2012年5月 紙パ技協誌

第66巻  第5号  和文概要


セルウッド社製グルッベンスパルパー導入による省エネ効果
―既設パルパーローター部の改造―

伊藤忠マシンテクノス株式会社 井上 大輔

  抄造ラインに数箇所設置されている既設パルパーのローター部改造により,30−50%のエネルギー削減を実現できたとしたら,高い費用対効果を見込めるのではないだろうか。
  今回ご紹介するCellwood社グルッベンスパルパーは,そうした期待に応えられるパルパーである。50年の歴史の元に完成された高機能パルパーであり,全世界で2,500台以上の販売実績がある。
  そういったプロジェクトにおいて,Cellwood社のローターによる既設パルパー改造を行った場合,従来のパルパー比較して約30−50%のエネルギー削減を見込める。
  効率的にパルプの離解を行う上で重要な事は,高濃度下において流動性を確保し,パルプ内に大きな摩擦を発生させる事である。Cellwood社のローターを取り付ければ,離解槽内を撹拌する回流をローターが生み出すことができ,高濃度で原料の処理を行うことができる。
  本稿では,Cellwood社グルッベンスパルパーのローターを用いた省エネ効果について紹介する。
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DDR型リファイナーの省エネルギー
―スプライン技術による既設リファイナーの改造―

川之江造機株式会社  営業部  矢野  順一

  DDR型リファイナーのスプライン化改造による省エネルギーについて,改造の基本原理を説明した後,対象機種の例示,改造内容の紹介を経て実機導入結果について紹介する。
  実機導入結果の紹介では,北米での導入結果2例を使って紹介する。製品品質の向上から省エネルギーにいたる具体的な実例として典型的な内容となっている。
  リファイナーにおける消費動力は,製紙機械設備の中でも特別に大きく,それだけに省エネルギーによる効果も大きなものになる。
  もう少し具体的に言えば,既設のDDR型リファイナーをスプライン化改造することで,リファイナー効率を向上し,さらには繊維の特性も向上させることができる。
  リファイナー効率の向上は,省エネルギーに直結するのみならず,リファイナープレートの偏摩耗を防止して,プレート寿命を延ばす。繊維特性が向上することも,リファイナー動力の削減,すなわち省エネルギーに直結するメリットである。
  改造前と較べて,フリーネスを下げずに所定の強度を達成できることは,良好な脱水性,乾燥の向上など抄紙工程におけるメリットも十分期待できる。
  これらの効果は,いずれもリファイナーのスプライン改造により,リファイナー回転ローター前後での圧力均衡が維持される賜である。
  電力コストのアップが予測される今日,リファイナーの省エネルギーは最も効果の期待できる,急務の課題であると考える。
  王子製紙グループでは,『節電対策はわが国の復興に向けた国民の行動規範』と捉え,会社間の垣根を越えて議論を重ね,小口需要家を含む全需要家について,具体的な電力需給対策を取りまとめた。
  海外では既に,GL&V社により数百台の納入実績があり,ここに国内実績が加わったことで,今後の日本国内での普及発展が大いに期待されるところである。
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歩留剤・澱粉および填料の抄紙機直前のフラッシュミキシングによる生産コストの削減と環境負荷の低減

