2003年12月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2003年12月 

第57巻 第12号(通巻第633号) 和文概要


日本に於ける古紙の現状と将来
財団法人古紙再生促進センター 高柳 晴夫   

 資源の乏しい日本において製紙産業が今日までの発展を遂げたのは,製紙原料としての古紙の有効利用とそのための技術開発があったからで,ここ数年はゴミ減,グリーン購入法等,循環型社会構築に向けての国民的な意識の向上も見逃せない。その結果2002年の古紙回収率65.4%,古紙利用率は59.6%,と向上し,2005年度の古紙利用率目標60%までもう一歩の所まできている現状である。
 一方,中国を中心としたアジアでの紙・板紙の生産量の急増に伴い日本からの古紙の輸出も増大し,今や古紙もグローバル商品となってきている。
 このような状況の中で,今後地球環境を考慮した日本での容器包装等を包含した古紙の回収,そして紙・板紙以外の新規用途を含めた古紙の利用と古紙の輸出など,古紙を取り巻く環境も大きく変化して来ている現状を見据え,古紙の将来展望を模索してみた。
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最新の紙料叩解処理技術―紙料の叩解特性に合わせた低濃度叩解機と高濃度叩解機―
相川鉄工株式会社 技術部技術課 青嶋 和男  

 近年製紙業界を取り巻く環境は益々厳しさを増し,特にCO2削減,原料コスト削減,動力費削減等の問題が大きく課せられてきた。原料調整分野においてもこれらの問題に取り組まざるを得なくなってきた。特に検討されるべきものの中で動力費削減は,大きな動力を使用する機器の多い原料調整工程では重要な課題となってきている。その中でも低濃度叩解機は品質に影響を与える一番大きな要素でもあるため,簡単には変更が出来ないのが実情であった。そこで今回は最近実施されてきた低濃度叩解機の検討に関して新しい叩解機とリファイニング技術を紹介する。
 また古紙を処理している場合には,出来るだけ安価な古紙を処理して如何に今まで以上の品質を得られるかを検討することもコスト削減には大きく寄与する。それと同時にリサイクル率が増加して弱くなった紙力強度対策も考慮した技術の開発が必要になった。今回は古紙利用の可能性を広げる機器として高濃度叩解の最新の機器とそのリファイニング技術に関しても紹介する。
(本文20ページ)


最新のアンドリッツの原質調成システム―ミルワイドクリーニングと高濃度ストックスクリーニングの応用―
アンドリッツOY R.ラーコーネン      
アンドリッツ株式会社 竹下 陽介,永澤 宏之  

 紙・板紙製造工程に求められる大きな課題として,紙の高品質化と安定したマシン操業性の向上が挙げられる。製紙原料に含まれる夾雑物は,抄紙機における紙切れ,ワイヤーやフェルトの目詰まり,塗工工程におけるの問題,抄紙機ハード部分の磨耗等々のトラブルを引き起こす。このため,製紙原料は抄紙機ヘッドボックスへ供給されるまでに種々の工程においてクリーニングされ,最終的に抄紙機前ショートサーキュレーション部においてクリーナーとスクリーンによるクリーニングが行われている。パルプ製造工程から抄紙工程に到る全製紙工程を視野に入れ,効果的なクリーニング方法を探ろうというコンセプトが「ミルワイドクリーニング」のコンセプトである。
 パルプ製造工程と製紙工程の中で発生した夾雑物は,すべてが原質調成工程のミキシングチェストに集まってくる。したがって,ミキシングチェストとマシンチェストとの間でクリーニングを行うのが最も効果的である。また,高濃度での処理となるため,経済的メリットもあり,更には,ショートサーキュレーション部の短工程化を図ることも可能にする。高性能スロット式スクリーンによるこのクリーニングは「高濃度スクリーニング(TTS)」と呼ばれ,原料の清澄度を飛躍的に高め,紙質の向上と抄紙機操業性の安定に多大な寄与を果している。
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アルガスマイクロフィルター―基本性能と有効性について―
伊藤忠産機株式会社 生活・環境機械部 張替 康夫  

