第68巻 第1号  和文概要
 
第68巻 第1号  和文概要


製紙業界に於ける「AOKIクリーナー」の現状
―ブレード式キャンバス洗浄装置―

株式会社青木機械 大高 成裕

 ここ数年の製紙業界は,古紙再利用の増加から粘着性異物を含め,抄紙機内に持ち込まれる異物が操業トラブルや品質トラブルの原因になることは少なくない。したがって,キャンバスの汚れも顕著となり,ドライヤーでの紙切れの発生,欠点の増加,ワインダーでの継手作業の増加,損紙量の増加による生産性の低下が急増している。
 この対策として,スクリーニングの強化,ピッチコントロール剤の添加,ドライパートでは超高圧水洗浄機の設置やキャンバスロールのインサイド化などのさまざまな対策をするが,これらの対策だけでは限界にきているのが現状である。
 弊社では,キャンバス洗浄方法として従来の高圧水洗浄機とは異なるブレード式キャンバス洗浄装置「AOKIクリーナー」を開発した。
 AOKIクリーナーは,キャンバスのペーパーサイド面に,特殊硬質素材のブレードをキャンバス幅全面に,3列から4列を配置しブレードの先端をキャンバスの表面に均一に接触させ,キャンバスに付着した粘着性異物や紙粉を24時間操業中に洗浄している。キャンバスの表面に発生した汚れは,ブレードのフォイル現象によって吸い出し,掻き取られ,最終はセーブオールで回収される。
 AOKIクリーナーの洗浄は,操業中に水を使用しないため,水分プロファイルの向上やキャンバスロール表面に錆の発生も無く,周囲の環境改善にも効果が現れる。特殊ブレードの開発により,従来の洗浄機とは異なる洗浄システムでキャンバス汚れによる操業トラブルや品質トラブルを無くし,操業安定と共に品質改善を可能にする洗浄装置である。
 本稿では,そのシステムと効果及び現状の実機についてご紹介をする。
(本文32ページ)


スクリーン工程の簡素化と省エネルギー
―MaxFlowスクリーンシリーズ―

相川鉄工株式会社 技術部 藤田 和巳

 スクリーンは製紙原料中から異物を篩い分けることを目的とした,製紙工程の中でももっとも重要,かつ普遍的な設備であり,その性能向上と動力削減はあらゆる紙,板紙製造業界から大きく期待されるところである。
 今日スクリーンに求められる項目は,高い異物除去効率,処理原料量の最大化,高濃度での原料処理,動力原単位の削減,省エネルギー,長いバスケット寿命,容易なメンテナンスなどである。
 MaxFlow,及びMaxSaverに代表されるMaxFlowスクリーンシリーズは相川鉄工のOutward Flow式,竪型プレッシャースクリーンの最新スタンダードである。ケーシング構造,ローター,バスケットと言ったスクリーン構成エレメントに最先端技術を駆使し,上記の除塵効率や処理量の最大化と動力原単位の低減といった,相反する要求を高い次元で両立させることに成功し,その結果多くの実績を上げることができた。
 MaxFlowスクリーンシリーズはMaxFlow-0(MAX-0)を基本として,中間希釈機能を加えたMaxFlow-1(MAX-1),MaxFlow-1を上下対称に積み重ねた構造のMaxFlow-2(MAX-2),MaxFlow-1にリジェクトシーリング機能を追加したMaxSaver(MXS)の4機種に加え,抄紙機アプローチスクリーンとしてのMaxFlow HB(MHB),フラクショネーターとして使用されるMaxFlow Fractionator(MXF)の6機種から構成され,あらゆるスクリーニングシーンで活躍している。
 この度,2013年度の紙パルプ技術協会・佐々木賞を受賞させて頂いた。
(本文37ページ)


