2012年1月 紙パ技協誌
 
第66巻 第1号 和文概要


ファインバー
―最新型リファイニングプレートの紹介―

相川鉄工株式会社 営業技術本部 川井 利克

  昨今の電力供給事情の悪化により,日本の産業界は省エネルギーへの取組みを強化せざるを得ない環境にあり,省エネルギーの進んだ製紙業界においても,更なる取り組みが必要となっている。このような状況の中,製紙工程の中でも,とりわけ大きな動力を消費する叩解工程は,これまでも日々改善を積み重ねられてきたが,今また注目しなければならない工程となった。
  また古来より紙製品の品質を左右する重要な工程である叩解技術は,製紙原料,抄紙技術とともに変遷してきたが,主原料であるバージンパルプや古紙原料の短繊維化が進行している今日においては,叩解処理技術は新たなる転換期を迎えていると考える。
  本稿では,この様な背景に合致した低動力で製品品質のアップグレードを可能とする弊社の最新型リファイナー用刃物である“Finebar”に焦点を当てる。
  この“Finebar”は,刃幅,溝幅を究極まで狭小化すること可能な刃物であり,その特徴を生かして得られる様々な優れた叩解性能を紹介するとともに,“Finebar”の技術を更に展開した新しい叩解技術への弊社の取り組みを紹介,報告するものである。
  紙面の関係上,導入メリット,ミニセグメント等,一部の内容の報告に留まったが,Finebarは,国の内外を問わずL,N混合叩解や家庭紙用叩解などあらゆる叩解工程で,極めて高い叩解性能が実証されており,叩解工程の省コストに貢献できる優れた技術であるといえる。
(本文31ページ)


八戸工場
―震災に学ぶこと―

三菱製紙株式会社 技術環境部 熊谷 康文
八戸工業大学大学院教授 佐々木幹夫

  2011年3月11日14時46分に三陸沖を震源とする深さ約24km,マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生。三菱製紙八戸工場では「震度5強」を記録,発生とほぼ同時に東北電力66kV送電線が停電し,県工業用水も断水した。14時49分に太平洋沿岸に津波警報・津波注意報が発令され,15時頃に従業員の避難を開始した。震源地から約330km離れている八戸港へは,15時30分ごろに津波の第一波が到達し,16時40分過ぎに最大規模の大津波が来襲した。
  防波堤のある八戸港内の津波の高さは6.2mであったが,湾外南東部の階上町では最大10.73mの高さを記録しており,八戸港の北に位置する八戸工場では8.4mの高さが測定された。
  現在も復興途上にあるが,今までに行なってきた作業を基に,
    1.地震・津波発生時の状況
    2.八戸工場の被害状況
    3.復興に向けた取り組み
    4.設備復旧の対応(土木建築関係,機械関係,パワープラント関係,電装関係,早期復旧のポイント)
    5.設備の復旧状況
等について報告する。
(本文37ページ)


石巻工場
―災害に強い工場を目指して―

日本製紙株式会社災害復興対策本部 浅野 康雄

  東日本大震災により,石巻工場は大きな被害を受けた。速やかに復旧,復興を進めていくため,各種組織を設置し対応を進めた。
@ 救援対策本部
  従業員の生活基盤を確保するため,総務・人事本部が中心となり「救援対策本部」を本社に設置し,被災地が必要とする物資の確認とその調達,補給を進めた。
A 災害復興対策本部
  被災工場に設置された「災害対策本部」と共に本社にも「災害復興対策本部」を設置し,本社と工場が一体となって復興を進めた。自宅が被災した従業員の住居確保やライフラインの確保等,生活基盤の確保を重点に進め,その後に設備の復旧,復興を進めた。
B 復興支援チーム
  工場内に流入した大量の瓦礫を速やかに撤去するため,被災工場以外の工場に「復興支援チーム」を編成し,重機と重機オペレーターを派遣して工場内の瓦礫撤去を進めた。
C 電気・計装設備の復旧
  抄紙機等がある工場の中心部には2〜3mの津波が押し寄せ,1階にある設備が海水に浸かった。DCS及び各種制御機器類については高圧洗浄も活用し,機器類の約50%を復旧させた。
D 地域貢献
  石巻市の水産業,造船業などの主要産業が地震,津波により甚大な被害を受け,発生した瓦礫は830万tを超えた。石巻工場ではこれらの瓦礫のうち,木質系瓦礫を燃料として年間約12万トンを受け入れ,1号バイオマスボイラーで焼却処理する取組みを開始した。発電した電力の一部を東北電力に最大4万キロワット(一般家庭約10万世帯相当)供給し,地域に還元する取り組みを開始した。
E 自然災害に強い工場を目指して
  今回の災害を教訓にして,企業の社会的使命をどのように果たすのか,従業員の生命をどのように守るのか,製品やサービスの供給を如何に継続していくか,危機に直面したときの企業経営のあり方を考え直す機会となった。『復興』という一つの目標に従業員が一致団結し,震災半年後で抄紙機を稼動することができた。本報告が,今後の業界各社の防災対策検討に,少しでも参考にして頂ければ幸いである。
(本文42ページ)


