2004年1月 紙パ技協誌

[プリント用ページ]

紙 パ 技 協 誌 2004年1月 

第58巻 第1号(通巻第634号) 和文概要


古紙処理設備における“フォールウォッシャー”の効果について
栄工機株式会社 加茂 誠行  

 地球環境保護運動の一環として世界的に,古紙のリサイクルが活発に行われている。そこで,弊社の“フォールウォッシャー”が古紙処理設備の中でニーズに合った工程において洗浄機,灰分除去機,繊維回収機等として導入していただいている。納入台数も80台を数え,全国各地の製紙工場において,上記以外にも様々なフローの中で日夜稼動している。
 本機の構造上の特徴としては,ドラム内部に撹拌羽根とセキ板を設けることにより,撹拌羽根では紙料をドラム内でダマにさせずに金網接触回数を増やす効果,撹拌羽根と金網の隙間による半強制脱水による洗浄効果を促し,セキ板ではドラム内部での滞留時間を調整している。また,この効果を更に効率的に発揮させるためには高速回転での繰り返し作用が必要条件となる。そこで弊社独自の発想にて「二軸タスキ掛け懸架方式」の駆動方法を採用することにより,条件を満たす安定した高速回転を得ることが出来た。また,ドラム内部には3本もシャワーパイプを設けてあり,全面置換シャワーでは撹拌羽根にて掻き上げられた紙料に置換洗浄水として,高圧シャワーは金網の目詰まり防止のために,紙料濃度が高くなるドラム中間部には洗浄効果を促進させるための置換水パイプを設置してある。
 本機の運転上の特徴としては,入口濃度は自由自在(0.5%〜4.5%)のために工場内のどのフローにも導入が可能になった。また,入口濃度による金網の選定およびインバータ制御でのドラム回転数を変化させることにより,灰分の除去率,紙料歩留,出口濃度もユーザーにあった条件に合わせることが可能となった。
 “フォールウォッシャー”は古紙の質悪化に伴いさらに能力を発揮できると考えているので,今後も古紙処理設備への納入実績と運転データを元に,さらなる本機の発展と導入箇所の追究していく所存である。
(本文37ページ)


平判シート選別作業の自動化について―吸引ベルト搬送による平判自動選別機―
東京給紙機株式会社 馬場 雄二  

 製紙工場の最終工程である仕上げ部門の自動化については,カメラの発達ならびに自動選別機の開発により,良紙,不良紙,の選別の自動化が行われていて成果が上がっている。
 弊社では,操作性が簡便で且つ低価格な平判自動選別機の開発が出来ないものかと全社あげて検討し,吸引ベルトによる搬送に着眼した。その結果機械の簡素化とコストの低減に成功して,低価格の平判自動選別機を業界に提供出来るようになった。この選別機は簡単な構造のため,特別な熟練を必要とせず女子作業員による運転操作を可能にした。
 印刷は文化のバロメーターと言われて久しいが,紙もパソコンの出現により新しい用途も増え,それにともなって品質の向上,均一性が益々さけばれるようになっている。検査も,目視から自動選別機による検査へと移行しつつあるが検査自体は直接生産を生む分けではない為,検査に高額な投資をすることは昨今の景気の状況からして不可能な場合が多い。この装置が更に広く業界に定着するようになるには,新しいアイデアを考え続ける事により,コストの低減を計りより低価格で高性能な装置に進化させることがもっとも重要である。
 弊社では,今までに開発をして来た機械のノウハウを活かすとともに新しいアイデアを組み込み,これからも全社あげて技術開発に努力を重ねて業界に寄与したいと考えている。
(本文41ページ)


