2013年5月  紙パ技協誌
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第67巻  第5号  和文概要


ファイバーラインにおける資源管理のための統合的ソリューションとコスト削減

ナルコカンパニー アジア太平洋地区マーケティング  Dinesh C. Mohta Ph. D.
片山ナルコ株式会社 マーケティング本部  佐藤慎太郎

  世界のなかで日本はパルプ生産コストが高い国のひとつである。主な理由は多くのチップを輸入しており,そのコストは上昇しているからである。チップ成熟度と品質の変動によってパルプ工場をスムースに操業することは,常にやりがいのある仕事である。
  この影響を最小化しパルプ工場を効率よく操業するためには蒸解とパルプ洗浄により注意を払う必要がある。蒸解釜とパルプ洗浄の最適化は漂白とエバポレータープラント操業の本質的改善となる。
  蒸解工程最適化のひとつとして,PenSurfを使用することは生産性改善とパルピングコスト削減の面で大きな利益を生む可能性がある。さらに水に関連する課題,特に漂白工程でのスケール形成を最小にするため,正しいステップを踏むことが必要である。ライムマッド脱水剤はライム固形分を上げるだけでなく省エネルギーの面でも大きな利点がある。
  加えてプロセス最適化,スペシャルティケミカルの統合的ソリューションの適用は単にプラント操業効率や品質改善のみならず,パルプ工場での新たな資源管理(繊維,水,エネルギー)のひとつの例であり,低生産コストと環境的サスティナビリティをもたらす。
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システムアップグレード  ―原質からアプローチまで―

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 製紙機械技術部  田中  正守

  年々悪化の傾向をたどる古紙事情において,今までと同等またはそれ以上の歩留まりや省エネを実現するには,製紙工程システム全体を考慮した効率の良い改善策を講じていく必要がある。その中で,近年特に重要性が高まってきている繊維回収工程に着目し,弊社の最新技術がシステム全体に与える利点についてご紹介させていただく。
  ディスクフィルタTMは,バッグなどの消耗品を必要としないメンテナンスフリーの原料濃縮・繊維回収機である。表面が波状であるため,平面のものに比べて処理量を約20%増加できる。また小さい落差で高いバキュームが得られる白水回収バルブにより,白水濃度は従来よりも低くできる。この技術は自社製・他社製を問わず改造流用することができるので,新設よりも低いイニシャルコストで高い効果が得られる。
  より簡易な,または小処理量向けの方法として,繊維回収用バスケットが挙げられる。これまでより小さい孔径を持つバスケットにより繊維を分級させ回収するもので,遊休品のスクリーンにも対応できるので設備投資を最小限に留めることができる。
  このように白水の繊維回収工程を改善することで,歩留まりの向上はもちろん,より濃度の低いろ過水が得られるので清水原単位を削減できる。また,排水処理工程への負荷も軽減されるため,必要薬品量の減少や設備の省マシン化によるコスト削減も可能となる。
  これらの特徴は機器そのものの性能向上や維持費削減だけでなく,後工程へも大きな貢献ができるものとして他と一線を画している。
  今後のシステムアップグレードに対し,このような提案をしていく重要性は更に高まっていくと思われ,その期待に応えるべく精進する次第である。
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最新の板紙マシン

メッツォペーパージャパン株式会社 エンジニアリング本部  甲矢  佳己

  最近の新設のライナー及び中芯グレードにおける軽量化及び高速化のスピードは目を見張るものがあり,すでに坪量は75g/m2以下,最高運転抄速は1,650m/minに達しており,1,700m/minも視野に入ってきている。
  原料も古紙の割合が多く軽量になるにもかかわらず強度の向上が求められており,今日の経済状況下では,投資の迅速な回収が収益性を確保するためには不可欠である。
  メッツォ社の紙・板紙生産ラインは,エネルギーと原料の効率向上により操業コストを低減し,効率的な操作及びメンテナンスに配慮した設計により生産性を向上させている。これらの技術や設計的配慮は時代のニーズに沿ったもので高く評価されている。
  日本国内の設備投資は新マシンから既存設備の改善にシフトしてきているが,これらの新マシンの技術の中には,既存設備への適用も可能なものもある。また,グローバルな市場に対し,輸入紙への対抗上,これら新マシンの品質に対抗するために既存設備の改善が必要とされる。
  本稿では,メッツォ社が,これまでに納めた以下の最新の抄紙機を紹介する。
  1)  Propapier PM2  テストライナー・中芯マシン  ドイツ
  2)  Fujian PM6 中芯マシン(OptiConcept M)   中国
  3)  Saica PM11 中芯マシン                        イギリス
  4)  Jian PM3 塗工板紙                            中国
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製紙用スプレーノズルの紹介

