2005年2月 紙パ技協誌
 

紙 パ 技 協 誌 2005年2月

第59巻 第2号


印刷機から見た新聞用紙
三菱重工業株式会社 広島研究所 赤塚 正和

新聞印刷の問題や要求を理解し,印刷機から見た新聞用紙について議論するため,新聞用オフセット輪転機(新聞オフ輪)の構造と機能,印刷機内における紙挙動の例,用紙特性について紹介した。
新聞オフ輪については,機能や要求の特徴(スケジュール優先→スケジュール&高品質への要求),用紙の搬送機構,印刷胴やインキングなど印刷装置,多頁を重ねる折機,テンション安定化などの制御,を説明した。
また,印刷機内における用紙搬送時の挙動を,用紙特性の説明と関連づけて,給紙から折部までの行程において論じた。用紙の特性は,吸水によって弾性係数が変化する弾性体と見られること,搬送以外では,白色度(色再現),表面強度(パイリング),引裂強度(傷入り)などが影響を与えることを紹介した。また,パイリングなど障害は減らす必要があるが,色調は各地の印刷を均一に揃える方が重要で,白色度などは他の紙と同じであることが望ましい。
用紙搬送時の挙動を評価するために,支配的なパラメータである用紙のテンションと歪の考え方,用紙搬送における障害,印刷における用紙評価の問題を紹介し,実際の使われ方に即した評価方法の重要性を示した。
(本文1ページ)


紙品種毎の最新ワイヤー技術
日本フイルコン株式会社 技術開発部 名倉 宏之

本稿では,国内製紙業界において,紙品種毎にどのようなデザインの抄紙用ワイヤーが使用されているのか,それが5年前と比べてどう変化しているのか,その変化の方向性の決め手となる主な要因は何か,その変化を誘導している最新のワイヤー技術とは何か,について統計データに基づいて概要を説明する。その中で明らかになった課題とその解決手段として,将来の抄紙用ワイヤーの技術的方向性についても,研究開発の立場から推測を加えた。
(本文8ページ)


シームフェルトの最新動向
アルバニー・ノルデスカフエルト株式会社 斉藤  信,阿部 博司

抄紙機の抄速アップに伴ない,十分な搾水性を維持する為,より硬く,より目付の重いフェルトが必要となり,掛け入れ性と相反する様になった。この様なフェルトの掛け入れ性を向上させるべく生まれたシーム付きフェルトであるが,初めて実機に掛かってから,現在では,はや20年以上となる。その間,さまざまなペーパーグレードに対応する為,開発,特にシーム部の開発が進み,北欧では昨今ほとんどの紙品種に使用される様になり,全体の50%がシームフェルトとなっている。近年,日本国内でも注目を浴び,多くの抄き物,さまざまなポジションで使用され始めている。
ここでは,シームフェルトの開発の歴史,何故,多くの抄き物に使用される様に到ったかと,実機での掛け入れ手順,ケースストーリーを中心にシームフェルトの理論と実際について紹介する。
また,シームフェルトに対する要求も多様化しており,それ対応する為,従来は二重織り構造が主流であったシームフェルトであるが,多軸性ラミネートタイプや特殊コーティングされたシームフェルトも実用化されているので併せて紹介する。
(本文15ページ)


ワイヤー・プレスパートのドクターについて
株式会社ドクター製作所 萩田 俊一

ワイヤーサクションクーチロール用ドクター,セラミックロール用ドクター等,近年のドクターはダブルドクター化している。
クーチドクターは,ミスト発生防止や目詰まりの防止,水分プロファイルの改善に十分に効果が出ている。
セラミックロール用は,シャワーを利用しながら十分なドクターリングを行っている。
全てのドクターの大きな欠点として,ブレードの裏側に付く「カス」も,新しく開発したセルフクリーニングドクターにより取り除くことが出来た。ダブルドクターと併用すれば,より大きな効果が期待出来る。
(本文21ページ)


中芯マシンのトライニッププレス導入
レンゴー株式会社 尼崎工場 製紙部 小原 敏彦

レンゴー鞄崎工場8号機は,坪量115〜200g/m2の中芯原紙を抄造している。
同抄紙機は,1979年設置にてワイヤーパートは,1987年にデュオフォーマーF型に改造し操業してきたがプレスパートは,設置当初のもので,近年,老朽化が著しかった事により2002年2月に新規プレスに更新を行った。
機種選定に際しては,プレス出口湿紙水分の低減による省エネと操業性の改善を目的として検討を行い,最終的に板紙分野では,まだ実績がなかったトライニッププレスを採用した。
本報では,8号機に導入した,トライニッププレスの設備の概要とこれまでの操業状況について報告する。
(本文30ページ)


