2002年11月 紙パ技協誌

 

紙 パ 技 協 誌 2002年11月 

第56巻 第11号(通巻第620号) 和文概要


弱酸性・中性抄紙用カチオン性ロジンサイズ剤について
日産エカケミカルス株式会社 坂本 宗男,チェ オン アウ  

 炭カル含有古紙原料の増加による弱酸性・中性領域での抄紙増や用水のクローズド化による白水の汚れ増は世界的な傾向であり,こうした条件下でも効果を発揮するロジンによる新しいサイジング方法が望まれている。エカケミカルス社ではこうした要望に応えるためロジンサイズを使った新しいサイジング方法として
 @疎水性を強化したエステル化ロジンサイズ(Bewoid Extra)
 Aポリ塩化アルミニウム(Ekafloc)の利用
 Bロジンとアルミニウム化合物のプレミックスシステム(Bewomix System)
 Cカチオン性ロジンサイズ(Composize)
を開発した。
 このうちカチオン性ロジンサイズ(Composize)はロジンエマルジョンをカチオン性の高分子電解質で安定化したもので,自己定着性があることから最大20%増のサイズ効率を得ることができ,またAlum使用量の低減やマシン走行性の改善も期待できる。さらに発泡性が少なく,硬度安定性に優れ,機械安定性,及び経時安定性も問題ない。こうしたことからカチオン性ロジンサイズは弱酸性・中性抄紙用のロジンサイズとして最適である。
(本文1ページ)


「フローネイジ」システムによるブロースルー蒸気量の削減
スパイラックス・サーコ株式会社 蒸気工学室 宮田 茂男  

 「フローネイジ」システムはドライヤー出口にセパレーター,高精度蒸気流量計を設置し,流量制御によってブロー蒸気量を管理・制御するシステムである。
 「フローネイジ」システムの導入により,生産条件として加熱圧力(温度),ドライヤー・スピード,蒸気ブロー量を数字で管理することが可能となり,製品毎に生産条件を最適化できる。また,低圧ラインへの蒸気ブロー量を最小限に押さえることができるので,蒸気消費量を削減し,エネルギー原単位削減にも効果的である。
 「フローネイジ」システムのメリットをまとめると,
 @生産条件に合わせた最適なブロー蒸気量を数字で管理できるので,標準化が容易。
 A二次圧(低圧ライン)が変動しても定量ブローができるので,生産が安定。
 B蒸気ブロー量が減少し,エネルギー原単位を改善。
 Cドレンタンクの沸騰が改善。(排熱の有効利用)
等があり,生産性・品質の向上と省エネルギーを両立させた画期的なシステムである。
(本文8ページ)


高耐食性メタリングロール皮膜の開発
株式会社野村鍍金 技術部 藤田 得生,望田 靖裕  

 耐食性に優れたメタリングロールの開発を目指して,繰り返しの面圧変化や滑りの要素を取り入れた小型モデルでの腐食再現試験を行い,腐食現象は下地や中間層皮膜まで使用溶液が浸透していき素材腐食及び表層皮膜と中間層皮膜との間で電位差腐食を起こすことで起きることが確認できた。更に,去年より電気化学測定を用いて各皮膜の電気化学的な腐食傾向,及び皮膜と下地や中間層皮膜との間での電位差による腐食傾向を求め,ニッケル―タングステン合金めっきの上にクロムめっきを施したものが最も電位差腐食を起こしにくいと言う結果が出た。
 本稿では 実機の操業状態に近い条件で試験を行うことのできる擬似ゲートロールコーターを用いて耐食性評価試験を行い,各種皮膜の評価をおこなった。その結果は電気化学測定で最も耐食性が高いと予想された,ニッケル―タングステン合金めっきの上にクロムめっきを行った皮膜とニッケルめっきの上にニッケル―タングステン合金めっきを行った皮膜が,各種組み合わせの溶射やめっきを施工した試験片のなかで最も耐食性が高く,他の試験に腐食が発生した後も異常が見られず,非常に耐食性が高いという電気化学測定結果を裏付ける結果が出た。この理由はニッケル―タングステン合金めっきが不動態化し,電位差腐食をくい止める働きがあるものと推察される。また,他の溶射やめっき試験片の断面調査から,試験液が表層皮膜を浸透し下地や中間層皮膜に達した後,電位差腐食が起きるというメカニズムで腐食が進行していることが確認できた。
(本文14ページ)