エバーロイ商事株式会社  牧野  俊輔

  葛、立合金製作所は1938年に創立し,自社製超硬合金を応用してスプレーノズルの製造を開始した。
  以降,様々な産業で広く使用されて今日に至っている。
  ノズルには液体のみを噴射する一流体ノズル,空気を噴射するエアーノズル,液体と空気を混合して噴射する二流体ノズルがある。
  また,ノズルはオリフィス形状や内部構造を変化させることによって様々な噴射パターンを形成することができ,ニーズに合わせた対応が可能である。噴射パターンにはストレートパターン,フラットパターン,フルコーンパターン,ホロコーンパターンなどがある。
  近年,抄紙機の大型且つ高速化によってノズルに対する要求は益々厳しくなり,今や精密部品の一つとして考えられるようになった。
  本稿では抄紙機で使用される一流体ノズルの使用事例及び,ストレートパターンとフラットパターンノズルの性能・特徴を中心に紹介する。
  また,ノズル性能を確認する上で欠かせない代表的な実験設備についての説明も行う。
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インクジェット紙の高速塗工カラーの検討

イメリス社  B. Hallam, J. Preston, P. Biza, S. Booth and C. Nutbeem
株式会社イメリス ミネラルズ・ジャパン  楢原  辰哉,三沢  悦也

  インクジェット紙を雑誌分野向けに大量生産するにおいて重要な課題のひとつは,従来のオフセット印刷用紙の見た目や風合いといった品種によって多種多様な特性を,如何に低コストで開発できるかである。
  ミネラル成分では,シリカや表面処理された無機顔料が一般的に使用され,適切な空隙構造が形成される。それらの空孔が十分な毛細管現象をもたらし,インクの液体成分を浸透させると同時に大きな空孔がインクを定着させる。これらのタイプの無機顔料は,従来の塗工顔料に比べて高価であり,塗工濃度が低く高速塗工には不向きである。また既存のインクジェット紙は,用紙の表面近くでインクを定着させるため,カチオン系の塗工カラーである。通常,抄紙工程はアニオン系であるため,このことが問題を起こす原因となることから,生産の切り換え時の汚染の発生に細心の注意が必要とされる。
  イメリスは製紙メーカーを支援するため,大量生産を成しうるインクジェット紙の塗工カラー配合の研究に取り組んでいる。我々の理念は,製紙メーカーの負担を軽減させることであり,塗工カラーの高濃度化およびアニオン化に焦点を当て,既存の幅広い製品ポートフォリオから顔料を選択することである。その為には,このコンセプトに合致した総合的な塗工カラー配合の理解に基づく開発が必要と考える。
  本稿では,インクジェット紙の市況規模および要求される技術について記述する。さらに,我々が開発した技術による研究結果を,既存の印刷用紙との比較評価により報告する。
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熱水ポンプ用ノークーラカートリッジシール

イーグルブルグマンジャパン株式会社 技術本部  高橋  秀和

  紙パルププラントにおいては,蒸解工程から抄紙・塗工工程に至るまで,水ポンプ,パルプ用ポンプ,各種薬液用ポンプなど,多数のポンプが使用されている。これらポンプの軸封部には,経済性の追求,臭気発生や水質汚染などの環境汚染防止のためにメカニカルシールが標準的に採用されるようになってきた。
  また,世の中の高齢化に伴い,熟練した保全マンが減少傾向で,メンテナンスの重要性はますます高くなってきており,組立て容易でメンテナンス性に優れたカートリッジ式メカニカルシールが急速に普及してきている。加えて,節水・節電などの社会的要求に応えて水を使わない無注水仕様のカートリッジシールが普及してきた。
  これをさらに発展させ,熱水ポンプにおいてクーラを不要として,省エネ・節水・節電などのECOに向けての取り組み,クーラの撤去,ポンプ周りの配管の簡略化,イニシャル&ランニングコストを大幅に削減できる「熱水ノークーラ・ノーフラッシングシールシステム」とその中核をなす「熱水ノークーラカートリッジシール」を紹介する。
  以下に「熱水ノークラ・ノーフラッシングシールシステム」のメリットを項目別にまとめる。
  1)  大幅な省エネルギ・節水・省電力が図れる。
  2)  大幅な省コストが図れる。
  3)  省メンテナンスが図れる。
  4)  メカニカルシールの取扱いが容易になり,組立て誤り防止ができる。
  5)  メカニカルシールの故障予知・検知ができる
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灰分濃度モニタリング装置を活用したウェットエンドの最適化
―品質管理はドライエンドからウェットエンドへ―

