2013年6月  紙パ技協誌
 
第67巻  第6号  和文概要


クリンカ防止剤添加による微粉炭ボイラの効率改善

日本製紙株式会社 釧路工場 工務部 原動課  河原木和信

  日本製紙はこれまで培ってきた微粉炭ボイラによる発電技術を生かし,2004年から釧路工場内に新たに専用の微粉炭ボイラ及びタービンを設置し,電力卸売事業(IPP事業)を開始した。このIPP設備は北海道東部の電力使用量の約20%を賄っている。特に昨今の電力事情においては高負荷での連続安定操業という使命を課せられており,電力の安定供給という観点から地域にとっても重要な設備である。
  今回,燃料である石炭に燃焼促進及び脱硝触媒効果のある酸化鉄を主成分としたクリンカ防止剤を導入することでボイラ効率の改善が図られたことから,本稿にて報告をする。   IPP設備では,営業運転開始まもなくからボイラの炉底ホッパー部に巨大なクリンカが付着し,これによる伝熱阻害やクリンカ落下によるボイラの停止トラブルが頻発し問題となっていた。
  さらに,環境負荷低減を目的に日本製紙としては始めての,乾式アンモニア注入脱硝設備を設置したが,未反応アンモニア(リークアンモニア)により酸性硫安が生成され,これが後段に位置するユングストローム式空気予熱器のヒーティングエレメントの閉塞を引き起こしていた。
  また,酸性硫安は電気集塵器内の放電線や集塵板にも付着し,安定操業を阻害する危険因子となっていた。特に空気予熱器エレメントの詰りは,排熱回収阻害及び燃焼用空気不足を引き起こしており,これらの問題を解決することでボイラ効率を改善することができた。
(本文3ページ)


熱交換塗料ネオコートによる節電対策  ―新たな遮熱概念「消熱」―

株式会社エコロテック  藤岡芳由紀

  昨今の節電意識の高まりにより,空調費削減に寄与する省エネ機能を前面に押し出した機能性塗料の需要が伸びてきている。機能性塗料の代表的なものとしては遮熱塗料(高日射反射率塗料)と呼ばれているものがあり,省エネ意識の高まりを追い風に年率20%台の伸長を続けている。ただし,反射依存型塗料の遮熱塗料では大気や雨水に含まれる汚体(黄砂,煤塵,車塵等の堆積物)がもたらす塗布面の汚れにより効果が持続しないという問題点がある。
  本稿では反射依存型塗料の問題点を解決する画期的な次世代塗料「熱交換塗料ネオコート」の紹介,報告をするものである。
  「熱交換塗料ネオコート」の熱遮蔽の特徴は,「塗面による熱の反射」ではなく「塗面による熱の取り込み」で「特定温度内で熱エネルギーに対し反応する」という物理的な特性を巧みに利用したもので,反射効果や断熱効果に依存する事無く「熱の遮蔽」を成し遂げている。
  このように白水の繊維回収工程を改善することで,歩留まりの向上はもちろん,より濃度の低いろ過水が得られるので清水原単位を削減できる。また,排水処理工程への負荷も軽減されるため,必要薬品量の減少や設備の省マシン化によるコスト削減も可能となる。
  その主な特徴としては,
  1)  ヒートアイランド対策〜反射に依存しないため輻射熱などの熱害を防止
  2)  塗布面に汚れが付着しても効果に影響がない
  3)  太陽光に依存しないため熱帯夜など夜間でも効果を発揮
  4)  冬場は熱を取り入れ暖房効率アップ
などが上げられる
  地球規模で環境が悪化して行く中,「新世代塗料」としての期待に応えるべく,「熱を消す」という「熱交換塗料ネオコート」の独自のテクノロジーは,従来の機能性塗料の常識をくつがえしただけでなく,塗料を使った「遮熱」「断熱」における方法論の見直しと,最新技術による新しい時代の幕開けを告げていると言える。
(本文13ページ)


