2004年3月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2004年3月 

第58巻 第3号(通巻第636号) 和文概要


ウェアラブルコンピュータの現状と産業分野への応用
産業技術総合研究所 知能システム研究部門 興梠 正克  

 新聞や雑誌などのメディアにおいて,「ウェアラブルコンピュータ」という用語が用いられるようになり,広く知られるところとなった。本稿では,この「ウェアラブルコンピュータ」なる用語の定義を行い,それを構成する基本要素部品,すなわちディスプレイ,入力インタフェース及びセンシング技術について述べる。本稿では特にセンシング技術として,筆者らによって提案された利用者の位置・方位同定(パーソナルポジショニング)技術について取り上げる。最後にこれらの技術の産業への応用の可能性について述べる。
(本文16ページ)


包装機の折目検査画像処理装置の使用実績
王子製紙株式会社 江別工場施設課 寺田 壮宏  

 王子製紙(株)江別工場には2台の小判カッター設備があり,ここでは,抄紙機で抄造したコピー用紙の巻取りをカッターにてA3,A4,B4,B5の各サイズに断裁し,断裁した用紙を包装機で250枚,500枚または1,000枚を1冊に包装後,ダンボールで梱包している。
 当工場では,抄紙過程での紙自体の欠陥検査は従来から重要視し,全ての抄紙機に紙欠陥検査装置を設置していたが,包装・梱包過程での包装状態及び梱包状態の検査は重要であるにもかかわらず専用の検査装置が設置されていなく,包装状態の検査には光電スイッチ,梱包状態の検査には汎用イメージセンサーを利用していた。しかし,これらの設備では全ての欠陥を検出することが不可能なため,人による監視・検査も常時行っていた。
 そこで当工場では,2001年10月に包装状態および梱包状態を自動監視する専用の検査装置を導入し,検査データの定量化と検査漏れの防止を図り,少人数で多様の作業をしているオペレータの負荷を軽減させた。
 本稿では包装状態を検査している折目検査画像処理装置の使用実績について報告する。
(本文21ページ)


高砂工場におけるDCSの更新について
菱工株式会社 高砂事業所設計課 小西 康弘  

 三菱製紙高砂工場は抄紙機,コーターなど抄紙設備にDCSを導入して,CRTオペレーションによる操業を行っている。昭和60年頃よりDCSを導入してきており,システムが老朽化してきている。その間,操業条件などの変化に対し,幾たびかの改造を繰り返してきた。DCSはプロセス制御に対し,重要な役割を担っているため,故障が発生すると操業に大きく影響する。適正な保全計画を作成し,システムの延命策を実施してきたが,各部品の劣化,消耗部品の入手など,保全的な問題が発生してきた。また,改造部品の入手困難など,操業条件の変化に対応ができなくなってきた。このことから高砂工場では,老朽化したDCSを平成14年より平成15年8月の間で3システムを更新した。
 本稿では,このなかで8号コーターのDCS更新について,更新の経緯,更新時間の短縮に対する取り組み,稼動状況などを紹介する。
(本文28ページ)


操業支援システムの使用経験と将来
王子板紙株式会社 大分工場施設部動力課 吐合 秀司  

 王子板紙株式会社大分工場は主として段ボール原紙と白板紙を生産している。
 当工場では,従来から積極的に古紙の利用を進めてきている中で,段ボール原紙の生産を行ってきた。
 今般,工場の競争力強化の為に大幅な要員効率化と段ボール原紙の品質向上を図ることを目的に,製造工程の大規模な転換を計画・実施した。工事は2002年4月に着工され,同年10月に完成した。本計画では大幅な製造工程の変更とオペレーターの極少化を短期間に実施しなければならず,そのため既存のDCS(Distributed Control System)ソフトを根本的に見直すことが必要となった。こうした当工場のニーズに合致するものとして,横河電機(以下メーカー)製の操業支援システムEXAPILOT(以下PILOT)を採用し良好な結果を得た。もちろんPILOTを使いこなす為に切磋琢磨した経緯も同時に報告しておきたい。
 尚,PILOTとはシーケンス言語をフローチャート化してどのようなユーザーでも分かりやすいプログラムを構築できること等様々なメリットを得ることのできるソフトウエアーで有る。
 併せて,今後企業として生き残るためには,より効率的な作業ができること,および,オペレーターの情報取得を支援できる多様な操業支援システムが求められる。その具体例として筆者の私見を数点挙げておきたい。
(本文32ページ)