7M/Cヘッドボックス・オントップフォーマー改造
日本製紙株式会社 岩国工場 抄造部 滝澤 秀弥


岩国工場7M/Cは1987年に稼動し,A2・A3コート原紙を生産している。日産408t/日でコート紙の基幹マシンの一つである。
従来のシムフローヘッドボックスは,幅方向坪量プロファイル制御としてロッドの熱膨張(サーマトロール)によりスライスリップ開度の調整を行なってきたが,安定性,収束性,制御ピッチが広い等の問題点があった。ワイヤーパートは,シムフォーマであったが,Z軸方向へ与えるせん断力が弱く地合改善を図るには設備的に限界があった。
そこで,2004年1月に地合改善及び幅方向坪量プロファイル改善による品質改善を目的にヘッドボックスは,希釈水制御方式のシムフローD並びにオントップはトップ側にサクションボックス,ボトム側にローディングブレードを配置したシムフォーマMBへの改造を行った。
幅方向坪量プロファイルは,2σが改造前で0.2〜0.6が改造後で0.1〜0.3となっており,改善されている。希釈水比率は8%一定で操業を行なっており,安定性,収束性等においても期待通り良好な制御結果が得られている。その結果,プロファイル不良損紙も減少してきている。地合についても同様に,50g/m2台未塗工原紙で地合指数が改造前で49前後から改造後47前後まで2ポイント改善されている。Z軸方向灰分分布も改造後F側の灰分が低下しており表裏差が減少している。ただし,リテンションが悪化しており各種対応を実施している。
今後の課題として,より一層の品質面のレベルアップを図ると共に安定した品質を維持し,その他損紙を削減する様に取組む考えである。
(本文35ページ)


オプティコンセプトの進歩
メッツォSHI株式会社 田頭 弘章

1998年のメッツォ社のペーパーテクノロジーデイズにおいて,各セクションに最新の技術を反映し,設計抄速2,000m/minをターゲットに置いた全く新しい抄紙機オプティコンセプトが紹介された。実機としてオプティコンセプトのコンプリートマシンが誕生したのは1999年12月であった。
それから今日まで,わずか4年ほどの間にオプティコンセプトは世の中に広く受け入れられ,新設だけで10台を超える抄紙機が稼動に入っている。オプティコンセプトマシンは高速運転における操業安定性に優れているだけでなく,地合い,表裏差などの紙品質にも優れ,更にプレス後の高いドライネスにより乾燥負荷が軽減されるという経済性にも優れている。勿論,新設抄紙機だけでなく,改造機にもオプティコンセプトは多数採用されており,品質改善,増産等に多大な貢献をしていることは言うまでも無い。
オプティコンセプトは新聞用紙,上質紙,コート紙等の種々の紙種に適用されてきたが,更なる開発が続けられており,市場のニーズに応えるためこの度新たに開発された新型オプティフロー,新型オプティドライ,オプティスプレーの製品の特長をここに紹介する。
(本文41ページ)


紙製食品包装容器の蛍光物質溶出検査法について

王子製紙株式会社 分析センター 宮川 孝,尾松正元,直原孝之
環境部 新井直人

紙を白く見せるために日常的に蛍光物質(蛍光増白剤=蛍光染料)が使用されているが,食品衛生法の食品添加物としての認可を受けていない蛍光増白剤は,合成着色料の一種として規制され,検査法としては昭和46年5月8日付厚生省課長通知環食第244号「蛍光物質を使用した器具または容器包装の検査法について」が定められ運用されてきた。
02年12月に保健所の検査でタイ製の紙製ビーフントレー(意図的に原紙,塗工層に蛍光増白剤を添加と推定)より蛍光増白剤の溶出が確認され,食品の回収命令が出たのが発端となり,03年7月には蛍光増白剤を意図的に使用していない紙製トレー(古紙配合品)でも回収指導を受ける事態が発生した。このままでは古紙配合製品すべて(白板紙のみならずライナー,段ボールまで)が回収対象となり,関係業界を巻き込む大問題に発展する恐れが出てきた。一方,公定法にもかかわらず指定検査機関間で異なる判定結果となることもわかった。
今回,この蛍光物質溶出検査法(環食第244号)の問題点を抽出し,その原因を明らかにし,この結果をもとに,日本製紙連合会から厚生労働省に検査法の見直しを03年11月9日に申し入れ,異例とも言える速さで04年1月7日付厚生労働省課長通知(食安基発第0107001号・食安監発第0107001号)で検査法が見直され,判定基準も写真で実例が示されることにより,古紙配合製品も概ね使用できる見通しとなった。ここまでの経緯と海外の規制状況もあわせて紹介する。
(本文49ページ)