製紙産業と地球温暖化対策―王子製紙の取組み―
王子製紙株式会社 環境部 多田 友紀  

 京都議定書はロシアの締約をもって間もなく発効されようとしている。しかし,わが国においては2回の石油危機経験により省エネブームが発生し,その結果1990年頃までには全ての産業界において,殆どの省エネルギー事業が完了し,諸外国に比べ格段のエネルギーの効率化が達成されている。
 わが国ではこうした不利な条件の下,国内の各業界では温暖化問題および昨今の新たな環境問題対応として各社とも「循環型企業」を目指し,さまざまな経営方向の転換に力を注ぎ始めている。一方わが製紙産業界では,古くから古紙のリサイクル,バイオマス・エネルギーの利用,植林活動等の模範的循環型産業として歩んできた。おそらくこれほどまで巨大な資源循環の上に成り立っているマスプロダクション産業は他に例がないであろう。
 本報告では日本のおかれた現状に対する製紙業界の温暖化対策への貢献を説明するとともに,業界としての相応の権利主張と王子製紙グループの取り組みを述べた。
 京都議定書対応の方策として,当業界でできることは@排出量の直接的削減(例えば省エネ),A排出量の間接的削減(エネルギー源の変更),BCDM/JIの活用,C国内林管理によるシンクの4方法しかないだろう。後半ではこうした選択肢に基づく王子製紙グループの具体的取り組みと削減目標について各々具体的に紹介した。当社グループでは,上の@,A,Cにより2010年時点で1990年に対比して約30%のCO2削減を計画し,実際に活動を開始している。更に海外植林CDM事業,温暖化対策研究等にも広く可能性を求めている。最後に業界を代表して,温暖化に関する要望と提言を述べた。
(本文46ページ)


環境ストレス耐性ユーカリの開発と産業植林
王子製紙株式会社 研究開発本部 森林資源研究所 河津 哲  

 紙・板紙の製造コストで最も大きな部分を占めるのは原料費である。これまで原料費を低下させるために,安価な外材の調達を進める努力がなされてきたが,地球規模での環境問題が深刻化しつつあり,良質で安価な原料の安定確保は今後ますます重要な問題になってくると思われる。このような状況の下,製紙各社はパルプの安定確保を目的に海外での産業植林を実施しており,植林面積は増加傾向にある。また,さらなる植林木の生産性の改良のためには,ユーカリ新品種の開発が望まれている。王子製紙では植林現場での実用性の高い選抜・交雑育種の実践に加えて,今後発展が期待できる遺伝子組換え技術を取り入れ,ユーカリを対象とする効率的な育種技術の開発を検討している。これまで,ユーカリの組織培養技術である苗条原基法と早生分枝法を開発し,さらにこれらの技術を応用した遺伝子組換え技術を完成した。現在,森林資源研究所ではパルプ品質と成長特性を遺伝子組換えによって改良する研究を行っている。本発表では,植林環境における環境ストレスとして問題になっている乾燥や酸性土壌を研究対象として,ユーカリ交雑種(Eucalyptus grandis×urophylla)に乾燥ストレス耐性を与える効果が確認されている転写因子(DREB1A)遺伝子と酸性土壌耐性を付与する効果が確認されているクエン酸合成酵素遺伝子を導入した研究結果について紹介する。
(本文55ページ)


遺伝子組換えユーカリの開発
日本製紙株式会社 研究開発本部 森林科学研究所 渡邊 惠子,海老沼宏安  

 日本製紙では植林地における単位面積当たりの収量の増加と品質向上を目的として,植物バイオテクノロジーを応用した高バイオマス生産性樹木の開発を行っている。欧米各国に厳しく管理されている遺伝子資源や特許の問題を解決するために,当社では独自の要素技術の開発を行っている。本報告では,高バイオマス生産性樹木の開発戦略に必要な要素技術として,@遺伝子資源の確保,A有用遺伝子の確保,B遺伝子導入法の開発,C大量増殖技術の開発,D形質評価技術の開発について述べる。また,これら要素技術の組合せによる耐塩性遺伝子組換えユーカリの開発について報告する。
 遺伝子組換え樹木の実用化には,遺伝子組換え体の使用に関する社会的受容の問題を克服する必要がある。当社が独自に開発したMATベクターシステム○Rは@不要な遺伝子(抗生物質耐性遺伝子)の除去,A有用遺伝子の多重導入,B不稔クローンの利用を可能とする技術である。
 今後,これらの要素技術を組合せ,利用価値の高い早生樹であるユーカリ,アカシア,ポプラのバイオマス生産性を向上させることにより,植林可能地域の拡大とチップ収量の増大を図り,再生産資源の安定的な供給および環境保護に役立てたいと考えている。
(本文62ページ)