二塚製造部の省エネルギーへの取組事例

中越パルプ工業株式会社 高岡工場  岡田  達郎

  近年の原油価格高騰,さらに2011年の東日本大震災後,電力需給の逼迫により企業のみならず,家庭においても省エネは重要な課題となり,改めて省エネの重要性が認識されてきた。
  二塚製造部においても,1990年より省エネ委員会を設置し日々省エネに取り組んできたが,大型投資が減少して大掛かりな設備更新での改善が期待できない中,実施してきた2011年度の事例を紹介する。その要点を以下に挙げる。
  1)  省電力  焼却炉コンプレッサ集約化
  設備更新のタイミングで商用コンプレッサとインバータコンプレッサをベストミックスで運用して省エネできるように検討し設備更新した結果,予想を上回る85kWの実績を上げることができた。
  2)  省重油  澱粉ストレージタンク保温蒸気の削減
  省重油は毎年目標達成に苦労しており,ここ3年間は目標達成できていない。
  本件のような水として回収し,熱を回収していないような設備を水平展開し改善していく。
  3)  節水
  清水を白水に切り替え,シール水回収等で年間目標こそ達成しているが,まだまだ無駄が見過ごされている。
(本文17ページ)


JBIC(ジェイビック)の省エネ手法

日本ビジネス革新コンサルティング株式会社  ―JBIC―  城田  靖彦

  近年では省エネ法に基づいて省エネ運営組織(省エネ委員会など)を設置し,総消費エネルギーを対象に組織的に取り組みを進めてきているところもあるが,継続的に省エネ効果を産み出していく為にはそれなりの意識の変革や対応の仕方に変えていくことが必要である。
  これまで省エネ活動を進めてきている企業で,共通して抱える問題としては,「もう省エネのネタが尽きた」と思われていることであるが,実際には「尽きた」のではなく,今以上のやり方や進め方が分からなくなっているだけのことである。
  その理由の一つに,よりネタを出し,成果に結び付けていくための省エネに対するものの見方,考え方,及びその手法に行き詰まっている,といったことが挙げられる。
  そこで,今回は特に省エネに対するものの見方,考え方,及びその手法について七つの要点(ノウハウ)をJBICの省エネの手順に沿う形で紹介する。
  1)  エネルギー損失の捉え方を理解する
  2)  エネルギーの投入実態を知る(事実を調べる)
  3)  分析結果を考察し,気づきと損失項目を挙げる
  4)  フェーズ(PHASE)別目標管理とグループ発想でテーマを創出する
  5)  具体的な方式を検討し,成立根拠を明らかにする
  6)  組織的に適合性の判断を行い,案を育成する
  7)  実行計画を立案し,次期活動体制を確立する
(本文21ページ)


用水設備昼間停止による省エネ

北越紀州製紙株式会社 特殊紙事業本部 大阪工場  薄窪  洋一

  昨今の紙パ業界は供給過剰による生産調整により縮小傾向にあると言える。当工場も例外でなく4年前に主力生産していた抄紙機が停止してコーター1台の生産体制になった。しかし用水設備は大量に水を使用していた抄紙機運転当時の設備であり,ポンプ効率は設計流量より少ない領域で使用するので非常に悪く,無駄なエネルギーを消費していた。
  更に夏場は全国的に電力不足が懸念され,特に関西圏は原発の依存率が高く,2012年前半は稼動ゼロ状態となり,電力不足は深刻さを増して省エネの重要性は高まっている。
  その中で,当大阪工場が取り組んだ節電対応,電力会社の要請に応えたガスコージェネ発電設備の再稼働事例,地道な用水設備運転部門職場の小集団活動で選定された省エネテーマであり,設備更新に頼らず自ら実行出来る操業方法の見直しを行い,省エネ効果の出た事例を紹介する。
に,我々が開発した技術による研究結果を,既存の印刷用紙との比較評価により報告する。
(本文29ページ)


