2013年1月  紙パ技協誌
 
第67巻 第1号 和文概要


オプティカルキャリパ計の導入効果

横河電機株式会社 IAプラットフォーム事業本部 P&Wソリューション部 田原 基学

 紙の品質をオンラインで測定・制御するB/M計は,多種類のセンサをラインアップに揃えているが,その中でキャリパセンサは紙匹を上下から検出素子で挟み込む必要があった。そのため,紙匹への穴あけや光沢痕の形成等に至る原因になることが,しばしば問題視されてきた。この問題を解決するため,空気浮上式やレーザー光などを用いた非接触式キャリパ計も開発されたが,いずれも紙の品質管理の上で必要とされる測定精度を満足することができなかった。
 そこで横河電機は共焦点測距技術を応用した光学式キャリパ計(Optical Caliper計,以下OC計)を製品リリースした。本センサは日本で2008年1月にフィールドテストを実施して以来,多くのユーザーに導入されている。現在,OC計を設置した全ての新聞用紙マシンと白板紙マシンにおいてOC計によるキャリパ幅方向制御が投入され,目玉欠点ゼロ,光沢痕ゼロ,カールによる断紙ゼロを実現し,キャリパ幅方向制御が連続で投入されている。
 本報では,キャリパ測定の歴史,OC計の測定原理,そのチューニング手法,および,新聞用紙と白板紙を例にOC計の導入効果について紹介する。
(本文33ページ)


高露点型密閉フードシステム及び付帯設備

株式会社シラトリエンジニアリング 技術部 鳩貝  隆

 製紙産業はあらゆる業種の中でも極めてエネルギー消費量が大きな産業である。
 特にドライヤーパートでの消費エネルギーは生産工程の過半数以上を占めており効率化のメリットを享受しやすいといえる。また同時に,設備の長寿命化対策,メンテナンス性や抄紙室内環境といった作業環境の見直しも進めていく必要がある。そうした背景のもと,抄紙機の高速・大型化が進む中,マシンレイアウトの改造による設備強化もみられるようになっている。
 当社ではこれまで培ってきた研究開発と多数の納入実績から得たノウハウを基に,新技術の開発努力に取り組んできた。今回は高露点型密閉フードシステム及び付帯設備につき紹介をする。
 以下に高露点型密閉フードの設備効果として主なものを挙げる。
 1) 省エネルギー
 ・排気絶対湿度上昇による給排気風量,動力の低減
 ・排気熱効率上昇による回収熱量の増加
 ・ドライヤーパート熱効率上昇によるドライヤー消費蒸気量の低減
 ・機器のコンパクト化によるイニシャルコスト低減
 2) 走行性の改善
 ・フード内気流安定化によるフラッタリング,断紙等の低減
 3) 品質・作業環境の向上
 ・プロファイルの改善
 ・フード放熱減少による抄紙室内環境の改善
(本文39ページ)


