2006年1月 紙パ技協誌
 

紙パ技協誌 2006年1月


第60巻 第1号


バッキングロール自動サンディング装置

株式会社サーボアーム ロボット・環境事業部 村田 敦男

 製紙工場では様々な場所でロール体のサンディングが必要となってくる。その中でバッキングロールは非常に大型で製品品質にも重要なロールであり,その作業は非常に過酷で危険である。その中,平成11年,日本製紙株式会社から依頼があり,共同開発商品として“バッキングロール自動サンディング装置”が誕生した。
これまでは人手でサンディング作業を行ってきたが,これは危険であることに加えて,ロール表面が均一にならない為ロールに水含みの発生や段が付き,製品に影響を与える事や断紙後に操業を中止しサンディング作業を行う為,損紙が出て操業率が下がる事等の問題点があった。
 断紙をした場合,1,000m/minで回転するコータでは約5トンの損紙が発生する。これを月に数回行っている。又,紙切れ時にも,通紙作業中の時間帯を利用しサンディング作業を行っていたが通紙作業中は人手がいり忙しく,サンディング作業をする人手と時間がなく,この作業にかかる時間がロスタイムとなっていた。これを自動化することにより,ライン稼働中でも常時安定したクリーニングやサンディング作業ができ,断紙をしなくても操業できること。又,バッキングロールの寿命を延ばし生産上のランニングコストのダウンを図ることを目的として開発した。その他に,コータにとっては後付け装置の為,ロール替えに影響が出ないことやメンテナンスに手間がかからないことも重要なポイントであった。
 開発から6年が経ち仕様改善を重ね完成度が高くなり,他社でも利用するようになり,コータラインでは無くてはならない装置となった。これらの内容について報告する。
(本文39ページ)


微細インク除去性能に優れたMT―フローテータ

株式会社アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 岩重 尚之

 1980年代のDIPが抱えていた問題点は,未剥離インクと粗大インクの残存であった。1990年代にこれらの対策としてDIP工程に新しい技術が導入された。この結果,10μ以下の微細インクが大量発生し,従来型フローテータでは除去できず残留したため大きな白色度低下を招いた。
 DIP工程中のフローテータの微細インク除去性能がシステム構成や様々な原単位を決定付ける要因となり,微細インク除去性能の高いフローテータが待ち望まれていた。
 この要求に答えるフローテータとして3年の歳月を掛け,1990年(平成2年)に完成したのが「MT―フローテータ」である。発売開始以来,微細インクの除去能力が高いだけではなく,動力原単位・薬品原単位が低く,濃度変動に強く,リジェクト率が少ない等,安定した脱墨性能が実ラインで実証された結果,本年度の紙パルプ技術協会佐々木賞の栄誉を頂いた。
 本稿では「MT―フローテータ」とその中心技術を更に発展させた「MTU―フローテータ」についても一部を紹介させて頂く。
(本文46ページ)


PPC用紙向け環境対応型パレット積載ロッキンポップシステムの紹介

王子製紙株式会社 日南工場 秋川 英雄,竹田 幸喜

 王子製紙鞄南工場(宮崎県日南市)は富士セロックスオフィスサプライ(株)と協力のもと,PPC用紙ダンボールケースのパレット積載工程に水溶性接着液吐出装置(以下ロッキンポップシステム)を開発し実用化した。
 このシステムの導入により,パレット輸送時の荷崩れと外装箱の汚れを防ぐため長年にわたり多用されてきたストレッチフイルムの使用量を半減し,廃棄処理にかかる顧客のコストを大幅に削減することが可能となった。
 ロッキンポップシステムは,段ボールケースの搬送ライン上でケース天面に無色透明の特殊な接着液を線状に定量塗布し,この状態で積載することによってケース天面と上段ケース底面の間が接着される仕組みとなっている。接着したケースはパレット搬送時に生じる横方向の力に対しては強靭な耐性を発揮する反面,垂直方向には剥離しやすく使用時には容易に取り外すことが可能であり,接着面の跡も残らないため外観を損なうことがない。またロッキンポップシステム本体はコンパクトに設計されており,ノズルの本数や位置を変更することにより各サイズの製品に対応できる。
 ロッキンポップシステムは王子製紙鞄南工場のPPC用紙生産ラインで開発し03年4月より本稼動し,その後同社春日井工場に同年12月,王子特殊紙製紙江別工場には04年3月と順次展開している。今後はエンジニアリング部門である王子エンジニアリングを通じて当システムを王子グループのみならず同業他社に対しても積極的に普及し,PPC用紙業界の環境負荷軽減に貢献していきたいと考えている。
(本文52ページ)