モバイル監視システムの使用事例
日本製紙株式会社 伏木工場工務部動力課 加藤 弘樹,長井 保之  

 DCS操作は,通常中央操作室でオペレータが操作し,他のオペレータが現場で運転状況を中央操作と確認を取りながら操業を行っている。しかし当工場の用排水係の直1名化計画においては,中央操作室が空室となってしまうため,今までの操業形態では対処できなくなった。
 そこで今回は,モバイル監視システムを採用し,次期DCSの先駆けとなるスタイルを構築した。オペレータが端末を持ちパトロールしながら,途中で発生するアラーム処理,データ設定変更などを可能にしたことで,2003年4月直1名化が実現した。
 本稿では,約2年間のモバイル監視システムの使用結果について報告する。
(本文39ページ)


モバイルDCSの現状と使用実例―製造現場のIT化:携帯情報端末を利用したフィールド作業支援の実際―
横河システムエンジニアリング株式会社 ソリューションシステム部マーケッティングGR 鈴木 一業,井上 仁

 DCS誕生から二十数年が経過して,さまざまな製品がプラントの自動運転・安全運転を目指して誕生し,既に導入・運用されている。その結果として監視室での少人化が進み,また,オペレータの役割もフィールド作業やスタッフ業務の領域をカバーするまで広がってきている。
 製造現場,とりわけフィールド作業に着目すると,未だに手作業や人手に頼ることが多く,かつ,人の知恵がモノをいう世界であるため,フィールドで働く人の能力を引き出すためのツールが従来から望まれてきた。こうした現状をふまえ,製造現場におけるフィールド作業を容易にかつ効率的に行なえるツールとして,『現場支援パッケージe現場』を開発・販売したので紹介する。
(本文47ページ)


モバイルDCSの現状と使用事例
株式会社山武 亀井 宏和  

 装置産業の製造部門においては,長年に渡り自動化やDCS化などプロセスオートメーションを導入し,運転の高度化・合理化を実施してきている。それらオートメーションの導入の結果,プロセスデータを計器室で集約して監視・操作・異常検知が行えるようになり計器室における運転監視業務は,10年前,20年前に比べ,飛躍的な効率化と負荷軽減を実現してきている。
 その一方で,切り替え作業や原料投入,調整作業,そして巡回点検などの現場での業務は,依然として現在も存在しており,将来的にも多くの現場作業が残ると予測される。これらの現場作業は,様々な場面でプロセスの状況を把握しながら進めなければならない。そのため,ページングや構内PHSで計器室の運転員とコミュニケーションを取るか,運転形態によっては現場と計器室を行き来しながら作業を進めているのが現状である。これからのプラント運転の効率化は,現場業務の支援がその大きな1つの課題になると考えられる。
 この現場業務支援の課題を解決するために,山武では,次世代プラントオペレーションコンセプト『Operation Anywhere』(オペレーション・エニーホェア)を昨年8月に発表した。Operation Anywhereとは,計器室という場所に依存することなく,TPO(Time, Place, Occasion)に適した形で運転に必要な情報を入手し,場合によっては操作も可能とするプラントオペレーション環境,およびオペレーション形態そのもののことである。
 本稿においては,Operation Anywhereを具現化する一つの形態として,モバイルDCS『Plant WalkerTM―HV』について紹介させていただきたい。
(本文53ページ)


モバイルDCSの現状と使用事例
東芝三菱電機産業システム株式会社 太田 宏  

 90年半ば以降情報技術(IT)は急速に社会インフラを変革させており,産業プロセス監視分野においてもITを活用した新たな操業形態への変革が始まっている。DCSはプラントを安定操業するための重要な運転データを保有している。ITによるDCSのオープン化によって,他システム・他設備そして工場全体との接続が容易にしかも低コストで実現できるため,プラント運転データの活用ができるようになり,工場各部門間の情報連携が可能となってきた。
 情報連携による工場各部門の操業形態の有るべき姿と各部門における操業支援システムの展開及び各種操業支援システムでのモバイル端末の使用例について紹介する。また,現場操業支援システムの一つであるモバイルDCSについて現状当社が提供するシステムと将来リモート操作機能を付加するにあたって,解決すべき課題と解決手段について説明を行う。
(本文57ページ)


アドバンスト・ワインダー・アドバイザー―欠陥検査システムと連携したワインダー・コントロール―
コグネックス・コーポレーション マークゥ・ヤスクライネン(Ph.D.)  

