2005年1月 紙パ技協誌

 

紙パ技協誌 2005年1月

第59巻 第1号

パルプ工程でのチリ検出 ―ダートカウンタによるチリ発生状況傾向管理―
オムロン株式会社 ITソリューション事業部 シートグループ 永井  洋  

  “ダートカウンタ”の第32回佐々木賞受賞は,当社にとって3度目の受賞となった。「第10回CCDカメラの開発」,「第22回欠点自動録画装置」と,いずれも今や欠点検査の根幹技術として確固たる地位を確立,ダートカウンタも是非これに倣っていきたいと考えている。
  この“ダートカウンタ(チリ検出器)”は「パルプ溶液中のチリをオンラインで計測できる画期的な商品」として,王子製紙株式会社釧路工場殿と共同開発したものであるが,開発から12年経過した今,急速に納入台数が伸び,累計台数は40台を突破した。チリ管理は,パルプ工程のみならず,抄紙後においても重要な品質管理項目であり,今後更に注目度が加速することであろう。ダートカウンタの構成は極めてシンプルであるが,リアルタイムに得られる情報(計測結果)をさらに有効活用すれば,パルプ,調成,そして抄紙の各工程を繋ぐ総合的なチリ管理が可能となる。“使える情報,使いやすい情報”を提供することで,チリ発生原因の早期発見・早期対策に十分寄与するものと確信している。
  本文では,ダートカウンタの紹介のほか,チリ管理全般に関するこれまでの取組み内容や事例,今後の方向性について紹介させていただく。
(本文41ページ)

カンレンダー樹脂ロールの開発及び高機能化,高品質化
ヤマウチ株式会社 製紙技術開発部 渡辺 篤雄,中山健次郎  

 当社は製紙機械ロールメーカーとしてSNC用の樹脂ロールを1987年に開発した。
 1988年よりSNCはもとより従来のSCにも適用可能な樹脂ロールとして“ミラーマックス”の市場拡販を開始した。当社樹脂ロールは従来の繊維系弾性ロールに比較し走行耐久性・生産性・紙品質向上に於いて優れた特性を示した。
 その反面,初期のミラーマックスに於いては@ロール端部ヒートスポット,A端部磨耗B表層クラックの発生とその拡大破損,C表層材局部剥離等の問題が一部で発生したため走行安定性は十分ではなかった。それらの問題点を総合的に解決するため当社は表層材質の特性向上,表層材と鉄芯界面の接着力の向上,ロール表層中の残留応力低減制御等一連の技術改良を実施した。
 また,同時期にSC操作担当者側の樹脂ロール管理・取扱い技術も大幅に向上した。
 その結果使用者側の技術向上と当社に於ける技術改良が相俟って,現在ミラーマックスの安定使用が可能となっている。 
 本報では当社に於いて目標としたミラーマックスの高機能化・高品質化の内容および実施した技術内容について紹介する。
(本文49ページ)

KP 酸処理―オゾンECF漂白の操業経験
日本製紙株式会社 八代工場 藤井 政喜  

 世界的にクラフトパルプの漂白工程は,塩素主体から塩素を使用しない漂白法(以下ECF化)へと移行してきており,国内でも近年その傾向が強まっている。
 当社は,日本製紙環境憲章に則しクラフトパルプ漂白法のECF化を積極的に推進している。ECF化のほとんどが二酸化塩素法(D―ECF)であるが,当社技術研究所では以前からオゾンECFの優位性について研究を進めてきており,国内初のオゾンECF漂白が2001年1月勇払工場で稼働した。その操業経験を基に2003年1月から八代工場LBKPオゾン漂白を稼働させた。併せてECF化の懸案問題であるスケール対策として酸処理工程を国内で初めて導入しておりその操業状況を報告する。
(本文56ページ)

