2013年4月  紙パ技協誌
 
第67巻  第4号  和文概要


日本製紙グループにおける生物多様性への取り組み

日本製紙株式会社 技術本部 環境安全部  渡邊  惠子

  生物多様性とは,「地球上に多様な生物が存在し,それらが支えあってバランスを保っている状態」のことである。人類の活動は生物多様性が基盤となって生み出される生態系サービスに支えられているが,年間約4万種の生物種が絶滅し,生態系サービスが急速に劣化していることが大きな問題となっている。
  日本製紙グループは,森林資源を活用して建材,紙・板紙,化成品を社会に提供する生物多様性とかかわりの深い企業であり,森林を失うことは事業基盤の喪失につながる。企業活動が生態系サービスに支えられている一方で,生態系に多くの影響を与えていることを認識し,生物多様性の保全に対して「本業を通した取り組み」と「自社の資源や技術を活かす取り組み」を両軸とした活動を進めている。
  「本業を通した取り組み」では,森林認証制度を持続可能な森林経営の指標のひとつとして用い,社内外における持続可能な原材料調達を実現している。また,海外の植林事業会社では,生物生息調査や近隣コミュニティに対して野生動物保護や防火に関する啓発活動を行うことで,産業植林事業と生物多様性の保全の両立に取り組んでいる。一方,「自社の資源や技術を活かす取り組み」では,国内社有林の一部を商業的な木材生産を行わない「環境林分」と定め,絶滅危惧種であるシマフクロウの保護活動や環境教育の場として活用している。また,製紙用ユーカリを効率的に増殖させるために開発した独自の発根技術を応用し,日本各地の桜の名木や琉球列島の絶滅危惧植物の増殖に取り組むことによって,種の多様性の保全を試みている。
  日本製紙グループでは,今後も生物多様性を環境保全と経済成長の調和を目指すものと位置づけ,サプライチェーン全体での生物多様性への配慮について,様々なステークホルダーとコミュニケーション,連携を図りながら強化していきたいと考えている。
(本文3ページ)


セルロースを高度利用した軽量高強度プラスチックの開発

中越パルプ工業株式会社 高岡本社 開発本部開発部  橋  創一,田中  裕之,
                                                                    橋場  洋美,清水  喜作
富山県工業技術センター  水野    渡

  近年,天然木材を利用して石油由来素材と置換し,低炭素社会実現を目指す研究開発が盛んに進められている。
  本研究では,再生可能な資源であるセルロースを石油由来素材の置換補強材料として配合し,軽量で高強度な材料を創製する事を目的とした。本報では,パルプ及びセルロースナノファイバー(以下CeNF)をプラスチック(汎用性の高いポリプロピレン樹脂)へ配合した素材の特性について報告する。
  混練機として二軸スクリュー混練押出機とセルロース混合可塑化成形装置を用いた。
  分散性は,セルロース混合可塑化成形装置で得たサンプルの方が,分散状態,及び弾性率において優れており,混練方法の違いがプラスチックの特性に影響することが判った。樹脂の破断は,パルプ凝集物が起点となっており,混練物の均一性の重要性を示唆した。分散剤の添加により,分散度は高くなるが,マイクロオーダーのパルプ凝集物が散在しており,更なる分散度の改善を要す。
  強度は,セルロースを配合することにより,弾性率が高くなることが判った。
  流動性は,CeNFを混練するとメルトマスフローレイトが高くなり,成形性が改善されると期待される。
  またパルプ種によって最適なセルロース繊維のナノ化(解繊処理)度合いが異なることが判った。
  今後の課題は,プラスチックの補強材用途として更なる分散性の改善と最適なセルロース繊維のナノ化度合を探求することである。
(本文8ページ)


