2000年2月 紙パ技協誌

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紙 パ 技 協 誌 2000年2月

第54巻 第2号(通巻第587号) 和文概要


これからのClO2製造設備
日本カーリット株式会社 富沢 満

 最近海外の二酸化塩素設備は塩素を副生しないR8法が主流となっているが,二酸化塩素使用量の増大に伴い,R8設備から副生されるセスキ芒硝の処理が問題となってきた。そこで副生芒硝を削減する目的でR10法が開発・実用化されている。排出芒硝をさらに削減するためにR12法が開発・実用化試験中であり,さらに副生物をまったく出さないR13法の研究も行われている。
 これからのパルプ工場では二酸化塩素製造設備の選定に対し,漂白シーケンス,副生物の種類・量,ClO2製造能力,環境問題,設備の安全性等に関する条件を考慮する必要がある。これらの条件を満たすプロセスとしてR2P法,R8法が考えられるが,我が国のパルプ漂白も近い将来ECFへ移行するのは避けられない状況であり,二酸化塩素使用量は現状の2〜3倍まで増大すると予想される。これらを考慮するとR2P法は将来に向けての暫定プラント的要素が強く,これからの二酸化塩素設備としてはR8法が最も有力である。
(本文1ページ)


パルプの二酸化チオ尿酸漂白について
旭電化工業株式会社 藤安洸一郎

 二酸化チオ尿素(Formamidine sulfinic acid=FAS)は紙パルプ工業に於いて新しい薬品として注目されるようになってきた。当初はハイドロサルファイト,ボロハイドライド等と同等にバージンパルプの還元漂白に検討されたがパルプに含まれる発色団の還元作用はハイドロサルファイト以上の優れた効果は認められなかった。
 今日,古紙再生パルプが世界的な環境保護の点から広く利用されるようになり,再生パルプの原料である古紙には新聞,雑誌,上質系等があり,また最近の紙製品及び印刷の多様化により種々の染料,顔料が用いられ,古紙となった場合,従来からあるインキ以外に再生紙の品質向上には妨げとなっている。
 二酸化チオ尿素は再生パルプ中に混在する染料の脱色には極めて有効な薬剤である。本報では二酸化チオ尿素の活性化,脱色作用,漂白条件について述べ,更にはリグニンを含み,且つ染色された古紙の再生には過酸化水素と二酸化チオ尿素の二段漂白が効果的であることを纏めた。
(本文8ページ)


過酸化水素漂白におけるPHAS(ポリ―α―ヒドロキシアクリル酸ソーダ)の特性
日本パーオキサイド株式会社 開発研究所 香山 隆一

 過酸化水素は,地球環境的問題を背景として今後ますます注目される漂白剤である。過酸化水素は,本質的には安定な物質であるが,微量の重金属の共存によって分解する。このため,漂白時には何らかの安定剤が必要であるが,従来珪酸ソーダが安定剤として使用されてきた。しかしながら,珪酸ソーダはスケール発生等の問題を抱えており,高性能の非珪酸系安定化剤が望まれている。PHAS(ポリ―α―ヒドロキシアクリル酸ソーダ)は,窒素原子を持たない高分子キレート剤として独特の特性を持っている。ここではPHASの,アルカリ性過酸化水素に対する安定化特性について,他の一般キレート剤との比較について述べる。PHASは,一般的な条件においても他のキレート剤以上の安定化性能を有するが,特に高pH,高過酸化水素濃度,高温において優れた性能を有している。
(本文18ページ)


過酸化水素の性状と取扱い設備について
宇部ケミラ株式会社 工務課 大石 忠務
技術部 児玉 学

 現在,世界的にECF,TCF漂白パルプの割合が増え,これに伴い過酸化水素の使用が増加してきている。既に,北欧では過酸化水素の使用が一般的である。過酸化水素が多く用いられるようになったのは,環境上の理由からだけではなく,パルプ品質及び漂白コストも十分満足のいくものが得られているからである。
 本報では,過酸化水素に関する基礎情報を解説。内容は以下の通り。
 (1)日本の過酸化水素工業の歴史,(2)製造方法,(3)利用法,(4)物理・化学的性状,(5)品質,(6)適用法規,(7)貯蔵・取扱い設備,災害事例
(本文26ページ)


アミノポリカルボン酸型キレート剤について
中部キレスト株式会社 研究部 古川 正法

 キレート剤は,金属イオンと強く結合して金属キレート化合物を生成する。金属イオンが原因で発生する種々のトラブルを防止,製品を安定化する目的で,多くの産業分野で使用されている。本稿では,生産量の一番多いキレート剤であるアミノポリカルボン酸型キレート剤について,前半でキレート反応の基礎知識と代表的キレート剤であるEDTA, DTPAについて説明し,後半で紙パルプ工業での使用例,特に過酸化水素の安定化について概説した。また,最近開発された,生分解性キレート剤についても述べた。(本文36ページ)


