾向が強く,実際にいくつかの工場ではCD水分プロファイルを制御するためにプレス後にスキャニングする水分計を取り付け始めている。この理由としては,均一で安定したプレスの運転を確保したいこと,CD水分プロファイル変動の原因をプレスからか,あるいはドライヤからの要因かを区別すること,そしてプレス出口での幅方向に均一なシートを生産することである。
 MD(流れ方向)水分についても,プレスセクションにおける脱水は,蒸気加熱によるドライヤと比較して相対的に低コストである。プレスにおいて水分1%の脱水を上げると,約4%の蒸気使用量の削減につながり,水の蒸発による脱水より機械的な脱水がより経済的であることがわかる。このためプレスによる脱水効率を最大限に引き出す方法が常に探求され,プレスにおける実際の水分測定がプレスの最適化を担う重要な要素となっている。
 光ファイバを使用した水分センサは,CDとMD両方について高精度で信頼性の高い水分測定をウエットプレスからドライヤ内まであらゆるグレードの紙について可能とし,低水分から高水分まで広い測定レンジを持っている。この新世代水分センサは,光源とこれを紙面へ照射するための光ファイバ及び紙面からの反射光を受ける光ファイバと2つの検出器によって構成される。光源と検出器を含む電子機器はすべてマシンの外側に配置され,高い信頼性と長寿命及び保守性を考慮した設計となっている。本稿ではハネウェルが新しく開発した水分センサとそのアプリケーションについて紹介する。
(本文73ページ)


富山湾の環境基準達成にむけて
 ―排水の窒素・燐の削減―

中越パルプ工業株式会社 能町工場 安全環境管理室 近藤 裕計

 富山湾におけるCODの環境基準達成状況は,平成9年度以降32〜60%と低い状況で推移してきた。平成13年に富山県の研究会の調査において,COD上昇は陸域からの無機栄養塩類(窒素・燐)を栄養源とした植物プランクトンの内部生産が原因であると結論付けられ,製造業・下水道事業における窒素・燐の計画的な削減の取り組みが必要と判断された。近年の環境意識の高まりから閉鎖性海域に属さない富山湾においても窒素・燐の削減が求められる状況となった。富山県の計画に対応するため,当能町工場での取り組みを紹介する。
(本文79ページ)


外部フィブリルが填料リテンションに及ぼす影響

ヘルシンキ工科大学 製紙技術研究所 タエゲウン カング,ハンヌ パウラプロ

 本研究は,高真空脱水装置における紙層形成過程で,化学パルプ繊維の外部フィブリルが,填料のリテンションに及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。内部フィブリルを一定に保ちながら外部フィブリルの程度に変化を与えるため,超高精細磨砕機を使用した。薬品が添加された系では,繊維の内部フィブリル化が進むと填料粒子の補足もそれに伴って増加したが,外部フィブリル化をメインに進めると,その補足は一層高いものとなる。内部フィブリルを変えることなく外部フィブリル化のみを進めることは,填料のリテンションをコントロールする手段として使うことができる。
(本文88ページ)