呉5マシンの操業経験
王子製紙株式会社 呉工場 平野 史朗   

  1989年,上質紙抄造マシンとして操業を開始した呉工場5マシンは,その後の市況変化に伴い,現在は,中質微塗工紙も抄造している。
 2001年度,社内「モデルマシン」指定を受け,プロジェクトチームを発足させ,生産性向上に取り組んできた。対策として,欠点および紙切れの削減を主目的とし,プロセス解析装置,超高圧走行式ワイヤー洗浄装置(Duoクリーナー),プレス脱水量測定装置(エコフローメーター),繊維長分析計,チャージ分析計,リテンション分析計等の機器を導入した。
  本報では,導入した機器の内,Duoクリーナー,エコフローメーターおよび繊維長分析計の活用状況について紹介する。
(本文62ページ)


MJターンバーの操業経験
三菱製紙株式会社 八戸工場 佐藤啓一,風間邦雄,山端茂晴  

 三菱製紙八戸工場の7号抄紙機は1997年の稼働開始以来,コート原紙,上質紙,書籍用紙,微塗工紙,軽塗工紙と多岐に渡る品種の生産を行ってきた。その中でも軽塗工紙は市場での評価が高く,生産数量が飛躍的に増加している銘柄である。軽塗工紙の生産量増加とともに,増速への取り組みを進めてきたが,シムサイザーアプリケータロールでの紙離れ不良による塗工ムラの発生があり,決定的な対策も見出せず思うように増速対応が進まない状況であった。
 このアプリケータロールからの紙離れを安定させるために,MJターンバーの導入を決定し平成15年10月から稼働を開始した。MJターンバー導入後は,紙離れの安定により軽塗工紙の増速が可能となり,さらに紙離れ対策として行っていたアフタードライヤーのドロー調節も導入前と比較して安定傾向となった。また,増速に伴う紙離れ悪化でドロー増の懸念もあったが,実際には抄速アップにも関わらずある一定のレベルで抑えられている等の操業上のメリットを確認した。
 本稿では,軽塗工紙の品質を維持しながら生産性を向上させることができた,MJターンバーの操業経験について報告する。
(本文68ページ)

フィルム積層材料の反りと分子配向特性 ―フィルムベース情報用紙のカール制御―
王子製紙株式会社 新技術研究所 宮田 忠和  

 近年,ICカードや各種プリンター用途用の「情報用紙」シートとして,広く用いられつつある2軸延伸フィルムを取り上げ,その分子配向性が積層材料のカールに及ぼす影響について検討を行った。特に,配向を調査する手段として,透過マイクロ波法分子配向測定装置を用い,それにより求めた配向性と力学物性,カール挙動との関係を調査した。
 その結果,透過マイクロ波法で求めた配向角,配向度と線膨張率の異方性との間に強い相関関係を見出した。さらに,上下層の線膨張率差(Δα)とカールの変化(ΔK)との間にも明確な直線関係が確認された。同種フィルムの貼合であっても,分子配向性の相違によりΔαが大きくなると,カール発生の要因となることを示した。さらに,このΔαとΔKとは,弾性率の異なるフィルムの組み合わせでも1本の直線相関を示していた。また,この関係は,上下層の弾性率比=1と近似し,古典的積層理論を適用して計算した結果と良く一致した。透過マイクロ波法で求めた配向角,配向度を適切に利用することにより,簡便にカール予測および制御を行える可能性を見出した。
(本文74ページ)

耐水複合紙『オーパー』の開発及び今後の展開について
日本製紙株式会社 小松島工場 製造部 山口 専三  

 耐水複合紙『オーパー』とは,紙の弱点である水に弱いという性質を克服しながら,元来,紙が持っている「しなやかさ」,「印刷適性」,「加工適性」を併せ持った『耐水複合紙』を開発する目的で,1988年より開発が始まった。現在では商業印刷分野,加工用紙分野などに広く使われるようになってきている。
 本報告では,オーパー開発当初の品質トラブルへの対応として実施した原紙からのラミネート表面への影響解析,及び原紙水分の製品への影響をなくすための対応を報告する。また,ユーザーから強く要望されていた印刷乾燥性の向上要望に答えるために,ポスター専用紙「ザ・ポスター」を開発。更には,近年目覚ましい勢いで伸びているオンデマンド印刷分野へも対応できる「オーパーMDP」の開発状況を報告する。また,オーパー製品の環境への対応についても紹介する。
(本文81ページ)

