第67巻  第11号  和文概要
 
第67巻  第11号  和文概要


ゼオライト高密度結晶化パルプ「セルガイア®」の開発とその応用

レンゴー株式会社 中央研究所  杉山  公寿,山口    薫

  ゼオライトは銅や銀などの金属を担持させることで高い消臭,抗菌性を発揮することが知られている鉱物の一つで,最近では,水に溶解した放射能物質を吸着する能力にも注目が集まっている。
  このような高い機能を有するにもかかわらず,これまで,紙や布のような材料に保持させる有効な手法がなく,その利用分野が制限されていた。
  レンゴーは長年行ってきた製紙に関連した研究開発により,ゼオライトを木材パルプ中に高密度に結晶させることに成功し,高品質パルプとして商品化した。
  “セルガイア”は繊維の形態を維持しつつ,ゼオライトのもつ優れた機能のすべてを有する。また,セルガイアは紙,不織布,綿など多くのタイプの繊維製品に応用可能で,目的とする機能に応じて,性能の調整が容易にできる。幾つかの例を紹介する。
(本文16ページ)


PAM系表面紙力剤

星光PMC株式会社 製紙用薬品本部  佐藤  翔子

  現在,環境負荷低減および省エネ,コストダウンの観点から板紙の低坪量化が進んでいる。低坪量化は紙力の低下を招くため,紙力剤による補強が必要となる。低坪量紙の強度を効率的に高めるためには,内添処方と外添処方との併用が有効である。紙力向上効果に優れる内添処方については既に報告しているので,本稿では外添処方について,低坪量紙での強度向上が特に難しい圧縮強さに焦点を当てて紹介する。
  圧縮強さ向上には座屈の抑制が重要で,座屈を抑制する為には紙の曲げ剛性を向上させる事が有効である。本報告では,まず,紙力剤としてPAMを用い,PAMの浸透深さと紙の曲げ剛性との関係についてシミュレーションを行った。その結果,最大の曲げ剛性を示すPAMの最適浸透深さが存在する事が判った。そこでPAMの最適な浸透深さを達成する為に,外添処方におけるPAMの分子設計を行い,圧縮強さ向上の検討を行った。分岐構造を有し,高分子量かつ低粘性のPAMを使用する事で低坪量紙の効率的な圧縮強さ向上が図れることを確認した。
(本文20ページ)


パルプリジェクトを用いたバイオエタノールの製造に向けて

地方独立行政法人 北海道立総合研究機構林産試験場  岸野  正典,折橋   健,原田   陽

  北海道では,環境を活かした経済の活性化を目標に,豊富に存在するバイオマス資源を活用したバイオエタノールなどの輸送用エコ燃料の製造・供給拠点の形成に取り組んでいる。
  北海道にある8ヵ所の製紙工場から多量に発生しているパルプリジェクトは,製紙原料として循環利用されるとともに,工場内のボイラー燃料として焼却処理されているが,バイオエタノールの原料に適していれば,木質バイオマスを原料とした,バイオエタノールなどの輸送用エコ燃料の製造・供給拠点の形成が実現に近づくこととなる。
  本研究では6種類のパルプリジェクトの性状,糖化性,糖液の発酵性等を調査した。パルプリジェクトには,酵素糖化の基質となるセルロースがいずれも50%以上含まれ,酵素糖化の結果,リジェクトに対して50〜70%,リジェクト中のグルカンに対しては93〜116%の収率でグルコースを得た。また,得られた糖液の発酵試験を行い,著しい発酵阻害がないことを確認した。一方,糖化性の向上に向け,粒度毎の糖化率を調べた。その結果,解繊により2mm以下の画分を増やすことで,糖化性を向上できることが分かった。結論として,クラフトパルプ工場からのパルプリジェクトはバイオエタノールの原料として適していた。
(本文24ページ)