 アルガスマイクロフィルターは世界中の製紙工場で水処理装置として採用されてきた。日本国内でも5年前から導入が顕著になり,今日まで18台が稼動している。白水処理,総合排水の1次処理で実績のあるマイクロフィルターは生産コストの削減,環境問題への取り組み,局地的な水不足問題等に対し,高い性能を発揮してきた。
 北欧で開発されたマイクロフィルターはポリエステル成の濾布を表面に張られたドラム式フィルターで,処理原水はこのドラムの内側に投入され外側に濾過していく。このとき濾過のための加圧,真空引き抜きなどの力は全く必要としない。濾過抵抗で生まれるドラム内外の液面差により流れの力が発生し,さらに濾布を通過したクリヤー水には長い繊維,スラッジがほとんど存在しないという特徴を持つ。よって,このクリヤー水は再利用水に適していることになる。同時にマイクロフィルターの回収繊維・スラッジは高い回収率となる。これらの特徴を色々な設置個所で生かした技術はユーザーにとって大きな利益をもたらす。コンパクトな本体は完成された自動制御機構により無人運転を保証し,メンテナンスも非常に簡単である。アルガスマイクロフィルタ―は顧客殿からのメッセージに積極的に対応し,今後も発展し続ける高性能の水処理装置である。
(本文38ページ)


紙料調成機器の最新動向
三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部製紙機械設計課 三浦 俊和  

 地球環境にやさしい紙料調成機器とは処理量当りのエネルギー消費が少ないことが第一条件と言える。また社会は使用済の物をすべてリサイクルする資源循環型へと移行が進んでいる。難離解紙は処理コストが高くつくので焼却や埋め立てとして処分していた。しかし現在では難離解紙も処理し再利用することが必須項目になってきた。幸いにも,弊社は難離解紙を有効に処理できるパルパとして,BRパルパ(旧呼称バラキューダパルパ)を提供し続けてきた。難離解紙の再生処理に必要な離解エネルギーは通常パルプの5〜10倍と多いのが実情である。
 そこで弊社は省エネルギーを目標に難離解紙処理用パルパの開発を行なった。この開発機をMJパルパと呼ぶことにした。古紙のリサイクルを進めて行く上で,繊維以外の異物除去を行なうスクリーン設備は最重要機械である。そこで弊社は従来機の2倍の処理能力を持つスクリーンを目指し開発を行なった。この開発機をMJスクリーンと呼ぶことにした。本報では,MJパルパ,MJスクリーンの概要を紹介する。
(本文46ページ)


POMシステム―遠心脱気及び水圧クローズドウェットエンドシステムは予想通りの, また予想外のメリットをもたらした―
POM Technology社 P. O.メイナンダー  
株式会社マツボー 武富 譲治  

 抄紙機のフォーミングセクションはバックウォーター並びにプロセスに大量のエアーを巻き込む。従来,これが数々の問題を引き起こし,それらは大きなプロセス容量に頼る受動的な脱気方法により解決されてきた。
 もしガスがその元で取り除かれれば,システムは全く異なる原理で構築できる。その場合のシステムは配管により構成される水圧クローズドシステムで,そこでストックと水のフラクションはタンクないし容器を必要とすることなく,必要とされる場所に直接導かれる。
 コンパクトPOMシステムは本来,間単に抄き替えができる様,より早い応答性を持つシステムを求めて開発された。20基以上の実績による経験から,我々はこの方法がこの他に多くのメリットをもたらすことを知った。それらの内のいくつかは予想しないものであった。その最たるものは従来のシステムと比べてプロセスの安定性が向上したことである。その他,システムと製品の清浄度が高い,操作が簡単,エネルギー消費が少ない,地合と結合強度が改善する,紙切れが少ない,添加剤の消費量が減る,繊維のロスが少ないといった恩恵があり,また最後にシステムの簡素化がもたらす低い設備費用と省スペースと言った特徴が挙げられる。
 水圧クローズドシステムの好成績のキーは小さなサイズ,高いプロセス圧力,ガスの混入がないこと,早くて明確なフローを約束する開放水面がないと言った特徴にある。このコンビネーションが,他のシステムが機器を追加することにより解決しようとした多くの問題を取り除き,抄紙機のウェットエンド全体を根本的に単純化する。
(本文55ページ)


最新の調成・WEPシステム―進化する調成・WEP機器―
株式会社 アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー
エンジニアリング部原質機グループ 三浦 淳一  