スペクトリス株式会社 BTG事業部  渡邉  竜平,前川  卓彌,石津  義男,鈴木啓次良

  灰分は非常に安価な原料でありコストダウンや品質改善に寄与する一方,高灰分紙の操業には様々な困難が伴うことが知られている。最近の傾向として灰分濃度のモニタリングやメンテナンス費用の削減といったニーズの高まりから,回転式濃度計やブレード式濃度計から光学式濃度計への転換が急激に進んでいる。
  ワンパスリテンションは抄紙が抱える操業や品質の問題と強い相関があることは既に知られているが,特に上質・新聞・白板マシンにおいてワンパスリテンションを支配しているのは灰分リテンションである。上質・新聞・白板マシンにおけるウェットエンド最適化の方向性として,弊社から光学式濃度計を活用した『白水灰分濃度の最適化』を提案する。
  BM計からのフィードバックで制御してきた坪量や灰分は,高精度で灰分濃度も測定できる光学式濃度計の登場によってウェットエンドでのコントロールが可能となり,坪量・灰分の変動抑制や工程の安定化,銘柄替え時間の短縮・損紙の減少に大きく寄与している。
  また光学式濃度計は回転式濃度計やブレード式濃度計のように定期的なメンテナンス・消耗品の交換が不要であり,基本的にはメンテナンスフリーであるため,メンテナンス費用の削減にも貢献している。昨今コスト削減に取り組む工場では,メンテナンス費用の削減にスポットを当てて光学式濃度計を積極的に導入している例も増えてきている。
  本稿では弊社光学式濃度計を活用したウェットエンドの最適化について紹介する。弊社の提案する灰分濃度のモニタリングを活用したコストダウンの金額的メリットは生産量400〜500t/日スケールのマシンにおいて100百万円/年を優に超えることから,コスト削減がより一層厳しく注目される中で,ウェットエンドの最適化は回収期間のきわめて短い効果的な投資と言える。
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ライムマッドフィルターケーキの含水率低減による省エネルギー

栗田工業株式会社 プロセス技術一部  山本  英男,賀川  泰裕,三枝    隆,駿河  圭二

  近年,原油価格の高騰が続いており,省エネルギーによる燃料削減が各製紙会社で検討されている。KP苛性化工程では石灰焼成のためにロータリーキルン内を高温に維持しており,燃料として重油を大量に使用している。キルンに投入される炭酸カルシウム脱水ケーキの含水率を低減することができればキルンで使用する重油を削減できると考え,炭酸カルシウムケーキの脱水に有効な薬剤を探索した。
  探索の結果,高温域で脱水効果の高いクリデハイド®B-204と低温域で脱水効果の高いクリデハイド®B-207を見出すことができた。数客先でこれらの薬剤を適用し,炭酸カルシウム脱水ケーキの含水率低下,キルンの温度上昇を確認することができた。これにより実際に10%程度重油使用量削減が可能だった。
  本系に適した薬剤は汚泥の脱水などに使用される凝集剤系の薬剤ではなかった。炭酸カルシウム粒子表面を疎水化する作用を有している薬剤であり,これによって炭酸カルシウム粒子と水分の親和性を弱め,水持ちを低減していると考えられる。
  この薬剤は重油削減を目的に開発したものであるが,石灰焼成度の改善,キルンダムリングの軽減等の品質改善,操業安定性の確保にも寄与できると考えられる。
  今後はこれらのメリットを正確に把握し定量的に捉えることが出来るようにしていきたい。そして操業状況に合わせて最適な仕様を提案できるようにしていく。
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パルプ蒸解工程排水を対象とした嫌気性処理システムの長期運転実績

