2000年10月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2000年10月

第54巻 第10号(通巻第595号)  和文概要


環境会計ガイドラインと環境庁の取り組み
環境庁 企画調整局企画調整課調査企画室環境専門調査員 小林 俊  

 環境庁は本年5月に新しい報告「環境会計システムの確立に向けて(2000年報告)」を公表した。この報告は,平成11年3月に公表した「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン(中間とりまとめ)」を充実,発展させる形で取りまとめた「環境会計システムの導入のためのガイドライン(2000年版)」を主たる内容にとしている。環境会計とは,企業や地方公共団体等の環境保全への取り組みを可能な限り定量的に把握し,分析し,公表する仕組みということができる。
 本報では,2000年報告に対する環境庁の取り組み,環境会計システムの枠組み,今後の方向等について概説する。
(本文3ページ)


ダイオキシン類対策特別措置法及び関連法規の解説
通産省 環境立地局環境指導室長 大滝 昌平  

 ダイオキシンは,昨年所沢市で発生した問題を契機に社会問題と認識されるようになり,ダイオキシンについて規制する必要があるとの論議がなされた。その結果,昨年7月に「ダイオキシン類対策特別措置法」が成立した。この法律では,対象となるダイオキシン類として,従来のダイオキシン(ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン)とポリ塩化ジベンゾフランの2種類に加えてコプラナーポリ塩化ビフェニルを含めて定義している。
 本報では,同法の成立の背景,経緯,概要等について概観する。
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環境アセスメント―概要と手続き―
東レエンジニアリング株式会社 尾藤 武  

 環境アセスメント(環境影響評価)は,事業の実施が環境に及ぼす影響を事前に調査,予測,評価し,その結果に基づいて適切な環境保全上の措置を講じることにより環境悪化の未然防止を図る制度である。
 この制度の適用はもともと大規模な事業が対象であることから,これまで,工場の新設・増設の場合を除いて企業の生産現場とはほとんど無関係と思われがちであった。しかしながら,近年,製紙業界においては古紙や製品余材の再資源化等に伴い副次的に生じる廃棄物の処理のため,自社内に処理施設を設置するケースが増加しており,その施設規模によっては地方自治体条例に基づく環境アセスメントが必要となるほか,小規模施設であっても1997年6月に改正された廃棄物処理法の規定により生活環境影響調査の実施が必要となった。これにより,環境アセスメントは今や企業の生産現場に直結して対応すべき身近な課題の一つとなりつつある。
 我が国では1999年6月より全国制度の根幹となるアセス法(環境影響評価法)が施行され,これと前後して大半の地方自治体の制度も改正が行われるなど,環境アセスメントも新制度のもとで新たな歩みを開始している。これを踏まえ,本稿では,今後この課題に対応すべき必要の生じる方々を対象として,基本となるアセス法の流れを主体に制度化の背景ならびに調査計画段階から事後調査までの手続きの内容を概説するとともに,併せて廃棄物処理法の生活環境影響調査の特徴についても簡単に紹介する。
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平成10年度産業廃棄物実態調査結果報告
紙パルプ技術協会 環境技術委員会
日本製紙連合会 廃棄物対策委員会
日本製紙連合会 環境保全委員会

 平成10年度分については,平成9年度の廃棄物分類に準じて調査した。回答数は,48社109工場で,カバー率は,日本製紙連合会傘下企業の生産高に対しては94%,国内全生産高に対しては83%であった。
 全体の発生量及びその含水率は平成9年度の調査結果とほぼ同じ水準であった。再資源化量は平成9年度に比べて8万トン強増加し,直接再資源化分及び中間処理後再資源化分の合計で100万トンに達した。
 主として再資源化の対象になっているのは,燃えがら,有機性汚泥,ばいじんの3品目で,再資源化量の85%強を占めている。再資源化と処分に当っては,総発生量の65%が何らかの中間処理を受けている。その内の95%強は自社内で中間処理されており,最も量の多い有機性汚泥は98%強自社内で中間処理されている。
 最終処分量は462千トンであるが,中間処理されずに直接処分されたものが251千トンあり,処分量全体の54%であった。処分場別では,自社処分場が45%,処理業者処分場が23%,公共団体等処分場が32%であった。前年に比べて,自社処分場の比率が上がり,処理業者処分場の比率が低下している。最終処分量については,全体で10万トン弱減少した。
 有機性廃棄物の内,845千トンが自社内で熱回収に供され,熱回収として1,223×109kcal,発電用にも287×109kcalが利用されたが,これは同年の自給エネルギー量42,227×109kcalの3.6%に当り,平成9年並であった。
 尚,達成率は,減量化率が57%(平成12年度目標値61%),リサイクル率は28%(同29%),最終処分率は15%(同10%)であった。
(本文36ページ)