「B/M計」の変遷

横河電機株式会社 IAプラットフォーム事業本部 P&Wソリューション部 峯尾 知宏

 B/M計の誕生は1960年代末で,国内では1970年代後半から1980年代にかけて急速に普及が進んだ。B/M計は単なる計測器としてスタートしたが,導入により紙の生産に携わる人々の仕事が大きく変化し「B/M計が抄造を変えた」とまで言われた。現在では紙の製造過程において必要不可欠なシステム製品となっている。
 本報では,B/M計の変遷について普及が進んだ後の最近30年間を中心に紹介するが,それ以前の誕生の経緯,およびこれから将来に向けての考察についても触れてみる。
 ・誕生
 B/M計の起源は,約60年前に登場した固定設置の坪量計と水分計である。これらが誕生したころ,オンラインでの幅方向の品質についてはリールにおける巻取り紙をオペレータが直接「触る」ことで確認していた。その後,水分のばらつきを小さくすることを目的として紙が過乾燥気味に生産されるようになると,静電気により直接手で触れる確認が難しくなり,代わって「打音棒」が使われるようになった。しかし,これらの方法はいずれも熟練度によって計測結果に違いが生じたり,非連続の計測であるため効率的とは言えず,流れ方向と同様に連続的に計測する方法が求められた。このような背景から,坪量計と水分計を幅方向に走査(スキャン)可能なフレームに搭載し往復運動させて計測する現在のB/M計のスタイルが登場した。
 ・そして将来
 測定技術については,透気度や紙力など新たな品質を測定するセンサを望む声もあるが,過去30年の変遷から市場は坪量・水分・紙厚を中心とした基本品質を計測する技術の発展の方を強く期待しているように思われる。脱放射線,完全非接触の紙厚測定など,目指すべき新技術はいくつかある。
 測定センサの発展と比べて,登場から40年近く変化していない方式に「SCAN走査による測定」がある。この方式ではB/M計は走行中の紙を斜めに計測するため,測定結果のばらつきには流れ方向と幅方向のばらつきが混在している。坪量,水分などを正確かつ安価に全幅同時測定できるようになれば,幅方向と流れ方向の変動の分離が容易になり,現在の測定,制御理論を大きく変える可能性を秘めている。
 制御については,さらに多変数化が進むと思われる。たとえば銘柄変更制御は原料替えが伴うと思うように自動化できないことがある。調成まで含めたプロセス情報を用いた制御方式を考える必要である。そのためシステム構成としてはさらにDCSとB/Mの連携が重要になるであろう。
(本文43ページ)


製紙設備における駆動システム技術の変遷

東芝三菱電機産業システム株式会社―TMEIC― 産業第二システム事業部 システム技術第二部
芝田 光博

 製紙工場で使用される電動機駆動システムには,抄紙機,ワインダ,オフマシンコータ等のライン駆動を行うもの,ボイラ補機,マシン補機等の単独駆動を行うものがある。
 これらに適用される電動機の可変速駆動システムは,直流機駆動から交流機駆動へ,アナログ制御からディジタル制御へという流れを経て,より高性能・大容量へと発展してきた。
 要素技術的には,電力用半導体素子,主回路技術,マイクロプロセッサによるディジタル化技術,交流電動機のベクトル制御をはじめとする制御機能,高速データ通信ネットワークによるシステム化等,広範な技術の発展を取り込みながら進化してきた。
 実設備においては20〜30年を超えて稼働している製品もまだ相当数あり,また過去の技術の蓄積の上に現在の技術・製品があることを踏まえると,これまでの技術史を振り返ってみることにも意義があると考えられる。
 本稿では,製紙設備における電動機駆動システム技術の歴史を辿り,できるだけユーザの立場に沿ってキーとなる技術の概要を解説するとともに,最新の駆動システムを紹介する。
(本文48ページ)


紀州工場:2011年9月台風12号水害からの復興

北越紀州製紙株式会社 洋紙事業本部 紀州工場 工務部 施設課 瀬川 智哉

 2011年9月3日,高知県東部に上陸した台風12号が紀伊半島において驚異的な雨量をもたらし,熊野川が上流にあるダムの放流の影響もありこれ迄にない水位を記録し,紀州工場から直線で約6km上流にある工業用水取水設備及び工場内KP,ボイラー周りの電気室及び機器が浸水した。これにより工場が16日間に渡って操業が不能となった。
 紀州工場における浸水被害は,工場内及び工業用水取水場共に電気設備の被害が大きく,また,工業用水取水口においては熊野川上流の崩落,土砂崩れによる岩及び土砂の流入でほぼ閉塞状態となり,浚渫による復旧に時間を要した。
 しかし,全社を挙げての支援体制を被害直後に整え,応援部隊派遣を直ぐに決定するという迅速な対応をとり,また,メーカー他の支援協力があり早期の操業再開を実現した。
 更に,今回と同規模の水害発生による工場操業への影響を最小限に抑える対策も復旧直後より検討し,第一期対策の実施を決定した。
 本稿では,今回の浸水被害の状況及びその復興作業,そして浸水対策の取り組みについて報告する。
(本文59ページ)


