2004年12月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2004年12月

第58巻 第12号


製紙の明るい未来のためのソリューション
メッツォペーパー株式会社 ヘイッキ イルベスパー  

 ラインで物造りをする多くの産業では資金回収が容易でないため投資が控えられ,結果として伝統的製造業を停滞に追い込んでいる。生産性と生産性向上に関する設備投資が成功の鍵を握る世界では,遅々とした向上では大きな回収を期待する事は出来ず,成果の無い過酷な投資サイクルに終わってしまう。製紙産業では,前向きな生産性の改善,製品品質の向上もしくは新事業への進出のみが長期に渡り成功をもたらす基である。
 生産性に対する己の挑戦だけでなく電子メディアからの脅威にも晒されているが,世界的に見ると一人当たりの紙消費量は増加を続けており,世界での紙の消費量は今後とも年率2―4%成長するものと考えられている。紙のコスト競争力が他の競合関係にあるメディアと比較して優位である限り,使い勝手における汎用性の高さから将来共に市場で強い競争力を維持するであろう。
(本文2ページ)

既設ヘッドボックスのCP制御化改造
 ―BTFシステムの改造導入結果―
川之江造機株式会社 設計部 第一設計課 矢野 順一  
 
 既設ヘッドボックスを改造することなくCP化できることは,BTFシステムの大きな特徴である。既設ヘッドボックスを改造しないので,当然,工事は短期間(24時間程度)である。2003年7月25日に,日本第一号機のBTFダイリューションシステムがスタートアップした(丸住製紙株式会川之江工場PM3)。
 現在まで順調に,当初の予想を上回る良好な結果を残しつつ運転されている。
 今回は,このプロジェクトの概要と実データによる結果を中心に報告する。ヘッドボックスのCP化が従来の方法に較べてずっと経済的に,低リスクで施工された実例である。
 BTFシステムは,ヘッドボックスも含めた全ヘッドボックスシステムとしても提供可能である。BTF新ヘッドボックスについても報告する。
(本文12ページ)


最新板紙用ヘッドボックス
アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 設計部 佐藤 幹晃  
 
板紙の最近の傾向は,軽量化と高付加価値化,美粧化といわれている。すなわち,以前から重視されてきた強度に関する品質はもとより,印刷用紙に匹敵するような高い印刷適性も要求されてきている。したがって,板紙用ヘッドボックスにおいても,印刷・情報用紙用ヘッドボックスと同様の性能が求められているのが現実である。我がフォイトグループでは,以前から紙種を問わず高品質のヘッドボックスを供給してきた。同時に,ハイタービュレンスW型ヘッドボックスとモジュールジェット濃度コントロールシステムという高い信頼を得てきた技術をもとに,新たにマスタージェットヘッドボックスと呼称する高品質なヘッドボックスを開発してきた。その一方で,最小の生産コストで最大の生産性を確保する命題のもと,経済的にも優位なヘッドボックスの開発にも取り組んでいる。
(本文21ページ)


サクセスフォーマとその海外における展開
株式会社小林製作所 製紙機械設計部 向井 正仁,鈴木 隆  

 国際的な競争がますます激化する紙パルプ業界にあって,板紙の生産性と品質を併せて向上させ,競争力を強化するために有効な抄紙機として「サクセスフォーマ」がある。
 このフォーマは多層抄き板紙の,地合をはじめ優れた品質特性を実現し,国内外で広い範囲の板紙品種の生産に採用され高い評価を得ている。
 このフォーマは「K―FLOW」シリーズのヘッドボックスと組み合わされ,フォーミングワイヤ,メーキングワイヤ,トランスファフェルトから構成されており,ヘッドボックスは中速用のエアクッションチャンバ付きと,高速用のハイドリック型があるが,いずれも特殊設計のステップマニホールドタービュランスジェネレータによって,均一で良好な繊維分散効果が得られる。フォーミングワイヤには各種のフォイルが設けられ,メーキングワイヤにはダンディロールとデフレクタなどが備えられ,その内のダンディロールの存在が独自のもので,優れた地合を得るために重要な意味をもっている。
 近年このフォーマが中国でも高い評価を得て注目され,2000年に理文造紙にライナボード抄紙機(東莞PM3)を納入し,円滑な立ち上がりと画期的な製品品質が評価され,リピートオーダとして2003年に同じくライナボード抄紙機(常熟PM5)を納入稼動し,前回を上回る好成績をあげ顧客は高い投資効果と大きな満足を手に入れた。
 製品の高品質と円滑な立ち上がりの決め手は,抄紙機本体に問題がないだけでなく,プロジェクトの計画当初から参画し,エンジニアリングサービスとしてプラント全体の設計や,付属機器等について適切な指導助言をおこない,機器の製作や現地工事についても管理を徹底させることであると考えている。
(本文31ページ)


