2012年4月  紙パ技協誌
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第66巻  第4号  和文概要


溶剤シリコンコータ排気蓄熱式脱臭装置の操業経験

王子特殊紙株式会社  中津工場  寺田有紀信

  王子特殊紙株式会社中津工場は,特殊紙・加工紙・ガラスペーパー・蒸着フィルム・トランスフォーマーボードと,特徴ある特殊分野の製品を製造している。中でも主力製品の一つである加工紙の多くは,セパレート原紙である。
  このセパレート原紙は,溶剤シリコンコータで製造しており,コータから出る排気は揮発性有機化合物(VOC)を含んでいる。このため,排気処理における環境対応として,2001年に「直焔式」,次に2010年には「蓄熱式」の脱臭装置を導入してきた。
  各々の特徴の概略を以下に示すと,
  ・直焔式脱臭装置:常時バーナを焚いて連続燃焼処理をするため,脱臭効率は高いが,燃料消費が多い。
  ・蓄熱式脱臭装置:燃焼ガスの熱をハニカム式蓄熱体に蓄えてVOCガスを自燃させるため,熱効率が高く,燃料消費が少ない
と言える。
  本報告では,蓄熱式脱臭装置の操業経験について,直焔式脱臭装置との比較を交えて紹介する。
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省エネプレート使用によるTMP磨砕電力原単位削減

日本製紙株式会社  釧路工場  堀崎  敬史

  TMPは各種パルプの中でも,製造時,特に磨砕工程で非常に多くの電力を消費するパルプである。従って,TMP工程の磨砕電力原単位削減は,コストダウン・省エネルギー推進の観点から継続的に取り組むべきテーマである。特に,どのようなパターンのプレートを導入するかは,得られる省エネ効果とパルプ品質とのバランスで常に重要な課題として検討されてきている。
  日本製紙釧路工場でも長年にわたり,さまざまな省エネプレートを試行して磨砕電力原単位の削減に努めてきたが,2009年11月よりアンドリッツ社の省エネプレートを導入して以降,従来のパルプ強度を維持しつつ磨砕電力原単位の20%の削減,さらにはプレートライフの延長と大きなコストダウンと省エネを達成することができた。
  本稿ではその取り組みについて報告する。
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パルプ抄取マシン導入によるKP工程の安定化

北越紀州製紙株式会社  紀州工場  三徳  啓介

  弊社紀州工場では,パルプ抄取設備がなく,マシンでのKP使用量の増減により,KP生産量を大幅に増減せざるを得ず,機械的,品質的に不安定な状態であった。
  また,マシンでのKP使用量が多い場合には,KP使用量がKP生産量を上回ってしまうために不足分を購入パルプで補う必要があった。これらの問題点を解決し,KP工程の安定化,生産量アップを図ることを目的にパルプ抄取マシンを導入した。
  試運転当初,シート水分がなかなか目標値まで下がらなかったこと,また,巾方向の米坪プロファイル不良によりいびつな山姿となってしまうこと,またカッターでの断裁パルプ粕の発生が問題点として挙げられた。
  対策として,インレット濃度および米坪設定の最適化,1次希釈水の清水→白水化による系内温度上昇により,目標シート水分,均一な山姿,カッター粕減少に繋げることができた。
  また,当初355ADkg/パレットであったが,パルプシート巾を広げるとともに積み枚数を増やして現在は400ADkg/パレットとして置き場の有効活用を図っている。
  本報では,パルプ抄取マシンの概要および下記に示した導入効果について報告する。
  1)  KP生産量の安定化
  2)  KP生産工程でのトラブル減少
  3)  KP漂白薬品低減
  4)  購入Lシートパルプの減少
  5)  電力原単位の改善
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高光沢新聞用紙の開発

王子製紙株式会社  横内秀行,山本  学,渡辺邦彦,大津裕一郎

  新聞輪転機で使用可能な光沢新聞用紙「プレミアムニューズ®」の開発に他に先駆けて成功した。
  従来,乾燥装置を持たない新聞輪転機では,印刷光沢を得るために塗工量や平滑性を高めるとインキ乾燥性が悪化して印刷物に汚れが生じるため,印刷光沢とインキ乾燥性の両立は出来ないと考えられていたが,朝日プリンテック,朝日新聞,サカタインクスとの共同プロジェクトで光沢新聞用紙の開発に着手した。
  種々の検討の結果,塗工紙での塗料と原紙の両面での用紙改良により印刷光沢とインキ乾燥性の両立方法を見出した。更にFMスクリーンによる刷版と高濃度インキの使用は,必要とするインキ量を低減することによりインキ乾燥性を良化することが出来る。製品化した光沢新聞用紙は通常印刷速度の新聞輪転機でも印刷作業性に問題なく使用され,良好な印刷品質が得られている。
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超軽量微塗工紙(Ultra−Light Weight Coated Paper)の開発
― 北米市場への参入 ―