板紙用新型MJフォーマの開発

三菱重工業株式会社 紙印刷機械事業部 永野 明仁
広島研究所 増田 和彦,岩田  弘

現在欧州を中心として板紙・中芯紙の軽量化が急速に進行しており,抄紙機の高速化による増産が求められている。一方,多層抄紙プロセスにおいては,ベースとなる第1層の高坪量化による抄き合わせ層数の低減で生産・管理の効率化を図ろうとする動きも顕在化してきた。
こうした市場の要求を受け,当社では2001年に洋紙向け高速抄紙機として開発したMJ Formerをベースに,板紙グレードに要求される原料条件,抄造性能,紙品質を満足するべく新しい板紙用ギャップフォーマを開発した。
従来に比べて大径のサクションフォーミングロールを採用するとともにワイヤのラップ角度を大きくし,十分な初期脱水能力を確保した。ブレード部は脱水された白水の処理が容易な傾斜配置で,また開口率の高いブレードアレンジにより,ブレードセクションでの脱水能力の向上も図られている。また,サクションフォーミングロール出側に配置した”コントロールド・ブレード”は,ブレード先端の押し込み量を容易に調整でき,安定運転及び原料性状に見合った紙強度物性を引き出すことが可能である。
ここでは,上述の特徴についてパイロットトライアルでの検証結果を中心に述べると共に,欧州における当社MJ初号機について紹介する。
(本文56ページ)


担子菌アラゲカワラタケを用いたパルプ製造工程の省エネルギー化プロセスの開発

王子製紙株式会社 研究開発本部 新技術研究所 仲亀誠司,甲 真理,阪口寿子,
中尾さやか,塚本 晃,杉浦 純

地球温暖化防止の観点から省エネルギーの重要性が高まっているが,王子製紙では,「王子製紙環境憲章」を制定し,広く地球的視点に立って,環境と調和した企業活動を維持発展させるため活動を進めてきている。その一つとして,バイオ技術を応用したパルプ製造方法,バイオパルピングの開発に取り組んできている。バイオパルピングは,パルプ製造の前工程に,木材チップ上に白色腐朽菌を生育させ,リグニンを部分的に分解させることにより,パルプ製造工程における省エネルギー化,省薬品化を行う技術である。我々は,リグニン分解力が強く,生育温度が高い,白色腐朽菌アラゲカワラタケを,バイオパルピングのために用いてきている。

今回の実験では,紙力への好ましくない影響のあるセルロース分解活性の抑制を,高効率の形質転換系を用いて試みた。微生物は,複数の酵素によりセルロースを分解しているため,これらの酵素活性を同時に抑制することが好ましい。このために,アラゲカワラタケのセルロース分解に関与する複数の遺伝子のクローニングを行った後,これらの遺伝子をタンデムに連結したアンチセンス発現プラスミドを作製し,形質転換を行った。この結果,複数のセルロース分解活性を抑制した形質転換体を取得することができた。この形質転換体により,木材チップを前処理した結果,蒸解性は向上するが,紙力が損なわれなかった。また,リグニン分解酵素のプロモーターを,セルロース分解酵素由来に改変することで,セルロース存在下で,リグニン分解活性の生産性が向上することが示された。
これらのことから,今回用いた手法が,白色腐朽菌のリグニン分解の選択性を向上させ,バイオパルピングを行う上での有効な手法であることが示された。
(本文62ページ)


