2013年2月  紙パ技協誌
 
第67巻  第2号  和文概要


ブラジル北部における製紙用植林木の特性評価

日本製紙株式会社 研究開発本部 アグリ・バイオ研究所  福田雄二郎,新屋  智崇,
岩田英治,林    和典,小野木晋一,河岡  明義

  Amapa Florestal e Celulose S. A. (AMCEL)は,ブラジル北部アマパ州において,植林と木材チップの生産を行っている。同社は,平坦でまとまった植林地,チップ工場や積み出し港の距離,豊富な降水量,温暖な気候など,高いポテンシャルを持ちながら,植林木の成育性が低く,これらの好条件を十分に活かせずにいた。しかし,2006年12月の買収以降,継続的に行われてきた林木育種の成果により,成育性が大幅に向上している。
  筆者は,2009年4月から2012年1月まで同社研究課長として駐在し,林木育種による成長性や木材物性の改善について取り組んできた。本報告では,AMCELの事業紹介とともに,ブラジル北部に位置するAMCEL社クローン植林地において,簡易分析法を導入し,従来の測定法では評価が難しかった,植林木のKP収率と容積重の分布と,植林木の成長性がKP収率と容積重に与える影響について,調査を行った。
  結果,以下の傾向が示された。
  1)  容積重では,材積が増加するにつれて,若干の容積重の減少傾向が認められた。KP収率では,東地区,西地区ともに,材積の変化によって明確な傾向を見出せなかった。
  2)  容積重,パルプ収率とも,成長性の差に起因する要素よりも,植栽地の違いによる影響が大きくなる傾向がみられた。
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プレスパートの最適なコンディショニング

株式会社メンテック技研 薬品開発チーム  小林  亮介

  近年,製紙業界においては,環境保護や省エネルギーに対する関心の高まりと同時に,市況変化に伴う生産効率改善やコストダウンへの取り組みが加速しており,製紙工程を取り巻く環境は,より厳しくなっている。
  板紙では,古紙利用率の増加や用水のクローズド化だけでなく,古紙品質の低下や雑誌古紙の増配等を原因とする低強度パルプ繊維の増加,原料歩留まり向上目的の回収原料によるアクリルやホットメルト,酢酸ビニル配合のピッチ増加,炭酸カルシウムに由来する抄紙pHの上昇がトラブルの種として挙げられている。
  一方,洋紙においては,板紙同様に古紙・用水の課題を抱えるに加え,雑誌古紙の増配,ユーカリ・アカシアを代表とするL材輸入パルプの増加による短繊維化,シングルシュープレス化など,一層の生産効率・コスト改善に向けた新技術に対応すべく,日々製紙技術のレベルアップが求められている。
  これら諸環境の変化に呼応する形で,抄紙工程におけるトラブルの増加・複雑化が深刻となり,生産効率やコストダウン,品質向上を追求する上で無視できない状況となっている。特にウエットパートにおいては,プレスロールへのピッチ付着や湿紙の剥離不良による欠点・断紙・印刷適性の低下,フェルト/ワイヤーへのピッチ付着による地合低下や搾水性低下などの問題が増加しており,用具寿命の低下や洗浄回数の増加をもたらしている。
  本報告では,新たに当社の開発した,プレスパートの湿紙剥離向上剤『オンプレス?』,フェルト/ワイヤーの汚れ洗浄・付着防止剤『ピッチガード?』について,開発コンセプトならびに効果発現メカニズムを,実機適用事例を交えて紹介する。
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製紙業界に於ける「AOKIクリーナー」の現状  ―ブレード式キャンバス洗浄装置―