次世代高品質新聞用紙の開発

日本製紙株式会社 技術研究所 野々村文就

 次世代対応の高品質新聞用紙は,カラー印刷時でも裏抜けが少なく,読者の満足度と広告媒体としての価値を向上させることができる。日本製紙では1997年より高品質新聞用紙の開発に向けて,新聞用紙の中性化に取り組んできた。既に,石巻,八代,富士,NORPAC各工場において完全中性紙化を実施し,2005年3月末現在,日本製紙の新聞用紙における中性化率は約40%に達している。
 中性新聞抄造技術をベースとし,填料として炭酸カルシウムを使用する高品質新聞用紙は,従来の新聞用紙よりも印刷時の裏抜けが非常に少なく,最近の新聞印刷のカラー化に対応しており,パイリング(紙粉)の堆積も少なく,大量・高速印刷に適している。また,中性で抄造するため,古紙由来の炭酸カルシウムを溶解させることなく再利用できることや,填料として使用する炭酸カルシウムは,日本に豊富に存在し,かつパルプ製造工程で発生する炭酸ガスを使用して自製できるため,環境面でも優れていると言える。
 日本製紙では,2003年から石巻工場で高品質新聞用紙の製造を開始し,現在各工場で切り替え作業を行っている。2006年6月までに国内外合わせて全8工場で高品質新聞用紙への全面切り替えを完了する予定である。
(本文59ページ)


ECF漂白の操業経験

紀州製紙株式会社 紀州工場 三宅 規公

 昨今環境問題への関心が高まっていることや排水関係の規制の強化があり,当社でも数年前に「2004年ECF転換」を目標として掲げ,第一期工事として二酸化塩素発生装置の更新,第二期工事として洗浄工程増強,そして第三期工事としてパルプ漂白設備の更新という3段階に分け設備工事を進めてきた。
 紀州工場ECF漂白設備は高温二酸化塩素漂白(DUAL―D)を導入し2004年8月に稼働開始した。
 D*タワーから洗浄機へのパルプの移送としては世界で初めてのグラビティーフィード方式であり設備が簡略化されている。
 本報ではこれらECF転換の為の新設備導入経緯や新設備稼働によって得られた操業経験について報告する。(本文64ページ)


選抜による耐塩性ユーカリの開発

日本製紙株式会社 森林科学研究所 村上  章

 精英樹によるクローン植林を目指し,豪州の自社植林地より生長性・耐環境抵抗性に優れた個体の選抜を行っている。遺伝的形質の再現性を確認する二次検定試験は,選抜木のクローン苗を用い,継続して行っているが,長期間を要する。そこで早期に選抜個体の遺伝的形質を確認できる方法について検討した。
 実験室レベルで評価するために,培養組織及びクローン苗を用いて,耐塩性及び耐乾燥抵抗性について評価した。その結果,短期間であれば海水の塩濃度で生育する個体が見つかった。また,高い耐塩性が見られる系統は水切り試験による耐乾燥抵抗性が観察された。耐環境抵抗性が高いと評価した系統は,クローン化し,乾燥害や塩害が予想される林地で植栽試験を開始した。
(本文69ページ)


JIS紙パルプ試験規格の現状と展望

東京農工大学 大学院共生科学技術研究部 環境資源共生科学部門       
紙パルプ技術協会 紙パルプ試験規格委員会委員長 岡山 隆之

 紙パルプ技術協会に設置されている紙パルプ試験規格委員会は,長年にわたってJIS及びJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法の制定あるいは改正作業に携わってきた。現在,このほかにISO/TC6(国際標準化機構第6専門委員会)のPメンバーとしてISO規格の原案及び定期見直しに対する投票審議を行っている。本報告では,2004〜2007年度に制定または改正,乃至はこれらを予定しているJISの内容について解説し,さらに,今後のJISの規格作成戦略について述べる。
 JISの紙パルプ試験規格は年間4〜5件のペースで作成されているが,いかなる国内規格や認証制度も貿易障壁とならないようにするという,1995年に締結されたWTO(世界貿易機構)におけるTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)による制約から,分野に依らず広くJISのISOへの整合化が推進されている。
 最近のJIS制定および改正に関する主な動向は次のとおりである。(1)古紙パルプに関する試験規格の制定を進めており,2004年度には異物の定量法が新規に制定され,2005,2006年度には粘着物及びプラスチックの定量法2件が制定される。(2)JISの光学的性質を測定する手法としてCIEのC光源を用いた拡散反射率測定法が導入,確立された。(3)2004年度には平滑度試験法として世界的に普及しているプリントサーフ法のJISが新規に制定された。ISO規格には制定されていないが,日本では広く普及しているステキヒトサイズ度試験が28年ぶりに改正された。(4)全塩素及び有機結合塩素の測定や自動光学分析による繊維長測定など,新しい技術を用いる測定法が新規に制定される。
(本文75ページ)


オンライン繊維配向計(誘電率測定型)の開発 ―実用化への取組み―

王子製紙株式会社 新技術研究所 澤本 英忠,永田 紳一  
                日南工場 黒木 典昭        
                米子工場 金山 順一        
王子エンジニアリング株式会社     瀬戸口義照