 コグネックス(COGNEX)社は欠陥検査・分類システム「スマート・ビュー(SmartViewTM)」と連携した新しいワインダー・コントロール・システム「アドバンスト・ワインダー・アドバイザー(Advanced Winder Advisor)」を開発した。本システムは,抄紙機やコーターなどに設置されたコグネックスの欠陥検査システムの検査結果と,流れ方向位置を定期的にコーディング(Coding)する新しいマーキング方法により,下流側のリリーラーやワインダーにて処置すべき欠陥の位置で正確に自動停止させるシステムである。これにより,リリーラーやワインダーにおいて,欠陥画像を見ながら処置すべきか否かの判断をし,処置すべき欠陥はその位置で精度よく停止させることが可能となった。従来と比較して,リリーラーやワインダーでの作業効率は飛躍的に向上する。
(本文65ページ)


ウェッブ検査における技術の方向性―NASPシステムにおけるセンシング技術とその方向性―
オムロン株式会社 ビジョンシステム事業部技術部 中田 雅博  

 2002年度に商品リリースしたNASP―マルチ500のプラットフォームをベースにマルチ530/NASP―FXへとプラットフォームを進化させ商品をリリースした。
 NASP―マルチ530においては,欠陥検出性能の向上として,欠陥特徴と銘柄によって変化する地合成分をデジタル処理により分離するという,オムロン独自のアルゴリズムを開発した。
 さらに,NASP―FXという商品においては,リアルタイム処理性の高い欠陥処理部・録画処理部とデータベース/HMIを中心としたデータ処理部の統合を実現し,ダウンサイジングを行った。RTOS(リアルタイムOS)と高性能パソコンにより実現されている。
 また,カッターソータシステムを当社のPLC(プログラマブル・コントローラ)によるリニューアルを行いNASPシリーズ+カッターソータシステムをリリースした。
 今後の商品開発としては,当社センシングのコンセプトである「見る」=検出/「観る」=分析/「診る」=診断を基本に検出性能は勿論のこと,分析・診断の領域に検査システムを進化させる。その第1STEPが,ニューラルネットワークを利用した欠陥種別判別機能であり,NASPシステムにその機能を統合することにより,生産性向上に役立つ商品の実現を行いたいと考える。
 今後もコンセプトをベースに顧客価値を追及した商品を開発,販売していく所存である。
(本文70ページ)


工場内工程間通信のオープン化―コントロールバスPROFInetの適用―
安川シーメンスオートメーション・ドライブ株式会社 応用技術グループ 大島 賢治  

 工場の自動化,生産効率化を追求していく中では,生産にかかわる各種情報をいかにスムーズに流せるかということが課題になる。
 管理層のコンピュータ間通信は比較的古くからEthernet(TCP/IP)が標準として使われている。
 また,フィールドバスは工場ネットワークの下位部として,ここ10年で急速に生産現場に浸透し,いくつかの種類があるものの,一応の標準化は完了したものと考えられる。しかし,工場ネットワークの完成にはフィールドバスだけでは充分でなく,その上位レイヤーも含めて考える必要がある。
 本稿では,フィールドバスの上位にあたるコントロールバスに焦点を当て,Ethernet,TCP/IP等のマーケット標準の技術を適用し,且つ,通信に関する処理のプログラムレスで異機種のコントローラ間を接続可能な,オープンネットワークであるPROFInet(プロフィネット)について説明し,製紙設備での適用例について紹介する。
(本文76ページ)


新型フリーネス計“カヤーニKSF”―全自動フリーネス計“カヤーニKSF”によるオンラインフリーネス測定の紹介―
メッツォオートメーション株式会社 滝川 直人,エサ ピーライネン  