脱墨剤及び古紙処理薬品について

株式会社日新化学研究所 研究部  下山  竜吾

  低品質古紙の再生技術は近年めざましい進歩を続けているが,古紙原料の多様化に対して,古紙品質の変動に対応出来る薬品の使用やその最適化が,ますます重要な技術要素となってきている。弊社も薬品メーカーとして様々な要求に応えるべく,脱墨剤をはじめとする種々の古紙処理薬品をご提供し,その発展に貢献してきた。
  そこで本稿では,脱墨剤をはじめとする古紙処理薬品全般に関する基礎知識および作用機構に関して下記項目に沿って解説し,併せて弊社の最新の取り組みについてご紹介する。
  ・古紙処理薬品とは
  ・脱墨剤
  ・離解促進剤
  ・脱蛍光剤
  ・スライムコントロール剤
  ・内添型ピッチコントロール剤
(本文28ページ)


東南アジアにおける製紙技術の最新動向

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 製紙機械技術部  佐藤  一成

  東南アジア-ASEAN10ヶ国の中で,IHIフォイトペーパーテクノロジーとの関係が特に深いベトナム・タイに焦点をあて,2012年度Vietnam Pulp & Paper Association発行資料及びThe Thai Pulp and Paper Industries Association発行“Thailand Pulp and Paper Industry in2011”を基に両国における最近の製紙産業動向を調査した。
  ベトナムでは需要超過がまだ続く見通しであり,なおかつ人口増や経済成長も継続的に見込め,東南アジア諸国の中でもまだ市場成長の可能性を秘めている。環境規制から,グリーンフィールドからの新工場建設のためのライセンス取得問題があるものの,ライセンス取得済の既存工場の拡大が可能性としてあげられる。タイ国は,現在供給過剰傾向との見方もあるが,洋紙・板紙産業の総需要は,今後継続的に年4%増加すると推測されている。
  各々の市場環境で,またお客様のニーズに沿った最適且つ最新技術を装備した代表的な2台のマシン,2008年4月タイにて稼動を開始した上質印刷・筆記用紙及びコピー用紙製造用抄紙機フェニックス・パルプ・アンド・ペーパー社コーンケーンPM1マシン及び2009年4月ベトナム最大級の段ボール原紙製造用抄紙機VKPC PM#1の近況について報告する。
(本文38ページ)


東日本大震災による洋紙事業復興と生産体制構築

日本製紙グループ 株式会社アイメイト  宇佐美  潤

  2011年3月11日東日本大震災で壊滅的なダメージを受けた日本製紙株式会社石巻工場は全損に近い危機的な状況にあったが復興宣言し「今こそ団結!!POWER OF NIPPON」を合言葉に社員一丸となり1年半の短期間で洋紙事業復興計画通り抄紙機6台,塗工機2台全てが操業を開始した。
  復興は瓦礫撤去から始まり電力復旧,原質系復旧,生産ラインそして仕上げ設備復旧と完全復興へ向けた工程で進められた。誰も経験のない整備不可能とも思える設備を復旧するに当たり,使用可能パーツの選定,クラックが入った物の処理方法,海水水没品の処理方法と模索しながらの復旧となった。
  仕上部門の復興においてはより高効率な仕上げ工程を確立するため,10数年来の課題として取り組んでいた「NO選化」を目指しカッター欠陥自動リジェクト装置設置,カッター2方差パレット化等の対応で立ち上げより実現した。
  一方,将来を見据えた震災復興計画として需要に見合った国内事業ダウンサイジングが図られ,石巻工場で新規事業となるPPC小判仕上設備を立ち上げ新たな取り組みを開始した。経験者が誰もいない状況下でオペレーターは同設備を有する工場で3ヶ月間操業経験を積み,更に経験者を配備しながらの立ち上げとなった。
  復興したものの震災影響による錆付や地盤沈下の問題対応,仕上げ部門の高効率化を目指す生産体制構築及び新規事業の早期安定化が今後の課題となる。
(本文53ページ)