製紙・パルププラント用一軸スクリューポンプにおけるフレキシャフトの効用
株式会社イワキ 推進本部推進部 岩田 徹  

 製紙・パルプ工場において,特にコーティングカラー用ポンプとして現在までに多くの機構のポンプが使用されている。その中でも高濃度液や高粘度液の取扱いができる一軸スクリューポンプはユーザーに評価され,重宝されている。
 65年の歴史を持つ英国一軸スクリューポンプの専門メーカーであるMono Pump社は一軸スクリューポンプの重要な役割であるユニバーサルジョイントの弱点に目をつけ,新しい発想のフレキシャフトをユニバーサルジョイントの代わりとして開発し,更にコーティングカラー用に最適なポンプに仕上げたのである。すなわちフレキシャフトはユニバーサルジョイントのような可動部がなく,そのため,摩耗の原因や摩耗を防ぐための潤滑油の封入などが不要で長期間にわたって点検やメンテナンスを全く不要にしたのである。その結果,ポンプにつきもののランニングコストの大幅低減だけでなく,安心してプラントを連続稼動させることができるのである。フレキシャフトはまだまだ日本の市場に浸透していないが,今後の一軸スクリューポンプの主流になると考えているのである。
(本文19ページ)


紙パルププラント用メカニカルシールの技術動向―メカニカルシールの故障・対策事例―
イーグル工業株式会社 営業本部開発部 高橋 秀和  

 紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,各種ポンプや攪拌機,スクリーン,リファイナほかさまざまな回転機が多数使用されている。これらの軸封部には,省エネ,省資源,省メンテナンスなどの経済性追求及び環境保全の目的で,多数のメカニカルシールが採用され,大きな効果が得られている。紙パルププラントにおけるメカニカルシール化は,蒸解および黒液濃縮工程から本格的に始まり,洗浄工程や抄紙工程他に急速に進展した。その背景には,環境保全,省コスト,信頼性・安全性向上などのメカニカルシール化のメリットが検証されたことがある。現在では,各プラントにおいて,多くのメカニカルシールが使用されている。そこで,信頼性,安全性の向上の一助として,各工程で取り扱われるメカニカルシールの故障・対策事例を紹介する。
(本文24ページ)


アルガスマイクロフィルターの最近の動向―日本国内実績からの報告―
伊藤忠産機株式会社 産業機械第2部 張替 康夫  

 アルガスマイクロフィルターは,ノルウェー国のアルガス社が製作している製紙パルプ工場用に特化した水処理装置でドラムフィルターの1種である。アルガス社は1985年創立以来マイクロフィルターを製作し,全世界で500台以上が納入され稼動している。
 日本では3年前の1999年度,年次大会ではじめてご紹介し本格的に販売を開始し現在14台の納入実績をあげている。
 このフィルターは従来のドラム型フィルターのシンプル性とディスクフィルターの大処理能力性を有し,従来機の薬品やランニングコストを最小限に抑えた用途範囲の広い画期的なフィルターである。本報ではその特徴を列挙し今までの納入実績でその性能を紹介する。
(本文34ページ)


最新ドイツ・E. C. H. Will社平判シーターモデル“GFS”
株式会社イリス 福元 葵  
E. C. H. Will社 K.Sumfleth  

 E. C. H. Will社は創業135年,世界の代表的な紙加工機械メーカーとして,数多くの紙加工機械を世界の代表的な製紙メーカーに納入してきた。技術的に非常に高く評価されている代表的な機械の1つがA4,B5,B4サイズにカットする小判カッターである。日本にも50台以上のWill社小判カッターが納入され,最新の機械では300m〜350mの高速スピードでA4やB4サイズの情報用紙(コピー用紙)が製造されている。
 新たに,平判シーター“GFS”機を紹介する。斬新なアイデア,新しい材質及び多くのユーザーの御要求を各部所に組み込んだ最新の平判シーターの誕生である。コンセプトはつぎの通りである。
 ・max.410m/分の高速性能
 ・サイズ交換の極限の自動化
 ・傷つき易い紙にも適応する広い適応性
 ・ノンストップスプライサーロール替えおよびシングルレイボーイでのノンストップ山替え等の実生産性の向上
(本文42ページ)


