第68巻  第7号  和文概要
 
第68巻  第7号  和文概要


エネルギー使用量削減への取り組み

リンテック株式会社 三島工場 工務部  宇田  栞

  近年,大胆な金融政策など三つの政策から成るアベノミクスにより景気回復の兆しが見えてきた。しかし,2011年の東日本大震災以降,原子力発電所停止の影響を受け電力単価の値上げだけでなく円安により原燃料であるLNGなどの単価も高騰しており,工場におけるエネルギーコストは増大する一方である。
  そこで,当工場は電力使用量削減のため,デマンド監視システムを導入したほか「コンプレッサーの運転管理」や「エア系統の見直し」及び「見える化によるムダ発見」に関して特に注力し活動してきた。また,省エネベルトの導入やマシン停止時は周辺機器を停止するなど,地道な活動の積み重ねにより着実に成果が得られている。その結果,3年間で契約電力を350kW下げることに成功した。
  また,排熱(フラッシュ蒸気)を回収し昇圧する圧縮装置を導入することで工場内に捨てられていたフラッシュ蒸気を元のプロセスラインに戻せるようになった。それにより,ボイラーからの供給蒸気量が減少した。さらにドライヤーフードの改造や保温の強化を図ることにより原油換算にして2.4kl/月の省エネルギー効果を得られている。
  その他にも,調成工程の見直しを行うことでパルパーの離解時間を短縮することができた。さらに,工場内のエネルギー調査結果より離解方式による消費電力の違いを発見し,省エネルギータイプの離解機を導入した。見直し前後で約20,000kWh/月(原油換算で5.1kl)の削減実績を得られている。
  そこで,本稿では近年実施してきた上記の活動及び事例に関する詳細について紹介する。
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工場の「診える化」と「最適化」ECO活動

オムロン株式会社 綾部工場 生産管理部 生産革新課  福島  教雄

  オムロン綾部工場では,1996年にISO14001を認証取得後,継続し環境負荷低減活動を進めてきたが。これまでの活動における省エネ対象は,「空調」の更新,設定温度見直しや「照明」の消灯,間引き,「コンプレッサの集中化と台数制御」といった施設管理部署(ファシリティー)が担当する「共通的に使用するエネルギー」を中心にしたものであり,生産プロセスの省エネには取組めていなかった。
  その大きな理由は,工場では「品質」,「生産性」が最優先課題であるため,「生産プロセスでの省エネは,品質,生産性への悪影響があるかも」という不安感から,後回し,もしくは取組めない「聖域化」となっていたなどの理由が挙げられる。
  しかし2006年ごろには施設管理部署中心の省エネだけでは「手詰まり感」が出始めてきていた。
  そこで,2010年10月より,綾ECOファクトリープロジェクトを立ち上げ,“業界No.1のECOファクトリー”を目指し,これまで取組が困難とされてきた生産プロセスの省エネに取組はじめた。
  生産プロセスの省エネ活動においては「品質」「生産性」に配慮しなくてはいけないため,電力は当然のこと,生産現場の詳細な変化をつかむ必要があると考え,生産現場視点の「電力と環境の診える化システム“環境あんどん”」を開発し活用しはじめた。すると,これまで気付けていなかった電力の消費傾向や,生産現場の様々な「ゆらぎ」をとらえ,そこから新しい「気付き」を得ることができた。またその「気付き」をきっかけに,現場のメンバーとのコミュニケーションを加速することで,これまで「必要なエネルギー」として消費されていた生産プロセスでのエネルギーも,実際は「ムダ」「余裕」が含まれており,改善できることがたくさんあることがわかってきた。
  更に生産プロセスの省エネに取組むことで,「手詰まり状態」であったはずの施設系の省エネにもつながる取組になってきた。
  これまでの活動の成果としては,対象としたクリーンルームでの生産における,電力消費を50%削減する一方,浮遊するほこりの量を1/3に減らす等の「生産性や品質の向上と電力消費の削減を両立する省エネ改善事例」を,2013年度末時点で50件創出し,工場で使用する生産電力を2010年度比で26.3%削減した。
  『診える化』をきっかけに,工場の全ての方が省エネ改善活動に参加することで,現場での省エネが品質や生産性の維持向上にも繋がる『最適化』ECO活動になることを実証してみせた。
(本文7ページ)


