第67巻  第10号  和文概要
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第67巻  第10号  和文概要


中国・東南アジアにおけるメンテナンスノウハウの発展

メッツォペーパージャパン株式会社  エンジニアリング本部  増永  順士

  2008年の経済危機は,紙パルプ業界にも大きな影響を与えた。特に,この経済危機により,メンテナンスコストの削減が工場の生産性に与えた影響は少なくない。さらに,社会構造の変化も加わり,紙種によっては大幅な需要の減少と競争の激化を招いている。
  中国や東南アジア諸国の多くの工場では,必要最小限のメンテナンスしか行わない工場が多い。メンテナンス費用の割合は非常に低く,メンテナンスが少ない分,目先の操業効率は高くなっているが,中長期的な目で見ると,メンテナンスに対する発生費用は増大し,生産効率も結果的に悪化している。
  しかし,近年では中国を含むアジア諸国ではメンテナンスアウトソーシングといった近代的なメンテナンス手法や最新のメンテナンス情報システムを導入する傾向が強まっている。
  原材料価格及び人件費の高騰により,あらゆる業務の効率化が考慮されるであろう。その中でもメンテナンス業務の効率化が非常に重要になってくる事は明らかである。
  本稿では,中国・東南アジアにおけるメンテナンスの現状と発展及びメッツォ社の提案する最新メンテナンスの納入事例を紹介する。
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Raumaster社製仕上げ設備のご紹介

伊藤忠マシンテクノス株式会社 生活・環境機械部  芝木  雅史

  Raumaster Paperは1984年に設立されたフィンランドの会社で,紙パルプ分野の仕上げ設備に関しては世界的に有名な会社である。
  現在日本の紙パルプの工場にて使用されている仕上げ設備は導入から20年以上が経過し,そのメンテナンス性及び経年劣化による問題に直面している。
  弊社はそのような顧客が抱える問題点を背景に2012年にRaumaster Paper社との取引を開始した。
  Raumaster Paper社の仕上げ設備は多岐に渡り,ワインダーから巻取搬送設備,巻取包装設備,自動倉庫,トラック自動積込装置まで完全自動での提供も可能である。またストレッチフィルム包装機,紙管カット設備,損紙処理設備などの設備も手がけている。
  日本におけるRaumaster Groupの実績はRaumaster Oyがバイオマスボイラーへのチップ搬送,及びアッシュ搬送システムをボイラーメーカーに販売した実績がある。
  本稿ではRaumaster Paper社の仕上げ設備全般の紹介を行う。
  Raumaster Paper社は優れた品質を誇るものの,輸入製品という事でトラブル発生時の対応,及びアフターメンテナンスをご心配されるお客様が多い。お客様のそのようなご心配を取り除くべく,伊藤忠マシンテクノスでは技術部門と連携しながらしっかりとしたサポート体制を敷いている。
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洋紙工場への操業管理システム導入事例

富士通株式会社  岩田  幸敏

  製紙業界を取り巻く環境の変化は目まぐるしく,ビジネス環境に則したスピード感のある革新対応が急務である。
  製紙業界における課題としては,「収益基盤の強化」「収益性ある重点分野への集中」「海外展開の加速・拡大」などが挙げられる。
  これらの課題解決の一つの手段として,計画的且つ効率的なモノづくりを実現する「洋紙工場向けSCM型操業管理システム」を富士通が開発した。
  富士通が取り組んだ操業管理システム導入の背景,コンセプト,システムの概要などを紹介する。
  本システムの導入で得られた効果としては,大きく3つの効果が挙げられる。
・1点目の効果として,安定した納期遵守率が挙げられる。
  導入直後は当初納期の前後数日に分散する状況が続くも,工場での操業管理システムの操作習熟度の向上および,生産調整での計画立案の習熟度が向上するに従って,当初納期通りの製品提供が徐々に可能となり,現在では安定した納期遵守率を維持している。
・2点目の効果として,飛び込み注文への迅速な対応を可能とした。
  飛び込み注文が入ると,中日程/小日程の計画の見直しは非常に複雑で困難であるが,工場と本社間でのリアルタイムな進捗の情報共有は両者間のやり取りを減少させ,共有された在庫情報で生産計画の再作成や追加作成を可能にした。
・3点目の効果として,共通化がもたらす効果がある。
  システムを共通化したことによって,工場や生産ライン毎の稼動実績や操業効率などの「操業標準データ」の比較が容易になった。
  これによって,生産性の向上に向けた操業の見直し等の施策を講じることが可能となった。
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マレーシアをはじめとした東南アジアの板紙動向と工場操業経験

