2005年4月 紙パ技協誌
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紙パ技協誌 2005年4月

第59巻 第4号


ユーカリ・グロビュラスの挿し木クローンによる商業的植林

三菱製紙株式会社 総合研究所 大森 俊二  

ブラジルなどではユーカリ・ユーログランディスのような品種において挿し木でのクローン化が商業的規模で広く行われている。クローン化による効用としてバラツキの無い植林,精英樹の増殖が実現されている。一方,ユーカリの仲間でユーカリ・グロビュラスは高成長性,高比重などの特性を有するため各国で商業的な植林品目として着目されている。
しかし,これまでユーカリ・グロビュラスでの挿し木は発根が困難なため一般的には実施されていないし,なによりも精英樹が特定されていない。このようなことから挿し木によるユーカリ・グロビュラスのクローン化を目指した。プロジェクトではチリ共和国現地において精英樹クローン植林を商業的規模で実施することを目的として検討を行った。
まず,実際の植林地において精英樹の候補を探索し,これを材料として挿し木を実施し発根性や,成長性の優れた個体のクローン苗増殖とその植林を試みた。この結果,植え付け後数年の計測において,容積で5割以上の成長性,比重で1割強の特性向上を得ることができる精英樹の選抜に成功し,これを商業的な規模で植林できるようになった。
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広葉樹の蒸解と漂白
  ―樹種の違いに因る影響とヘキセンウロン酸の生成と除去―

メッツォSHI株式会社 小林 達
メッツォペーパースンズヴァルABÅ.リンドストローム,
M.ヴェネルストローム

近年広葉樹のパルプ化や漂白に関する研究が多くなってきた。それに伴ってプロセスの重要性や樹種の違いに対する理解も進んでは来たが,いまだ研究の余地は多く残されている。
特に広葉樹においては,針葉樹と比して,樹種による繊維の違いが大きいこと,ヘキセンウロン酸を多く含有することから,蒸解条件及び漂白条件を整える必要があり,条件を整えることによりパルプ歩留り,漂白性,繊維特性を最適化することが可能であることが判明してきている。
ヘキセンウロン酸はリグニンとは異なる処理が必要になり,脱リグニンとは別に考慮する必要がある。広葉樹の蒸解において,ヘキセンウロン酸の形成を低くする条件を整えること,ECF・TCF漂白条件においては,ヘキセンウロン酸を除去する方法がパルプ品質,白色度に大きく影響することが判明してきた。
更に広葉樹の多岐にわたる特性から,抄紙からの要求に出来るだけ沿ったファイバーをパルプ生産工程で調整することが,今後可能になると考えられる。
現在の技術でも,蒸解条件・酸素脱リグニン条件・高濃度オゾンを導入した漂白シーケンスを用いて,漂白排水を従来の50%以下にするプラントを構築することが可能になっている。
(本文13ページ)


最新のスクリーン技術
 ―画期的省エネルギースクリーンと流体遮断による粘着除去スクリーンプレート―

相川鉄工株式会社 技術本部 金沢  毅

最近のスクリーン技術はバータイプシリンダーの開発を契機にドラマティックに進化してきた。特に古紙処理共通の課題である粘着除去,世界的な環境保護対策の観点からの省エネルギー,これら二つの課題に関して大きな改良を可能とした技術として評価されている。弊社ではNewWave Basketとして,この技術を確立し,これを核に新しいスクリーン“グランフロー”を開発,平成12年度には日本紙パルプ技術協会から最も優秀な開発として栄誉ある佐々木賞を頂くことが出来た。
更なる省エネルギーは可能か,更なる粘着除去効果の向上は可能か,この二つを命題に開発を継続し,弊社では幾つかの新手法と新型スクリーンを確立することが出来た。スクリーンにおける省エネルギーは直接的な動力負荷の低減と間接的に省エネルギーにつながる処理能力アップの二つの手法がある。即ち,動力負荷に大きく影響する要素は回転するハイドロフォイル(アジテーター)であり,処理能力に関係する要素はスクリーンシリンダーの開口部の面積とシリンダーの詰りを防止するフォイルの洗浄能力である。洋紙マシン前やDIPに有効なInward Flow Screenと板紙や粗選スクリーンとして有効なOutward Flow Screenの両方において,これらの省エネ要素を最適化して従来型スクリーンと比較して50%から70%のエネルギーを削減できる画期的なスクリーンが誕生した。また,粘着物除去をはじめとして,微細異物の除去性能の更なる大幅な改善を可能とする新しい理論に基づくスリットプレートが誕生した。
この理論はスリット幅やプレート表面のプロファイル(下流傾斜面角度)など機械的な要素で除塵効果を定めようとするものではなく,流体乱流の異物遮断効果を利用したもので,世界で初めての提唱である。
(本文20ページ)