紙中のリサイクル材料含有率を表す定義について ―新たに『古紙パルプ配合率』の設定―
日本製紙連合会 技術委員会  

 ISO TC(Technical Committee)207にて検討中の環境規格14000シリーズのうち,環境ラベルはそれぞれ規格,TR(技術情報)として発行され区切りがついた。日本では,8月中に相ついでJIS制定,或いはTRとして公表された。
 これらを適用するときの紙パルプ業界に於ける問題点としてリサイクル材料含有率の算式がある。これについて日本製紙連合会技術環境部会技術委員会はISO(JISQ)14021規格の付属書に記載の絶乾ベースの繊維原料配合率を使用することを申合わせた。今後,特記されているもの以外は同方式が基準となる。
(本文44ページ)


2000年TAPPI国際環境会議報告
紙パルプ技術協会 田口 徹  

 コロラド州の州都デンバー市のコロラドコンベンションセンターで,5月8日から10日まで「21世紀に向けてこれからの環境問題に道筋を付けよう」というテーマの下で開催された。今年は従来と違って,初日の午後はNCASI主催の全参加者対象の公開セッションに当てられた。
 会議に報告された内容を見ると,生物処理に関する関心が年々高まっているようで,排水処理のみならずクラスタールールの大気対策としてのMACTがらみで,KPのコンデンセートの処理にも微生物を使っていこうとする傾向が窺われる。又,初めてバイオサイドのセッションも設けられた。
 その他,EPAからはPartners for the Environmentというパンフレットが会場に置かれていたが,内容は民間企業にEPAと協力して環境改善を図り,企業収益の向上を目指そうというもので,温暖化,環境ラベル,省エネルギー,環境会計,化学薬品他20のweb siteを用意して積極的な協力を呼び掛けていた。
 米国内のエネルギー多消費型産業9業種の新技術開発を支援しているエネルギー省工業技術局からは,紙パルプを含む林産物の今後の発展と国際競争力確保を目的にAF&PAが作成したAgenda2020に呼応して,現時点で進められている各種新技術を紹介する資料が多種類配布されていた。最終日に行われた地球温暖化のパネルディスカッションでは,ホワイトハウスの気候変動タスクホースの担当者が加わっていた。
 このようにTAPPIという一民間工業団体の会議に,関連の国家機関が夫々に参画している状況を見ると,米国では製紙産業の国際競争力強化へ向けて,官民挙げて並々ならぬ決意で取組んでいることを強く感じた。
(本文47ページ)


2000年国際パルプ漂白会議に参加して
日本製紙株式会社 技術研究所パルプ研究室 宮西 孝則

 2000年6月27日から30日までの4日間にカナダのハリファックスで開催された国際パルプ漂白会議(2000International Pulp Bleaching Conference)に参加する機会を得たので概要を報告する。
 研究発表は,口頭発表が10のセッションで34件,ポスターが13のセッションで40件,合計73件の報告があった。
(本文55ページ)


第67回紙パルプ研究発表会の概要
紙パルプ技術協会 木材科学委員会

 第67回紙パルプ研究発表会は,平成12年(2000年)6月28日(水)〜29日(木)の2日間,東京王子の北とぴあにおいて開催された。発表件数は,産・官・学各界から,口頭発表29件,ポスター発表8件,合計37件であった。参加者は347名だった。発表内容の概要をまとめた。
(本文60ページ)


ワイヤーセクションにおけるミスト除去についてMRS―Mist Removal System―
日本ユー・エス・マシナリー株式会社 営業部 工藤 篤 
 
 最近の抄紙機速度の飛躍的な伸長に伴い,ワイヤーセクションにおけるミストの発生は増大し,製品品質に多大な影響を及ぼす結果となった。高圧シャワー水により発生するミストはワイヤーの高速化に比例し短時間にセクション全体へと拡散し,ミストに含まれる繊維,フィラー等は各機器に付着,堆積することとなる。同時にマシン室の換気に悪影響を与え,マシンオペレーターの作業環境を悪化させることになる。MRSの特徴はミストそのものの発生を極力抑え,かつ,効率的に除去する事を目的としている。当社の調査結果においては,通常使用される高圧シャワー水の約30%はワイヤーの跳ね返りを受けマシン室全体へ拡散している。これを水量に換算すれば年間約90,000m3と計算され,この膨大な水量をMRSにより除去・再利用できればかなりの経済効果も期待できることになる。
 MRSによるミスト除去は,ミストサクションボックス,配管,プリセパレーター,ブロワーの各機器において段階的に行うシステムとなっている。MRS設置後顕著に現れる効果としては,環境改善はもとよりドライヤーパート以降の断紙率の減少である。このことはミストに含まれる繊維,フィラー等が生産効率と製品品質に多大な悪影響を与えていることを実証するものである。
(本文77ページ)