ナノセルロースの製造技術と用途開発

王子ホールディングス株式会社 開発研究所 盤指  豪,野一色 泰友,野口 裕一,嶋岡 隆行,鈴木 勝人,浅山 良行

 木質バイオマス資源の新たな活用方法として,ナノセルロースが有望視されている。ナノセルロースとはパルプをナノオーダーに解繊したもので,下記の特徴を有している。
 1) 線熱膨張係数(=温度変化に伴う伸縮度合い)がガラス繊維並みに小さい
 2) 弾性率がガラス繊維より高い(=硬くて丈夫)
 3) ナノ分散により光学的な透明性が高い
 4) ナノサイズであるため比表面積が大きい
 5) 環境負荷が小さく,リサイクル性に優れる
など。ナノセルロースはその可能性の大きさから,実用化に向けた国際的な競争の様相を呈しており,これまで以上に各用途に対して,どのようなアプローチで製品開発を目指すかが重要になると思われる。
 王子HDでは,比較的安価な薬品を用い,有機溶剤を使用せず,工業化を想定した単純なフローで出来る化学変性というコンセプトで特徴の異なるナノセルロースの作り分けに注力してきた。また,シート化技術を活かし,CNFシート,もしくは樹脂との複合化フィルムとしての供給も可能となった。
 本稿では,王子HDにおけるナノセルロースの製造技術や用途開発の柱と位置づけるナノセルロースのシート化技術について紹介する。
(本文45ページ)


パルプ生産設備を前処理設備として用いたエタノール製造事業の経済性評価

日本製紙株式会社 総合研究所 二之宮 良一
ノースカロライナ州立大学 Richard Phillips, Hasan Jameel and Hou―min Chang

 木質バイオマスからエタノールを製造するにあたり,糖化前処理の設備投資費が高いなどの点から実用化が難しいとされている。これに対し,ノースカロライナ州立大学は既存のパルプ製造設備の余力を前処理設備として利用して(リパーパスモデル)広葉樹を緑液蒸解・酸脱・リファイニング処理する方法が最も糖収率の高い方法であるとの結論を得た。また,糖液製造技術に関し,パルプスラリーや糖液を濃縮し設備容積を削減する技術などを開発してきた。
 このような技術に基づきエタノールを製造した場合の経済性などを評価するために,ノースカロライナ州立大学ではWinGEMS(紙パルプに特化したシミュレーションソフト)やNREL(米国国立再生可能エネルギー研究所)の報告書が使用されている。
 これらの技術と手法に基づきエタノール製造の経済性を評価した結果,チップ価格を17円/kg,チップ年間使用量を約300,000トンとした場合,エタノール製造総費用が125.5円/Lであることが推定された。感度分析の結果より,原木比例費の変動が総費用の変化に最も大きな影響を与えることや,酵素自製がエタノール総費用の低減に有効であることなどがわかった。これらのことから,低価格のエタノールを製造するためには,リパーパスモデルを採用し,より安価で糖収率に優れる木質バイオマスの探索や酵素比例費の低減などを進めることが必要であると考えた。
(本文49ページ)