微生物対策と水の有効利用
栗田工業株式会社 水処理事業部 杉 卓美

 パルプ化工程における微生物障害として代表的なものは,パルプのカビによる汚染である。本報では,パルプ化工程で発生するカビの種類と生育条件,防カビ対策として,防カビ剤の種類と適用方法について概説する。
 一方,パルプ化工程では大量の水が使用されている。特に近年脱墨処理設備の新設,増強に伴い,水の回収が重要な課題となっている。脱墨工程から排出される水は,pHが高く,微細の繊維,填料を多く含むなど処理しにくい水であるが,近年,高カチオンの有機凝結剤を用いることにより清澄な回収水が得られるようになった。この結果,新水使用量,排水量の低減だけでなく,脱墨パルプの品質向上,抄紙工程でのピッチ障害の低減など操業面でのメリットも得られている。本報では脱墨工程での有機凝結剤の適用法と,そのメリットに関しても概説する。
(本文50ページ)


紙パルプ産業技術の展望―21世紀は?―
紙パルプ技術協会 専務理事 飯田 清昭

 日本の製紙産業は世界的にみて厳しい立地条件の中で,その生産を拡大し,産業として発展してきた。その製紙産業を支えてきた技術領域を,経営投資技術,原料対策技術,エネルギー対応技術,生産技術,環境対応技術,研究開発力に分け,その歴史を振り返って見る中から,21世紀に向けて何を目指すべきか考えてみる。
 詳細は本文で述べるが,それぞれの技術領域で日本独自の技術開発が見られ,それらが日本の国際競争力をささえ,産業を発展させてきたと言える。その源泉には,時代の変化に対応できる柔軟性と新しいものに挑戦する姿勢があった。
 一方,情報化社会の流れは,競争力の根底である日本の独自技術を普遍的なものにし,その優位性が東南アジア等から揺さぶられている。日本の製紙産業が,21世紀へ向け,若い世代を中心に柔軟性と挑戦する姿勢を再び盛り上げることにより新たな技術発展を生み出すことを期待する。
(本文58ページ)


クロムめっき被覆メタリングロールの腐食原因解明について
株式会社野村鍍金 技術部 藤田 得生,望田 靖裕

 製紙機械の塗工部門の1つG.R.C.で用いられているメタリングロール(インナーゲートロール)はG.R.C.の塗工速度の高速化,塗工紙種範囲の拡大に伴い,時折腐食が問題となることがあった。この腐食原因解明のため,過去幾度も静的環境での腐食試験を行ってきたが,いずれも腐食現象の再現には至らなかった。
 そこでより実機に近い環境である,繰り返し面圧,腐食環境液,滑り等の要素を含んだ試験を行った。ここで,クロムめっきされたものの腐食は,クロムめっきに内在するクラックが素材まで貫通することによって起こると予想されるため,クラック幅に注目して試験を行った。初めは細かったクラックが,試験の経過とともに拡大し,その後拡大が収まった後に発錆に至った。そして試験終了後,テストピース腐食部の断面観察より,貫通クラックの存在が確認されたため,腐食メカニズムが予想通りであったことが実証された。
 さらに,種々のめっき仕様で同様の試験を行い耐食性の違いを調査した。表面仕上げの比較では,梨地仕上げに比べプレーン仕上げは約2倍の耐久性を示した。まためっきの種類の比較では,通常品に比べ改良品は,梨地仕上げで約2倍の耐久性を示し,プレーン仕上げでは2倍以上の試験を行ってもクラックが観察されなかった。なお,この結果は今後より実機に近いサイズに拡大した試験で確認する予定である。
(本文66ページ)


コンパクト化により得られるフレキシビリティー―抄紙プロセスへの新たなアプローチ―
POMテクノロジー社 P. O. メイナンダ
株式会社 マツボー 武冨 譲治

 本稿ではフィンランドのPOMテクノロジー社にて開発市場化された画期的なウエットエンドシステムであるPOMコンセプトについて紹介する。本コンセプトは白水循環量を劇的に減少させ,抄替え後に品質が安定するまでの時間を大幅に減らすことができる。抄紙プロセスの安定性,清浄度及び効率を大幅に向上させるJust―in―timeで小回りのきく抄紙プロセスである。
 このPOMコンセプトによる最初の設備は1997年5月よりドイツMD AlbbruckのPM7にて操業され好結果が得られている。同社が開発した遠心式脱気ポンプにより白水からの空気除去をワイヤー排出口という早い段階で行い,ワイヤーピットとデキュレーターを不要にしている。当初の目標であった抄紙プロセスのフレキシビリティーの改善が得られただけでなく,歩留まりの点でも従来のシステムをはるかに上回る数々の利点が得られている。
  このコンセプトは様々なグレードあるいは様々な米坪の紙を生産する多品種抄紙機や,カラーペーパーを生産する抄紙機等に適したシステムであるといえる。
(本文74ページ)