 手分析によるフリーネス測定はプロセス制御に必要な測定周期が得られず,また従来のセンサーによる自動測定では手分析値との相関が充分でない。新型カヤーニKSFは,TAPPI T227に基づきフリーネスの絶対値測定を行うアナライザーで,手分析測定に比べ繰返し制度,測定周期に優位性がある。カヤーニKSFによるフリーネスの測定結果は手分析値との代用ができ,またプロセスのCSF制御にも用いることができる。
 最大5ヶ所の異なる場所に取付けたリモートサンプラーにより,最高15%濃度のサンプルを最長100mの距離でアナライザーまで移送する。1リッターの濃度調整済みサンプルと手分析装置と同様のワイヤー,チャンバーを使用する。サンプル調整工程では高精度な濃度調整により0.3%濃度に調整される。これはワイヤーを介した排水カーブが手分析方法と同じであり,従いフリーネスのキャリブレーションが不要であることを意味する。平均,24時間に約360回のフリーネス測定を行う(4分/1測定)。
 今日オンラインアナライザーはその投資効果を充分満足させなければならない。これを達成するために,アナライザーの情報を信頼することとメンテナンスを容易に行えることが重要であり,これらが自動で標準フリーネスを測定するアナライザーを使用する主要な条件となる。
(本文80ページ)


紙パルプ工業におけるpH計測の最新の情報 ―信頼性のあるIn―Line計測を得るためには―
メトラー・トレド株式会社 渡辺 泰生  
 紙パルプ工場においてpH測定は重要な計測管理項目のひとつである。しかし,過酷なプロセス条件により,現状は設置台数の約30%にトラブルが発生し,満足に働いていない。改めてpHの基礎理論からこれらの事実を見直すと,その解決方法が得られるケースが多い。
 本報ではpH計測の理論に簡単に触れた後,最新のpH計測技術と紙パルプ工業における具体的な応用例を紹介する。
(本文87ページ)


パルプ漂白中のアルカリ―過酸化水素の役割
東京大学大学院農学生命科学研究科 友田 生織,松本 雄二,飯塚 堯介  

 酸素漂白済みクラフトパルプ(NOKP)に対し,種々の条件で過酸化水素処理を行い,2つの方法で分析を行った。
 一つは自ら開発したα―カルボニル基の定量法を用いる方法であり,他の一つはカッパー価法を用いてNOKP中の残存リグニン量を測定する方法である。
 その結果,NOKPは過酸化水素処理以前により強いアルカリ処理を履歴しているにもかかわらず,今回実験に用いた弱い条件でのアルカリ処理によってニトロベンゼン酸化後のバニリン収量に増加がみられた。このことは弱いアルカリの化学の重要性を示している。
 過酸化水素はイオン化の如何に関わらず,パルプ中の過マンガン酸カリウム消費物質を除去する能力を持つことが示された。また,イオン化した過酸化水素は従来考えられていたパルプ中のα―カルボニル基や着色構造を攻撃する以外にも以下に示す隠れた機能を持つことが強く示唆された。すなわち,イオン化した過酸化水素は,可溶化した過マンガン酸カリウム消費成分の再吸着を防ぐこと,もしくは,新たな過マンガン酸カリウム消費成分の生成を抑える働きを有していると考えられる。
(本文95ページ)


段ボール箱手かけ穴の応力解析―穴の高さ位置と応力との関係―
愛媛大学地域共同研究センター 松島 理  
愛媛大学名誉教授 松島 成夫  

 有限要素法によって,段ボール箱側板(横265mm,高さ220mm)の手かけ穴(幅50mm,高さ2r=25mm,板上辺と穴中心との距離h0=25〜75mm)上辺に一様持上げ応力が働く場合の弾性応力解析をおこない,その応力成分とh0との関係を議論した。
 板の横,高さ方向の垂直応力σx,σyおよびせん断応力τxyの絶対値の大きい値は,穴上辺にある。|σx|の最大値は,h0<41.25mmでは穴上辺中央に,h0≧41.25mmでは板上辺中央にある。|σy|の最大値は,h0<75mmでは穴側端に,h0>75mmでは穴上辺中央にある。|τxy|の最大値(=|τxymin|)は,穴側端よりr/2(r:穴の半径)上にある。h0の増加によって,σyの最大値は減少し,他の応力成分についての最大値,最小値の絶対値は増加する。
(本文102ページ)