熱水ポンプ用ノークーラカートリッジシール

BTG管理システム  ―FEMS―による運用効率化と業務改善

三菱電機株式会社 電力システム製作所  海野  友宏,青木  啓志

  近年,地球環境問題への関心の高まり,電力不足問題への対応から,工場全体のエネルギー最適化を行うFEMS(Factory Energy Management System)への関心が高まっている。FEMSを用いて工場の自家発設備を最適制御することで,工場でのデマンドを満たした上で,消費エネルギーの削減が可能である。FEMSを用いることで,工場の年間のエネルギーコストに対して0.5〜1%程度のコスト削減,温室効果ガス排出量の削減があることを確認している。FEMSによる制御の評価はコストで算出しているが,削減されたコストの分の消費燃料を削減しており,燃料を燃焼させた際に生じる温室効果ガス排出量の削減に貢献しているといえる。
  弊社は2003年にFEMSを開発してから,多数のお客様に提案,納入をしてきた。その中で得られた要望,改善策をFEMSに盛り込み,開発を続けてきた結果,精度の高い制御と魅力的なサポート機能を有するシステムとなった。本稿ではFEMSの最適運転の概念を説明し,FEMSのシステム構成とオンラインFEMS,オフラインFEMSの機能について述べた後,付加価値となる機能の一部である,FEMS導入後のコストメリットを正確に算出するシミュレーション機能,コスト最適化,温室効果ガス排出量の最適化など多目的最適化演算を可能とする手法について紹介する。
(本文34ページ)


米子工場における省エネルギーの取り組み

王子製紙株式会社 米子工場 施設部 電気計装課  石戸谷晃二

  王子製紙兜ト子工場では,省エネ目標『総エネルギー使用量の1.5%削減』に向けて工場全体で省エネに取り組んでいる。しかし,新規案件や大きな省エネ効果を生む案件を発掘することが,年々厳しい状況となってきている。その中で工場ではテーマを絞り込んで,エネルギー使用量の削減を継続している。
  本稿では,工場で実施した以下の省エネ事例を紹介する。
  1)  過剰能力設備の省エネ
  2)  発電設備運用見直しによる省エネ
  3)  無負荷時の駆動電力の省エネ
  4)  生産に寄与しない電力の省エネ
  取り組みは,設備費が高額となる機器交換やインバーター化は採用せず,安価に短期間で施工可能なアジテータのプーリー小径化,ポンプのランナーカットを実施。また,既存設備の信号を活用したシーケンス改造を積極的に実施したことで,大きな省エネ効果を発現した。
  今後も設備が必要で運転が当たり前といった既設概念にとらわれずに,案件を掘り起こしていきたい。
(本文39ページ)


板紙基礎講座(2)
古紙リサイクル原料編
王子マテリア株式会社 技術本部 技術部  山森  明浩,内海  拓

  今日の紙の原料は木材と古紙が主なものであるが,日本においては古紙が製紙原料の63%以上を占める主原料となっている。古紙の種類は様々であるが,その用途に応じた古紙処理技術の確立により,古紙利用率も増加してきた。
  古紙の使用の歴史は長く,古くは平安時代より和紙の抄き返しが行われていた。古紙が製紙原料として本格的に使用されるようになったのは,昭和20年代後半に新聞古紙が板紙の原料として使用されるようになってからのことである。その後,昭和50年代から新聞用紙や中下級印刷用紙に使われるようになった。日本において製紙業界でこれだけ大量に古紙を使うようになったのは,将来の原木資源の不足に対応するためであった。また古紙は木質原料に比べて価格が安かったこと,パルプ製造時にエネルギーの消費量が少ないなどのメリットもあり,インキ除去技術の進展に伴って,再生用途拡大と共に急速に使用量が伸びていった。更に古紙は,家庭やオフィスから排出されるゴミに占める比率が高く,古紙の再利用はこれらの軽減効果もある。
  そうした中で今回,古紙がどのような工程を経て,原料としてリサイクルされるのか。また古紙の分類と用途,古紙処理工程〜調成までの概要について述べる。
(本文50ページ)


総合報文
木材パルプから得られるセルロースナノファイバーの特性と応用展開

東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻  磯貝  明

  製紙用の漂白木材クラフトパルプのTEMPO触媒酸化によって得られる,均一超極細幅・高アスペクト比で完全に水中でナノ分散したセルロースナノファイバーの基礎特性と応用の可能性について,これまでの研究成果をまとめた。
  水系媒体常温常圧でのTEMPO触媒酸化反応によって,元の木材セルロースの結晶構造,結晶化度,結晶サイズを変化させることなく,約3nm幅の結晶性木材セルロースミクロフィブリル表面に露出しているC6位の1級水酸基を,ほぼ全てカルボキシル基のナトリウム塩に変換できる。得られたTEMPO酸化セルロースを水中で軽微な解繊処理をすることにより,完全ナノ分散化したTEMPO酸化セルロースナノフィブリル(TOCN)が得られる。このTOCNから,高ガスバリア透明フィルム,軽量高強度プラスチック複合材料,無機ナノクレイとの複合材料等の新規機能材料への応用展開が可能となる。