ハイパーセルフローテーターの操業経験

日本製紙株式会社 北海道工場勇払事業所  岩渕    央

  国内の古紙利用率は2009年には63%に達し,更なる古紙利用率向上に向けての古紙の高度利用が進められている。一方,紙向けでの消費量の6割以上を占める新聞古紙では,新聞用紙でのカラー印刷対応等の高品質化への取り組みの中で,紙中灰分の上昇など紙質面での変化が見られ,古紙処理工程におけるフローテーターに求められる役割も変わりつつある。
  従来の目的であるインキの除去に加え,灰分,粘着異物に対する除去性能が求められており,これらの除去性能向上及び操業性の改善を目的とし,相川鉄工株式会社と共同で新型フローテーター「ハイパーセルフローテーター」を開発し,2008年に当社北海道工場勇払事業所DIP工程に導入した。
  現時点において,以下の成果が得られている。
  ・ハイパーセルフローテーターは,従来使用していた密閉加圧型・自給式フローテーターに比べ,インキ・灰分の除去に優れていたのみならず,電力の削減にも繋がった。
  ・白色度に余裕がある場合は,タービンのインバーター回転数を下げることで,白色度の調整ができ,省エネにも繋がる可能性が見出せた。
  本稿では,導入後のハイパーセルフローテーターの操業面,品質面についての操業状況を中心に紹介する。
(本文14ページ)


バイオ燃料生産残渣の有効利用  ―スィートソルガムからの紙の製造―

東邦特殊パルプ株式会社  大野    淳,原    普一
茨城大学  農学部  新田  洋司,塩津  文隆,浅木  直美,本間  貴司

  エネルギー需給が逼迫する度にバイオマス利用の機運は高まるが,原油市場や価格が安定すると自然消滅した。バイオマスには,草本系,木質系,資源作物,家畜排泄物,下水汚泥,食品廃棄物などが挙げられる。バイオマスの最大の特徴は,大気中の二酸化炭素を増やさない「カーボンニュートラル」であることである。
  茨城大学では約20年にわたりバイオ燃料作物としてスィートソルガムを研究し,バイオ燃料プロジェクトにおいてバイオ燃料による実装走行も行っている。
  一方,スィートソルガムは糖液採取後の残渣処理が課題の一つであり,これの付加価値を高めることで,バイオ燃料プロジェクトのコスト削減および廃棄物量削減に繋がることになる。その一つとしてパルプ化・抄紙化の可能性を検討し,さらには実機試作を行った。
  アルカリ蒸解にて残渣のパルプ化は可能であり,LBKPよりも高強度なパルプが得られ,さらにはスィートソルガムパルプ100%にて一般用途に耐えられる封筒を作成することが出来た。第一回目の取組としては成功を収めたと言える。
  現時点にて本取組には幾つかの課題が残されているが,残渣処理の一つとしてのパルプ化・抄紙化は今後その重要性が増すことが予測されることから,各課題を解決することで,バイオ燃料プロジェクトのさらなる推進に貢献できると考えている。
(本文18ページ)


蒸気駆動コンプレッサ使用による省エネルギー事例

王子エフテックス株式会社 東海工場 施設動力部  水谷    徹

  王子エフテックス東海工場は5製造所で構成される工場であるが,いずれの製造所においてもボイラ設備で発生した蒸気は,使用先にあわせて蒸気圧力を減圧弁で圧力を調整して供給していた。この発生側と使用側の圧力差を利用する方法として蒸気タービン発電機を採用することも考えられるが,工場規模からみて採用は困難であった。一方で紹介を受けた蒸気駆動コンプレッサは設備が小型であることに加え,抄紙機では圧縮空気を大量に使用していることもあり,省エネ効果を得られないか検討を行った。
  蒸気駆動コンプレッサを最大限活用するためには,一定量以上の蒸気を安定して使用することが必要であるが,今回はその条件に適合した岩渕および富士宮製造所に設置した。
  蒸気駆動コンプレッサは順調に稼動し,いずれの製造所においても運転時間は年間8,000時間を超え,既設の電動コンプレッサの一部は待機状態にすることができ電気使用量の大幅削減に結びつけることができている。150kW相当の電力削減はいずれの製造所でも使用電力の約2%に相当し,昨今の電力事情からくる電力削減にも寄与しており,特に富士宮製造所は東京電力管内であるため2011年夏の電力削減に大きく貢献した。
  今回,蒸気の発生側と使用側にある圧力差に関し,利用できることはわかっていながら利用せずにいた問題を解決でき,他の中小規模の工場に対し採用検討のきっかけを与えるものと考えている。
(本文23ページ)