LeanE - 省エネへの取り組み

メッツォペーパージャパン株式会社 営業本部  毛受  正治,八田  章文

  TMPは優れた強度を有し,軽量化が進んでいる新聞用紙を代表とする軽量紙へ配合されてきた。一方,TMPは叩解を担うリファイナーおよび周辺機器での消費電力が大きいため,長年に渡り省エネの対象となりこれまでに様々な取り組みが行われてきた。メッツォペーパーが新たに考案したTMP用の省エネコンセプトであるLeanEはAuditと呼ばれる手法を採用しており,弊社の技術者が直接訪問して操業中のTMP工程全体を調査・分析した上で,最新装置およびこれまでに蓄積してきた技術的な知見を総合的に組み合わせ,操業状況に合わせた最適な省エネ案を提案するコンセプトである。
  LeanEでは,@耐摩耗性を向上した長寿命タイプの「フィードスクリュー」,A脱水能力を高め,プリヒーターでの加温蒸気量を削減する「プラグパイプ」,B叩解後のパルプの持ち込みをほぼゼロにまで低減した「機械式蒸気セパレーター」,C操業中にキャリブレーションが行え,プレート間隙をより正確に検出できる「ギャップセンサー」,D省エネタイプの「リファイナープレート」,Eプリヒーター内のチップの偏りを低減し,安定したチップフィードが可能な「アジテーター」,等の最新装置を提案している。また,操業改善案としては,F叩解濃度を下げた「低濃度リファイニング」,Gリファイナー台数を増やした「トータルでの省エネ」,等を提案してきた。本稿では,これらのアイデアを実際に採用し省エネや品質改善に取り組んだ実例も併せて紹介する。
  LeanEは本来TMP用として考案されたコンセプトではあるが,クラフトパルプ工程へ適用した実例も併せて報告する。
(本文60ページ)


“ファイバーtoプリント”コンセプトによる抄紙プロセスの最適化
-調成・抄紙プロセス制御から品質管理の包括管理-

メッツォオートメーションInc.  ヤルコ・ルオナーラ,ユッカ・ノケライネン
メッツォオートメーション株式会社 PAS事業部  石原  健一

  品質の改善とプロセスの最適化を検討するときには信頼性の高いプロセス管理が重要になる。プロセスの障害と固有の変動は,信頼性の高い計測データを必要とする制御システムによって説明することができる。
  製紙プロセス全体を検討するとき,そのパラメータは,パルプ工程ではpH,カッパー価,伝導率と白色度,原料調成工程ではフリーネス,繊維形態,繊維と灰分の原料濃度,ウェットエンド工程では歩留り,電荷および化学的特性,抄紙機ではプロファイルおよび加工後の品質保証と紙試験などが挙げられる。
  信頼性の高いオンライン自動計測機器,試験分析機器と組み合わせたMPC先端制御システムを導入し,計測・分析結果を用いてプロセスモデルの定期的自動再校正により,その変動を極小化し長期的安定運用できる。これによりプロセス安定を導きプロセス変動による生産リスクを減らすだけでなく,制御の焦点をプロセスの部分最適化から包括的な製品品質の最適化に移すことができるようになる。
  本稿は抄紙工程における総合的な品質管理と最適化の可能性を提示し,原料調成工程の最適化を利用した最終製品の品質管理の事例を紹介する。
(本文64ページ)


進化するDCS「新世代のExperion PKS」

ハネウェルジャパン株式会社 エネルギー&ケミカル営業部  藤井    淳

  装置産業ビジネスはとても競争が激しい。この厳しい競争に勝ち抜き21世紀をリードしていくためには,豊富な経験と最先端技術を駆使し,ビジネス及び制御情報に対し迅速で正確な意思決定を行うことが必要になってきている。
  また,DCSのオープン化とIT技術の進歩に伴い,DCSにおけるセキュリティー対策,アラーム削減,他システムとの統合,シングルウィンドウ化が必須となってきている。
  如何にオペレータ一人当たりの負荷を下げつつ,より広範囲のオペレーションを安全かつ効率的に行うのかが課題となっている。
  本稿では,本年6月に全世界一斉にリリース開始された弊社DCS「Experion PKS」の新機能も含めて紹介させていただく。
  以下に,「Experion PKS」の特徴を挙げる。本文では項目毎に詳しく解説している。
  ・開発段階からのセキュリティーの確保
  ・ASM(Abnormal Situation Management)準拠したHMI-Web画面
  ・標準装備されたアラーム削減のためのアラーム解析機能
  ・コントローラ専用のファイアーウォールとユニバーサルI/Oを持つC300コントローラ
  ・バーチャライゼイション
  ・高度なアプリケーションソフトウエア(リアルタイムデータベース,高度制御)との統合
  ・運転支援システムを標準装備
  ・ワイヤレス機器/フィールドバス機器/Hart通信機器との統合
  ・弊社最新式QCS(X線厚み計)との統合
  ・安全計装との統合
  ・ビデオ監視システムとの統合
(本文71ページ)