日本製紙グループの電力供給に対する取り組み

日本製紙グループ本社 技術研究開発本部エネルギー事業部 吉村 秀治

 日本製紙グループは生産量の減少に伴い慢性的に余剰電力を抱えていたが,震災以後の電力不足を背景に電力会社へ余剰電力を供給・販売するようになった。そこで余剰電力の有効活用を目的に昨年12月「エネルギー事業推進室」を立ち上げ,あらゆる角度から電力販売の可能性を検討している。今年5月には日本製紙が特定規模電気事業者(PPS)に登録し,日本卸電力取引所(JEPX)にも加入してエネルギー事業に参入した。
 今夏の電力不足では自家発余剰電力の活用策として出された「みなし節電」スキームを全国で始めて採用した。電力会社・監督官庁へ実現性を相談したが,前例が無いため節電目標が公表されるまで具体的交渉ができなかった。公表後は短期間に「みなし節電達成の判断」や「送電不足時の対応」などを電力会社と協議し,日本製紙八代工場から関西および四国電力管内のグループ15事業所へ3,000kWを送電した。
 日本製紙グループは発電所の操業ノウハウやインフラの強みを活かし,余剰電力の配分検討,新規電源の開発・発掘,新規木質エネルギーの開発などの課題をクリアしてエネルギー事業を収益の柱に育てていく。
(本文64ページ)


苫小牧工場水力発電所の概要

王子製紙株式会社 苫小牧工場 動力部 張  魯寧

 王子製紙苫小牧工場は北海道の千歳市に5箇所,恵庭市に2箇所,ニセコ町に2箇所計9箇所の水力発電所を保有している。この内,最も古い千歳第1発電所は支笏湖を水源として明治43年苫小牧工場の動力源として運転開始された。その後,工場の拡張に伴い大正5年に第2発電所,大正7年に第3発電所,大正9年に第4発電所,昭和16年に第5発電所が順次下流に建設された。これらの水力発電所群は平成19年に土木学会選奨土木遺産と経済産業省の近代化産業遺産群として認定されている。
 先人が残した遺産をきめ細かくメンテナンスすることにより,いまなお苫小牧工場のみならず支笏湖畔地域や他社への電力安定供給の一翼を担っているが,設備稼動後70年〜100年が経過し老朽化が進んでいる。また,低炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギー特別措置法が実施されたことによりCO2フリーの電力への関心も高まっている。
 当社はこのような社会状況に鑑み,発電事業の一層の強化を図り,電力の安定供給に寄与するため,水力発電所設備の制御駆動装置・入口弁・ガイドベーン(可動羽)・ランナー(羽根車)の更新によるリフレッシュ工事を順次実施する。
 リフレッシュ工事により,水車効率の回復や保守省力化を図ることが可能で,今後の水力発電所の活用に大いに貢献できると期待される。
 当社は地球温暖化問題に鑑み,低炭素社会への貢献を目的として,今後もクリーンエネルギーの活用に取り組んでいく。
(本文68ページ)


バイオマス焼却設備の概要と操業経験

レンゴー株式会社 利根川事業所 石村 大輔

 今日,CO2削減と省エネルギー,環境保全への関心が高まっている。このような中,レンゴーグループでは,地球環境の保全に配慮した経営を実践することが,企業の持続的発展に不可欠であるとの認識に立ち,グループをあげて環境保全活動に継続的に取り組んでいる。
 レンゴー利根川事業所では,バイオマス焼却設備(ボイラ)を導入した。これまでの既設ロータリーキルン焼却設備では,産業廃棄物燃焼による廃熱回収は行っておらず,エネルギーが有効利用されていなかった。バイオマス焼却設備(ボイラ)では,蒸気でエネルギー回収できるようになった。これにより自家発電用ボイラのLNG燃料を削減でき,CO2の排出量を大きく削減できた。
 また,ロータリーキルンでは製紙汚泥ならびに排水汚泥を処理していたが,事業所内で発生する全量を処理しきれず,弊社八潮工場(埼玉県)や処理業者へ処理を委託していた。しかしバイオマス焼却設備(ボイラ)導入後は,事業所で発生する産業廃棄物(可燃物)の全量焼却処理をできるようになった。
 この結果,産業廃棄物量は,飛灰・焼却灰の排出量については増加したものの,廃棄物全体量は削減できた。
 バイオマス焼却設備(ボイラ)の導入から約半年程経過し,現在順調に稼働している。今後はさらに安定運転に励んでいく所存である。
(本文73ページ)