5マシンドライヤー  高露点型密閉フードによる省エネ

王子マテリア株式会社 江戸川工場 工務部  元吉  善次
  王子マテリア江戸川工場は東京都東端に位置し,首都圏から発生する大量の古紙を集荷し易く,製品の消費地に近いという恵まれた立地条件を生かし,地域社会との共存共栄をテーマに白板紙を生産している都内唯一の製紙工場である。当工場5号抄紙機は1971年5月に白板紙専抄マシンとして操業を開始し,現在では,年間約13万トンの白板紙を生産しており,製品は主に紙器用途に使用されている。
  そこで,5号抄紙機ドライヤーフードは,稼動後39年が経過し各所に劣化が進行しており,既存のオープンフード,給排気設備には下記の問題があった。
  @  オープンフードのため蒸気及び給気エアの噴き出しが発生しエネルギーロスとなっていた。
  A  フード排熱利用が不十分で,一般的な密閉フードと比較して乾燥効率で劣っていた。
  B  フードパネルの断熱性とシール性に劣るため,蒸気噴き出し等で抄紙室内環境を悪化させていた。
  今回,省エネ,老朽化対策,作業環境改善を目的として,ドライヤーフード及び給排気設備の更新を実施し,ドライヤーパートにおける省蒸気,省電力を達成できた。更に,オペレータの作業環境改善という観点からもフードの密閉化及び給排気風量の適正化は有効な手段であると考える。
  本報ではドライヤーフード改造として採用した「高露点型密閉フード」及び,排熱回収装置として,給気を加温し,更に温水製造を行うことで排熱の有効利用を可能とした「エコノマイザー」を中心に,概要及び更新による省エネルギー効果について報告する。
(本文27ページ)


北越紀州製紙 新潟工場  省エネプロジェクトの効果

北越紀州製紙株式会社 新潟工場 パルプ課  坂上    実

  地球温暖化防止のため世界規模でその対策が行われつつある中,温室効果ガスであるCO2排出量削減が重要視されている。そのため,化石エネルギー使用量の削減及び省エネルギーへの取り組みが急務となっている。
  新潟工場も1980年代に省エネ活動をスタートさせ大きな成果をもたらしてきが2008年6月に9号抄紙機運転に備え,パルプ関連設備の新設・増強,同年9月9号抄紙機が営業運転を開始したことにより,エネルギー使用量の増加要因となっている。
  本報では2009年及び2011年と2回に渡り省エネプロジェクトを立ち上げ大きな成果を上げた。これらの取り組み内容と,事例及び効果を紹介する。
  以下に,省エネプロジェクトにおいて検討された事例の項目を数点箇条書きにして挙げる。
  1)  省エネDDRプレート導入
  2)  高温水ポンプの省エネ
  3)  クリーナー供給ポンプの省エネ
  4)  エバポレ―ターSC温水ポンプの省エネ
(本文32ページ)


ホウ酸塩部分自動苛性化の操業経験

三菱製紙株式会社 八戸工場 技術部 技術グループ  古川  朋史

  ホウ酸塩部分自動苛性化は,石灰による苛性化の一部をホウ酸塩自動苛性化に置き換える技術である。具体的には,ホウ酸塩を回収系に添加することによって,回収ボイラにおいて炭酸ナトリウム(Na2CO3)の脱炭酸反応を起こす。これによって,スメルト溶解の段階で苛性ソーダを得ることができる。
  ホウ酸塩は水溶性であるため,添加されたホウ酸塩はクラフト・回収系内を循環し,苛性ソーダを産生し続ける。これが自動苛性化と言われる所以である。
  八戸工場では,2010年3月から2011年3月にかけて回収系内にホウ酸塩を添加し,ホウ酸塩部分自動苛性化による操業を約1年間行った。
  自動苛性化率は最高で10%に達し,目標としていた5%の白液増産を達成することができた。
  部分自動苛性化によって,白液単位生産量あたりの焼成石灰原単位を5〜8%,キルン重油原単位を4〜5%削減することができた。
  白液増産コストを購入生石灰による方法と比較したところ,ホウ酸塩部分自動苛性化は購入生石灰の約半分のコストで白液を増産できることが明らかとなった。
(本文38ページ)