住友重機械エンバイロメント株式会社 環境技術センター  知久  治之,竹繁  隆徳,
                                                                     島本  敦史,渡邉  永子
同  環境システム統括部 事業企画部  中野    淳

  UASB/EGSB嫌気性処理システムは好気性処理システムに比べ,超高負荷運転が可能なため著しく省スペースな装置となること,また必要動力が少なく,かつ発生するバイオガスからエネルギー回収が可能であるため,著しくエネルギー効率が良いこと,更には余剰汚泥発生量が極めて少ないという有利な特徴を持つため,1980年代後半から全世界で適用拡大されてきている。
  このシステムは2000年には国内でも180基以上が稼動していると言われている。当社はUASB/EGSB嫌気性処理システムにおいて「ビール/飲料」,「食品」,「化学」,「製紙」他と多種多様な経験と計80基以上の納入実績を持ち,UASB/EGSBにおいての国内主力メーカーとして位置づけている。
  前回,第51回−2008年紙パルプ技術協会年次大会講演において,王子製紙株式会社富岡工場納入実設備の試運転から1年間の運転実績の報告を行ったが,今回はその運転開始から5年以上に渡る長期実設備運転の結果として,定常時の性能はラボテストで得られた性能とほぼ同等の性能を示していることが証明された。また,本設備ではmax.133,000MJ/dものメタンガス由来のエネルギーが回収されており,単なる排水処理設備ではなく,エネルギー生産設備としても働いている。
  なお,当初懸念されていた,汚泥の維持や,シャットダウン明けの処理の悪化の問題も,MF-サプリ(有機栄養源)とMF-8+1(無機栄養源)など有効な添加剤の適正添加とpHおよび温度管理の徹底により,安定運転が可能であることが実証できた。
  本稿では,運転開始から5年以上に渡る長期実設備運転状況をグラニュール汚泥の群集解析結果を交えて報告する。
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PS灰の土質改良材への適用

日本製紙株式会社 吉永工場  水野    博

  日本製紙株式会社吉永工場において,焼却灰の再利用先としてこれまではセメント向けのみであったが,株式会社フジタと共同で新たに泥土改質を目的とした土質改良材の開発に取り組んだ。
  吉永工場のペーパースラッジ(PS)灰の性状を調査したところ,他工場品に比べて吸水性能に優れ少ない添加量で強度発揮するため泥土改質材の材料として非常に適していることがわかった。
  吉永工場は古紙を主原料としているほか,焼却設備が産業廃棄物中間処理施設として認可を受け,他社のPSや下水汚泥などの処理も行っているので,PS灰の性質にバラツキがあることが予想されたため,適用性について2年間という長期にわたり調査した。
  その結果フッ素溶出量が土壌環境基準を超えそのバラツキも大きかったが,それ以外についてはほぼ安定していることが確認できた。このため,フッ素溶出抑制をメインとした不溶化剤を開発し製品化した。製品化にあたっては,長期安定性についての調査を行い,また品質管理においてもロット(1日)単位で溶出量を測定するなど万全を期している。
  吉永工場で製造した土質改良材は,泥土改質効果に優れるだけでなく,六価クロム,ヒ素,フッ素,ホウ素,鉛,カドミウムなどの有害物についての溶出抑制効果を持っており,その効果が認められて静岡県のリサイクル製品として認定された。また,消臭効果もあることが確認されている。適用実績としてはこれまで,港湾や河川の浚渫土砂の改質用途や不法投棄現場の改良用途などがあり,今後は東日本大震災復旧における瓦礫処理への活用も検討している。
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カナダ・アルバータ州におけるカーボンクレジット事例
―ポータブルチッピングによるカーボンクレジット受諾―