コニディスクを用いた高濃度漂白について

日本製紙株式会社 岩沼工場 真野 晋一
技術本部 杉野 光広

岩沼工場では新聞用紙へのDIP配合率向上を目的に,新設DIP工程(DIP―3:250ADt/日)を2003年7月に稼動した。DIP―3は低品質古紙を積極的に使用すべく漂白,異物対策を強化した工程であり,最新鋭の設備と技術を導入している。その一つが相川鉄工製コニディスクディスパーザーである。本設備はパルプミキシング部がコニカル型の形状をしており,インキ剥離,異物分散及び漂白機能を向上させた高性能ディスパーザーである。特に漂白は過熱チューブによる高温漂白が可能となっており,当社では過酸化水素及びFASによる漂白テスト結果から,両薬剤の使用方法を古紙により区別している。
岩沼工場においては初めてのディスク型ディスパーザーの導入であったが,立ち上げ当初から操業,品質とも安定しており,当初の目的であった低品質古紙の使用,新聞用紙DIP配合率75%以上を達成している。
本報では,コニディスクディスパーザーによる高濃度漂白を中心にDIP―3のコンセプト,異物対策に関しても紹介する。
(本文29ページ)


サイズ剤用新規定着剤

栗田工業株式会社 紙パプロジェクト 大草 優子

 古紙配合率の増加,用水原単位の低下により,水質が低下し,内添薬品の定着,歩留も悪化している。この対策として,内添薬品の1つであるサイズ剤(ロジンエマルションサイズ剤)の定着促進に着目し,ポリマーによるサイズ剤の定着とサイズ発現性について調べた。その結果,ポリマーの物性によって,定着効果やサイズ発現効果が異なることが明らかとなった。これらの知見を基に,サイズ定着剤「フィクサージュR100」を開発し,実機で適用した結果,サイズ剤の低減や,抄紙用具の汚れが軽減できることが実証された。
(本文38ページ)


塗工顔料のアスペクト比と塗工紙物性

株式会社イメリス ミネラルズ・ジャパン 本間 太郎,小林  敬
イメリスピグメンツフォーペーパーアメリカズ ラジャン アイヤー

白紙・印刷光沢,不透明度の発現など,塗工顔料としてのカオリンのメリットがその扁平な粒子形状にあることは比較的古くから知られてきた。粒子が扁平(=アスペクト比が高い)であることで,より被覆性が高く平滑な塗工表面が得られるほか,その塗工層構造は印刷光沢に寄与する。しかしながらアスペクト比 の測定には多くの時間を要し,これまで顔料のアスペクト比と塗工紙の物性に関 する詳細な調査は余り行われて来なかったと思われる。
今回の実験では,顔料(カオリン)のアスペクト比が塗工紙に与える主な物性として想定される被覆性・光沢の発現を,その効果が最も有効であると考えられる低塗工量域において検証した。
(本文45ページ)


印刷光沢の発現性とラテックスの効果について

日本エイアンドエル株式会社 ラテックス研究所 椎山 栄介

近年,塗工紙への品質要求は多様化を極めており,白紙光沢,印刷光沢,白色度,不透明度,嵩高に特徴のある塗工紙が次々と開発され,上市されている。特に「印刷光沢」は塗工紙の品質を左右する最も重要な性能であり,特にA3以上の塗工紙では品質のトレンドとなっている。
塗工紙の印刷光沢は,印刷時のインキの開裂パターンの「生成」と「レベリング」が非常に重要である。インキ開裂パターンの「生成」には印刷条件である印刷スピード,印圧,インキ量が影響していると考えられ,「レベリング」はビヒクル(インキ中の樹脂と液体成分)の塗工層への浸透速度が大きく影響すると考えている。このビヒクルの浸透には,塗工紙表面の平滑性,塗工紙の空隙,塗工層の化学的性質などが相互に影響し合っていると考えている。
我々は,ラテックスの種類を変えて,得られた塗工紙のインクの浸透を1次浸透(濡れ)と2次浸透(吸収)に分け,印刷光沢との関連について検討を行った。
検討の結果,ビヒクルとの濡れが良好で吸収が少ない塗工紙は,印刷光沢の発現が良好という結果が得られた。印刷光沢の発現性を高めるためには,ビヒクルとの濡れを充分に考慮する必要がある。
(本文53ページ)


有機白色顔料を含む塗工層の構造解析―2

日本ゼオン株式会社  斉藤陽子, 任田英樹, 葛西潤二  

近年,塗工紙への要求の多様化に伴い,白紙光沢,白色度,不透明度など光学的特性に特徴を持たせた塗工紙の開発が行われており,有機顔料の使用が増えてきている。一般的に高光沢紙を製造するときはカオリンクレイが用いられるが,微粒炭酸カルシウムでも有機顔料と組み合わせることで,光学的特性の優れた塗工紙が得られることがわかった。これら塗工紙の塗工層構造を解析結果から,板状のカオリンクレイを用いない塗工紙でも有機顔料の存在により,塗工層内部の空隙量が増えることが確認できた。
また,有機顔料として大小2種類の中空粒子を評価した結果,塗料の流動性に差があり,塗工紙の仕上げ条件次第で白紙光沢の発現性も異なることがわかった。目標とする塗工紙品質を得るためには,無機顔料の選択はもちろん,有機顔料をいかに選択するかが重要である。
本報では,これらの検討結果について報告する。
(本文61ページ)