植林事業におけるバイオマーカーの活用

王子ホールディングス株式会社 研究開発本部 森林先端技術研究所  西窪  伸之

  当社は,海外植林事業を拡大しており,植林木をチップ原料としてだけではなく,製材品,合板など様々な用途での使用を行なっている。植林地が存在する国,地域では気候や土壌が異なり,各地に各々適した樹種,個体の選抜を行なっている。選抜された成長,材質優良木はクローン植林へと展開し,生産量と材品質の向上を図っている。安定した生産性,材の品質を維持させるには,選抜された優良木を徹底管理する必要があり,また,違法持ち出しによる侵害対策も必要である。その対策として,遺伝子レベルでの個体間差を利用し個体識別を行なうのが最も確実な手法である。
  ユーカリゲノムDNAの解読結果は2010年に公表された(Eucalyptus grandis)。また,遺伝子の塩基配列を大量解析する技術(次世代シーケンサー)の進歩と低価格化により,個体レベルの遺伝子比較ができるようになった。この技術を利用し,Eucalyptus pellitaについて18個体分の木部発現遺伝子(RNA)の大量解析と比較を行い,樹種内で共通して存在するSNP(一塩基の違いがある部分)を見出した。それらSNPの中から17種類のSNPを個体識別用マーカーとして選び,TOF-MSを用いたユーカリ個体識別方法を開発した。この手法により,大量の個体を迅速に安く,更に従来法より確実に個体識別する事が可能となり,植林地の選抜優良木の徹底管理が可能となった。
(本文42ページ)


板紙基礎講座(1)
板紙の分類と種類

王子マテリア株式会社 技術本部 技術部  山森  明浩,内海    拓

  従来,紙パルプ産業界は洋紙系といわれる新聞用紙や印刷・出版用紙を主体に発展してきたが,近年においては産業構造の変化に伴い,板紙や特殊紙分野への注目が増している。
  国内における紙・板紙の生産量は,2009年のリーマンショックを機に大幅に落ち込み,以降ほぼ横ばいに推移して現在に至っている。紙(主に洋紙)は電子書籍などの発展による個人消費の萎縮や,景気悪化による広告需要の落ち込みを背景に生産量が減少している。
  一方,板紙においては物流,特に食品分野が堅調なこともあり,生産量はわずかではあるが増加している。こうした傾向を受け,2011年現在の国内紙パルプ産業界における紙・板紙の生産比率は本文図2の円グラフのようになっている。
  また世界における紙・板紙の生産量については,特にアジア地域について中国やインド,東南アジア諸国の経済発展を背景に高成長を維持しており,その存在感はより一層大きくなっている。
  今回,板紙の種類と分類を取上げ,それぞれがどのような用途に使われているかについて述べる。また,どのような原材料が使われているのかについても解説し,板紙に関する基礎知識の一部を紹介する。
(本文45ページ)


寄稿
機能紙というジャンルの形成  ―機能紙研究会の50年の技術の軌跡―

香川県産業技術センター  小林  良生

  特定非営利活動法人機能紙研究会は,1962年に前身の化繊紙研究会として発足し,その後1982年に機能紙研究会と名称変更した組織であるが,2012年に半世紀を恙無く迎えることが出来た。
  同組織は当初工業技術院四国工業技術研究所と四国の製紙関係の公設機関が製紙,繊維企業と連携して化合繊の抄紙技術を研究開発することを目的として設立したものであるが,抄紙用繊維を天然繊維,化合繊に限らず無機繊維,金属繊維などまで繊維状のものを広く研究対象にして,高性能,高機能性で付加価値の高いシートをつくることをターゲットとするように設立趣旨を拡大した。お陰で組織も全国に拡大され,その歩みとともに紙パルプ分野に「機能紙」というジャンルが形成され,「汎用紙」と並んで中堅企業が取り組む分野となった。
  拙稿では同研究会の歩みを10年ごとに分け,その時々にどのような課題に取り組んできたかを回顧し,取り組んできた課題を大まかに展望した。
(本文52ページ)