ECFの操業経験
―過硫酸漂白の実機への適用―

王子製紙株式会社 富岡工場 小川 泰弘

  パルプ漂白方法において,ECF漂白転換後,完成パルプの褪色が課題とされてきた。我々はこの褪色対策として,パルプ中に残留するヘキセンウロン酸(HexA)の除去を目的に,漂白シーケンス(a―Z/D―Eop―D)のa段にモノ過硫酸(MPS)の添加を検討した。
  MPS漂白の実機導入に向けて,MPSのオンサイト製造が問題となった。これまでにMPSオンサイト製造例は報告されていなかったが,三菱ガス化学鰍ニの共同研究の末,硫酸と過酸化水素を高濃度で使用し,実験室レベルと同等のMPS収率を実機レベルで得ることが可能となった。
  MPS処理段(Px段)の実機導入開始以降は,HexA量の低減が確認され,パルプの褪色程度を示す過マンガン酸カリウム価(K価)も低下させることが出来た。また,従来の漂白シーケンスで漂白性が発現されなかったa段に対して,MPSを添加したPx段では白色度の向上が見受けられた。従って,漂白工程で使用される二酸化塩素の削減を達成することができ,漂白コスト削減に繋がった。更に,MPS漂白により製造された完成パルプの物性は従来法の物性とほぼ同等であることが判明し,抄紙工程に与えると考えられる要因は観察されなかった。
  これらの結果,当工場ではMPS製造装置及びパルプの褪色についての大きなトラブルも無く,安定した操業を継続している。
(本文48ページ)


ブレード式キャンバス洗浄装置の操業経験

王子板紙株式会社 富士工場 第二工場 廣田 泰秀

  王子板紙兜x士工場10マシンは中芯原紙を日産560t/日で生産している。富士工場で使用する原料は段ボール古紙を主体としており,古紙中に含まれるピッチ,粘着物が抄紙工程において様々なトラブルを引き起こす原因となっている。特にドライヤーパートにおいてキャンバス汚れによるトラブルが顕著に現れることから,これまでも種々の対策を実施してきた。
  最近では1群シングルキャンバスに超高圧クリーナーを設置し良好な効果を発揮している。しかし,この種のクリーナーの洗浄効果を維持するためには装置のメンテナンスを適切に行うことが重要であり,もし操業中に不具合が生じた場合は復旧までに多大なロスが発生するため,新たにクリーナー増設を検討するにあたっては現状より人手の掛からない設備の導入が望まれた。
  そこで,昨年7月に2群下段キャンバスにブレード式キャンバス洗浄装置(AOKIクリーナー)の導入を図った。
  ブレード式キャンバス洗浄装置(AOKIクリーナー)は先端に特殊な加工を施した3列のブレードがドライヤーキャンバス全幅に配列されており,精度の高い据付調整とブレードの管理によってフォイル効果を生み出し,キャンバス表面に付着した汚れを効果的に掻き落すことでキャンバスをクリーンに保つことができる。運転開始当初から設備故障などのトラブルは全く発生しておらず現在も順調に稼動しており,キャンバス汚れに起因する欠点の減少が図られた結果,操業安定と品質の向上および生産性の向上が図られた。
(本文52ページ)


7号抄紙機No.2プレス線圧強化改造による操業経験

レンゴー株式会社 八潮工場 製紙部 製紙課 硲  聖司

  近年,環境に対する企業活動の重要性が求められており,我が社でも環境への取組みを最重要課題として「エコチャレンジ020」という環境目標を策定し,2020年度までに1990年度比CO2を32%削減することを目標に,継続的な活動を推進している。
  このような背景の中,八潮工場の中芯原紙マシンである7号抄紙機では,No.2プレス線圧を1,000kN/mから1,200kN/mに強化することで搾水能力の向上を図り,生産性の向上および省蒸気を目的に,No.2プレスの設備改造を実施した。
  改造直後からおおむね順調な操業ができており,物性についても中芯としてしての強度上の問題もなく抄造できている。
  適切な要具管理・選定や付帯設備能力を持続させるための方法を見直し,管理を行ってきたことが大きな要因であったことも事実である。
  本稿では,改造工事の概要および改造後の操業経験について報告する。
(本文56ページ)


環境に配慮した硼素化合物を使用しない段ボール用接着剤

王子コーンスターチ株式会社 金井 隆弘

  段ボール用接着剤の原材料の一つに硼素化合物(硼砂)が使用されている。しかし,硼素化合物は人体,環境に影響を及ぼす恐れがあり,ヨーロッパではREACH法の高懸念物質(SVHC)の候補に挙がっている。
  この硼素化合物(硼砂)の代替物質に鉱物由来のセピオライトを見出した。このセピオライトは,段ボール用接着剤での硼砂の役割である,保水性,粘度発現の機能を有している。我々は,このセピオライトの機能を活用し,硼砂を使用しない新しい段ボール用接着剤を開発した。この硼砂を使用しない無硼砂接着剤システムは,セピオライトの性能を十分に機能させる特殊な加工澱粉と混合して調製している専用澱粉を使用して得られ,特別な装置を必要とせず既存の設備で製糊できる段ボール用接着剤である。
  仕上がり物性は,従来の有硼砂接着剤と変わらぬ物性を得ることが,実機試験結果から確認できている。また,貼合実機試験でも通常と変わらぬ貼合速度で接着不良などの操業トラブルもなく,貼合できている。貼合したシートの接着強度等の品質も従来と変わらぬ品質である。この無硼砂接着剤は,人体に安全であることは勿論であり,生産の際に排出される用水による環境負荷が軽減できる,環境に配慮した段ボール用接着剤である。
(本文59ページ)