日本製紙株式会社  研究開発本部  総合研究所  川島  正典,野々村文就

  今回の取り組みは,当社が得意とする微塗工紙のなかでも最軽量に位置づけされる,坪量が45g/m2以下の超軽量微塗工紙の分野で,北米市場へ参入する検討を進めてきた。
  販売先は品質の要求基準が最も厳しいとされる米国大手出版社を念頭に置き,そこでの販売実績が,他の出版社や印刷社へのアピールになることを想定した。
  検討の過程で,白紙紙質では国内向けと比べて非常に不透明度が高く,逆に白色度が低い用紙が好まれる点,また印刷面では品質よりも印刷作業性を最重要視する点が,この市場における特徴的なポイントと考えられた。またこれまで指標として想定していなかった白紙面感に関しても,品質の基準があることがわかり,基準レベルの達成に向けて取り組んだ。
  市場調査の結果から,一般的な超軽量微塗工紙の原紙には機械パルプを高配合し,塗工層に高アスペクト比顔料をベースに高価なプラスチックピグメントや二酸化チタンが配合されていることがわかったが,当社では各種検討の結果,古紙高配合,ショートドゥエル方式,高価顔料の無配合,HSNC(ホットソフトニップカレンダー),日本式のカスタムメードなアプローチ等により,製品の製造処方を確立し,2007年より米国大手出版社への販売を開始した(しかし,現在は諸事情により販売休止中)。本報告では,これまでの取り組みについて概要を報告する。
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紙の填料配合率向上のための新しいアプローチ

片山ナルコ株式会社  マーケティング本部  佐藤慎太郎
ナルコカンパニー  Zhi Peng Yu, Weiguo Cheng, Aleksandar Todorovic

  印刷筆記用紙の填料配合率向上は品質改善と,原料およびエネルギーコスト削減の観点から非常に大きな関心がある。しかしながら,填料によってセルロース繊維を置き換えることは,最終シートの強度を低下させる。また填料粒子をシートに歩留らせること,シートの三次元構造中に均一な填料分布を維持するのが難しくなる。
  NALCOのFillerTEK填料プレフロキュレーション技術はシート品質や抄紙機の操業性を損なうことなく,シート灰分を最大5ポイント上昇させることができる。この技術は幾つかのケミカルと機械的なアプローチの組合せにより高い填料配合と強度と印刷適性の維持を実現する。この技術で処理された填料の配合を増やすことで,高価な繊維原材料は代替され,またドライヤーでの乾燥エネルギーコストを節減することで,工場の収益に寄与する。
  紙の強度は繊維間結合のネットワークに由るが,FillerTEK技術のコンセプトは填料による強度発現妨害の軽減である。この技術はウェットエンドに添加される炭酸カルシウム填料に作用するように設計されている。
  粒子径分布の制御と優れた填料フロック安定性は紙に強度を与え,また印刷適性は維持される。処理された新しい填料は直接工程に送られ使用前の保持時間は必要ないが,最小限のウェットエンドと抄紙機操業の調整は必要である。この填料プレフロキュレーション技術は様々なマシンで実機検証,商業ベーストライアルが行われ,そして幾つかの抄紙機で既に採用されている。ここでは実機検証の結果を報告する。
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歩留システムの高精度設計