株式会社マツボー  産業機械二部  製紙機械課  山ア  光洋
Wetend Technologies Ltd.  ヨウニ  マトゥラ

  過去数年間にわたり,填料および様々な薬品の添加場所を高濃度原料エリアおよびウェットエンドプロセスの初期段階からヘッドボックス供給エリアのそばに移すコンセプトを継続的に研究および開発してきた。
  トランプジェット®フラッシュミキシングプロセスにより,歩留剤やサイズ剤などの抄紙用添加薬品をヘッドボックスのごく近くで原料に注入することができるようになる。また,この多用途の先進的なミキシング技術により,填料を歩留剤と同時にかつ同じ場所でヘッドボックス供給原料にミキシングすることもできる。結果として,プロセスがシンプルになり,反応時間は非常に短くなり,填料のリテンションが上がり,紙品質が向上する。トランプジェット®フラッシュミキシングプロセスと組み合わせると,添加薬品消費量の削減,プロセス内での添加薬品の循環量削減による効率およびプロセス清浄度の向上,非常に早い反応時間,従来型のミキシングに使用されている清水もしくはフィルター水の不使用とエネルギー消費量の削減を目標とすることができる。つまり目標は,機械的手段による化学とプロセスの改善である。
  澱粉のフラッシュミキシングもしくは澱粉と填料の同時フラッシュミキシングが開発プロジェクトの最新成果である。これらは,ヘッドボックス供給ポンプ直前および歩留剤ミキシングステージの直前で行なわれる。このプロセスは継続運転中であり,次の結果および削減を実現できている:でんぷん消費量の20%削減,歩留剤消費量の30%〜40%削減,品質・地合・脱水性・紙力特性は向上もしくは変化なし,正味のトータル効率が向上。
   本稿にて,ミキシングのABCコンセプト―最新の澱粉と填料の添加システムを歩留剤およびサイズ剤のミキシングコンセプトと組み合わせる,これにより,全ウェットエンドプロセスの更なる効率化,簡素化,管理の簡単化の実現について報告させていただく。
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高機能な複合型カチオンポリマーの製紙用薬剤への展開

ハイモ株式会社 湘南研究センター 村田奈穂,境 健自,古塩弘行,三井翔平,吉岡芳美

  古紙利用率の増加に伴う原料品質の悪化,中性抄紙化,抄紙系内のクローズド化等,抄紙環境が厳しさを増す中で,古紙由来のピッチ等による欠点やマシン汚れへの対策は重要である。
  ピッチトラブルの対策として,カチオン系凝結剤を用いてマイクロピッチ(ピッチ発生の原因物質となるミクロン単位の物質)を粗大化させることなくパルプに定着させ,抄紙系外に排出させる方法は有効である。
  今回,ピッチコントロールの更なる効果向上と多種多様な条件への対応を目指して,3種の高機能な複合型カチオンポリマー,ハイモロックFR−701H,FR−801,MT−910を開発した。
  FR−701Hは特殊ディスパージョンであり,高いカチオン密度と適度な高分子量成分を含んだ複合成分を有している。FR−801も特殊ディスパージョンであり,FR−701Hとは異なった組成で高いカチオン密度と適度な高分子量成分を実現している。MT−910はカチオン密度をやや低く設計した上で疎水性を導入したエマルジョンであり,適度な高分子量に調節している。
  このようにそれぞれ異なる特徴を付与させたことによって,これらのカチオンポリマーは各種紙料で従来の凝結剤よりも高いピッチコントロール効果を発揮した。さらに,濾水性,搾水性やサイズ剤の定着についても効果の向上が確認され,製紙用薬剤として多機能な性能が期待できる。
  本稿では,これらカチオンポリマーの特徴,作用機構,それぞれの効果が発揮された試験結果について,従来の画像解析技術を応用した紙表面ピッチの評価結果を含めて報告する。
(本文15ページ)


新規PAM系内添紙力剤

星光PMC株式会社 製紙用薬品本部 鈴木  洋,茨木 英夫

  乾燥紙力剤は紙・板紙の紙力を向上させる効果を有するのみならず,濾水性や歩留りも向上させる等の副次的な効果を持っており,製紙産業にとっては欠くことのできない機能性薬品である。特に,ポリアクリルアミド系乾燥紙力剤(以下PAM)は紙力向上効果に最も優れ,取り扱いが容易である。また,抄物や抄紙条件に応じてPAM組成を最適化できるなどの利点により,多種多様な紙種で使用されている。
  近年,製紙会社においては生産性の向上やコストダウン,環境負荷の低減や省資源化のため,古紙使用率の増大,抄紙機の高速化,抄紙系のクローズド化,紙・板紙の軽量化や安価な填料の高配合等を推し進めている。このような状況下,従来のPAMでは効果が十分発揮されないケースが増えてきている。
  そこで,近年の厳しい抄紙環境においても優れた紙力向上効果を発現するための手法として,
  1) PAM構造の高分岐化
  2) 新規成分の導入
について検討を行った。
  の結果,PAM構造を高分岐構造とすることにより,定着,紙力,濾水性,歩留りの向上が確認できた。また,抄紙系内に存在する無機塩の影響も受け難いことが分かった。さらに,新規定着成分を導入することにより,特にPAMの定着に寄与する硫酸バンドを使用しない条件において,PAMの定着,紙力を従来PAMよりも向上させることが可能となった。
  本報告において,この新規PAM系内添紙力剤について紹介する。
(本文21ページ)