木質バイオマスからのバイオエタノール製造技術開発

王子ホールディングス株式会社 研究開発本部 バイオエタノール研究室 古城  敦

 ブラジルやアメリカでは,サトウキビやトウモロコシなどから製造したバイオエタノールを,ガソリンと混合し,自動車燃料として使用しているが,バイオエタノールの増産により,食料と競合するために食料価格が高騰する問題が指摘されている。
 当社では食料と競合せず,大規模安定供給が可能なバイオマスとして,早生樹や林地残材などの木質バイオマスを原料とし,化学機械パルプ化技術を応用したメカノケミカルパルピング前処理を用いることにより,高いパルプ収率にも関わらず,得られたパルプの酵素による糖化が可能であることを見いだした。また,高温耐性菌を利用し,酵素による糖化と発酵を同時に行う並行糖化法により,反応時間を短縮や,酵素回収技術などを組み合わせたバイオエタノール生産技術開発も行っている。
 本研究開発は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より,2009年度から委託されている「セルロース系エタノール革新的生産システム開発」の一環として研究開発を行っており,本稿では下記の項目について報告する。
 1) エタノール生産適性早生樹の大量栽培技術開発
 2) パルプ製造技術を応用した低エネルギー負荷の前処理技術(メカノケミカルパルピング前処理)
 3) 高温耐性菌を利用した連続同時並行糖化発酵
 4) 酵素回収・再利用による酵素コスト削減
(本文77ページ)


メタン発酵処理技術の開発
―澱粉添加による汚泥微細化の対策検討―

日本製紙株式会社 総合研究所 小野寺勇雄

 近年,多様な視点から環境保全が論じられるようになり,各産業界において省エネルギー化や高効率化,省資源化が重要な課題となっている。そのような中で当社はクラフト蒸解(KP)エバドレン水(黒液濃縮時の蒸留液)のメタン発酵処理に注目し,経済産業省のエネルギー使用合理化技術開発補助金を得て実機プラントの導入に至っている。これまでの実機運転から得た知見によると,KPエバドレン水のメタン発酵処理における課題は,グラニュール汚泥(メタン菌の凝集体,以下は「汚泥」とする)の流出防止にあることが分かってきた。これはメタン発酵処理のリアクターでは排水が上向流で流れており,汚泥をリアクター内に維持することが安定処理には不可欠なためである。
 そこで今回,メタノールを主成分とするKPエバドレン水を処理した場合(北海道工場勇払事業所)の汚泥性状の把握を目的に,安定した処理が可能とされている食品工場(酢酸系排水を処理)のものとの比較を行った。
 その結果,勇払事業所の汚泥中には糸状の酢酸分解菌(Methanosaeta)が比較的少なく,球状のメタノール分解菌(Methanosarsina)が多かった。このことから,メタノール排水への馴化に伴う菌相の変化によって汚泥の凝集性が低下し,微細化が助長されていると予想された。さらに汚泥の調査結果に基づいて汚泥微細化の対策検討を行い,澱粉廃液の添加処理が有効であることを見出した。ラボ検討および実機テストを通して,目的通りに糸状の酢酸分解菌が増加すること,それに伴って汚泥が大きくなり沈降性も良好になることが明らかとなった。
 本結果により,KPエバドレン水のようなメタノール系排水の安定処理が可能になると考えられ,排水中の有機分をメタンとしてエネルギー回収できるメタン発酵処理技術の適用範囲を広げることができる。
(本文82ページ)