株式会社青木機械  大  成裕

  ここ数年の製紙業界は,古紙再利用の増加から粘着性異物を含め,抄紙機内に持ち込まれる異物が操業トラブルや品質トラブルの原因になることは少なくない。したがって,キャンバスの汚れも顕著となり,ドライヤーでの紙切れの発生,欠点の増加,ワインダーでの継手作業の増加,損紙量の増加による生産性の低下が急増している。
  この対策として,スクリーニングの強化,ピッチコントロール剤の添加,ドライパートでは超高圧水洗浄機の設置やキャンバスロールのインサイド化などのさまざまな対策をするが,これらの対策だけでは限界にきているのが現状である。
  弊社では,キャンバス洗浄方法として従来の高圧水洗浄機とは異なるブレード式キャンバス洗浄装置「AOKIクリーナー」を開発した。
  AOKIクリーナーの本体は,本文写真1にある。以下に概略を述べる。
  キャンバスのペーパーサイド面に,特殊硬質素材のブレードをキャンバス幅全面に,3列から4列を配置しブレードの先端をキャンバスの表面に均一に接触させ,キャンバスに付着した粘着性異物や紙粉を24時間操業中に洗浄している。キャンバスの表面に発生した汚れは,ブレードのフォイル現象によって吸い出し,掻き取られ,最終はセーブオールで回収される。
  AOKIクリーナーの洗浄は,操業中に水を使用しないため,水分プロファイルの向上やキャンバスロール表面に錆の発生も無く,周囲の環境改善にも効果が現れる。特殊ブレードの開発により,従来の洗浄機とは異なる洗浄システムでキャンバス汚れによる操業トラブルや品質トラブルを無くし,操業安定と共に品質改善を可能にする洗浄装置である。
  本稿では,そのシステムと効果及び現状の実機についてご紹介をする。
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Raumaster社製仕上げ設備のご紹介

伊藤忠マシンテクノス株式会社 生活・環境機械部  芝木  雅史

  欧米と比較して日本の製紙会社が一番遅れを取っているのが仕上げ部門である。日本の仕上げ部門にはまだまだ省人化,効率化が可能な余地は多く残されている。また日本の製紙工場で使用されている仕上げ設備は導入から20年以上が経過し,そのメンテナンス性及び経年劣化による問題に直面している。今回ご紹介するRaumaster Paper社は1984年の設立以来紙パルプの仕上げ設備に特化した会社で,ワインダー〜巻取包装機〜自動倉庫,トラック積み込みまで一貫して提案が出来る数少ない会社である。
  Raumaster Groupはフィンランドのラウマ(ヘルシンキから北西に約200km)にて1984年に設立され,現在以下の4つの会社にてグループを構成している。従業員はグループ全体で350名程度である。
  Raumaster Oy         :本社,エネルギー,ウッド搬送システム
  Raumaster Paper Oy :製紙関連設備のエンジニアリング会社
  Ketjurauma Oy         :コンベアチェーン製造会社
  A/S Rauameister    :機械組み立て,アフターメンテサービス会社
  現在70%以上が輸出案件で欧州ではStra Ensoを中心に販売を広げている。日本におけるRaumaster Groupの実績はRaumaster Oyがバイオマスボイラーへのチップ搬送,及びアッシュ搬送システムをボイラーメーカーに販売した実績がある。
  今回の発表ではその中の巻取包装設備,及び巻取搬送設備に特にクローズアップをした。今回の発表を通じ,日本の製紙会社における仕上げ部門の省人化,効率化に貢献をしたい。
(本文19ページ)


石灰キルンにおける燃料使用量削減対策

太平洋エンジニアリング株式会社 コンサルティング部  鈴木  英人

  太平洋エンジニアリング鰍ヘ,セメント関連のエンジニアリング会社として,セメントキルンにおける省エネルギー対策を長年実施し,キルン運転における省エネルギー技術を蓄積してきた。
  製紙会社における生石灰キルンでは,各社独自で種々の燃料使用量削減対策を実施してきており,一定の効果は得られているものの,大きな燃料使用量削減効果が見られていない状況である。
  そこで,弊社が保有しているキルン運転における省エネルギー技術に基づき,キルンバーナとクーラを併せてキルン燃焼装置として考え,キルンバーナ更新とともにキルン運転,並びにクーラ運転を最適化する以下の総合的な燃料使用量削減対策を実施した結果,燃料使用量の13〜15%削減を達成した。
  <対策の要点>
  1)  キルン調査の実施:現状運転状態を把握すると共に,現状の問題点を明確にし,各キルン毎の最適な燃料使用量削減対策を立案する。
  2)  キルンバーナ更新:弊社式TMPバーナ(Taiheiyo Multi Purposeバーナ)の導入し,1次空気量の低減と燃焼性の改善を実施した。
  3)  クーラの運転調整:クーラ熱回収効率の改善として,冷却風量制御とグレート速度制御を実施した。
  4)  キルン運転調整:窯尻O2濃度管理の最適化,キルン内原料充填率の最適化と窯尻散水量の低減を実施した。
(本文24ページ)