ダブル塗工板紙における顔料の選択

イメリス社 クリス ナットビーム,トニー ハイロンズ
株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン 楢原 辰哉,川満 克仁

  今日,多段塗工板紙の塗料配合において炭酸カルシウムの使用割合は増加の傾向にある。それに伴い,塗工表面のマクロな粗さ(マクロラフネス)を制御することがますます重要となる。このことは,塗料配合中に残るカオリン部分による被覆性への要求を強める。
  結果として,我々はダブル塗工において,上塗りよりもむしろ下塗りにおいてカオリンの機能を使用することに意味があると考える。つまり,下塗りにおいて粗粒タイプの炭酸カルシウムにカオリンを配合することにより品質が向上し,コストをコントロールするための上塗りの配合の自由度が増すこととなる。
  本報告では,古紙配合の白板紙を原紙とし,パイロットコーターおよび実験室での評価を通じて,下塗りへの少量のカオリン配合が被覆性と均一性を改善できる方法を示す。光学的均一性,印刷適性,ニス引き性を含む板紙の品質に対する下塗り配合の影響を調査した。また上塗りにおけるラテックスの添加量が与える影響についても紹介する。
(本文25ページ)


韓国向け最新アート紙設備のスタートアップ

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 塗工・仕上機械技術部 立川 泰

  VOITH Paperが2009年7月に受注した,MOORIM P&P Co., Ltd.(以下MPP)向け韓国最大級のアート紙製造用設備(MPP DH PM1)が,2011年3月に大韓民国において稼動を開始した。
  韓国の旧Donhae Pulpが2008年にMoorim Paperのグループ傘下に加わった後,2010年に会社名をMOORIM P&Pと変更したのが現在のMPPである。
  従来韓国のアート紙製造設備は購入パルプを原料としており,パルプ設備と抄紙・塗工・仕上設備を統合した一貫工場は本MPP蔚山工場が韓国内で初の設備である。
  本設備はアート紙設備としては韓国最大・世界最新鋭の9mマシンであり,また,韓国初のパルプ・抄紙・塗工・仕上一貫工場でもあることから本設備稼動のニュースは,他の韓国製紙会社をはじめとし,アジアの製紙会社の注目を集めている。
  本報では,このPM1の設備およびプロジェクト開始から据付,スタートアップまでの概要に関して,コータを中心として紹介する。
(本文30ページ)


発電用ボイラへの溶射適用例

トーカロ株式会社 上野 有史,延東 直毅

  溶射とは被覆したい溶射材料を燃料ガス,プラズマ,アークなどの熱源により溶融,軟化させ加工対象物(主に金属)表面に吹き付けて成膜させる技術である。吹き付けられた溶融粒子は瞬時に冷却されて固化し,これらの微細な粒子が積層することにより皮膜が形成される。
  この溶射技術は耐摩耗性,電気絶縁性,耐食性などの機能を得るための金属表面改質技術の一つとして,鉄鋼,産業機械,エネルギー,液晶・半導体製造などの各種産業界で広く適用されている。
  また,溶射技術は他の表面処理技術と比較して成膜スピードが速いこと,基材への熱影響が少ないこと,システムがコンパクトで可搬性に優れることから,大型機器の現地補修にも適している。
  各種ボイラが抱えている問題点の例を以下に示す。
  1) 貫流式ボイラ(石炭燃料):原料由来のS成分による硫化腐食やフラッシュアイにより摩耗する。等
  1) 貫流式ボイラ(石炭燃料):原料由来のS成分による硫化腐食やフラッシュアイにより摩耗する。等
  3) 内部循環流動床ボイラ:低速ガス流速なため外部循環式と比較すると摩耗環境は軽
       減されるが,燃料選択肢が広いこともあり,一般に腐食環境は厳しくなる。
  弊社は,発電用ボイラや石油精製設備等の現地施工実績を多数有しており,本稿では循環流動層ボイラ(CFBC)を中心として発電ボイラへの溶射適用例について紹介する。
(本文35ページ)