GS Paper & Packaging Sdn Bhd Paper Division  松山  慎二

  近年,日本国内製紙産業においても,長期の円高の定着による国内製造業の空洞化,少子高齢化に伴う需要の減少,ICT化の進展,輸入紙の増加により国内製紙産業は,厳しい環境下である。今後は,海外ビジネスの拡大と技術協力がますます必要である。
  王子ホールディングスは,1970年代より積極的な海外展開を行っていたが,このような国内環境であるため,2001年度中長期計画で「内なる充実,外への発展」を掲げ,国内においては設備の統廃合を含むコストの削減を進め,基盤の強化を図る一方,海外においては,特に今後の成長が期待できるアジア地区での新規の事業展開を行ってきている。
  この海外事業展開方針に沿って実行されたのが,マレーシアにおける王子ペーパーアジア(OPA)の設立であり,王子グループ海外製紙工場となったGSペーパー&パーケージング(GSPP)社の取得によりマレーシアが重要拠点となった。東南アジアでの板紙需給実績と今後の伸びについて注目し,今後の海外展開への指標の一つとなる。また,王子グループ海外製紙工場となったGSPP社の抄紙機における操業改善の取り組みで年間9,000t強の大幅な増産に寄与できた。これは,増産改造工事を実施せずに無抄時間の短縮によるものである。これから,ますます事業展開が加速する東南アジア,南アジアにおいて日本の技術協力は,不可欠である。
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板紙生産におけるコスト低減への提案

ハイモ株式会社 湘南研究センター  境    健自,村田  奈穂,坂本  英俊,中村  智法

  近年,省資源化とコスト削減の要求はますます重要となっている。本報告では,板紙のコスト低減の取り組みについて,主にウェットエンド薬品の観点から,特に,@汚れ・断紙の防止,Aサイズ剤の定着,B硫酸バンド(Alum)の低減対策,C紙力剤・濾水・歩留剤の効率的使用について報告する。
  汚れや断紙の原因の主なものに古紙等由来のピッチがある。カチオン性有機凝結剤のFR-801,FR-701H,MT-910等は,カチオン密度だけでなく,分子量や構造に特徴を持たせることでより優れたピッチコントロール効果を発揮し,汚れ,断紙の防止に効果がある。また,これらの凝結剤はサイズ剤の定着にも優れた効果を持ち,サイズ剤の添加量削減が見込まれる。さらに,Alum低減によって生じる課題(アニオントラッシュ増加による薬品定着阻害,サイズの低下等)の対策にも有効である。
  適切な濾水・歩留剤の選択も消費量の低減に重要である。pHやAlum量,内添紙力剤の種類や量等は紙料の性状に影響し,後の濾水・歩留剤の効果も異なってくる。さらに抄紙機の能力や,板紙の種類等により,紙質や操業への要求の重要度は異なる。そのため,弊社では様々なイオン度や組成,及び凝集力の異なるポリマー系濾水歩留剤を有し,新規品の開発も行っている。いずれも収縮した構造等の設計をポリマーに取り入れることで,歩留や濾水と乾燥性,地合,紙質の両立を図り,それによって他の薬剤の使用量増加を防いでいる。
  また,ウェットエンド薬品は名称に限らず様々な目的を兼ねて使用されることもある。複数の薬品で共通の目的を期待している場合は,より効果の高い薬剤への統一や置き換えを検討することにより,薬品全体の使用量を減らしつつ,蒸気量低減等の操業性の改善を図ることが有効である。
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板紙抄造におけるDCS対策

星光PMC株式会社 製紙用薬品本部  外城  稔雄

  近年,製紙工場においては,清水使用量の低減による用水のクローズド化,古紙使用率の増加,紙・板紙の軽量化が進んでいる。
  このような状況下では,抄紙系内に存在する夾雑物が増加する傾向にある。
  この夾雑物はしばしばアニオントラッシュと呼ばれ,パルプ原料や薬品の歩留まりを落とし生産性を低下させることが知られている。
  しかし,その夾雑物を定性的・定量的に分析した報告は少ない。
  そこで,抄紙系に存在する水とパルプ以外の全ての物質をDCS(Dissolved and Colloidal Substances)と定義し,板紙工場のDCSについて詳細な分析を行った。
  その結果,板紙工場におけるDCSの主成分はCa,硫酸イオン,澱粉,有機酸などであることが明らかとなった。
  これらの成分は抄紙系で歩留まりを悪化させたり,ピッチトラブル,スケールトラブル,臭気問題を起こしたりすることがあるため対策が必要である。
  対策として,凝結剤を使用してDCSを紙に定着させる  もしくはDCSの影響を受けにくい内添薬品を使用することが考えられる。
  本稿では,DCSの凝結能力が高いAC7314及びDCSの影響を受けにくい新規紙力剤の評価結果を紹介する。
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苛性化自動操業支援システム(BrainWave-ACEシステム)の操業経験