SEM. EPMAによる紙パルプ関連試料の観察,分析技術の推移(第3報)EPMAによるカラーマッピング(1)
日本製紙株式会社 商品開発研究所 濱田 忠平

 SEMにX線検出装置を取りつけ,形態に対応した構成元素の分析を行うEPMAは1972年頃から紙パルプの分野に導入されて以来,紙中異物の同定,未塗工紙,塗工紙中の填料や顔料の組成及び分布,塗工紙のバインダーマイグレーション,蒸解液の木材組織内への浸透,木材及びパルプ中のリグニンの分布,シリコーン塗工紙中のシリコーン樹脂の分布などの分析や観察に広く活用されている。
 このなかで,構成元素の分布状態の測定には,最初は各元素ごとに白黒のX線像で表示していたが,その後コンピューターと連動してX線強度を元素別または強度別(濃度別)に色分けして示すカラーマッピングができるようになり,種々の画像処理によって非常に説得力のある画像が得られるようになった。
 また,紙の印刷適性などと関連したマクロな現象に対応するため,電子ビームを固定し,試料ステージを駆動して広い領域を高い精度で分析できるWDSステージコントロール法がコンピューターと連動させて行えるようになった。
 本稿ではこのカラーマッピング法が紙パルプの分野でどのように活用されてきたか,過去から現在に至る推移を主として筆者らの検討結果を用いて紹介する。
(本文81ページ)


連続蒸解釜の蒸解度制御と材種変更制御システム
王子製紙株式会社 製紙技術研究所 森 芳立
同呉工場 パルプ部 古田 清隆
同呉工場 施設部計装システム課 竹内 悟  
同春日井工場 パルプ部 末田龍三郎  
同苫小牧工場 施設部計装システム課 佐孝 義勝 
王子化工株式会社(前,同呉工場) 加藤 昌夫 

 カミヤーKP連続蒸解釜は,通常6〜8時間と非常に長い原料滞留時間の反応プロセスであり,その内部状態は限られたセンサー情報からしか知ることはできない。連釜のブロー・パルプの蒸解品質のコントロールは蒸解度制御と呼ばれ,一般に,蒸解温度が制御されるが,制御応答は長い時間遅れを伴うためフィード・フォワード制御を用いて制御される。王子製紙呉工場の連釜はDCS設備主体でフィード原料をN材とL材を切替えながら運転しているが,DCSに加えて上位計算機設備[プロコン]を導入し,両設備を連携させた蒸解度制御と材種自動変更制御システムを開発導入し[1990年],現在も実操業で活用している。
 本報では,主にプロコンの制御内容について述べるが,蒸解度制御ではモデル予測制御方式を用い,操業データを基に統計解析から求めた主にHファクター,残アルカリ濃度の変数項と定数項からなるN材,L材用の2つの線形重回帰の蒸解度モデル式を用いて,交互に切替えて蒸解循環の出側温度をフィード・フォワード制御して2種類の材種の定常時の蒸解度をコントロールするが,さらに,指数平滑法を併用してフィード・バックでモデル式の定数項を自動的に修正していく機能を組み込んでいる。
 また,この連釜ではフィードされるチップ材種を1日程の周期で頻繁に切替えていく操業形態が取られているが,材種変更の外乱操作下でもプロセス全体の安定を保ちながらパルプ品質を良好に維持していくために5〜7時間かけて多数の操作端をスケジュールに沿ってタイミング良く適切な値に順次変更していく必要がある。この一連の操業変更操作を自動化するために,プロコンとDCSを連携させて材種を自動的に切替えていく材種変更/生産量変更制御機能を同時に組み込んだ。非定常時間帯のコントロールとなる本自動化機能は良好に実行できており操業に不可欠な機能となっている。尚,頻繁な材種の変更にも拘わらず,N材,L材のブロー・カッパー価の目標値29,20に対し,標準偏差1σで各々,1.7,1.0程度で安定して操業されている。
(本文96ページ)


波板および片面段ボールの異方性弾性引張り変形表示
帝人製機株式会社 松島 理  
愛媛大学(名誉教授) 松島 成夫  

 一様引張り荷重下における波板(WB),片面段ボール(SFCF)の異方性弾性引張り変形表示を導出した。そして,この表示より,WBおよびSFCFの縦弾性係数を求め,その特性を明らかにし,その妥当性を議論した。
 これらの表示より得られたWBおよびSFCFの変形が議論され,それによって顕著な異方性が明らかにされた。その変形強度(単位幅当たり単位引張り力の際)の最大値は流れ方向に,最小値は横方向にある。WBの異方性がSFCFのものより顕著に大きい。WBおよびSFCFの中芯の縦方向の応力σbは,WB,SCMの波高および厚さの中央位置から流れ方向への距離の増加にしたがって増加し,波板および中芯の厚さ中央から厚さ方向の距離の増加にしたがい,ほぼ比例して,増加する。そして,波高の山の表面でσbが最大値となる。
(本文112ページ)