高効率・省電力型クローズドドレン回収システム
―高効率貫流ボイラに適したクローズドドレン回収装置の開発―

三浦工業株式会社  村上  雅彦,大久保智浩

  貫流ボイラは,大型ボイラと比較し保有水量が圧倒的に小さく,高効率・省スペース・取り扱いが簡便という特長を持ち,産業用・業務用熱源として主流になっている.貫流ボイラは主に50A程度の水管で構成される為保有水量が小さく,同じ相当蒸発量で比較すると大型ボイラの約10分の1である。保有水量が小さい事のメリットは,
  1)  熱損失(運転損失・放熱損失)が小さい為高効率運転が可能となること
  2)  燃焼開始すれば起蒸が早く応答性に優れること
が挙げられる。
  逆に,保有水量が小さい事のデメリットは,自己蒸発による蒸気供給量が小さく,燃焼開始までの素早い応答性が要求されることである。
  これに対応するため,高速応答性に優れた角型缶体と連続パイロット制御を標準搭載した貫流ボイラを発売し,負荷追従性を実機検証できるボイラ実証デモルームを設置し事前に負荷追従性を検証(体感)して頂くことが可能となり,お客様より好評を頂いている。
  また,高効率貫流ボイラに適したクローズドドレン回収装置(HX型)の開発を行った。保有水量が小さい高効率貫流ボイラに対応するためドレンヘッダ容積を最適化,更に,周辺機器とユニット化することで各種制御(フラッシュ蒸気熱回収制御,クローズド給水温度制御,ドレンヘッダ加圧制御,バックアップ給水制御等)を搭載しドレン熱回収率を極限まで向上する。
  本稿では,高効率・省電力を実現する高効率蒸気システムとして,
  1)  小保有水量・小容積の貫流ボイラの放熱損失,高速応答性,それを実証するデモルームを紹介するととともに,
  2)  ドレン保有エネルギーの高度利用方法として,貫流ボイラに適したクローズドドレン回収装置の省エネルギー効果と装置の仕様を紹介する。
(本文30ページ)


微生物製剤を用いた既設排水処理施設の処理機能改善と薬剤による臭気対策

無臭元工業株式会社 水処理ソリューション部  林    賢治

  排水処理の役割や責務が拡大する一方で,国内景気や円高などの影響から,積極的な設備投資も行いにくい状況下,施設管理者にとって,コストをかけずに既存排水処理施設の機能改善を図ることが課題となっている。
  無臭元工業は,水処理薬剤および消臭剤メーカーとして,下水やし尿処理分野において,プラントメーカーと異なる視点から既存排水処理施設の機能改善やトラブル対策に長く取り組んできた実績があり,6年前から紙パ排水処理分野への応用を進めている。紙パ排水特有の高負荷高速処理条件下での負荷変動に起因する様々な機能低下トラブルや,使用される硫酸塩に由来する各プロセスでの臭気トラブルに対し,単位汚泥量あたり処理活性の高揚と汚泥の改質を図る微生物製剤『メルトラーゼ』シリーズおよび発生源に応じた消臭剤『ムシュウゲン』シリーズを用いた対策を講じ,既存施設の枠内で,一定の成果を得るに至った。
  薬剤による対策は,設備の付加や更新による対策に比べ,イニシャルコストがかからず,容易に実施が可能で,効果が不十分である場合や,状況が変化し対策が不要になった際に,中止することも容易で,長期に投資のリスクもなく,紙パ排水処理の現状のニーズに適合しており,今後もこうした対策を通じ,紙パ業界の環境対策や排出負荷低減の進展に寄与すべく,薬剤および適用技術の更なる改善に努めていきたい。
(本文37ページ)