 新しいオンライン繊維配向計(誘電率測定型)を開発した。本方法は,間接法と言われる超音波法に対して,直接法と言われるマイクロ波法と同じ原理に基づいている。超音波法は弾性率異方性を測定するのに対し,本方法は誘電率異方性を測定するため,乾燥工程中の拘束の影響を受けず,紙の実際の繊維配向を測定する。また,全層を測定できること,フィルムの分子配向も測定できることが特徴である。実機マシンでの実用化試験を進めており,配向角が広範囲にわたって測定できることを確認した。操業中に意図的に繊維配向を変化させたとき,測定値が実際の繊維配向角度に追随することをオフライン機の分子配向計とSSTを用いて確かめた。
 また本方法は接触式センサーを使用しているため,安定かつ高精度に測定するためには紙と測定ヘッドとを均一に接触させることが不可欠となる。我々は吸引方式によって紙と測定ヘッドとの接触状態の安定化を試み,良好な結果を得た。これによりオンラインでの繊維配向測定に目処がついたと考える。さらに,本方法は原理的に米坪(誘電率と関係)や水分量(誘電損失率と関係)を測定することが可能であるため,繊維配向と同時に米坪と水分量を測定する試みを開始した。今回は最新のデータを交えて報告する。
(本文83ページ)


インクジェット用メディアにおける水性顔料インク印刷部の表面分析

三菱製紙株式会社 総合研究所 安田有紀野

 インクジェット出力の印刷品質の向上と共に,耐光性と諸堅牢性に優れた顔料インクの使用頻度は増加している。顔料インクの色材は固体として溶媒内に分散されているため,メディアの表面に局所的に残存しやすく,その挙動が印刷品質に大きく影響を与える。
 本研究では,顔料インクで印刷された,メディアの表面状態を観察する手段について検討を行ったので報告する。
 1) 印刷表面における顔料インク色材の定量
 顔料インクがメディアへ着弾した後の断面構造を観察するため,FIBとウルトラミクロトームでそれぞれ断面を作製し観察・比較した。FIBによる切削面では,インク色材の存在状態が明確に観察され,印刷濃度との相関も見られた。
 2) 印刷部表面の3次元形状の観察
 3次元形状の観察を,走査プローブ顕微鏡・共焦点顕微鏡・3次元電子顕微鏡の3機種を用いて行い比較検討した。その結果,走査プローブ顕微鏡による観察像において,着弾後の液滴跡が詳細に観察された。走査プローブ顕微鏡は空間分解能が高い上,光学的手法では限界のある垂直方向の計測が可能であるため,詳細な観察が可能であった。
(本文92ページ)


炭化材製造設備の操業経験

北越製紙株式会社 長岡工場 清水 和明

 北越製紙樺キ岡工場は,1996年にISO14001を取得して以来,地球環境の保全,地域社会との調和を目ざし取り組んでいる。特に廃棄物の削減・有効利用(再資源化)は,環境問題の重要な課題として位置づけている。その中でもPS(ペーパースラッジ)の再利用・有効利用は大きなテーマであった。
 当工場のPSは,その多くを古くから古紙原料として回収し利用していた。しかし,その利用率は,市況の変化を大きく受けPS在庫が増加する傾向にあり,最近その処理が重要な問題として浮上してきた。このPSを廃棄物として最終処分することなく有効利用するための手段として,2003年PSの炭化処理設備を導入することにした。
 当設備は,製紙会社で多く導入されているキルン方式の炭化設備ではなく,日本製鐵鰍フ縦型炉を使った自燃式炭化炉であり当機が初号機である。そのため多くの続出する難問を一つ一つ解決を図かりながらの試運転であったため,長期の試運転期間を経てようやく2004年3月に試運転が完了し営業運転に入った。現在は,1年半ほど経過し安定運転に至っているが,営業運転に入ってからも炉内にクリンカが発生し運転を継続できないトラブルを解決するため炉内の温度分布の変更と空気吹き込みの改造を行っている。さらに,市況の変化によるPS成分(灰分率)の変化に対応した運転方法を確立するまでの操業経験を紹介する。
(本文98ページ)


RPF助燃によるペーパースラッジ焼却炉の操業経験

日本大昭和板紙吉永株式会社 福田 実,望月英範,近藤 仁

 日本大昭和板紙吉永株式会社は,2003年3月に日本ユニパックホールディンググループ(現日本製紙グループ本社)の事業再編に伴い大昭和製紙から分割し,日本大昭和板紙の生産会社となりました。首都圏に近い立地条件を生かし,古紙パルプ原料をメインに板紙・洋紙を年間約660,000t生産している。
 当工場では,近年の古紙パルプ使用の増加に伴い,発生するPS(ペーパースラッジ)の処理とサーマルリサイクルを目的とし,2002年12月から5号焼却炉設備を稼動させた。
 5号焼却炉は最大330t/日(絶乾)のPSを焼却することが可能であり,国内でも最大級の処理能力を有する。廃熱ボイラーは60t/hの蒸気を発生させ,併設する6号タ―ビン発電機で10,300kWの発電を行っている。
 排ガスは各種規制値を十分クリアーできる設備仕様となっている。また,灰は全量セメント会社に送られ再利用されている。
 本報告では設備の概要と特徴,これまでの運転状況,トラブル事例や対策状況など紹介する。
(本文106ページ)