紙パルプ原料の増産,改質に関する研究
王子製紙株式会社 研究開発本部 森林資源研究所 日尾野 隆  

 紙パルプ原料の供給は,製紙産業の事業基盤である。原料の安定供給には植林地の拡大による木質バイマスの増産と質的向上を目指す必要がある。今後,食糧問題に起因する農地獲得との競合により適当な植林地の確保が困難になることが予想されている。その結果,種々の環境ストレスを伴う生産性が低い土地(劣悪地)への植林は避けられない。王子製紙は当社独自の遺伝子組換え技術を用いて,環境ストレス耐性ユーカリの作出に成功した。さらに,木質バイオマスの改質を目的にユーカリの遺伝子情報データベースを単独で世界に先駆けて構築した。今後,ユーカリの木部形成機構を解明し,ストレス耐性と併せて,木質バイオマスの効率的な生産に向けた実用化を目指す。
 高成長,高品質,かつ環境ストレスに強いユーカリ新品種が開発されれば,今まで植林できなかった土地にも実用的な植林が可能となる。これにより,木質バイオマスの安定的な生産が可能となり,紙パルプ原料はもちろんのこと,木質バイオマスが石油などの化石資源に替わる循環型資源としての活用が加速させることが可能である。さらに,高いCO2固定能力を有するユーカリの大規模植林が可能となり,地球温暖化防止に向けた二酸化炭素吸収に大きく貢献すると期待される。
(本文88ページ)

PS焼却炉発電ボイラーの操業経験
日本大昭和板紙東北株式会社 熊谷 一成  

 当社の環境方針である省資源・省エネルギーの推進及び廃棄物の削減とその有効利用を実行するためPS焼却炉発電ボイラー(流動床ボイラー)を計画・建設した。
 ペーパースラッジ(PS)は高水分で低発熱量のために熱源としての利用価値は少なく,一方廃タイヤは有効に利用されているのは一部で,タイヤ内のワイヤ処理が困難なため再利用方法が限られており,近年は廃棄物としての廃タイヤの処理が問題となっている。PSと廃タイヤを混合して燃焼させることにより化石燃料を使用せずに発電を可能とした。
 平成15年10月から本格運転に入った本設備について,燃焼温度管理方法や廃棄物発電でのタービン負荷制御運転の確立及び運転管理等の操業経験について紹介する。
(本文94ページ)

イオン交換樹脂法を用いた脱塩脱カリ装置の操業経験
 ―回収ボイラー電気集塵機捕集灰の溶解液より塩化物イオン及びカリウムイオンを除去する装置の操業実績の紹介―
北越製紙株式会社 新潟工場 工務部汽力課 片岡 陽一  