フルグライドコーティングによる水ポンプの省エネルギー化

鉄原実業株式会社 海外製品部  水野  剛

  電力供給状況の変化が見込まれる昨今において,製造工場における回転機械の消費電力削減の意義は大きい。しかしながら,多くの回転機械において現状の消費電力値や効率が最適値であるかどうかを判断する方法はほとんど存在しない。そこで英国Corrocoat社及びコロコートジャパン株式会社は,水ポンプに特化して,現状のポンプ効率を定量化するための計測装置ならびに演算処理方法を確立した。これにより現状の消費電力やポンプ効率が可視化され,製造時と比較した際の現状の劣化レベルを定量化することができるようになった。ユーザーは定量化された劣化レベルから,補修対象や適切な補修処理を判断することができるようになった。また補修処理のための投資に対する補修による効果の事前検証も可能となった。
  次なる命題は,劣化した水ポンプをどのように補修し,どのように高効率化するかである。従来の水ポンプの補修は,タールエポキシに代表される部分補修であったが,耐久性に乏しく,水ポンプの高効率化実現に直接つながることはなかった。その状況を鑑み,1986年にCorrocoat社は水ポンプの高効率化を実現するフルグライドコーティングの開発に成功した。同コーティングの適用により,製造時に比べ10%近く低下したポンプ効率は製造時と同等か,それ以上まで回復した。ポンプ効率の上昇は消費電力の削減につながるために,フルグライドコーティング施工で年間数百万円の損失を回避することができた事例が数多く出てきた。
  本稿においては,海外・国内における性能計測やコーティング適用事例や統計データを紹介し,ポンプ効率低下の傾向や,フルグライドコーティングの確度を実証する。
(本文16ページ)


冷水式LNG気化設備導入による省エネ

レンゴー株式会社 武生工場 施設課  佐々木  誠治

  弊社・武生工場では,CO2排出量削減を目的として,2010年にC重油からLNG(液化天然ガス)へのボイラ燃料転換を実施した。当初は蒸気を熱源とする温水式LNG気化設備を使用していたが,この度は冷水式LNG気化設備の導入による省エネに取り組んだ。
  この設備では,製造プロセスの循環水(12.0℃)の熱量を利用してLNGを気化させるものであり,その気化冷熱により冷却された水(9.5℃)が排出される。この冷却能力により,セロファンの原料製造プロセス(原液工程)で使用する冷凍機の負荷低減を図った。
  一方で,この冷水式LNG気化設備の導入により,従来の温水式気化設備は稼働させる必要がなく,その熱源(蒸気)の使用削減も図ることもできると考えた。
  また,冷水式LNG気化設備のトラブル発生時や,LNG使用量が気化能力を超過した場合は,自動的に従来の温水式気化設備に切り替わる運転管理システムを構築した。
  設備導入後1年間が経過し,冷凍機の負荷低減による消費電力の削減と,蒸気量低減によるLNG使用量が削減されて,当初の計画通りに一石二鳥の省エネが達成された。
(本文24ページ)