大昭和丸紅インターナショナル ピースリバー工場  野口  和義,山本  拓也

  カナダ・アルバータ州では,従来型の原油生産と比べ温暖化ガス排出が高いとされるオイルサンドからの原油生産開発が進んでいる。一方アルバータ州政府は,温暖化抑制に向け様々な取組により再生可能グリーンエネルギーの促進対策を図っており,そのひとつに北米で初めてとなるカーボンクレジットシステムがある。
  州政府は,一定規模の事業所に対し2007年に2003年〜2005年の年間CO2発生ベースから12%削減を義務付け,自助努力で削減出来ない事業所は,12%を超えて削減した事業所から規制値を超えたCO2分のクレジットを購入するか,州政府へCO2トン当たり15ドル支払うこととした。また,州政府の再生可能グリーンエネルギーに対する考え方は,太陽光,地熱,風力以外に,植林及び育成管理等を実施することを条件に農林業からのバイオマス等も認可している。
  一方,ピースリバー工場は2004年にコスト削減対策としてポータブルチッピングを導入した。従来方式のチップ輸送では,原木の先端部はトラックにて運搬する為の長さ調節等の理由で切られ,それらは山火事の原因になる等の理由により州政府から焼却処分を義務付けられている。ポータブルチッピング導入により,従来焼却されていた木の先端部分がチップとして有効利用出来ることがCO2削減効果として認められ,カーボンオフセットクレジットとして認可された。
  過去に紙パルプ産業にあった森林伐採という負のイメージから,森林をきっちり管理することから言える再生可能エネルギーによる温暖化ガス抑制というグリーンなイメージへの転換をカナダでは出来ていると言える。今後は省エネやバイオ燃料を使用した売電量アップ等に取り組み,温暖化ガス抑制に向けてさらに貢献していきたいと考えている。
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研究報文
両性ポリアクリルアミドの構造制御と紙力性能

星光PMC株式会社 製紙用薬品本部  茨木  英夫

  両性ポリアクリルアミド(PAM)系紙力剤は,紙の乾燥紙力を向上させるだけでなく,濾水性や搾水性の向上によるマシンの操業性改善,サイズ剤などの内添薬品や炭カルなどの填料の歩留り向上にも大きく寄与し,板紙から洋紙に至るまで幅広く用いられている製紙用薬品である。しかし,リサイクル古紙の使用比率の増大,抄紙機の大型高速化,抄紙用水のクローズド化の進展に伴う用水電気伝導度の上昇など,製紙用薬品の使用環境は悪化しており,これまでの両性PAM系紙力剤では十分な効果が得られ難い状況になっている。そのため,近年の厳しい条件下においても,効果の優れる両性PAM系紙力剤の開発が求められている。
  本稿では,PAMの分子鎖の広がり(回転半径),分子量,分岐度といったPAMの構造に着目し,両性PAM系紙力剤の高性能化の検討を行った。イオン基の量は同じで構造の異なる両性PAMをラジカル重合により合成した。得られた両性PAMの分子量・構造はGPC―MALS法により決定した。両性PAMの分岐度を高めることで溶液粘度を高めることなく高分子量の両性PAMを得ることが可能であった。得られた両性PAMを用い手抄き評価を行った。その結果,分子鎖の広がりを大きくすることで濾水性が向上すること。分岐度および分子量を高めることでパルプへの定着・紙力が向上すること。高分岐構造の両性PAMは高塩濃度条件でもイオン性基は遮蔽効果を受け難く,パルプの定着に必要なイオン性を保持できることが確認できた。高分岐化・高分子量化・分子鎖の広がりが大きな両性PAMは,紙力剤として優れた性能を有することが確認できた。
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海外駐在員レポート(4)
パルプ化副産物よりバイオディーゼル製造の試み ―トール油の場合―

中国南京林業大学  任    浩
ニューヨーク州立大学  大森  茂俊

  近年,持続可能なエネルギーとしてバイオ燃料が注目されている。その原材料と目されるのが農産物であるが,その利用は食料事情に直結する。著者等は非食材の原料としてクラフトパルピングの副産物であるトール油に注目し,これを原料としたバイオディーゼル製造の可能性を試みた。一般にトール油は,約50%前後がバイオエネルギーへ変換可能な脂肪酸・樹脂酸であると考えられている。そこで塩化アセチルおよび硫酸によるエステル化を試みた。反応時間,反応温度,薬品添加量,反応と抽出溶媒の減量およびその再利用を検討した。
  その結果,反応時間および温度については,室温以上で反応時間15分以上の実験者の好都合な条件をセットすることが可能であった。薬品添加量については,塩化アセチル,硫酸とも大きな違いは見られなかった。反応および抽出溶媒の減量は,実験操作に支障が無い限度で,実験者が最小に抑えることが出来る。以上の結果から,Fig.1の工程で,比較的容易にバイオディーゼルをトール油から製造することが出来る。
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