2層軽量ライナーボード用サクセスフォーマのスタートアップ

株式会社小林製作所 製紙機械設計部  陳      君,向井  正仁

  中国の紙・板紙メーカー第2位の理文造紙(Lee & Man Paper)で,2011年11月にPM16がスタートアップした。このマシンのターゲットは,ここ数年のトレンドである軽量ライナーボードであることから,これまでに計5台納入した3層サクセスフォーマとは形式を変え,フォードリニアベースのオントップサクセスフォーマ2層抄きを採用した。中国で現在稼働中の段ボール原紙マシンは,3層マルチフォードリニアが主流を占めており「スタンダード」なモデルとして定着しているが,今後も加速する原紙軽量化に対応するため,新たな競争ステージへ突入しようとしている。
  サクセスフォーマの紙質は品質レベルが高いとの評価を受けており,トランスファフェルト方式で実績を伸ばしてきたが,フォードリニアベースでは国内外で数例の実績があるに過ぎず市場評価が少ない状況である。
  本報で紹介する内容は,ほぼすべての板紙品種で高評価があるサクセスフォーマを軸に,最新技術であるPCRヘッドボックスをフォーミングセクションに組み入れた。このヘッドボックスの最大の特長はチューブバンク形状にあり,流れ変動を最小限に抑え不均一な流れを発生させない構造である。その他にも,希釈プロファイリングシステムやエッジフローシステムなど,各種の調整装置を備えた優れたモデルである。
  スタートアップ後わずかの期間で高性能を示し,今後のさらなる軽量化にも対応可能なことが確認できた。
(本文42ページ)


ロジンに替わる新規板紙用内添サイズ剤の提案

荒川化学工業株式会社 製紙薬品事業部 研究開発部  保郡  淳一

  近年の段古紙を主原料とする板紙製造では,炭カル含有古紙の増加,抄紙系のクローズド化が進み,内添用薬品はその効果を発揮しづらくなっている。板紙用内添サイズ剤の主流であるロジン系サイズ剤は,輸入ロジン価格高騰の影響や抄紙pH上昇の流れから,そのパフォーマンスが低下していくものと考えられる。ロジン以外の汎用サイズ剤はAKD,ASAが良く知られている。しかし,これらのサイズ剤はそのサイズ性能が優れる一方で,種々の欠点(立ち上がり現象や安定性の懸念等)を有する。このような状況において,弊社では幅広い抄紙pHに適用可能であり,AKD,ASAサイズ剤が有する欠点のない第4の汎用サイズ剤の開発に取り組んでいる。
  新規板紙用サイズ剤は長鎖アルキル基を疎水基とし,特殊な極性基をもつ新素材からなる。新規板紙用サイズ剤がサイズ発現するためには,ロジンサイズ剤と同様に硫酸バンドを必須とする。しかしながら,その配位システムは異なり,原料古紙由来のAlumだけでもその優位差が確認されると共に,Alumの添加量が少ない場合でも十分なサイズ性を発現する事を確認した。さらに,抄紙pHの上昇に伴うサイズ効果の劣化幅が小さく,抄紙環境の変動に幅広く適応可能な素材であると期待している。また,AKDの様なサイズ効果の立ち上がり現象や,ASAに見られる抄紙系滞留時のサイズ効果の経時劣化は認められなかった。
  弊社では,今後を見据えた抄紙環境や市場の変化に備えて,この新規板紙用内添サイズ剤の工業化・市場投入に向けた開発を進めている。
(本文46ページ)