循環流動層ボイラーでのボトムアッシュリサイクル

日本大昭和板紙株式会社 秋田工場 工務部動力課 樋口 紘平

  日本大昭和板紙株式会社秋田工場は,平成20年に石炭及び木屑を燃料とする新エネルギーボイラーを導入して,重油ボイラーを停止・予備缶とした。
  重油から石炭に燃料転換することでエネルギーコストの削減と併せて木屑燃料を活用することによりCO2増加の抑制を行ってきた。しかしながら,燃料の燃焼によって発生する灰の処分費用及び循環流動層ボイラー特有の流動砂補充費用がコスト増加の要因となっている。
  そこで更なるコスト削減の為,平成22年8月に導入したボトムアッシュリサイクル設備の概要と操業経験について報告する。操業ポイントは以下の通りである。
  1) 問題点:炉底温度の上昇原因
    ・ボトムアッシュの再循環繰り返しにより,循環材の粒度が粗く(大きく)なり,炉内での流動不良を起こし,ボイラー水への熱伝導度が悪化した。
    ・冬期に入り,石炭使用量が増加した。
  2) 対 策:
    ・ボトムアッシュの抜出し量を増やし,循環材の炉内滞留時間を短縮する。
    ・補給砂の粒径を小さくする。
(本文63ページ)


高アントシアニン茶「サンルージュ」の苗生産技術の開発

日本製紙株式会社 研究開発本部 アグリ・バイオ研究所 清水 圭一

  当社グループでは,持続可能な原料確保を目的に「Tree Farm構想」を掲げ,1990年代初頭より積極的な海外植林事業を展開している。
  また,同時期に植林研究部門を開設し,精英樹を増やすための挿し木の発根・育苗技術や植物の種類ごとに最適化した苗の生産・管理方法など,植物バイオテクノロジーと植林研究に関するノウハウを蓄積させてきた。豪州などで植栽されている製紙原料用の主要樹種であるユーカリ・グロビュラスは従来法では事業規模での大量生産が困難であったが,組織培養法と独自の挿し木技術を開発することで,グロビュラス・クローン苗の生産技術確立に至った。この技術の発根工程で光合成を利用した光独立栄養培養法を利用している。
  これら技術の蓄積をもとに,光独立栄養培養法を用いた独自の挿し木方法をビジネスモデルとして活用するため鞄本製紙グループ本社では,2006年にアグリ事業推進室を設立した。
  現在,チャ苗を主力としたサクラ,観賞用ユーカリ,サツマイモなどの生産,販売活動を行っている。最近,当社グループでは(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所と共に抗疲労作用があるとされるアントシアニンを高含有する新たなチャ品種「サンルージュ」を開発した。
  通常の挿し木増殖が困難であった本品種において,上記技術を適用することで,新しいチャ品種の普及に不可欠であった大量増殖を可能にした。現在,この苗木の安定供給体制を整え,商業栽培面積の拡大を推進している。
  本報では,「サンルージュ」苗の生産技術開発に関して報告する。
(本文67ページ)


勝田1M/Cにおける防虫対策の取り組み

北越紀州製紙株式会社 白板紙事業本部 関東工場 勝田工務部 抄造課 松村 洋一

  製品への虫の混入はユーザークレームに直結し,企業としての信用を失墜しかねない重要な課題と位置付けられている。
  勝田1M/Cでは,建屋内に設置した捕虫器の虫カウント数で虫混入の危険度を傾向管理しながら,薬剤散布や抄紙機ライン上照明をUVカットタイプへ切り替えるなどの方法で防虫対策を継続してきた。また,捕虫器に捕獲される虫の大半が外部侵入種であったことから,スチールシャッターへの防虫ブラシ取付け,建屋出入口の2重ドア化といった虫の侵入経路を塞ぐ対策を行った。
  さらに,一般に知られるように,外気導入量を増やし建屋内部の陰圧を低減することが防虫対策として有効な手段になるため,平成22年11月より建屋陰圧低減工事を進めてきた。はじめに,ドライヤー給気ファンの吸気源を室内空気から外気に変更した。その後,建屋陽圧ファン設置工事を開始し,平成23年4月までに第1期工事として10ユニットの設置が完了している。
  以上の工事後,建屋内部の陰圧低減が認められ,虫カウント数についても大きく減少する効果が得られた。これらの取り組みについて報告する。
(本文72ページ)