抄紙機操業解析システム,MOASの操業経験―ワイヤーパート,プレスパートの最適化―
日本製紙株式会社 八代工場抄造部 中川 祐幸  

 マシンの高速化が進む中,これまで以上にマシン全工程の水分挙動及び紙層形態を把握することが重要になってきている。これらをリアルタイムかつ定量的に観測することができれば,品質安定はもちろん,断紙削減及び増速による生産性向上に大きく貢献するといえる。
 MOASは,BM計,ドライヤー,ドライブデーターなどから,各ドライヤー水分,紙層形態の指標となる熱伝達率係数などを算出するツールであり,エコフローと組み合わせることで,各プレス水分,ワイヤー上原料濃度,プレスの搾水性能を評価するプレス係数といったパラメーターまでもが取得可能となる。リアルタイムかつ定量的なマシン全工程管理の実現に向けて,必要不可欠なツールとなっていくことが期待される。
 八代N1,N2では,MOASの有効活用から,断紙削減及びスピードアップによる増産,フェルトのライフアップなどたいへん大きな成果を上げている。
 本稿では,MOASならではのパラメーターである熱伝達率係数,プレス係数,プレス出口水分を活用したワイヤーパート,プレスパートの最適化への取り組みについて紹介する。
(本文67ページ)


フィールドバスの最新技術について
日本製紙株式会社 伏木工場 松本 和彦,大門 真一  

 日本製紙(株)伏木工場では,2001年4月にN―DIP製造設備へ紙パ業界で初めてフィールドバスを導入し,当時は国内最大規模のFoundationフィールドバスシステム(以下フィールドバスと記述)であった。
 今回第2期として,F―DIP製造設備のDCS化及びフィールドバス導入に併せて,N―DIP製造設備のフィールドバス機器を最新機種へリプレースし,DIP製造設備のDCSのハードウェアとソフトウェア,フィールドバス機器をバージョンアップしたことで,最新のフィールドバスシステムが構築された。
 本稿では,第1期導入時に抱えていた課題が,約2年後にどの様に改善されたかを,DIP製造設備で完成した最新のフィールドバス技術についての検証を報告する。
(本文74ページ)


3M/Cワインダー自動化について
中越パルプ工業株式会社 二塚工場 奥村 徹  

 弊社二塚工場3号マシンは昭和63年に稼動したA巻4丁取の新聞専抄マシンである。ワインダーにおける卸替え,スリッタ位置決めは,稼動当初より自動化していたが,巻取製品の巻端テープ貼り,コアをワインダーに供給する作業,及びスリーブをコア間に入れる作業はオペレータによる手作業であった。

 この度,省力化を図るために,巻端テープ貼り,コア供給,及びスリーブのコア挿入を自動化するシステムを導入した。巻端テープ貼り装置は,確実なテープ貼り付けはもちろんのこと,新聞社でのペースター仕立てが自動化されている場合が多い事から,巻取の上巻き部分の緩みや,シワ入りがない事等が要求される。今回採用したコア供給装置は,コアコンテナからのコアの取り出しが,下方向に取り出す新しいタイプのため,コンテナを載せ替える際,位置の再現性が悪く,コアがうまく取り出せない等の問題があった。自動化装置稼動当初から根気強くこれらの問題に取り組んだ結果,省力化の達成と共に,現在では品質クレームもなく,安定な操業を続けている。
(本文83ページ)


スラッジ焼却炉の臭気対策―3塔式蓄熱脱臭装置の導入事例―
北越製紙株式会社 関東工場市川工務部施設課動力係 梅津 尚夫  

 北越製紙(株)関東工場市川工務部で稼働している「浮遊サイクロン式スラッジ焼却炉」は,スラッジの乾燥工程において,スラッジの焦げ臭・薬品臭が排ガスに移ってしまうことが避けられない構造であり,従来は焼却温度の調整や排出ガスに消臭薬品を噴霧することで煙突からの排出臭気を低減していた。
 当工場の立地する市川市大洲地区は昔からの工業地域でありながらも,昨今は高層マンションや一般住宅が相次いで建設され,工場周辺の環境は大きく変化してきている。そのような周辺環境の劇的な変化の中で,臭気による環境影響を低減させるべく脱臭装置の導入を検討してきた。
 今回,蓄熱式脱臭装置を導入して環境改善に大きな成果を得ることが出来たのでここに報告する。
(本文89ページ)