紙パルプ液の輸送配管における圧力損失計算ソフト
株式会社キッツ 営業技術部 齋藤 茂  

 パルプ液は濃度,流速,フリーネスおよび配管の口径などによって圧力損失が異なると言われている。
 装置設計において,配管の口径選定,ポンプの選定および調節弁の口径選定においては配管の圧力損失を求めることは欠かせないことの一つではあるが,その都度マニュアルにて計算することは容易なことではない。
 このような背景から,各ユーザーの皆様からのニーズなどもあり,圧力損失の計算を容易にできる工夫を模索し,コンピュータにて計算できるように,ソフトを開発したので紹介するが,但し一部のユーザーの方々には既に紹介済である。このソフトが少しでも皆様のお役に立てば幸いである。
(本文46ページ)


用水原単位削減のための技術調査並びに白水回収機導入とその効果―O. M. C.「ガンマフィルター」について―
株式会社大善 営業技術部 井出 丈史  

 環境保護が叫ばれ始めて久しい今日ではあるが,製紙業において使用する水量の多さは他業種と比べ,非常に大きなものであることはご承知のとおりである。限りある資源の有効利用を意識し,ISO14000の導入など,環境に対する意識も以前より一層高まり,用水,排水に対する取り組み,また,使用水量の削減などを検討される声を良く耳にする昨今である。
 弊社では,日本におけるこのようなニーズが今後一層多くなることを踏まえ,白水回収による低水量化にいち早く取り組み高い効果と実績を挙げているヨーロッパ地区との技術交流に一層の力を入れ,同時にこれらの装置及び技術の日本への導入に向けて力を入れてきた。
 特に,昨年より本年にかけ,モデルケースとして国内某製紙会社のご協力により,実際の使用水量削減のための現状実地調査,並びにそれを踏まえての技術検討と,目的である使用水量削減のための白水回収装置の導入を行い,優れた成果をあげることができたため,これをまとめ発表させて頂きます。
(本文50ページ)


流動床式高効率窒素除去装置「PABIO DENI」
神鋼パンテツク株式会社 環境装置事業部水処理本部 知福 博行,加治 正廣  

 近年,富栄養化防止の観点から窒素除去の必要性が高まっている。窒素除去方法は従来活性汚泥変法が一般的であったが,滞留時間が長い等の欠点もあり,最近ではこれに代わる種々の効率的な方法が開発・実用化されるようになってきた。われわれはポリエチレン製担体を流動担体として用いた流動床式の硝化脱窒装置(商標:PABIO DENI)を実用化した。この方法は,活性汚泥変法の1/2〜1/3の滞留時間で処理が可能,低温でも高い窒素除去効果が得られる,既設のさまざまな形状の反応槽に適用が可能等の特徴を持っている。
 実証実験では,硝化に関してNH4―N容積負荷0.9kg/m3・dで,脱窒ではNO3―N容積負荷3.5kg/m3・dでいずれも98%以上の除去率が得られることや滞留時間が5時間でも処理水中の窒素が10mg/L以下になること等,効率的で高い処理能力が確認できた。
 本報告では,流動床式硝化脱窒装置の原理・構造や処理方法の概要を紹介するとともに実証実験結果の一端を報告する。
(本文56ページ)


植物ゲノムサイエンスの発展と樹木バイオテクノロジー研究―その現状と展望―
東京農工大学大学院 生物システム応用科学研究科 片山 義博  

 本年6月17日,18日に開催された第69回紙パルプ研究発表会における特別講演として,近年目覚しい発展を遂げている遺伝子工学技術を利用した樹木バイオテクノロジー分野について解説した。
 1980年代に入って急速に進展した分子生物学により,多様な生命現象の分子レベルでの解析が可能になった。遺伝子工学技術の進展は,遺伝子組換え植物や形質異常を持つ変異株の創出を可能にし,植物に関する生理的,生化学的な理解を助けることに役立った。さらに,現在モデル植物であるシロイヌナズナ等において精力的に進められているゲノム解析は,植物の分化や成長に関する多くの情報をもたらしてきた。樹木研究においても,モデル植物の場合と同様に,遺伝子組換えやゲノム解析等の新しい技術が樹木研究の推進を後押ししている。本報では,樹木バイオテクノロジーの概要と材形成に関連の深い細胞壁形成に関する最近の研究動向について述べる。
(本文64ページ)