 クラフトパルプ製造・蒸解薬品工程においては,原料チップから混入したCL, Kが回収工程循環プロセス内で徐々に蓄積・濃縮される。黒液中のCL, K濃度が高くなると,回収ボイラー内で,灰の軟化溶融温度を引き下げ過熱器管等に付着しやすくなり,操業時間とともに蓄積し燃焼ガス通路を閉塞させ,回収ボイラーの連続操業を阻害することとなる。また,熱効率の低下や,高温部位の腐食速度を増進させることにもなる。これを回避するため,従来は,回収される電気集塵機捕集灰(EP灰)の一部を工程外に廃棄することにより過度の濃縮を防止しすると共に,約4ヶ月に1度各回収ボイラーを停止し,付着灰の温水洗浄,及び掃除を実施していた。しかし,EP灰には蒸解に必要なソーダ分や硫黄分も多く含まれており,EP灰の廃棄による薬品ロスが大きく,蒸解薬品の補給量が多いことが問題とされていた。
 上記問題の解決法として,EP灰中のCL,Kを選択的に除去する『結晶析出法・脱塩脱カリ装置』が既に実用化されているが,EP灰溶解液を冷却し結晶析出させるため,動力費の大きな製氷機の運転と,有効成分であるNaの回収率を向上させる目的で硫酸の添加が必要となり,ランニングコスト高であった。そこで,新潟工場において,よりランニングコストが低減可能な『イオン交換樹脂法・脱塩脱カリ装置』をメーカーと共同開発し,平成16年1月より本装置を導入して,回収ボイラー連続操業上の懸案事項であった諸問題において改善効果を得た。本稿においては,導入経緯,装置概要,および,操業実績を紹介する。
(本文100ページ)

RPFボイラの操業経験
王子製紙株式会社 苫小牧工場 動力部汽力課 松原 俊六  

 王子製紙鞄マ小牧工場は北海道の豊かな森林資源と支笏湖水系を利用した水力発電を背景に,1910年に操業を開始して以来,王子製紙の基幹工場として新聞用紙の供給を通し我が国の文化,経済の発展に貢献し,現在では世界最大級の新聞用紙生産工場として安定供給という社会的使命を果たしている。 当社では「王子製紙環境憲章」を制定し,「再生紙としてリサイクル困難な古紙をエネルギーとして回収するサーマルリサイクルの推進」を掲げている。RPF(再生紙としてリサイクルできない古紙と廃プラスチックで製造される固形燃料:Refuse Paper & Plastic Fuel)の利用をその大きな柱として位置づけており,現在推進中であるマテリアルリサイクルと組み合わせることによって資源循環型社会に適合した「古紙のカスケード利用」(古紙の品質に合わせた有効利用)を積極的に推進している。
 上記のことを受けて,化石燃料と代替できるクリーンな新エネルギー・RPFを積極的に利用し,CO2排出量を大幅に削減できると同時に廃棄物削減および有効利用が出来るRPFを主燃料とした世界初の高温高圧循環流動層型ボイラ(12.3MPa,569℃,260t/h)を完成させた。’04年4月末に使用前安全管理審査に適合し営業運転に入っている。
 本稿では,新設したRPF(第6号)ボイラ設備の概要とその特徴および試運転からこれまでの操業経験について報告する。
(本文108ページ)

巻取搬送情報システムについて
日本製紙株式会社 釧路工場 電装課 重松 孝博  

 弊社では営業力・競争力の強化とキャッシュフローの改善を目的に,「マーケティング企業への転換」と「受注・生産・販売体制の再構築」をビジョンに掲げ,紙事業の業務改革を検討・推進している。改革を完遂し,効果を上げるためには各種情報のシステム化が不可欠であり,実施にあたっては特に,本社営業系システムと工場制御系システム間でのデータ連携が重要なポイントとなる。この方針の基に,釧路工場では既存の巻取搬送システムを全面的に更新した。
 当工場は,3台の抄紙機,4台のワインダー,2つの搬送ライン(5・6搬送,7・8搬送)が存在するが,生産品目が新聞用紙専抄ともいえる工場であり,今回の一連の改造によりシステム連携による効果が発揮されやすい環境にある。
 既存のシステム(横河電機製 YEWMAC)は運用後既に12年を経過しているが,この間,巻取製品の出荷管理の自動化に多く貢献した。しかしながら,平成15年には部品供給が停止されること,更に,システムの制約上,本社営業系システムとの連携機能追加が不可能な状況にある為,老朽化したYEWMACを更新し,システムとしての機能を高めることとした。本システムは本社営業系システムとの連携の中に組み込まれて2年が経過した。
 本稿では主に,再構築された巻取搬送システムの概要ならびに使用状況について報告する。
(本文115ページ)