スクリュ式小型蒸気発電機の中圧蒸気への応用
―1.9MPaG中圧蒸気対応160kWスクリュ式小型蒸気発電機―

神鋼商事株式会社 機械・情報本部 エネルギーシステム部 森山 浩三

  神鋼グループの当社は,2006年から叶_戸製鋼所が開発に成功した世界初の高効率スクリュ式蒸気発電機スチームスター(1MPaG蒸気対応,MSEG100L/最大出力100kW)の販売を開始,その後2008年には新たに出力アップしたMSEG132L(最大出力132kW),MSEG160L(最大出力160kW)をそれぞれ開発,製品ラインナップを図ってきた。
  以来,省エネルギー効果の大きいこの製品は様々な産業分野に導入され好評を博してきたが,この度1.9MPaG中圧蒸気対応モデルのスチームスターMSEG160M(最大出力160kW)を開発,2011年7月より販売を開始した。
  この製品は現行低圧モデルが持つ,様々な優れた特長をそのままに最大蒸気圧力1.9MPaGに対応可能なスクリュエキスパンダを新規に開発しユニット化したもので,製鉄業,製紙業,化学工業,廃棄物処理業等,比較的蒸気圧力の高いあらゆる分野に適用可能なスクリュ式小型蒸気発電ユニットとしている。本報では,その製品の概要を中心に報告する。
(本文38ページ)


LED照明に用いられる異方性拡散シート(ナノバックリングシート)の開発

王子製紙株式会社 新事業・新製品開発センター 西郡 大介

  2011.3.11の東日本大震災以降,節電意識の高まりもあり,従来の白熱灯や蛍光灯と比較して省電力で有利である発光ダイオード(以下,LED)素子を使用したLED照明への置き換えが急速に進みつつある。また,LED光源から発せられる光は紫外線波長域を殆ど含まないため,虫が集まりにくいという特徴がある。
  照明用途として使用するには,LED素子は点光源であるため,一般的には拡散粒子を用いた拡散法(以下,一般拡散法)にて,点光源を面状や線状光源に変換するが,この拡散方式では照度が低下するという問題がある。
  王子製紙は,一般拡散法よりも照度を低下させず,よりLED光を効率よく取り出すことのできる,異方性拡散シート(以下,ナノバックリングシート)を開発した。
  得られた特徴に関する検証結果をまとめると,
  1) ナノバックリングシートを用いた直管形LEDは一般拡散シートを用いた直管形LEDよりも
       高照度が得られた。
  2) ナノバックリングシートを用いた直管形LEDはオフィスの作業高さでは蛍光灯とほぼ同じ
       レベルの照度が得られた。
  3) ナノバックリングシートを用いた直管形LEDは一般的なLEDの特徴である省エネルギー,
       熱特性,防虫性についても一般拡散シートを用いた直管形LEDと同等の結果が得られた。
となる。
  本稿では,これらの特徴に関して具体的に紹介する。
(本文41ページ)