2002年米国TAPPI塗工技術会議参加報告―最新塗工技術動向―
有限会社ノアエンタープライズ 岡川 章夫  

 2002年のTAPPI主催の塗工技術会議および展示会はフロリダ州オーランドで開催された。600名を越す出席者が3日間に渡り,研究報告会,初心者のためのセミナー,昼食をかねたラウンドテーブル討論さらには展示会と盛り沢山の行事が行われた。本報告はそれらの主要な話題を要約したものである。近年の紙に対する需要家の要望は品質と同時にコストの安いものへの要求が高まっている。よりよい品質を求めてコーターの改良のアイデアとして様々な発表があった。さらには塗工原理そのものが異なる非接触型のコーターも既に実現間もないところまできている。次世代型のドライ塗工も既に実験段階に入り,将来水溶液ではなく,塗料成分を乾燥したまま噴霧する塗工が実現することであろう。それに伴って顔料や薬品に対する要望も変化し,各メーカーは新開発の顔料や薬品を発表・展示していた。この会議での論文をすべて詳細に報告することはできないが,現在最先端塗工技術の一端を紹介することで読者のお役に立つことを願っている。
(本文79ページ)


透過光画像に画像相関法を応用した紙の物性解析技術
東京大学大学院 農学生命科学研究科 中山 智仁,江前 敏晴,尾鍋 史彦  

 紙の特性を解析するために透過光画像にパターンマッチングの手法を適用し,この手法の有効性を示した。透過光画像を得るために試作した装置は,CCDカメラ,試料後方から照らす拡散照明及びソフトウェアから構成される。パターンマッチングでは,比較する2つの画像のうち,1つを任意の数のブックに区切る。このブロック画像をテンプレート画像とみなし,これに類似したブロック画像をもう一方の画像から1画素ずつずらしながら探し出す。類似度は2つの画像をベクトルと考えたときの内積の大小で判断する。高分解能2分割3次スプライン補間関数を使って補間を行うことにより10倍の分解能で変位分布を求めることができた。引張変形の面内分布は地合のよい紙に対しても十分測定できた。濡らしたPPC用紙の拘束乾燥過程での収縮挙動の面内分布測定に応用した。試料を鉛直方向に拘束したとき,中央部のすべてのブロックは上に移動することがわかった。水が重力によって下に移動し,上から順にすぐ下の濡れた部分を引っ張りながら乾燥していったためであり,熱画像法によっても水が残る(蒸発熱による)低温領域が下の部分にだけになって行く様子が捉えられた。これに対し,水平方向に固定すると拘束方向での移動はなくCDにだけ収縮したが,CDにだけ収縮した点では鉛直方向の固定の場合と同様であった。PPC用紙の自由乾燥ではフラットベッドイメージスキャナを利用して透過光像を取り込んだ。CDだけでなくMDでの収縮が組み合わされてひずむように変形することがわかった。
(本文90ページ)


木材腐朽菌によるケナフパルプ,シラカバパルプの漂白
高知大学農学部 大谷 慶人,大前 陽子,ジャリーヤ・イムラッタナボボーン,鮫島 一彦  

 高知大学農学部演習林から単離された白色腐朽菌OM5―1菌とKUF2菌はそれぞれケナフ靭皮パルプとシラカバパルプに対して高い漂白能力を持っていた。OM5―1,KUF2,ヒラタケ,Phanerochaete chrysosporium菌のパルプ漂白能力を比較したところ,ケナフ靭皮パルプにおいて,OM5―1菌によるパルプ白色度上昇値は他の菌に比べ,カッパー価減少量から推定される値より著しく高かった。類似の傾向がシラカバパルプとKUF2菌の間にも見られた。一方,ケナフ芯パルプの漂白性はケナフ靭皮パルプとは全く異なり,シラカバパルプに類似していた。
 各菌の累積リグニン分解酵素活性とパルプ白色度上昇値にはほぼ直線関係が見られた。しかし,ケナフ靭皮パルプでは菌処理後期において直線から外れ,酵素活性値のわりに白色度の上昇値が大きくなる傾向にあった。
 ケナフ靭皮パルプの白色度を最も向上させるOM5―1菌においてパルプ粘度の低下は最も小さかった。一方,シラカバパルプではKUF2菌のパルプ粘度低下が最も小さかった。
(本文97ページ)