ミレニアム システムについて
インパクト システムズ アジア株式会社 磯部 二郎

 製紙機械制御システムの目標として次の3つの項目を上げ,最先端の技術を提供する。1)品質変動の極小化,2)紙切れの撲滅,3)2分以内の銘柄変更時間。
 CD坪量測定と制御を例に取り上げ説明する。坪量制御に影響を及ぼす事象に次の4つが上げられる。1)プロファイル測定精度,2)測定時間,3)プロセス無駄時間,4)マッピング。
 改善された坪量制御のポイントは以下のとおりになる。
 1) 第三世代の坪量センサーを使用し,高速,高精度に坪量を測定する。第三世代の坪量センサーは,新しいソリッドステート・シリコン技術(SST)に基づく。これは,旧来センサーの電離箱に取って代わる。
 2) 測定データのフィルター処理を除く。瞬時に時間遅れの無い正しいデータを捕らえる。
 3) フィルターの掛からない瞬時の測定値を用いて,プロセスの無駄時間を的確に補償します。
 4) 測定ゾーンと制御ゾーンの連続した正確なマッピングがCD制御の性能を向上させる。
 改良された制御で新しい品質と経済収益を生み出す。1)CD及びMDプロファイルの安定を増し,紙の均一性を向上させる。2)改良された機械の運転能力とより速やかな銘柄変更能力によって,生産性と経済収益を高める。
(本文82ページ)


HBSパルプ化(2)―広葉樹および草本類のパルプ化
北海道大学大学院 農学研究科 ワヒュ・エコ・ウイドド,梶本 純子,佐野 嘉拓  

 広葉樹材としてカバ,ブナ,ユーカリ,草本類としてオイルパーム農産廃棄物,稲と小麦のわら類,バガス,ケナフ全茎を用いて高沸点溶媒(HBS)によるHBSパルプ化を小型オートクレーブで検討した。HBS溶媒系として0〜10%酢酸を含む60〜80%1,3―BDOLを用いてカバ材のHBSパルプ化条件を設定した。5〜10%の酢酸が存在すると,カバ材は200℃,1〜2時間で,酢酸無添加でも3時間の蒸解で4〜5%の残存リグニン(KL)を含むパルプが55〜60%の高収率で得られた。他の広葉樹材と草本類を酢酸無添加の80%1,3―BDOL,200℃,3時間の条件でパルプ化した。パルプ収率とKLに若干の差異はあるが,何れの場合も支障なくパルプ化された。また,1,3―BDOL以外のHBS溶媒系でも支障なくパルプ化できた。
 HBSパルプ廃液からリグニンのみを濾別した廃液(RHBS)をパルプ化溶媒に用いてカバ材のパルプ化する操作を5回繰り返した。何れの場合も満足の行くパルプ化が可能であった。
 パルプの強度特性を調べるために,大型オートクレーブで広葉樹材を200℃,2時間,草本類を190℃,2時間蒸解し,HBSパルプを調製した。材の種類や草本類により強度特性に差異があり,何れのパルプもKPに匹敵する強度特性は得られなかったが,ソルベントパルプで報告されている強度特性を十分にクリアした。
 小麦わらパルプはユーカリパルプに匹敵する強度を示し,稲わらパルプの強度は若干劣るが,わらパルプには大量のシリカが残存し,紙の物性を改善できるかも知れない。また,わらパルプ廃液からリグニンを濾別し,再生したRHBSをパルプ化溶媒に再使用できるから,パルプ廃液による環境汚染は存在しない。炭酸ガス固定化能の大きなケナフ全茎から広葉樹材パルプに匹敵するHBSパルプが製造された。
 草本類のパルプ化条件,HBSパルプの漂白特性など検討すべき課題は多々あるが,HBS法により広葉樹材と草本類から製紙用パルプを製造することが可能と考えられる。これらの結果は,先の針葉樹材のHBSパルプ化で明らかにした特徴の他に,草本類の供給が滞る期間に広葉樹材をパルプ原料に支障なく使用できる草本類を主原料とするHBS製造プロセスが可能であることを示す。パルプ廃液からパルプ副産物として大量に製造されるHBSリグニンについては別に報告する。
(本文86ページ)