特許行政の最近の動向

特許庁 特許審査第三部プラスチック工学 冨士 良宏

  本稿は,2012年2月に開催された紙パルプ技術協会(TAPPI)と日本国特許庁(JPO)との年次意見交換会における著者のプレゼンテーションを基に,日本の特許出願・審査の現状,世界の特許出願動向,JPOによる出願人の多様なニーズへの対応,とりわけグローバル化した知財活動を支援するための施策といった「特許行政の最近の動向」について簡単に紹介するものである。
  日本人による日本での特許出願は,2000年代後半に減少している。しかしながら,研究開発費用は徐々に増えており,日本の出願人は,景気停滞にもかかわらず,新技術の開発に力を入れているように見える。さらに,日本の出願人によるグローバル出願率やPCT出願は増えてきており,視点が世界市場に向けられてきているように思われる。
  JPOは,出願人の多様なニーズを満たすために様々な施策を実施しているが,このようなグルーバル化を背景に,特に国際競争力向上のための支援策に力を入れている。2006年には米国特許商標庁(USPTO)と特許審査ハイウェイ(PPH)を開始したが,そのネットワークを2012年2月までに19カ国・機関にまで拡げてきた。そして,日本の出願人が,国際的に安定した権利を迅速に取得できるように,国際知財戦略を提唱しているところである。
  本稿を参考として,TAPPIメンバーが,より良い知財戦略の策定と国際競争力の強化を図ることを期待したい。
(本文47ページ)


2011TAPPI PEERS Conference/IPBC参加報告
― 2011年10月2日〜10月7日ポートランド(米国)にて開催 ―

王子製紙株式会社 木皿 幸紀
日本製紙ケミカル株式会社 橋本 唯史

  米国のポートランドで10月2日〜10月7日の6日間にわたり開催されたTAPPI主催の2011 PEERS(Pulping, Engineering, Environmental Recycling Sustainability)conferenceとIPBC(International Pulp Bleaching Conference)に参加したので,概要を報告する。
  PEERSでは,前日行事として開催されたDP(溶解パルプ)フォーラムやバイオリファイナリーセッションでは立ち見が出るほどの盛況であったが,他のセッションは細分化が進みすぎたのか,やや低調に感じた。
  IPBCでは,酸素晒や二酸化塩素漂白,オゾン漂白といった一般的に用いられている漂白の反応機構の解明やシミュレーションを用いた漂白の最適化といった基礎的な発表が多かったが,DP製造プロセスの漂白性に関する報告も3件あり,漂白分野でもDPへの注目が高まっている。
(本文58ページ)高濃度ポリサルファイドを用いた新蒸解システムの開発(第3報*)
―広葉樹材ポリサルファイド蒸解におけるアントラキノン添加の効果―

日本製紙株式会社 渡部啓吾,南里泰徳,岡本康弘,清水正裕
筑波大学 大学院生命環境科学研究科 大井 洋

  ポリサルファイド(PS)蒸解とアントラキノン(AQ)添加は現在よく知られている有益なパルプ収率向上技術である。また両者を併用した際に相乗的な効果が得られることが知られている。しかし,PSは白液中のNa2Sを酸化することによって生成するため,PS生成を進めると蒸解液中のNa2S濃度が低下する。このNa2S濃度の低下によって,PS蒸解時にパルプのカッパー価や粕率が上昇することがある。
  これらPS蒸解の課題を解決するために,PS濃度,Na2S濃度を変化させてAQ添加の効果を評価した。その結果,同一活性アルカリ添加率で比較した場合,AQ添加は主にパルプ収率を低下させることなくカッパー価を低下させ,またPS濃度の増加はわずかなカッパー価上昇を伴って大幅にパルプ収率を向上させることがわかった。このことから,同一活性アルカリ(AA)添加率におけるPSのパルプ収率向上効果とAQのカッパー価低減効果が足し合わさる結果,同一カッパー価でのパルプ収率が向上していることがわかった。
  また,多変量分散分析法を用いて,いわゆるPSとAQの相乗的効果の詳細を統計的に解析した。その結果PSとAQの間に交互作用(相乗効果)は認められなかった。PSとAQの相乗効果は,PS蒸解時のNa2S濃度の不足に起因するカッパー価や粕率の上昇をAQが補うということにより説明されると考えられる。したがって,AQ添加は,パルプ収率を向上させる高濃度PS蒸解に対して特に効果的であるということができる。
*第1報:Japan Tappi Journal,62(12):1557−1569(2008)
  第2報:Japan Tappi Journal,64(2):159−169(2010)
(本文74ページ)