オンライン型フォーミングセクション濾水測定器
―“ファイバースキャンFIX”のご紹介―

野村商事株式会社  二葉    勝

  イタリアのCristini社が2004年にマイクロウェーブ技術を駆使したポータブル型フォーミングセクションの濾水測定器の販売を開始した。FiberScanONEはガンマー放射線式のように持ち運びや保管に法的規制を必要としないマイクロウェーブ方式濾水測定器である。クーチロール付近の水分量も正確に測定し,さらに0〜50,000g/m2(厚さで0〜50mmに相当)までの水分量の測定が可能で,抄紙の銘柄に制限を受けずに総ての抄紙機での使用が可能である。3.5kgと軽量で指示棒の長さが可変で扱い易くなっている。また,ディスプレーも装着されており,その場で測定結果を確認することができる。現在では改良が加えられ,3世代目のFiberScanONEとして販売されている。
  今回紹介するFiberScanFIXはそのオンライ型の濾水測定器である。水分量や濃度のような重要な数値の重要な場所での測定は通常ポータブルタイプで測定するが,バキューム,原料の状態等は常に変化する。このような場合,オンラインでリアルタイムでのモニタリングにより脱水状態を最適化することが可能である。また,そのメリットの例として過剰なバキュームを是正にすることによる省エネや濃度管理により例えば層間の結合や透かし等の品質向上が挙げられる。また,濃度をモニタリングすることで薬品の配合の適正化,紙切れ防止にも寄与する。さらに,フォーミングセクションの出口の水分量は言い換えれば,プレスセクションの入り口の水分量であり,プレスセクションの脱水状態を知る為には欠かせない情報である。その他毎秒1,024ポイントの高サンプリングによるFFT機能も充実している。今日ではフォーッミングセクションのスタンダードなツールとなっている。
(本文50ページ)


光学式計装機器の可能性 ―機能,アプリケーションの考察―

スペクトリス株式会社 BTG事業部  鈴木啓次良,前川  卓彌,渡邉  竜平,石津  義男

  東日本大震災以降製紙会社は数々の困難に直面し,それを乗り越えるために大きな変革を迫られている。特に輸入紙の増大により国内の製紙会社は操業の最適化,コストダウン,高付加価値製品への転向といった課題をクリアすることを余儀なくされている。そんな中,製造ラインにおいて近年その測定精度の高さと低メンテナンス性から光学式計装機器のニーズが高まりつつある。
  実際の製造ラインにおけるその機能,有用性に関して,導入例を元に考察した結果,測定精度やメンテナンス性のみならず,省電力化や操業時の利益改善にもつながることが明らかとなった。
  また,これまでの計装機器は機械式測定によるものが多く,測定対象と物理的な接触を通してパルプの特性を測定するものであったが,その場合プロセスラインの状態(流速,流量,気泡等)の影響が測定値に及ぶのは避けられなかった。光学式計装機器ではそういった影響も無く,そのアプリケーションの広さから生産の高効率化,コストダウン,安定した操業に対する大きな可能性を秘めていると考えている。
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高品質多孔性填料の開発(第1報)
―粒子物性が嵩高性および不透明性に与える基礎検討―

王子ホールディングス株式会社 開発研究所  山本    学
王子ホールディングス株式会社 基盤技術研究所  若狭  浩之
株式会社日本紙パルプ研究所  岡田比斗志

  多孔性填料(沈降性シリカ)は,近年では,その比重の低さを特徴として,紙の嵩高化(軽量化)を目的とした充填剤(填料)としての使用量が一段と増加してきている。多孔性填料の使用には,機械パルプのような褪色の問題もなく現設備で対応できるといったメリットがある。しかし,紙力の低下をもたらすといった問題も残っている。そこで我々は,紙力の低下が小さく,さらなる嵩高性能の付与,かつ不透明性に優れた新規な高品質多孔性填料の開発を試みた。具体的には,珪酸ナトリウムと鉱酸を直接反応させる直接酸分解法を基本原理として,本研究により得られた多孔性填料の粒子物性が紙力,嵩高性および不透明性に与える影響について述べ,本多孔性填料の有用性を明らかにした。
  すなわち,以下に示す知見が得られ,求められる紙質に適合した各種高品質多孔性填料を製造できることが示唆された。
  1)  珪酸ナトリウム濃度,硫酸ナトリウム濃度,温度,中和比率,攪拌速度の反応条件を制御した結果,様々な粒子物性の多孔性填料(沈降性シリカ)が製造できる。
  2)  嵩高性に最適な一次粒子径が存在することがわかった。また,一次粒子径を大きくし,可視光の半波長である200〜400nmに近づくことで,二次凝集粒子の光散乱度が高くなり,紙に含有した際の不透明度も向上する。
  3)  一次粒子径を調整し,二次凝集粒子の細孔表面積を小さくすることにより,紙力剤の多孔性填料への吸着を抑制でき,紙力の低下を防止することができる。
(本文66ページ)