無地シート面カラー検査装置(MaxEye. Color)の開発背景と運用例

株式会社ヒューテック 開発部  鈴木  昌裕

  弊社は,紙パルプ・フィルム・金属・不織布などの無地シート業界のみならず,グラビア・フレキソ・オフセットなどの印刷業界に至るまで,さまざまな業界に約7,700台(1978年〜2011年)のシート面検査装置を納入してきた。
  無地シート面検査装置では,モノクロラインセンサカメラを用いてきたが欠陥弁別の要素としては,コントラストおよび形状による弁別となるため,有色欠陥は弁別することは困難であった。また,従来のカラーラインセンサカメラ(駆動周波数40MHz)では十分な流れ分解能を確保できなかったため鮮明な画像を取得することも難しかった。
  こうした中,弊社では印刷面検査装置の高速カラーラインセンサカメラ(駆動周波数80MHz)の技術を用い,@鮮明なカラー欠陥画像,A使いやすい色設定画面,Bリアルタイム色弁別の3点をコンセプトとした,無地シート面カラー検査装置(MaxEye. Color)を開発した。
  本検査装置により,鮮明なカラー欠陥画像を現場オペレータに提供することが可能であり,欠陥画像から発生原因の早期特定に寄与できるものと考えている。さらにリアルタイム色弁別機能により有色欠陥のみを自動で弁別できるため,オペレータの確認作業を支援し業務の効率化にも寄与できるものと考えている。
(本文75ページ)


ボイラ水冷壁における肉盛溶接部のいくつかの特徴

株式会社ウェルディングアロイズ・ジャパン 技術部  福本  宏昭,後藤  武俊

  近年,発展途上国のエネルギー需要増大に伴い高品位な燃料の値上がりが生じ,安価な低品位の燃料の利用が進んでいる。低品位の燃料の利用は塩素分,硫黄分による腐食や焼却灰の固結が生じ易いなど,ボイラの操業上多くの課題があり,その対策が日々模索されている。
  ボイラ水冷壁の肉盛溶接技術は1990年頃より北米におけるゴミ発電ボイラの腐食対策として採用され,有効な肉盛溶接施工法として定着している。国内では石炭抱焚きボイラなどの水冷壁に溶射が採用されている事例が多いが,抜本策ではなく,現在肉盛溶接による効果が確認されているところである。当社は,腐食,浸食による損傷の激しいボイラを中心に肉盛による保全策を提案し,具体的効果を確認しながら実績を積重ねている。
  本稿では,水冷壁に適用される肉盛溶接金属のいくつかの特徴およびこれらの材料を使用し国内外で実施された水冷壁の肉盛施工事例を以下の項目に沿ってご紹介する。
  1)  ボイラ水冷壁に適用される肉盛溶接材料に関する検討
    ・Cr量とNi量の腐食への影響
    ・合金成分および肉盛金属の物性値
  2)  ボイラ水冷壁パネルの損傷現象と対策
    ・黒液回収ボイラ
    ・新エネルギーボイラ(流動層ボイラ)
    ・石炭焚きボイラ
(本文80ページ)


ぼろから木材へ:木材パルプ技術開発の歴史(前編)