紀州工場PS焼却炉の操業経験
紀州製紙株式会社 紀州工場 高木 幸昌  

 紀州工場では,工場内のペーパースラッジを焼却している既設焼却炉について,下記の理由より更新を計画した。
 1) 設備の老朽化
 2) 廃掃法への対応(環境省)
 3) ペーパースラッジ焼却能力アップ(古紙パルプ製造設備稼働後に対応)
 尚,更新に際しては,焼却炉からの排ガスの熱量を有効活用するために,廃熱ボイラーを設置することとした。本報では,平成14年5月から稼動に入ったPS焼却炉の操業経験について報告する。
 本PS焼却炉は,稼動後多少のトラブルは発生したものの,比較的順調な操業が行えている。化石燃料からの転換,廃棄物のリサイクル化,地域住環境の汚染予防の観点らも本設備の安定操業を図っていきたい。
(本文94ページ)


気体透過制御膜の技術と開発
王子製紙株式会社 特殊紙開発研究所 河向 隆  

 酸素バリア技術や防湿技術に代表される気体透過制御膜の技術は,包装素材の分野ではキーテクノロジーである。塩素系包装材料の代替がきっかけとなり,気体透過制御膜の技術は大きく発展した。また,フレキシブルディスプレー用パネルなどのような包装以外の分野にも,ガス透過制御膜の技術が応用されている。これらの技術は蒸着や塗工といった高分子フィルムにコーティングする方法でバリア性を付与するものが多い。
 本報告では,気体透過制御膜の技術の概要やメカニズムついて述べる。また,酸素バリア技術については,吸湿剤を利用することで,高湿度条件下でも高い酸素バリア性を示すエチレンビニルアルコール系多層フィルムを開発したのでその概要を報告する。また,平板状顔料を利用した曲路効果によって高い防湿性を付与したリサイクル可能な防湿紙の透過メカニズムについても述べる。
(本文100ページ)


蓄熱カプセルの特徴と用途紹介―省エネ,快適生活への応用について―
三菱製紙株式会社 総合研究所 石黒 守  

 マイクロカプセルは液体や固体などを数ミクロンの微少な容器に封じ込めたもので,特に製紙業界では無色染料の油性溶液を内包したマイクロカプセルの塗工紙が感圧複写紙として大きな成長を遂げてきた。それ以外にもマイクロカプセルの技術は医薬品や食品などに応用されてきたが今日までそれほど多くの生産量をみたものは。
 そこで筆者らは,新規なマイクロカプセルの応用方法として蓄熱材を内包した応用を試み省エネ,快適さ,環境をテーマとした応用に研究を行ってきた。蓄熱材マイクロカプセルは有機系の潜熱蓄熱材を内包した微小な粒子で,蓄熱材の融点を境に融解・凝固を繰り返す。潜熱蓄熱材とは相変化により多量の熱を出し入れするものであるが,蓄熱材マイクロカプセルはカプセル内でのみ相変化を行うため分散液であれば常に液状,分散液を固化すれば常に固体の蓄熱材として振る舞う特徴を有する。
 本報では,蓄熱材マイクロカプセルの特徴と応用例について紹介する。
(本文106ページ)


電子ペーパーの現状と王子製紙の独自技術
王子製紙株式会社 新技術研究所 林 滋雄,前田 秀一  

 紙のように薄く,軽く,いつでも身近に持ち運べる電子ペーパーが注目されている。本報告では,(a)電子ペーパー提案の社会的背景と紙(新聞,書籍)に及ぼす影響,(b)王子製紙が検討している電子ペーパー用の表示方式,について述べる。
 インターネットの急速な普及,情報のデジタル化により,人間がパソコン・携帯ディスプレイから情報を得る機会が増大した。長い文章を読むのには適さないとされる電子ディスプレイに対し,紙とディスプレイ双方の長所を共存させた電子ペーパーという新しい媒体が注目され,新聞や書籍への応用を目指して精力的に開発されている。また,省資源・省エネルギーという環境問題から,情報媒体としての紙が電子媒体へ置換わるのではないかという議論も起こっている。この技術変化を紙から電子媒体への単なる変化ととらえ,紙と電子媒体の長所・短所を論じるのではなく,インターネットの普及・情報のデジタル化により,社会システムがどう変わっていくのか,その変化の中で紙・電子媒体がどう係わりあっていくのかを考えた。
 また,電子ペーパーとして,中空繊維内に半面白/半面着色のサイドバイサイド繊維を封入した表示素子を検討している。表示原理,表示特性,製造方法等について報告する。
(本文110ページ)