地合向上のための理論と実際
メッツォSHI株式会社 山崎 秀彦 メッツォペーパー社 マイケル オデル,ぺッカ パカリネン  
 
本稿は地合向上のための理論と実際の概要である。目的は,工場の作業者が地合を向上させるための基本的メカニズムを理解し,いかにこうしたメカニズムが実際にコントロールできるかを理解するためのバックグラウンドを提供することにある。扱う範囲は,主として洋紙であり,各種ヘッドボックスとフォーミングセクションに関係している。力点は第1に紙に置いているが,板紙に対する議論としても少なからず妥当性がある。
 いかに地合が繊維の濃度,シェアー,乱流,フローエロンゲーションおよび脱水によって影響されるかの原理を説明する。紙料と紙料調製の領域では,繊維の性質,リファイニング,ウェットエンド化学などの影響を考察する。地合評価に関しても,主要な測定方法とその有効性について概説する。地合の向上は他の紙の性質とは分離して考慮することはできない。それで地合は本稿の主たるテーマであるが,地合調節のためのアクションが紙の他の性質に及ぼす影響についても述べる。
 良好な地合を得るためには,いかにヘッドボックスとフォーマーの操作を最適化するかが重要である。地合欠陥の発見,系統的調節法および地合のルーチンコントロールのための戦略についても述べる。また,Z方向地合プロファイルの測定とコントロールに基づいた新しい地合調節チューニング技術を紹介する。
(本文43ページ)


フォーマの最新技術
 ―VentaShoeを用いたベルベフォーマのアップグレード―
三菱重工業株式会社 紙印刷機械事業部 藤木 恵一  

 1969年ブレード型ツインワイヤフォーマ(以下ブレードフォーマと称す)第一号機であるベルベフォーマI型が市場に投入されて以来,二枚のワイヤで原料を挟み込み高速化の障害となる原料ジェットの自由表面を極力少なくするというコンセプトが認められ,ツインワイヤフォーマが高速抄紙機のスタンダードとなっている。このツインワイヤフォーマには,多数のブレードにより発生する圧力パルスで紙層形成を行うブレードフォーマ及びブレードフォーマの初期脱水部にロールによる定圧脱水を導入したロールブレードフォーマがあり,夫々の特徴を延ばすべく日々改善が進められている。
 三菱重工業鰍ヘ,ブレードフォーマであるMHフォーマとロールブレードフォーマであるMJフォーマを提供している唯一の製紙機械メーカであり,昨年,両フォーマ開発過程で得られた知見を基に,MHフォーマにロールブレードフォーマの技術を適用しその性能向上を計るVentaShoeテクノロジーを発表した。2004年7月現在,近々スタートアップするマシンを含めVentaShoeの実績は11台を数えるに至った。本論文では,従来のベルベフォーマにVentaShoeテクノロジーを適用した実機改造事例を取り上げ,そのコンセプト,改造内容及び改造結果について報告する。
(本文56ページ)