ペーパースラッジリサイクル紙の開発

静岡県富士工業技術センター 日吉公男,村松重緒,齊藤将人  

静岡県の製紙産業は古紙の利用が盛んで,そのためペーパースラッジ(PS)の発生量が多く,その処分問題が早くから取り上げられてきた。PSは,昭和40年代より様々な分野への利用法が開発され,実用化されてきた。しかし,いまだに,富士市内だけで年間100万t(水分65%換算)が排出され,セメント原料や製鉄保温材等に使われているが,年間3万tの焼却灰が埋め立て処分されている。処分場確保の問題等もあり,新しい用途開発が緊急の課題であることから,PS焼却灰を填料や顔料として紙にリサイクルする方法を研究した。
その結果,二酸化炭素(排ガス)を導入してPS焼成することにより,白色度も高く,軟らかい焼却灰を得るPSの焼成条件を見出した。見出した焼成条件が実用焼却炉で再現できることを確かめた。PS焼却灰は鉄分除去を行いながら,乾式粉砕と湿式粉砕により所定粒径まで粉砕した。鉄分除去を行ったにも係わらず上市されている填・顔料より赤味のある填料・顔料となった。PS焼却灰の特性を検討するとともに,内添紙や塗工紙を実機製造した。塗工紙はマット調に仕上がったが,いずれの試作紙も商業印刷の結果,実用性を確認した。
これらの成果を生かして,現在,富士市内の製紙会社と共同でPS焼却灰リサイクル紙の商品化を検討中である。
(本文69ページ)


機械安全とセーフティ・コンポーネント
  ―安全規格の動向について―

オムロン株式会社 広域営業部セーフティソリューションセンター 松本  強

日本では今まで,機械(装置)を使用する際の安全の確保を「人に対する安全教育」に大きく依存してきたが,今後は高齢化などによる熟練経験者の減少や,パートタイム労働者の増加など社会的な変化により,現場での安全確保は今まで以上に深刻となってくる。従って「人は間違いを起こす。また機械は故障する」という事を前提にすることが非常に重要となってきており,安全に関する国際規格(ISO/IEC)もこれらの考え方が基本となっている。
国内においてもJISの国際規格と整合が加速し,厚生労働省からも「機械の包括的な安全基準に関する指針(2001年6月告示)」をはじめとした指針が通達されている。労働災害を防止するために事業場全体の安全衛生マネージメントシステムの導入に加え,機械そのものの危険源を減らすためには国際規格や厚生労働省の指針等に従った機械の設計をすることが重要である。
規格および指針で示される設計手順は大きく5つの項目がある。@機械の使用状況範囲(誰がいつどんな作業をする機械であるか等)を決定。A危険事象を想定しリスクアセスメントを実施する。B本質安全設計による危険の除去またはリスク低減を図る。C残存するリスクに対しては,防護ガードや安全装置(機能)などの安全防護を設置する。D最後まで残るリスクは情報提供と警告表示をする。
機械を安全にするためは安全防護の設置による安全確保が重要となる。安全防護の主な方法として,柵の開閉や人体の侵入を検知し機械を自動的に停止させるインターロック装置がある。インターロック装置の安全性を立証するためには,安全の原理・原則を採り入れた設計で,かつ第三者機関による安全性を立証された部品(セーフティ・コンポーネント)を使用することが不可欠である。安全防護装置の種類,その用途によって最適なセーフティ・コンポーネントを選択する必要がある。
その手助けとして本論をベースに検討頂ければ幸いである。
(本文78ページ)


オフセット輪転印刷に発生する特殊なゴースト現象と印刷用紙の関係調査

三菱製紙株式会社 総合研究所 鷲谷公人,柴 裕一,西 哲哉  

近年,オフ輪印刷において特殊なゴースト現象の発生が増えている。この特殊なゴースト現象は通称デラミゴーストと呼ばれ,ブランケットシリンダーへ用紙が付着する形の走行不良がインキの転写不良を起こし,ゴーストとなって現れるものと推測されている。印刷機が高速化,用紙が高品位化するほど発生しやすくなるため,印刷作業性や印刷品質を損なわない防止法の開発が期待されている。しかし,用紙が本現象に与える影響については系統だって調べられていなかった。本報では用紙要因の確認を目的として,種々の物性を持たせた印刷用紙を用いてデラミゴーストとの相関関係を詳細に解析した。
その結果,平滑性,特に圧力下での平滑性(プリント・サーフ表面粗さ)がデラミゴースト発生度との相関が強く,平滑な用紙はブランケットロールへの付着を促進するためと考えられる。またプリント・サーフ表面粗さが同程度の場合はインキセット性が相関が強く,これはインキセットが速いものはインキの転写不良を起こしにくいためと考えられる。これらの結果は,従来言われていたデラミゴーストの発生機構の正しさを裏付けている。
(本文89ページ)