T-4マシンヤンキードライヤーへの溶射施工と操業経験

王子製紙株式会社 春日井工場 施設部 振角 圭一

 春日井工場のT―4マシンは1993年の設置以来,約20年に亘ってティシュペーパー用の原紙を生産して来たが,ヤンキードライヤー(以下YD)胴面の減肉が進み,蒸気内圧に対する強度的な限界が近づいていた。そこで,YDの延命対策として耐摩耗性に優れる溶射被膜をコーティングする工事を実施した。
 YDは直径4.2m,幅5.8mの巨大なドラムで,内部に蒸気を充満させて,胴面に巻き付けた湿紙を乾燥させ,乾いた紙をドクターで剥がす際にクレープ(縮みじわ)を付ける機能を持つが,材質が鋳物の為,ドクターとの摩擦により荒れた面を定期的に研磨する必要があった。
 そこで,YD表面に硬度が高く耐摩耗性に優れる溶射皮膜をコーティングしたところ,ドクターとの摩擦による摩耗が非常に少なくなり,YD表面が荒れないようになった。これにより,定期研磨が不要となったため,YDの減肉が止まり延命に繋がった。
 また,T-4マシンではYD表面の摩耗の進行に伴って表面に露出した鋳造欠陥(鋳巣)がスクラッチ状に成長し,これが原因で紙面に穴が発生する問題があり,定期研磨前には抄速を落として対応していたが,工事後にはYD表面が荒れなくなったので,この問題を解消する事ができた。YD溶射後は,エネルギーコストの増加はあるものの,メンテナンスコスト削減と生産性向上により,全体としてコストダウンとなっている。
 近年はメーカー各社の溶射技術の向上により,鋳物YDの現地溶射は安価で高品質な施工が可能となっており,今回の工事の結果からも,減肉した鋳物YDの延命化策として全面溶射が有効な対応策となる事が確認出来た。
(本文54ページ)


カメラ型オンライン地合計を活用した地合改善の取り組み

日本製紙株式会社 総合研究所 山本 准司

 紙の地合は,強度特性や印刷時の着肉,裏抜け品質に関わる重要な紙質であり,特に近年の低坪量化や高灰分化に伴い,地合の製品品質への影響は大きくなっている。従って,地合を制御,改善することは,製品品質の向上に直結する。地合の形成には原材料条件(パルプ,添加薬品等),操業条件(原料濃度,J/W比,脱水バランス等),用具条件(ワイヤーの織り,通気度等)といった様々な要因が関わっているが,実際の抄紙における地合調整は,過去の経験や勘に頼っていた。
 ストロボ光源とCCDカメラを組合せたカメラ型オンライン地合計は,抄紙機上のフリーラン部分に設置することで,走行する紙の地合をリアルタイムで評価できる。従来の透過光やβ線を利用したラボ用地合計では,枠替え毎にしか地合が評価できず操業への反映に時間がかかったが,オンライン地合計は走行する紙の地合を連続測定するため,迅速なフィードバックが可能である。
 このオンライン地合計を,新聞用紙を製造する2台の抄紙機に設置し,操業条件と地合の関係を解析し,地合改善に取り組んだ。1台については,フォーマーにおける脱水装置の真空度を調整することで,もう1台については抄速の増速と原料の低濾水度化で,地合を改善することができた。
(本文58ページ)


ファウンテンアプリケーター塗工解析

MPM数値解析センター株式会社 小関 洋介,安原  賢

 印刷用紙の塗工方式として広く用いられているファウンテンアプリケーター方式のブレード塗工においては,リップからのバックフローを起こさせずに塗工する方式が既に一般的であるが,さまざまな因子の変動によりファウンテンのリップが部分的に塗工液で濡らされ不均一に汚されることがあり,最終的な塗工面に故障を生じるという問題がある。このことに対し,これまではリップが汚れる要因を十分把握できておらず,生産現場での経験に基づき対応するのが実状であった。
 そこで本報では,ファウンテンから噴出された塗工液が基材に衝突してビードを形成する様子を数値解析で再現することで,現象の解明を目指した。また,ビード安定性に影響する多数の条件を変更して解析を行い,これらを相対比較することで上記課題の科学的かつ理論的な対策を目指した。
 その結果,数値解析にて,生産現場での塗工液にてリップが汚される現象を十分に再現可能であることが分かった。そして,数値解析による本現象の検証を行うことにより,塗工液がリップを汚す要因の一つとして,ビードの上流側メニスカス形状の乱れによる塗液の飛散が考えられることが判明した。また数値解析によって得られた粘度を用いたレイノルズ数にて本現象を整理することにより,粘度または塗工速度に対してのそれぞれの適正範囲を求めることができ,理論に基づいた対策が可能となった。
(本文62ページ)