 近年の製紙工場を取り巻く環境はますます厳しさを増している。ゼロエミッションとも言われるように節水,産業廃棄物削減といった課題は,万国共通である。それと同時に抄紙機の高速化やプロファイルの安定性を含むより高い品質を満たすためには,最適な原料調成プロセス,ウェットエンドプロセスを考えなくてはならない。調成プロセスから抄紙機までを考えるとき,原料調成,ウェットエンドプロセス,白水・排水処理,リジェクト処理という各システムをひとつの共通プロセスと考えなければならない。
 ヨーロッパにおけるグラフィックペーパー用の原料調成プロセスの中から最新のDIPラインと機器について,そのウェットエンドプロセスのサブシステム,機器について紹介する。
(本文65ページ)


OptiFeed―最新省資源・省エネルギー紙料供給システム
メッツォSHI株式会社 八田 章文    
メッツォペーパー・ヴァルケアコスキ ユッシ アホラ  

 現在の製紙業界における傾向は,より大きく速い抄紙機へと向かっていると同時により高い効率を要求するようになってきている。その要求に答えるべく開発されたOptiFeedコンセプトはストック調成工程からアプローチシステムまでも含めた統合的システムである。
 従来のシステムは各々のストック濃度をうまく調整できない,あるいはチェスト容量の中で無駄に使用されない部分が大きいという問題点,直接的な問題としては濃度変動等の安定性や,すきもの替えに必要とされる時間の長さといった問題点を抱えていた。それに対しOptiFeedコンセプトを取り入れることにより抄紙機送りストックの濃度や圧力といった供給パラメーターの安定が得られる。またチェストサイズやオートメーションの最適化によってプロセスの容量を大きく削減することが可能である。その結果,すきもの替えの所要時間の短縮や生産効率の上昇を達成できる。また必要とされるスペースやエネルギーは少なくなり,設備コストや生産コストの削減も実現できる。
 また本稿では成功裏にスタートした現在稼動中のOptiFeedについてもその結果を含めて紹介している。
(本文75ページ)


オンラインガスコントロール―脱気・脱泡の最適化が導くプロセス及び製品品質の改善―
BTG ミューテックGmbH ライナー・ラウフ  
スペクトリス株式会社 BTG事業部 石原 健一     

 近年,製紙工場の工場水のクローズド・ループ,高速になり続ける抄紙機,工程の蓄積する疎水性物質,填料としての炭酸カルシウムの使用など,工場環境が多くの要因となり気泡・溶存ガス含有量の上昇を引き起こし,製紙プロセスにおける気泡・溶存ガスは製紙会社によって深刻な問題となっている。気泡・溶存ガスの寄って発生する典型的な製造の諸問題は,高出力ポンプの必要性,ワイヤー・プレスとドライヤーセクションでの沈積物(ピッチ,欠点),泡(気泡)の増加,疎水性物質の蓄積,浮遊樹脂と粘着性物質を原因とする断紙,ワイヤー初期濾水の低下がある。製紙プロセスにおける気泡・溶存ガスに起因する地合や多孔性と印刷性の低下,斑点やピンホールの出現,強度低下等により,製品品質は失われていく。本稿はオンライン・ガス分析装置による工場での実施テストにより,原料懸濁液中の脱気を最適化すればこれらの問題は十分に解決,あるいは防止することができることを示すものである。
(本文85ページ)


納入した一貫プラントの特徴
株式会社 アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー 
エンジニアリング部  アンドレアス サウアー  