日本製紙株式会社 石巻工場 製造部  佐藤  康之

  石巻工場KP製造工程は,No.1キルン(3.36m×90mL)とNo.2キルン(3.20m×70mL)の2基のロータリーキルンを有している。ライムキルンは重油をエネルギー源とするが,近年の重油価格高騰により製造コストの増加が著しい。また当工場では2006年のバイオマスボイラー稼動により,工場内の重油使用量の約5割をライムキルンで占めるようになり,ライムキルンの重油使用量削減は,早急に取組むべき課題であった。
  ライムキルンの重油削減を目的に,2010年に自動操業支援システムBrainWave-ACEを導入した。本システムは従来のPID制御では不可能なキルンなどの長い滞留時間を持つ設備に対し,予測モデルを用いて重油噴射量,排ガスダンパーを自動調節する事で,キルンの自動制御を可能とする。海外では多くの実績を有するが,国内では初導入である。操業安定とコスト削減が期待される一方,国内実績がなく,当工場キルン操業レベルに対してどの程度の効果が得られるか疑問もあったが,実機テストにより,その効果検証を行うこととした。
  実機テストの結果,操業安定と5%程度の重油使用量削減が確認された。
  本稿では,BrainWave-ACEのテストから本導入に至る操業経験について報告する。
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ATMOS-環境に優しいプレミアムティッシュ

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 製紙機械技術部  高野  行範

  30年以上前から高品質のティッシュに与えられる「プレミアムグレード」と呼称される製品は基本的にTAD方式のみで生産され,大手製紙会社の独壇場である。その理由はTAD方式の設備投資が大きいだけではなく,生産コストも非常に高いからである。
  このような市場環境のもとで,ATMOSとはフォイトペーパーのティッシュ・プロセステクノロジーセンターで新たに開発された技術である。TAD方式に比べて設備投資だけでなく,エネルギーコストを必要最小限にすることで全体の生産コストを大きく抑えることが可能である。また使用する原料そのものを削減し,あるいは故紙100%での生産をも可能としている。
  ATMOS心臓部のモジュールはフォーマーとヤンキーシリンダーの中間に配置される。地合形成は従来からのクレセントフォーマーで行われるが,ヘッドボックスからの原料は直接凹凸のあるAtmosMaxに吐出されて3次元的な構造を有することになり,そのままヤンキーシリンダーへ転写されるのである。
  ATMOSはその原理から品質は使用するAtmosMaxによって左右され,使い分けることで1台の抄紙機で市場から要求される品質の全てをカバーすることができる。ATMOS法とは機械的な開発はほぼ完成してはいるが,ファブリックの開発が進むことでまだ多くの可能性を秘めた技術と言えるのである。
  ATMOS技術はその高い柔軟性から欧米の市場とは異なる様相を見せる国内ユーザーの要求を満たすことも十分可能であると考える。
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木材成分の化学を考える

京都大学 大学院農学研究科  高野  俊幸

  木材成分は,生産生物(樹木)が当該生物自身のある目的のために生産されており,その目的に適した化学構造を有していると考えられる。そのため,“木材成分の化学構造と機能の関係”を解明することは,木材成分の新規な有効利用を図る上で,重要なアプローチの一つである。
  本稿では,木材成分の化学構造に関する基礎的な解説と最近の当研究室における木材成分の研究例をご紹介する。
  木材は,主要成分(セルロース,ヘミセルロース,リグニン)と副成分(抽出成分)から構成される。セルロースは,結晶構造形成に有利な化学構造(規則正しい構造を有する直鎖状高分子)を有し,優れた細胞壁の構造用材料である。ヘミセルロースは,非晶構造に有利な化学構造(分枝構造,アセチル基の存在など)を有し,細胞壁の三次元構造の構築に大きく関与している。リグニンは,疎水性を有する化学構造(芳香環の存在)を有し,疎水性材料として,維管束(仮道管,道管など)の形成に大きく関与している。抽出成分は,樹種特有の性質(色,香りなど)を決定している成分である。
  当研究室では,“木材成分の化学構造と機能の関係”を中心に研究を展開しており,最近では,光電変換性セルロース誘導体の開発,およびリグニン−多糖(セルロース・ヘミセルロース)複合体の分析法(リグニン−多糖複合体の分画法,リグニン主要結合の選択的分解法など)の検討などを行っている。
(本文43ページ)