新潟工場 断裁能力増強工事

北越紙精選株式会社 業務部 帆苅 雄一

 弊社は北越紀州製紙新潟工場において,紙の断裁・選分・包装を受託し,約4万t/月の平判を処理している。近年,国内需要の低迷により輸出拡大策が打ち出されたことを受け,平判増加に対応することを目的として,新規にカッターを導入することとなった。
 今回,導入に際しての機種選定は実機視察などを経て,海外実績が豊富であるスペインのパサバン社に決定したが,国内での洋紙断裁カッターとしては初となる。
 本年3月から製品断裁に入り,間もない5月に2台のカッターで4,000t/月,日量最高209t/日を記録しており早期戦力化を果たしている。断裁品は比較的,切り難いとされている嵩高紙や中質紙をメインとしているものの,シートの搬送性が良く,切り口や紙揃えに関してのクォリティーも高いレベルである。
 又,何件かの初期トラブルが発生したが,メーカーの対応により現在では平常な運転が出来ており,更なる断裁量アップに挑戦中である。
 本報ではパサバンカッターの特徴と操業状況を報告する。
(本文68ページ)


排水処理設備更新と操業経験

レンゴー株式会社 八潮工場 施設部 環境課 森本 恭生

 レンゴー株式会社 八潮工場では場内の排水を処理して循環再利用を行っているが,旧再利用水処理設備の処理能力の低下,躯体の老朽化に伴い,限られたスペースにおいて高効率・省エネ・省スペース型の新再利用水処理設備の導入を計画した。更新案として流動担体法,酸素曝気法,多段式生物処理法,膜分離活性汚泥法等の比較検討を行い,最終的に高速凝集沈澱を特徴とする省スペース型システム「スミスラッジ®システム」を採用した。これは高速凝集沈澱スミシックナー®にて汚泥を高濃度に濃縮し,曝気槽内汚泥も高濃度に維持し,BOD容積負荷2〜3kg-BOD/(m3・日)にて高効率処理する設計である。
 システムの特徴として,原水性状,通水量が安定している時は生物相,沈降性ともに良好な状態を取り易く,高効率安定処理が可能である。反面,省容積であるがゆえに汚泥沈降性悪化時の界面変動が大きい,凝集剤等,薬品類の使用金額が掛かる,異物流入など原水性状の変化や通水量の変動による生物相の変化,界面の変動などが見られた。
 上記の対応としてMLSS濃度の管理,通水量の調整,薬品類の再選定,補機類などの追加・改造を検討したので報告する。これらについては引き続き今後の運転ノウハウの蓄積,改善により総合的に解消していくべき課題である。
(本文72ページ)


RPF/木質チップ燃焼ボイラー設備概要と運用実績
―環境との調和・化石燃料削減―

特種東海製紙株式会社 三島工場 動力課 杉村 正仁

 特種東海製紙三島工場では,化石燃料の削減を目的としてC重油に変えて,固形燃料を使用するRPF/木質チップ燃焼ボイラーの建設を実施した。
 弊社は環境と調和した企業活動と言うものを掲げており,地球温暖化防止・省エネルギー対策推進,これらを基本方針に活動している。設置場所も騒音や粉塵が工場敷地内から出ない様,工場中央部分に配置しコンベア各所に集塵機を装備するなど,近隣住民に十分に配慮し運用を行う事で工場をクリーンに維持している。
 設備の特徴としては,燃料ラインは2系列,片側のラインにトラブルが発生した場合でも,ボイラーは安定した稼働が,出来る様に設計。また燃焼室直前では更に二分割させることで,燃料が均等に燃焼室に入る構造となっている。これにより燃焼室内に於いて,燃焼の片寄り発生を防ぐことが出来る。
 固形燃料を取り扱うボイラーを運用するにあたり,燃料の品質管理と燃焼室内の状態管理(流動・温度)が最重要と考える。
(本文77ページ)