シュープレスの最新技術
アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 設計部 野々垣 剛  
 
シュープレス技術による技術的,経済的な利点は,パルプマシンからティッシュマシンまで,つまり,ほぼ全ての紙種にまでその適用範囲を広げている。我がフォイトグループのニプコフレックスシュープレスも20年前の板紙抄紙機向け第1号機から始まり,事実上全ての紙種の最新生産ラインに,すでに適用がなされている。ニプコフレックスプレスは既設設備の改造や新設マシンにこだわらず,生産性向上や操業効率の向上に寄与し,経済的な面からも,その優位性を示している。また,このシュープレス技術はプレスパートでの適用だけにとどまらず,カレンダへの活用も始まっている。
(本文63ページ)


10M/Cシュープレス化改造
王子製紙株式会社 春日井工場 栗本 謙二  

 王子製紙株式会社春日井工場の10マシンは,塗工紙の安定供給を図る為,当時の最新鋭技術を導入し,1991年2月に営業運転を開始した。主として,上質紙及びA2・A3・B2塗工原紙を生産しているが,2002年1月に,設計抄速1,300m/minでの連続安定操業を目的として,3Pシュープレス化改造を実施した。改造後4P出口水分は,4〜8%低下し,従来から問題となっていた,プレス搾水不良に起因するドライヤー乾燥能力不足及び湿紙強度低下による抄速抑制が解決され,計画通りの増速・増産を達成した。
 本報では,改造概要,操業経験及び導入効果を中心に報告する。
(本文72ページ)


7号抄紙機ヘッドボックス・フォーマー改造による品質改善
北越製紙株式会社 新潟工場 抄造第5課 北村 智樹  

 1990年に稼動した新潟工場7号抄紙機はオンマシンにおいてA2・A3コート紙を抄造するマシンである。当マシンには克服すべき品質課題があり,その為には原紙プロファイルの改善及び原紙地合の向上が不可欠であるという結論に達し,2001年にヘッドボックス及びワイヤーフォーマーの改造を実施した。ヘッドボックスには希釈方式によりBDプロファイル制御を行う「シムフローD」を,ワイヤーパートにはカウンターブレード方式による地合改善効果が著しい「デュオフォーマーD」を採用した。
 本報文ではこれら改造による設備・操業及び品質改善について報告する。
(本文76ページ)


連続クラフト蒸解における広葉樹材パルプの高収率化とその評価法(第3報)
―クラフトおよびポリサルファイド蒸解液とアントラキノンを用いる全缶等温蒸解のパルプ収率―
筑波大学 大学院生命環境科学研究科 横山 朝哉,大井 洋  

 本報告では,連続クラフト蒸解における広葉樹材クラフトパルプの高収率化とその評価法の研究に関する前報を総合し,考察を加えた。
クラフト蒸解液(白液)にポリサルファイド(PS),および,アントラキノン(AQ)を添加すると,パルプ収率が約4.5―5%向上した。また,黒液を白液で置換することにより,収率はさらに向上した。添加する全ての活性アルカリ(AA)の70%を含むPS蒸解液,および,AQを反応開始時から用い,蒸解温度が135℃に到達したときに,残りの30%のAAを含む白液で黒液を交換すると,最高のパルプ収率が得られた。
 広葉樹材クラフトパルプの収率と,パルプの酸加水分解により得られるキシロースのグルコースに対する量比(X/G比)の間には,良い相関関係が存在した。しかし,この関係は原料樹種に依存するため,X/G比から収率を測定するためには,予めそのパルプの原料樹種について,収率とX/G比の関係を調べる必要がある。また,比較的高い収率のパルプでは,収率とX/G比の相関は直線的でなくなり,より大きいX/G比を持つことがわかった。
 工場パルプのX/G比の分析により,パルプ収率に関して,PS―AQ蒸解液とクラフト蒸解液とを添加する全缶等温蒸解(PS―AQ ITC)法が,クラフト蒸解液のみを添加するクラフトITC法に対して優位であること示された。すなわち,工場パルプのPS―AQ ITC法における収率は,約57.0%と見積もることができた。これは,非常に高い収率であり,工場におけるPS―AQ ITC法が,最も効率の良い条件で稼動されていることが明らかになった。
(本文88ページ)