セルロースナノファイバーを利用したエネルギーおよびマテリアル製造技術

独立行政法人 産業技術総合研究所 バイオマスリファイナリー研究センター  遠藤  貴士

  近年,木質系バイオマスのエネルギーあるいはマテリアル利用技術に関心が集まっている。木材の主成分はセルロースであり,木材中ではセルロースミクロフィブリルと呼ばれる集合体を形成している。ミクロフィブリルから構成されているセルロースナノファイバーは,軽量かつ高強度という特徴を持っている。
  本研究では,木材から得られるセルロースナノファイバーを基幹物質として利用した酵素糖化前処理技術(バイオエタノール製造技術)およびナノファイバー・樹脂複合化技術の開発について行った。我々は木材から直接にナノファイバーを製造する技術として,水熱処理と湿式粉砕処理を組み合わせた複合処理技術(水熱メカノケミカル処理)を開発した。ナノファイバーは極めて大きな表面積を持っているため,酵素は容易にセルロース分子に接近して糖化が進行する。
  ナノファイバーの製造では,水は必須である。そのため,樹脂との複合化では脱水と乾燥を行う必要がある。しかし,ナノファイバーはお互いに凝集しやすい性質を持っている。  そこで,凝集を抑制して樹脂にナノファイバーを均一分散させる手法について検討した。
  その結果,ナノファイバースラリーを低融点オレフィンと直接混合するマスターバッチ法を用いることで効果的に複合化できることが分かった。得られたナノファイバー・ポリプロピレン複合体は,わずか1wt%のナノファイバー添加で強度物性が向上し,さらに高い伸び特性を発揮した。
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米子工場における省エネルギーの取り組み

王子製紙株式会社 米子工場 施設部 電気計装課  石戸谷  晃二

  王子製紙兜ト子工場では,省エネ目標『総エネルギー使用量の1.5%削減』に向けて工場全体で省エネに取り組んでいる。しかし,新規案件や大きな省エネ効果を生む案件を発掘することが,年々厳しい状況となってきている。その中で工場ではテーマを絞り込んで,エネルギー使用量の削減を継続している。
  本稿では,工場で実施した以下の省エネ事例を紹介する。また,随所に予稿集では掲載していなかった具体的なデータを書き加えた。
  1)  過剰能力設備の省エネ
  2)  発電設備運用見直しによる省エネ
  3)  無負荷時の駆動電力の省エネ
  4)  生産に寄与しない電力の省エネ
  取り組みは,設備費が高額となる機器交換やインバーター化は採用せず,安価に短期間で施工可能なアジテータのプーリー小径化,ポンプのランナーカットを実施。また,既存設備の信号を活用したシーケンス改造を積極的に実施したことで,大きな省エネ効果を発現した。
  今後も設備が必要で運転が当たり前といった既設概念にとらわれずに,案件を掘り起こしていきたい。
(本文54ページ)


熱交換塗料ネオコートによる節電対策  -新たな遮熱概念「消熱」-

株式会社エコロテック  藤岡  芳由紀

  昨今の節電意識の高まりにより,空調費削減に寄与する省エネ機能を前面に押し出した機能性塗料の需要が伸びてきている。機能性塗料の代表的なものとしては遮熱塗料(高日射反射率塗料)と呼ばれているものがあり,省エネ意識の高まりを追い風に年率20%台の伸長を続けている。ただし,反射依存型塗料の遮熱塗料では大気や雨水に含まれる汚体(黄砂,煤塵,車塵等の堆積物)がもたらす塗布面の汚れにより効果が持続しないという問題点がある。
  本稿では反射依存型塗料の問題点を解決する画期的な次世代塗料「熱交換塗料ネオコート」の紹介をより充実させた。加えて,節電効果の検証結果に関し,数種の実例を挙げて具体的に説明した。
  「熱交換塗料ネオコート」の熱遮蔽の特徴は,「塗面による熱の反射」ではなく「塗面による熱の取り込み」で「特定温度内で熱エネルギーに対し反応する」という物理的な特性を巧みに利用したもので,反射効果や断熱効果に依存する事無く「熱の遮蔽」を成し遂げている。
  その主な特徴としては,
  1)  ヒートアイランド対策〜反射に依存しないため輻射熱などの熱害を防止
  2)  塗布面に汚れが付着しても効果に影響がない
  3)  太陽光に依存しないため熱帯夜など夜間でも効果を発揮
  4)  冬場は熱を取り入れ暖房効率アップ
などが挙げられる。
  地球規模で環境が悪化して行く中,「新世代塗料」としての期待に応えるべく,「熱を消す」という「熱交換塗料ネオコート」の独自のテクノロジーは,従来の機能性塗料の常識をくつがえしただけでなく,塗料を使った「遮熱」「断熱」における方法論の見直しと,最新技術による新しい時代の幕開けを告げていると言える。
(本文60ページ)