 Voith社は実績と経験を通じて今日の技術を確立し,且つ,将来の全技術の方向付けをも設定している。1841年来全世界の4,000を超える客先に技術の確かさを実証してきた。最近の6年間だけでも,31ラインの原質プラント,24台の抄紙機,13の一貫プラントのエンジニアリングを行った。耐えざる経験がVoith社グループ全体のレベルを高め続けている。
 TwinDrum Pulperでの実績・経験が高濃度パルパー方式よりも低い薬品原単位を実現した。TwinDrum Pulperのアクセプトは従来システムでの丸孔スクリーン出口と同等の離解度である。
 Ecomizer Cleanersは従来機よりも高い濃度で操業できるため,スクリーンやフローテータの前段に使用できる。その結果,精選スクリーンの磨耗防止につながり保守費の逓減を果たしている。スクリーンの新技術はその信頼性を高めかつ抄紙機の操業性を高めた。最新のヴァージンパルプ用のパルパーとリファイナー原料の特性を極限にまで高め得た。
 中国Voith社では今年,5台の新抄紙機(Huatai, Shandong Bohui, Jinfeng, Hengfeng, Mingfeng)を立ち上げる。もちろん,この全部がVoith社が代表納入メーカーである。KunshanとDongyingのVoith社サービスセンターがこれら全設備の将来にわたってサポートしていく。
(本文93ページ)


クラフトパルプの塩素漂白で生じる高分子塩素化リグニンの構造上の特徴
東京大学 大学院農学生命科学研究科 新谷 博幸,松本 雄二,飯塚 堯介  

 3種類のクラフトパルプ(針葉樹未晒KP,広葉樹未晒KP,酸素前漂白した広葉樹KP)を様々な塩素比(0.1〜0.3)で塩素処理し,パルプ中に残存する有機塩素化合物を含水ジオキサンで抽出した。得られた抽出物中に含まれる中性糖は1〜5%と少なかった。この抽出物,及びこれをパルプの多段漂白工程のアルカリ抽出段と同様の条件でアルカリ処理したものについて,その性状を 1H―NMR, FT―IR等を用いて分析した。その結果から,抽出物は,芳香核が極めて少なく,メチル,メチレン,メチン,およびカルボン酸を主体とする有機塩素化合物であることが明らかになった。
 塩素漂白で生じる高分子有機塩素化合物の起源物質については明確でない。そこで,磨砕リグニン(MWL)の塩素処理,アルカリ処理を順次行い,1H―NMR,及びFT―IRのスペクトル変化を調べた。その結果から,本実験で抽出された有機塩素化合物は,リグニンから生じ得ることが示された。
(本文104ページ)


製紙スラッジ(PS)の炭化とゼオライト合成
静岡県富士工業技術センター 紙リサイクルプロジェクトスタッフ 安藤 生大,齊藤 将人,村松 重緒,日吉 公男   
愛媛大学 農学部 春名 淳介,松枝 直人,逸見 彰男         

 焼却前のPSに約50%含まれる有機物(セルロース)に着目し,有機物の炭化とゼオライト合成を行った。炭化物の共存が,PSを構成するカオリナイトのゼオライト合成に与える影響を検討するために,試薬の活性炭とメタカオリナイト及びゼオライトAについて,ブレンド及び混合合成を行い,合成前後における鉱物組み合わせ,BET比表面積,細孔分布パターンの変化を詳細に検討した。この結果をもとに,炭化PSを構成するメタカオリナイトからゼオライトAへの生成条件について,固/液比,アルカリ濃度及び反応時間の関係を整理し,炭化PSを原料とする炭素―無機複合体(炭化PSゼオライト)の可能性について検討した。
 その結果,以下の結論が得られた。(1)大気雰囲気下でのPSの炭化焼成は,有機物の部分的な燃焼に伴ない二酸化炭素分圧が上昇するため,カルサイトの分解を阻害すると推定される。このため,反応性の高いCaOの生成を抑制することから,ゼオライト合成にとって有利な焼成方法である。(2)メタカオリナイトと活性炭の混合合成結果と,PSの灰化物及び炭化物のアルカリ水熱合成結果から,炭化物の共存はゼオライト生成に影響を与えない。(3)炭化PSを構成する炭化物は,アルカリ水熱合成により腑活化される。今回の実験からは,比表面積が約4倍に増加した。(4)炭化PSのアルカリ水熱合成では,メタカオリナイトのみの合成に比べてゼオライトAの生成速度が速く,細粒のゼオライトが生成する。(5)炭化PSのアルカリ水熱合成において,NaOH濃度,固/液比,反応時間をコントロールすれば,比表面積がコントロール可能な炭素―無機複合体(炭化PSゼオライト)が合成できる。(6)炭化PSゼオライトは,炭化物表面を鋳型として細粒のゼオライトが結晶化した組織を有することから,吸着剤としての用途が有望である。
(本文111ページ)