工場構内の需要電力増加への対応

北越紀州製紙株式会社 関東工場 勝田工務部 動力課  青柳  良隆

  当工場では,2006年に営業運転を開始した2号バイオマスボイラー(2B)と2号タービン発電機(2T/G)から構内で使用する蒸気と電気を全て供給している。電気については構内使用分を差し引いても余剰電力が発生するため,売電として外部に供給している。2013年に大型設備の新設が予定されており,この稼働により構内需要電力は900 kW増加することが予想され,売電の減少が懸念された。この電力増加への対応が重要となったため,省エネルギープロジェクトによる省電力の推進及び2T/Gの発電量増加に取り組み,新設分の電力を賄うことができた。
  省電力の手法としてインバーター化,操業の工夫,フローの変更,省エネ機器への更新を検討し,省エネルギープロジェクトでは90 kWの予想省エネ値を出すことができた。
  2T/G発電量増加では現状の操業から補機関係の余裕分を見込んだ結果,2B蒸発量を10 t/h増加させ,この増加分を2T/Gに呑み込ませることで,発電量が1,900 kW増加した。なお,蒸発量を増加させた際に発生する余剰低圧蒸気を処理するために低圧蒸気復水器を設置した。
  また,構内では2Bに続く再生可能エネルギー導入の一環として,2014年3月から発電量1,440 kWの太陽光発電設備が稼働予定である。
  本稿では,省エネルギープロジェクト及び2T/G発電量増加の活動内容及び事例,併せて,建設中の太陽光発電設備を紹介する。
(本文28ページ)


SEローターの操業経験

王子マテリア株式会社 岐阜工場 工務部  山田  康之

  中津川工場では2005年に操業品質安定化工事として,原質処理工程のフロー見直しを実施した。その中で,主に古紙を原料とした工程の最初の設備である,離解工程のパルパー廻りの設備に着目した。
  当工場では原質処理設備の簡素化,設備の集約等の様々な省エネルギー対策を実施してきた。その一貫として,中津川・恵那両工場の原質処理工程で,最も消費電力の大きいパルパー設備にローター工業株式会社製の90型SEローター6枚羽根を導入し,省エネルギー化を図る事ができた。
  現在,製紙機械メーカーから新型パルパーが開発されているが,いずれも高額な設備投資を必要とする。中津川工場にて導入したSEローターは,ローターのみ交換といった比較的容易で安価な方法で,原質工程内の最も消費電力の大きいパルパーの省エネルギーを実施でき,原質処理工程の安定にも繋がり非常に大きな効果を上げる事ができた。
  今回は,2011年6月中津川工場に導入した事例について紹介する。
(本文34ページ)


クリソニック®槽内監視センサーを活用した活性汚泥の運転管理
-処理の安定化と電力費削減への取り組み-

栗田工業株式会社 ケミカル事業本部 技術サービス二部 技術サービス二課  埜村  誠

  活性汚泥はこれまで,“曝気槽”を中心に管理されることが多かった。当社で開発したクリソニック®槽内監視センサーを“沈殿槽”に設置して測定を行なうと,得られる「監視画像」から活性汚泥で起こる主要なトラブルを検知することができる。従来の監視項目,管理指標では判らなかった状態把握が可能となり,プラントを管理する上で有用なツールとなることが,数多くの現場で実証されている。
  本報文では先ず,「槽内監視センサー」の概要と,このセンサーの利用するための「画像解析」の技法について紹介し,続いてこのセンサーを活用した「改善事例」2種を紹介する。
  1)  汚泥濃縮型運転を行なうと,返送流量が絞られる結果,曝気槽での反応時間を最大にすることができ,処理の安定化に繋げることができる。沈殿槽で滞留時間を取ることで,汚泥を無酸素雰囲気下に置くことができるので,糸状性細菌による障害を抑制できるという効果も期待できる。
  一方,沈殿槽からの引抜汚泥濃度が上昇し,脱水機への給泥濃度が高まるので,脱水ケーキ含水率の低減に寄与することができる。脱水機の種類によっては,動力費(電力コスト)の削減も期待できる。
  2)  過曝気や硝化の発生が検出できる。適正な曝気を行なうことで処理を安定化させるだけでなく,水質浄化能を落とすことなく曝気動力(電力コスト)の削減も実現できる。
  このような取り組みは,いずれも高度な専門知識やコンサルティング技術を要求されたが,槽内監視センサーを活用すれば,現場トライアルで実行できるものであり,貴社の設備にてお役に立てれば幸いである。
(本文39ページ)