固定オリフィス式スチームトラップによる効果的な省エネルギー保全方法

ゼットエンジニアリング株式会社  木村  雅喜

  紙パルプ産業では,蒸気による間接加熱を行う工程が多く,熱を放出した蒸気はスチームトラップから凝縮水(以下ドレンと称する)として排出されている。スチームトラップが劣化すると,ドレンと共に排出される未使用蒸気(同伴蒸気)が増加する為,工場全体の蒸気消費量は年々増大していく傾向にある。スチームトラップからの蒸気漏洩率については使用条件,保全頻度などによって異なるが,平均ロス率が10%を超えていた例も報告されており,スチームトラップからの漏洩蒸気は,重要な省エネ対象であるといえる。
  蒸気ロスを削減する為にはスチームトラップの点検,交換を頻繁に行う必要があるが,大規模工場の場合,スチームトラップが数千台から数万台も設置されているケースもあり,コスト,労力を考えると容易でないことは明白である。このため,通常は,蒸気漏れトラブルが顕在化してからの保全対応となり,それ以前に漏洩していた蒸気については手が付けられていないというのが現状である。
  弊社では,従来の消耗品としてのスチームトラップとは異なる劣化部品を持たない「固定オリフィス式スチームトラップ」による,トラップの省エネ保全方法を提案する。
  本稿ではその「固定オリフィス式スチームトラップ」の紹介と,新しい保全方法による蒸気漏れロス,メンテナンスコストの削減について紹介する。
(本文67ページ)


板紙基礎講座(4)
最新ニーズと今後の方向

王子マテリア株式会社 技術本部 技術部  山森  明浩,内海    拓

  近年,産業構造の変化に伴い,紙パルプ産業の主体は洋紙から板紙へ変化しつつある。しかしながら,日本国内の板紙の需要は上昇傾向とはいえず,ほぼ横ばいを維持しているといえる。
  そうした中で,板紙に対するニーズは,消費者側のコスト削減や,他の商品との差別化を図るべく,多種多様となり,それに応えるべく研究開発が行なわれている。一方それと同時に,生産者側では,原材料である古紙の回収率および利用率を向上させることにより,安定した収益を得る努力を行なっている。
  今回,板紙の需要動向及び,ニーズについて述べた上で,今後の板紙分野に求められると思われる方向性を説明する。また需要動向,ニーズに応えつつ,コスト低減を図るための古紙利用の取組みを紹介する。
(本文75ページ)


研究報文
活性汚泥の性能向上の検討

株式会社 日本紙パルプ研究所  渡邊  誠幸,藤田  啓子,中川  美幸,木村  仁美,岡田    比斗志

  製紙工場での排水負荷の低減において活性汚泥処理は主要な排水処理技術である。多くの製紙工場で活性汚泥設備が利用されているが,各工場の活性汚泥が各工場の排水に対して最適であるかどうかは分からなかった。そこで,4工場の活性汚泥とその工場の原排水の組み合わせで分解試験を行った。その結果,原排水を分解するのに必ずしも自工場の活性汚泥が最適とは限らなかった。
  各工場の活性汚泥で分解性能に差があることが確認できたので,次に高性能汚泥を他工場で利用する検討を行った。高性能汚泥を他工場汚泥に配合することで分解性能は向上し,その効果は長期間(35日間)維持された。
  活性汚泥の分解性能と細菌の関係についての知見が少なかったので,分解性能の異なる9工場の活性汚泥中の細菌優占種について遺伝子解析(PCR-DGGE解析及びシークエンス解析)を行った。その結果,分解性能の高い汚泥にはβ-プロテオバクテリア綱ロドサイクルス目に属する細菌が優占種として確認された。ロドサイクルス目に属する細菌が活性汚泥の分解性能に寄与する有用細菌であると考えられた。
  また遺伝子解析より,高性能汚泥を他工場汚泥に配合して利用した場合,高性能汚泥由来の細菌は生存し,生存していた細菌の中に有用細菌と考えられるロドサイクルス目が確認された。
  以上より,高性能汚泥を利用して工場の排水処理効率を向上させることは可能であると考えられた。
(本文91ページ)