飯田清昭

  19世紀の中ごろまで,ヨーロッパ(当時の最高の文明圏)では,ぼろが主要なパルプ原料であった。一方,産業革命により社会が発展し,紙の需要が急増し,新しいパルプ原料が切実に求められ,多くの科学者,企業家が木材よりパルプを得ようと研究を始めた。そしてわずか50年くらいの間に,主要な木材パルプの製造法(GP, SP及びKP)が実用化され,パルプさらには紙の生産量が急増し,社会の文明化に大きく寄与した。
  この報告では,それらのパルプ化法が,当時の社会の動きとかかわりながら開発された過程を辿ってみる。まず,前半としてGPとアルカリパルプ(ソーダパルプとクラフトパルプ)を取り上げる。次号ではサルファイトパルプを紹介し,あわせて,木材パルプの実用化が20世紀の社会の発展に如何に影響を与えたかを考察する。
  余談になるが,19世紀後半(徳川時代の末期から明治の初期)に,ヨーロッパ内部及びヨーロッパとアメリカの間で密接な情報・技術の交流があり,国を越えた特許制度で技術開発を尊重し,一方ではそれを企業戦略として用いるしたたかさがあったこと等に驚かされた。
(本文84ページ)


海外駐在員レポート(6)
オーストラリアンペーパーでの第一陣駐在員経験

日本製紙株式会社 技術本部 生産部  杉野  光広

  2009年に日本製紙が豪州最大の製紙会社であるオーストラリアンペーパーを買収,同社が日本製紙グループの一員になったことから,第一陣駐在員として主力工場であるメアリーヴェール工場に赴任した。約4年の駐在中,収益改善のため現地管理層と多くの議論を重ねて,互いに納得した上で,様々な改革を実行した。その中には小集団活動などいくつかの日本製紙の遺伝子も含まれているが,これらは現地に合うように多少アレンジして導入した。また,その市場に合った製品を販売するという意味においては,豪州の高い環境意識対応のため再生紙生産を増強することを決定し,現在,メアリーヴェール工場に脱墨パルプ工程を建設中である。この設備は来年稼働する予定であり,技術面では日本製紙の全面的なバックアップを受けて進められている。
  仕事以外では移民の国であるオーストラリアということもあり様々な国の人と交流ができその文化に触れることができた。特に工場のあるラトローブ市の国際交流委員会委員を2年ほど勤めさせていただき,姉妹都市との交流を担当したことは貴重な経験であり,多くの友人を作ることができた。4年の駐在経験を経て痛感したことは,海外進出には現地と建設的な議論を通して改革を実行できるグローバル人材を育てていかねばならないことである。これは現地と対等に議論できる語学力を持ち,現地の文化を理解し,現地へ入り込むバイタリティー,タフさを持った人材ということになり,ハードルは高いがこれからの若手に期待したい。
(本文98ページ)


研究報文
紙パルプ工場排水中の難分解有機物の特性評価

株式会社  日本紙パルプ研究所  渡邊  誠幸,藤田  啓子,岩田  ひろ,塗木    豊,
                                         渡邊  加寿子,中川  美幸,岡田  比斗志

  水質汚濁防止法が日本で1972年に施行されてからは,これを始めとする環境規制の取組みにより,排水の品質が向上し,水環境は大きく改善してきている。しかし,閉鎖性海域の一部については総量規制が行われているにも関わらず,COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)を環境基準以下にすることが未達成の場合があり,改善は十分とは言えない。海域だけでなく湖沼でも同様にCODの低減が不十分であり,むしろ漸増の傾向が認められる場合がある。
  これらの原因として難分解有機物の蓄積が指摘されている。紙パルプ工場では,排水中の難分解有機物を削減することを目標としている。この目標達成のために,本研究では最初の段階として,排水中の難分解有機物の特性を評価した。
  総合排水中の溶存有機物について,疎水性と親水性,酸性と塩基性の特徴で5成分(疎水性酸性,疎水性中性,塩基性,親水性酸性,親水性中性)に分画し,各成分の特性を評価した結果,疎水性酸性成分の中に難分解有機物が含まれることが示された。この疎水性酸性成分の発生源を確認したところ,最大の発生源はクラフトパルプ漂白排水であった。漂白排水については針葉樹(N)材パルプ漂白と広葉樹(L)材パルプ漂白を比較した結果,N材の漂白排水中に疎水性酸性成分が多く含まれ,N材の疎水性酸性成分の分解率が低かった。また,疎水性酸性成分を熱分解GC-MSで解析すると,疎水性酸性成分の主成分はリグニンであることが示された。
(本文103ページ)