栗田工業株式会社  陳  嘉義,三枝  隆,賀川泰裕,駿河圭二,内田敏仁

  製紙業界では,省エネ,省資源,コストダウンのニーズが高まっている。この状況下,製紙工程の歩留システムにおける共通した課題は,地合を改善しながら,より高いレベルの歩留,特に灰分について高い歩留を達成することである。
  歩留システムの効果的な運用を図るため,そのマシンに合わせた歩留システムの高精度な設計が必要である。最新の歩留剤重合技術を用いて,幅広い機能性を持たせた各種PAM素材が開発されたが,これらの素材を効果的に組合せることが重要である。
  本文は,ろ水歩留試験機DFS(ダイナミックフィルトレーションシステム,ミューテック社製),動的濾水性試験機DDA(ダイナミック・ドレネージ・アナライザー,Ab Akribi Kemikonsulter社製),Flocky tester(フロッキーテスター,コーエイ工業株式会社製)を用いて,マシン構造,抄造銘柄などの実機条件に合わせて,歩留システムを高精度設計することにより,以下に列挙された様々な課題解決に貢献出来ることを示唆した。
  1)  コストダウン
  2)  地合を維持・改善しながら,歩留,特に灰分歩留をアップできる
  3)  アニオンの改良により,紙中灰分がZ軸方向に均一に分布し,品質を改善する
  4)  系内清浄化による断紙・紙中欠陥を低減させ,生産性向上に貢献する
  5)  蒸気量低下による省エネ
  6)  流出原料削減,排水負荷低減,CO2排出量削減
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カナダの投資助成金プログラム活用による売電事業の紹介

大昭和丸紅インターナショナル  カリブー工場  落合    寿

  カナダの紙パルプ産業は2005年〜2009年にわたってカナダドル高による為替差損,北米の紙需要低下などから非常に苦しい状況に陥っていた。
  カナダ政府は危機的状況にある紙パルプ企業を救済,さらに環境エネルギー分野への転換を促進するために,2009年6月に投資助成プログラムPulp and Paper Green Transformation Program(GTP)を発表した。このプログラムではパルプ工場の黒液燃焼量1L当りC$0.16の助成を受けることができる。助成金総額はC$10億(約870億円)であり,カナダ国内24社38工場が対象である。
  大昭和丸紅インターナショナル社が所有するアルバータ州ピースリバー工場とブリティッシュコロンビア州カリブー工場もその対象となった。各社への助成条件として,
  1)  エネルギー効率改善
  2)  再生可能エネルギー増産
  3)  環境に有益
のいずれかに該当する設備投資への助成金使用が指示されており,当社はこのGTPによる助成金を活用して2012年から本格的に売電事業に参入することになった。
  本稿ではカナダの紙パルプ事情を踏まえ,GTP制度の概要ついて紹介すると共に,当社2工場の電力事情及び売電事業計画をあわせて述べる。
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マレーシアGSペーパー&パッケージング社の紹介

GSペーパー&パッケージング社  小林    進

  GSペーパー&パッケージング社(GSPP社)は,1990年に設立された,ダンボール原紙,ダンボールを製造する会社で,製紙1工場とダンボールの貼合せ,製函を行うパッケージング2工場を持ち,マレーシア国内シェアは,それぞれ約30%と14%であり,トップシェアを誇る。
  概略を述べると,2010年4月に王子製紙が英国系投資ファンドグループCVC Asia Pacific社より取得し,同年10月には,丸紅株式会社から全株式の25%の出資を仰ぎ,同社との合弁事業として現在に至っている。
  王子製紙では,1970年代より積極的な海外事業展開を行ってきたが,今後は,特に成長が見込まれるアジア地区でより積極的に展開を行う方針であり,今回のGSPP社取得はその一環として行われたものである。取得後,王子グループの東南アジア地区における事業展開の重要な拠点となって,その後の同地区でのプレゼンス拡大に大きく寄与している。
  本稿では,王子製紙の海外事業展開の1例として,この新たに王子グループの一員となったGSPP社を紹介する。
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2011年度フォローアップ結果(2010年度実績)と温暖化対策関連情報

日本製紙連合会  池田  直樹

  日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め,積極的に活動している。その中の1つとして地球温暖化対策(CO2排出抑制対策)があり,2007年9月に2度目の改定をした以下の2目標を掲げて取組んでいる。
  1)  2008年度〜2012年度までの5年間平均で,製品当り化石エネルギー原単位を1990年度比20%削減し,化石エネルギー起源CO2排出原単位を1990年度比16%削減することを目指す。
  2)  国内外における植林事業の推進に努め,2012年までに所有または管理する植林地面積を70万haに拡大することを目指す。
    今回は2011年度フォローアップ調査結果(2010年度実績)について報告する。
  2010年度の化石エネルギー原単位は,チリ大地震の影響による市販パルプの増産でバイオマス燃料である黒液の大幅増加等により1990年度に比べ74.6%となり4年連続して目標を達成した。また化石エネルギー起源CO2排出原単位も1990年度に比べ77.4%となり同じく4年連続して目標を達成した。
    また,関連情報として,日本におけるエネルギー消費量,CO2排出量およびそれに占める紙パルプ産業の位置付けや,低炭素社会実行計画の見直し,再生可能エネルギー固定価格買取制度,COP17の結果,東日本大震災後の製紙業界の電力不足対応,省エネ法改正の動き等の温暖化対策関連情報についても触れた。
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2011TAPPI International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials参加報告