炭化炉の操業経験

中越パルプ工業株式会社 川内工場 白浜 信行

川内工場では,従来より製紙汚泥をスラッジキルンで直火炭化し,土壌改良材・鉄鋼用保温材として販売してきたが,設備の老朽化,廃掃法への対応のため新たに炭化品製造設備を設置した。
本設備では,脱水した汚泥を造粒機によりペレット化し,水分約10%まで乾燥した後,間接加熱式炭化キルンで炭化乾留を行う。発生した乾留ガスは炉内で燃焼し,汚泥の持つ熱量を有効利用している。又,炭化炉本体は焼却炉ではなく,製造設備としての認可を受けたためダイオキシンの規制は無いが,構造的にも対策を充分に織り込んで計画,設置した。
本報では,2002年11月に稼動した炭化設備の特徴・運転状況・炭化品の物性について報告する。
(本文69ページ)


富士N―2M/C仕上設備の操業経験

王子製紙株式会社 富士工場 鈴木 幹也

王子製紙富士工場では,2001年に白板紙生産体制の再構築工事を実施。抄造部門については,従来からの抄紙機2台を停機し,白板紙としては世界最速のN―2M/Cを設置した。
一方,仕上部門については,4台のシングルカッターと3台の包装機を導入。製品形態の80%を占める平判製品仕上げに対応している。
今回導入した仕上設備の特筆点として,工程間搬送の徹底した自動化が挙げられる。N―2M/Cとカッター間については,コンベア・クレーンによる搬送の自動化,カッターと包装機間についてもコンベアと運搬台車による搬送の自動化が図られた。
本報では,今回取り入れた自動化設備の紹介,ソフト対応内容の概略を中心に,現在へ至るまでの操業経験について報告する。
(本文75ページ)


16th PTS SYMPOSIUM2004 Chemical Technology of Papermaking参加報告

栗田工業株式会社 紙パプロジェクト 陳  嘉義

2004月9月15日から17日までの3日間にドイツのミュンヘンにて開催されたPTS SYMPOSIUM 2004 Chemical Technology of Papermakingに参加する機会があり,研究発表の概要について報告する。
37件の研究発表はすべて口頭発表である。20カ国から,合計370名が発表会と展示会に参加した。
(本文82ページ)


2004TAPPI Fall Technical Conference参加報告

日本製紙株式会社 伏木工場 宮西 孝則

米国アトランタ市で開催された2004TAPPI Fall Technical Conferenceに参加する機会を得たので概要を報告する。
他の産業と同様に製紙産業も競争力を強化するために,統合,合併を進めている。各国の製紙工場には紙品質,操業,エネルギー,物流,資産などを管理するコンピューターシステムが次々に導入されている。WinGEMSTM,IDEASTM,CADSIMplusTMは紙パルプ専用のシミュレーションソフトウエアーで世界中の工場,大学,研究機関に販売されている。欧米の多くの紙パルプ大学院課程では,専攻に関わらずこれらのソフトウエアーを使った授業が必修になっている。製紙工場の紙パルプ製造プロセスをモデル化することによって,紙パルプ技術者の人材育成・能力開発を行いながら,効率的な操業,環境管理,有効な投資を行うための貴重な情報を得ることができる。日本でもこれらのソフトウエアーを積極的に利用する時代が来ていると思われる。
(本文87ページ)


SEC―MALS法による製紙用変性澱粉のコンフォメーション解析

日本製紙株式会社 技術研究所 小野 裕司
東京大学 大学院農学生命科学研究科 柳澤 正弘,磯貝  明


ヒドロキシエチル化澱粉,アセチル化澱粉,疎水エステル化澱粉や酸化澱粉はクリア塗工の表面紙力剤やピグメント塗工のバインダーとして製紙業界で広く使用されている。しかしながら,これらの変性澱粉の水溶液中での高分子特性は十分に解明されていない。
本研究の目的は,製紙工程における理想的な化学構造の変性澱粉をデザインするために,各種変性澱粉の水溶液中での高分子特性を解析することである。
本実験では,サイズ排除クロマトグラフィー多角レーザー散乱(SEC―MALS)法を用い,澱粉の変性方法,置換度,分子量や溶解方法が水溶液中での高分子特性に及ぼす影響について調査した。変性澱粉に導入された親水基の置換度が多くなる程,酸処理や酸化処理が強い程,また,アルカリ溶解した場合に変性澱粉の高分子鎖が水溶液中で広がったコンフォメーションになることがSEC―MALS法により明かにされた。表面強度を効果的に高めるには,水溶液中での変性澱粉の分子鎖が広がったコンフォメーションになる様に,変性・溶解することが重要であることが,本研究結果から示唆された。
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