2012年度フォローアップ調査結果(2011年度実績)と温暖化対策関連情報

日本製紙連合会  池田  直樹

  日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め,積極的に活動している。その中の1つとして地球温暖化対策(CO2排出抑制対策)があり,2007年9月に2度目の改定をした以下の2目標を掲げて取組んでいる。
  1)  2008年度〜2012年度までの5年間平均で,製品当り化石エネルギー原単位を1990年度比20%削減し,化石エネルギー起源CO2排出原単位を1990年度比16%削減することを目指す。
  2)  国内外における植林事業の推進に努め,2012年までに所有または管理する植林地面積を70万haに拡大することを目指す。
  今回は2012年度フォローアップ調査結果(2011年度実績)について報告する。
  2011年度の化石エネルギー原単位は,生産量の大幅な減産にもかかわらず各社の地道な省エネルギー対策及び効率的生産を目指しての工場,生産設備の統廃合の効果がより発揮されたことにより,1990年度に比べ74.6%と2010年度と比べほぼ同等の原単位となった。一方,化石エネルギー起源CO2排出原単位は震災影響による電力不足に対応して自家発電力の増加並びに大型工場の被災による一部製品の供給不足を他社の工場で代替生産した等の対応による燃料構成の影響で,1990年度に比べ79.9%となり悪化,2010年度比では2.6ptの悪化となった。
  また,関連情報として,日本におけるエネルギー消費量,CO2排出量およびそれに占める紙パルプ産業の位置付けや,低炭素社会実行計画,電力値上げの影響等の温暖化対策関連情報についても触れた。
(本文62ページ)


海外駐在員レポート(4)
ドイツでの生活で学んだこと

三菱ハイテクペーパーヨーロッパ フレンスブルク工場  狩野    聡
  Mitsubishi HiTec Paper Europe GmbH(MPE)は,1999年に三菱製紙が現地法人化した子会社である。当初は,ビーレフェルト市にあるMitsubishi HiTec Paper Bielefeld GmbHとフレンスブルク市にあるMitsubishi HiTec Paper Flensburg GmbHの2社体制であったが,2010年に両社は合併し,MPEとなった。
  MPEにおいて,このビーレフェルト工場とフレンスブルク工場が生産拠点で,厳密な品質管理体制に従い,環境基準に配慮しながら日々操業している。そして,日本から得られる高い技術支援,および世界中に広がる販売網を強みとしながら,高い品質や高付加価値を持った製品群ときめ細やかなサポートで評価を受けている。
  フレンスブルク工場は,ドイツとデンマークとの国境近くにあるフレンスブルク市の中心部に位置し,市庁舎とフレンスブルクビールの工場に挟まれている。歴史は古く,1696年に設立された。従業員は約250名で,デンマーク側から通勤している者もいる。生産能力は年約3万トンで,主に高付加価値の感熱紙を生産している。筆者が所属する工場である。
  一方,ビーレフェルト工場は,ドイツ北西部のビーレフェルト市にあり,1799年に設立された。MPEの本社の所在地にあたる。従業員は約450名で,生産能力は年約15万トン。主にノーカーボン紙,感熱紙,インクジェット用紙を生産している。
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研究報文
高品質多孔性填料の開発(第2報)
―耐アルカリ性微小粒子が粒子物性および紙質へ与える基礎検討―

王子ホールディングス株式会社 開発研究所  山本    学
王子ホールディングス株式会社 基盤技術研究所  若狭  浩之
株式会社日本紙パルプ研究所  岡田  比斗志

  多孔性填料と称される合成シリカは,近年では,その比重の低さを特徴として,紙の嵩高化を目的とした充填剤としての使用量が増えてきている。多孔性填料の使用には,機械パルプのような褪色,および嵩高剤として使用される脂肪酸系誘導体,特殊界面活性剤のような抄紙機を汚すといった問題もなく,シューカレンダのような新たな設備の設置を必要とせず,現設備で対応できるといったメリットがある。しかし,現在適用されている他の嵩高技術と比較して低下レベルは低いものの,紙力の低下をもたらすといった問題が残っている。
  そこで我々は,嵩高性および不透明性に優れ,紙力低下の少ない高品質多孔性填料の開発を試みた。具体的には,珪酸ナトリウムと鉱酸を直接反応させる直接酸分解法を基本原理として,反応時に耐アルカリ性微小粒子を用いて,一次粒子径,二次凝集粒子径および粒度分布への影響を調査し,得られた多孔性填料が嵩高性,不透明性,および紙力に与える影響について述べ,本多孔性填料の有用性を明らかにした。
  すなわち,以下に示す知見が得られ,有用な高品質多孔性填料を製造できることが示唆された。
  1)  耐アルカリ性微小粒子を反応時に存在させることで,様々な粒子物性の多孔性填料を製造できる。
  2)  耐アルカリ性微小粒子の添加量および攪拌力を調整することで,一次粒子径,二次凝集粒子径および粒度分布を最適化することが可能となり,嵩高性および不透明度に優れ,紙力低下の少ない多孔性填料を製造できる。
(本文91ページ)