日本製紙株式会社  総合研究所  山口  正人

  2011TAPPI International Conference On Nanotechnology for Renewable Materialsが6月6日〜8日の日程でアメリカ,バージニア州アーリントンのSheraton Crystal Cityにて開催された。
  セルロースナノファイバーのキャラクタライゼーション,表面改質,材料の複合化などをテーマとした研究発表に加えて,安全性評価やナノセルロース材料に関する標準化,規格化に関する発表,新規プラントに関する紹介が目立ち,実用化,事業化に向けて着々と準備が進んでいるのを目の当たりにした。
  主催者であるTAPPIによると,3日間の出席者総数は約190名,17カ国から参加があった。31のセッション,76件の口頭発表,17件のポスターセッション,またキーノートプレゼンテーションが6件,行われた。ここではその一部を紹介する。
  1)  セルロースナノファイバー製造設備の新設情報
  ・The U. S. Forest Products Industry and the Nanotechnology Revolution(Session1)
  ・CelluForce The Domtar―FP Innovations Joint venture nanocellulose crystalline 
    Our business model(Session18,発表番号4)
  ・NanoCellulose Upscaling Reserch at Innventia(Session31,発表番号31-2)
  2)  研究発表
  ・A new type of Filler― Nanocellulose Composite Substance 
    for Printed Electronics Applications(J. Sievanen, VTT, Finland)(Session4,発表番号4-2)
  ・Barrior property of Naofibrilled Cellulose/Clay Films for Applications in Packaging Materials
    (Thao Thi Thu Ho, EMPA, Swiss)(Session4,発表番号4-3)
  他4発表
  3)  セルロースナノファイバーに関する安全性評価
  ・Ensuring the Safety of Manufactured Nanocrystalline Cellulose:A Risk Assessment
    under Canada’s New Substances Notification Regulations(Session2発表番号2-3)
  4)  セルロースナノファイバーの規格化に関して
  ・International co―operation for the standardiation of nano―scale cellulose materials
    (Session28,発表番号28-1)
  他1発表
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紙の赤外透過光画像を用いた人工物メトリクスにおける個別性の評価

独立行政法人国立印刷局研究所  山越  学,田中純一
横浜国立大学  大学院環境情報研究院  松本  勉

  人工物メトリクスとは,人工物の製造過程に由来する固有の微視的な特徴を用いて人工物を認証する技術のことである。この固有の特徴は,正当な製造者でさえも複製やコントロールが極めて難しいとされるため,人工物の偽造防止技術として利用可能である。
  紙の繊維分布はランダムであるため,その透過光画像を人工物メトリクスに利用可能である。人工物メトリクスで用いる固有の特徴に求められる要件として個別性がある。個別性とは各人工物における固有の特徴が互いに十分に異なっている性質のことである。ブルートフォース攻撃(力ずくの,総当たりの)に対する耐性を高めるためには,十分な個別性を有することが求められる。
  本稿では,紙の赤外透過光画像を用いた人工物メトリクスにおける個別性の評価を行う。スキャナを使用して再生紙,上質紙および塗工紙の赤外透過光画像を採取し,照合領域のデータサイズや紙品種を変更したときの認証精度をFMR/FNMR曲線によって評価した。その結果,FMR(誤一致率)の値は,再生紙>上質紙>塗工紙の順となり,FNMR(誤不一致率)は塗工紙>上質紙>再生紙の順となった。また,紙検体のスキャナ提示時に発生する回転ずれによる精度低下の対策として領域分割による照合方法を提案し,その有効性を示すとともに,統計的手法を用いて再生紙のEER(等誤り率)の推定を行った。その結果,データサイズ2,048pixあたりのEERは10−20以下となり,再生紙の十分な個別性を確認することができた。
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