200℃以下のボイラー排ガスから低温廃熱回収が可能な高効率ふっ素樹脂熱交換器のご紹介
-酸露点以下まで熱回収可能-

株式会社潤工社 笠間オペレイションズセンター クリーンテクノロジーコンポーネンツ プロダクツマーケティング  石田  雅弓

  省エネ,省電力はあらゆる工場で取り組まれている重要課題である。
  従来より,そのまま捨てていた低温廃熱を有効利用したいと言う要望は有るが,低温領域での廃熱は酸露点腐食,汚れ付着による伝熱管性能低下等の課題により有効に回収することは困難とされていた。潤工社では,この課題をふっ素樹脂PFA伝熱管および構造の工夫により解決した。
  低温領域での廃熱回収を行うにあたり要求されるファクターとして,次の4点が挙げられる。
  ①  酸露点腐食に対する耐食性
  ②  ガス側圧力損失の低減
  ③  メンテナンス工数の削減
  ④  小型・軽量化
  弊社製品はガラスメーカーにて約14年間ほぼメンテナンスフリーにて使用された実績が有り,上記4点の優れた特徴を十分有している事が既に証明されている。
  また,直近では2つの製紙会社の異なるボイラー:廃棄物ボイラー(180t/h)及び黒液回収ボイラー(170t/h)にて実証試験を実施した。ともに伝熱管の腐食やスケールの付着,伝熱管の磨耗・劣化等が見られず良好な結果が得られた。
  潤工社製ふっ素樹脂熱交換器「フロロエックス®グリッドシリーズ」は排ガス中の腐食成分に対して卓越した耐食性と非粘着性を発揮するとともに,総括伝熱係数も40〜50kcal/m2・℃・hrと大きく,他材質の低温領域用廃熱回収装置との比較においても充分なメリットを有していると判断できる。
(本文47ページ)


抄紙機の生産性向上に関する最新提案
-On Machine Equipment,Approach System  への取り組み-

相川鉄工株式会社 技術営業部  岩谷  陽一郎

  抄紙機においては,紙切れ・粘着異物などによる生産性低下は大きな問題となる。そこで,抄紙機の生産性向上に対して,オンマシン装置とアプローチシステムについての最新技術を紹介する。
  1)  洗浄強化型スーパークリーナー
  従来のカンバス洗浄装置では,異物が非常に多い場合や,粘着質である場合,汚れを除去しきれなかった。
  そこで,洗浄水量を大幅に増加し,その分異物・水分回収力を強化したカンバス洗浄装置を開発した。
  2)  ロール表面簡易クリーニングの提案
  ドクター装置でも落としきれない汚れが堆積する事で,製品品質の悪化や紙切れなどの問題が発生する。
  そこで,研磨パッドをロール表面に押し当てる事により,通常のドクターブレードでは落としきれない汚れを削り取る事が可能であるサンディングドクターとサーフェスクリーナーを開発した。
  3)  POM System
  白水中のエアーを強力に除去する事が可能なPOMpデガッサーポンプにより,アプローチ系での発泡トラブル・脱水性能の低下などの問題を解決する事が可能であり,多くのメリットが発生する。
  4)  サクションロール用ドクター装置「エアーセット-B」
  エアーセット-Bを使用する事で,特殊なカーブのより後方に発生する吸引力を利用し,水分や異物をサクションロール表面から引き離す事ができる。
  5)  Outward式のマシン前スクリーン  MHB型スクリーン
  脈動を低減させた,Outward式マシン前スクリーンを開発した。Inward式と比べ,メンテナンス工数が大幅に削減できる。
  6)  高精度の新型バスケット,MaxWaveバスケット
  これまでより,さらに高精度でバスケットを製作する技術を確立した。高精度バスケットを使用した場合,異物除去の効率も非常に高まり,生産性の向上と製品品質アップが達成できる。
(本文55ページ)