熱分解過程におけるシガレット用巻紙の研究(第2報) ―熱分解過程における,シガレット用巻紙の紙層構造―
日本たばこ産業株式会社 たばこ中央研究所 花田 淳成 
東京大学大学院 農学生命科学研究科 尾鍋 史彦  

 第1報において加熱によるシガレット用巻紙(巻紙)の物性変化の把握を目的として,燃焼時のシガレットにおける温度分布測定と巻紙の熱分析結果より,巻紙の加熱処理温度を決定し,決定した温度に従い加熱処理した巻紙の物性と紙層構造を測定し,巻紙の熱的変化を計測するシステムを構築した。
 このシステムを用い加熱処理した巻紙の物性について検討を行い,物性変化の要因として熱によるパルプ繊維ネットワークのゆがみや熱分解によるパルプ単繊維の変質および,紙層中の空隙の増加,連結構造の変化等を予測した。
 一方,巻紙を多孔性のシートとして見た場合,物質の移動経路としての機能が重要である。
 本研究では,熱による紙層構造変化の検討を目的として,加熱処理巻紙の紙層構造および,細孔比表面積を測定し,熱分解過程における巻紙の物性変化を明らかにすることを試みた。加熱巻紙の空隙(細孔容積)は水銀圧入法により測定し,細孔比表面積はガス吸着法(BET法)により測定し,次の結果を得た。
 全細孔容積は巻紙加熱温度の上昇に伴い増加し,ミクロポア容積と比表面積は巻紙加熱温度の上昇に伴い常温〜300℃の範囲で緩やかに上昇し,300〜320℃の範囲で減少し,320℃を超える範囲で増加する傾向にあった。また,水銀圧入退出比は巻紙加熱温度の上昇に伴い叩解の進行していない巻紙では270〜350℃の範囲で低下し,350〜400℃の範囲で若干上昇し,叩解の著しく進行した巻紙では常温〜150℃の範囲で上昇し,270〜350℃の範囲で低下した。密度は巻紙加熱温度の上昇に伴い常温〜200℃の範囲で上昇し,200℃以上の温度領域で低下した。さらに,平均細孔径は巻紙加熱温度の上昇に伴い増大し,細孔分布は巻紙加熱温度の上昇に伴い空隙量は増加し,320℃を超える範囲で15〜20μmの細孔が著しく発達した。
 以上のことより,巻紙の加熱処理に伴う脱水や残留応力によりネットワーク構造が変化し,パルプの熱分解に伴う繊維の収縮により紙層構造が変化すること,特にパルプの熱分解が著しい270〜350℃の範囲における紙層構造の変化が著しいことが明らかになった。
(本文95ページ)


エマルション型ロジンサイズの発現に対する定着薬品の影響
日本製紙株式会社 技術研究所 関 順子,上條 康幸,宮西 孝則  

 近年酸性抄造における紙へのサイズ性付与にはエマルション型のロジンサイズ剤が多用されている。このサイズ剤の定着や発現の機構について,これまでに多数の研究が行われているが,その多くはLBKPをモデルとして使用しており,実機とは異なる条件であった。そこで今回,実際の抄造条件に近い系でエマルションロジンサイズ剤を効率良く定着させ,サイズ性を付与させる方法を検討した。
 エマルションロジンサイズ剤の定着量は,硫酸バンドやサイズ定着剤,歩留向上剤などのカチオンポリマーの添加率により変動し,カチオンポリマーはサイズ剤の定着よりも灰分の定着に効果を示していた。一方,サイズは紙中サイズ剤量が約0.25%以上のときに発現していたが,硫酸バンドを添加しない場合は紙中にサイズ剤が多量に存在しても,サイズは発現しなかった。よって,エマルションロジンサイズ剤を定着・発現させるには,硫酸バンドが不可欠であり,硫酸バンドを十分量添加したときはカチオンポリマーを添加するメリットはなかった。
 ESCAを用いて,紙中サイズ剤量が同程度で,サイズが発現しているシートとしていないシートについて表面サイズ剤量の分析を行ったところ,サイズが発現していないシートでは,表面に存在するサイズ剤の量が少なかった。エマルションロジンサイズ剤を硫酸バンドで定着させた場合とカチオンポリマーで定着させた場合とで,定着状態が異なると推定された。
(本文106ページ)