ATREX装置-リジェクト回収システム
-塗工紙及び塗工板紙生産における繊維及び添料の回収システム-

川之江造機株式会社 営業部  矢野  順一

  GL&V/川之江造機㈱が提供する,マシン前クリーナーリジェクトからの添料及び繊維の回収装置-ATREX装置について紹介する。
  塗工紙や塗工板紙抄造用抄紙機のアプローチ系に設備される,所謂マシン前クリーナーのリジェクトには多くの有用な添料やコーティングフレーク,繊維が含まれている。このコーティングフレークを再利用するためには,そこに含まれるサイズの大きなフレークを粉砕して小さくする必要があるが,塗工量が多くなるのにつれて,再利用した際にトラブルを起こさないレベルまで小さく粉砕することは,これまでの技術では困難であった。
  GL&V/川之江造機のATREX-リジェクト回収装置で処理すると,塗工顔料や添料の大きさは,ほぼ塗工前のオリジナルサイズに戻すことができる。それと同時に,絡みついた繊維の塊も分散され,繊維原料として再利用できる。その結果,リジェクトに含まれる有用な原料分の大部分を回収再利用することができる。一旦リジェクトとして排出された原料の大部分を回収し再利用することで,添料や繊維の使用量を減らすことができる。
  抄紙機工程でのトラブルを未然に防止しながら,95%を回収再利用する。そのまま再利用した場合に発生する,各種マシントラブルを未然に回避するのと同時に製品品質の低下も防ぎながら,それと同時に添料やパルプ繊維の回収及び再利用を実現する。また,自然にも優しい技術である。
  ATREX装置の効果を実際に,工場現場において運転して性能を確認していただけるように,テスト機による実機レベルの効果確認運転も可能である。
(本文60ページ)


寄  稿
2013TAPPI PEERS Conference/10th RFR参加報告
-2013年9月15日〜9月18日グリーンベイ(米国)にて開催-

日本製紙株式会社 釧路工場 工務部  小島  武紘
日本製紙株式会社 研究開発本部 総合研究所  黒須  一博

  2013年9月15日〜18日に2013TAPPI PEERS(Pulping, Engineering, Environmental,Recycling and Sustainability)と10th RFR(Research Forum on Recycling)が開催された。口頭発表が82件あり,開催期間中大ホールで27社のブースが開かれた。参加者は事前登録者372名,企業38社だった。
  発表内容は,基礎的なものに加えてコストの削減のためのツールの提案やスケールの原因・防止に対するデータなど実操業に即した課題の解決・検証などがあり,幅広い研究者・技術者に対して有用な情報を提供している印象があった。他にも,木材以外のパルプ化工程が導入されるなど挑戦的な検証や,リグノブーストやバイオエタノール製造など,潜在的には大きな研究分野になる可能性を感じる発表もあった。
  本稿では各分野で聴講した中で興味深かった研究発表の概要を紹介する。
(本文64ページ)


研究報文
段ボール原紙巻取における吸湿シワ発生要因の解析

王子ホールディングス株式会社 紙パルプ革新センター  平野  大信,小林  孝男

  近年,省資源,省コストなどの観点から,段ボール原紙の軽量化が進行することが予測されている。このような状況において懸念される段ボール原紙の品質トラブルの1つに,巻取の吸湿シワが挙げられる。吸湿シワとは,巻取が吸湿することによって,胴面にドラム缶状の膨れシワが発生する現象であり,その発生メカニズムから,吸湿伸びが大きいこと,座屈のしやすさ,の2点が主な要因として考えられる。しかし,これらに関連する物性と実際に発生する吸湿シワとの関係について,系統的に調査した例は見当たらない。
  そこで,段ボール原紙巻取における吸湿シワ発生要因を解析するために,異なる複数の工場にて抄造した巻取を同一条件下で保管し,各巻取の吸湿シワ発生状況および水分変化率の調査を実施した。
  その結果,巻取間で吸湿シワの発生状況,水分変化率に差異が見られ,吸湿シワ発生状況とその関連原紙物性との重回帰分析から,吸湿シワ発生要因として,剛度,吸湿伸び,地合の3要素が重要であることがわかった。吸湿伸びは水分伸縮係数と水分変化率の積の形で表され,水分変化率はワインダー巻取り時の初期水分と原紙の平衡水分に影響されるが,特に初期水分の寄与が大きいと見積もられた。また,有限要素解析シミュレーションから,地合改善は吸湿シワの発生を遅らせる効果はあるものの,一旦吸湿シワが発生してしまえば,成長を抑制するだけの効力は持ち合わせていないことが示唆された。
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