2012年3月 紙パ技協誌

第66巻  第3号  和文概要


災害からの早期復旧―修復という選択肢

ベルフォアジャパン株式会社  鳥谷  幸二

  BELFORは約30年前に事業を開始し世界30か国に170の拠点を有している。その歴史と実績により欧米を中心に弊社の災害からの復旧サービスは,スタンダードとなっている(全世界で年間75,000件の復旧を行っている)。
  一方,日本では2004年の日本法人設立から日が浅いため,弊社の復旧サービスは衆目の知るところまで至っていないが,火災を中心に復旧のお手伝いをするケースは急増している(2010年は2009年の3倍)。
  特に2011年は大震災時の半導体工場からの塩素ガス漏えい,津波からの復旧のお手伝いを酒造メーカー様,製紙会社様など多数のお客様に提供した。その後,三重,和歌山,愛知で集中豪雨を受けたお客様の早期復旧に貢献することができた。
  本稿では,修復の中で最も多い,火災で被災した設備の修復を中心に説明した。特に汚染物除去方法として弊社が工法確立をした「アイスブラスター」は,水を嫌う現場で効果を発揮するものである。汚染除去の仕組みを以下に示す。
  1)  −78℃で凝固し,固化した炭酸ガスを,雪玉のようにドライアイスとして粒化(ペレット化)する。
  2)  大きさを調節した上記ペレットを毎秒100〜300mという高速で表面に吹き付ける。
  3)  冷却により汚染物は収縮し,表面との接触状態が弱くなる。また,小さいクラックが生じ,このクラックにペレットが入り込む。
  4)  ペレットは昇華し,300〜400倍に膨張し,汚染物が吹き飛ばされる。
  5)  ドライアイスのペレットは気体となって霧散するので,作業後にペレットは残らない。
    但し,表面から剥離した少量の汚染物のみ除去するための後処理を行う。
(本文12ページ)


王子製紙グループの電力需要抑制の取り組みについて
―合成需要デマンド監視装置導入による電力監視―

王子製紙株式会社  統括技術本部  添木  真也

  東日本大震災により,東京電力・東北電力の電力供給力は大幅に減少した。これによって生じた需給ギャップに対処するために,当初,やむを得ない緊急措置として計画停電が行われた。
  その後,政府は『夏期の電力需給対策の骨格』(4月8日付)を発表し,夏期における需給ギャップを解消する対策の骨子をまとめた。その需要面の対策は次の通り。
  1)  需要抑制の目安となる目標を設定し,これを達成する方策を官民挙げて検討する。
  2)  抑制は使用最大電力(kW)を基本とする。
  3)  大口需要家(契約電力500kW以上)は電気事業法第27条に基づく需要抑制を行う。
    需要抑制は複数事業者が共同して需要抑制を行うことを可能とするスキームを導入する。
  4)  小口需要家(契約電力500kW未満)は自主的な計画を策定し,所管省庁は計画の策定,公表を促す。
  以上を踏まえ,政府は5月13日には『夏期の電力需給対策』にて需要抑制の目標値とその対策を,また5月25日には『電気事業法第27条による電気の使用制限』の詳細ルールを発表した。
  王子製紙グループでは,『節電対策はわが国の復興に向けた国民の行動規範』と捉え,会社間の垣根を越えて議論を重ね,小口需要家を含む全需要家について,具体的な電力需給対策を取りまとめた。
  また,電気事業法第27条対象となる大口需要家については,合成需要電力デマンド監視装置を設置し,事業所毎の節電状況および電力会社管内単位で全事業所の合成需要電力をリアルタイムで監視するシステムを構築した。
  本稿では,王子製紙グループの今夏の電力需要抑制の取り組み状況および大口需要家に導入した「合成需要デマンド監視装置」について紹介する。
(本文18ページ)


省スペース型カラー欠陥検出器の導入と性能検証

日本製紙株式会社  北海道工場  工務部  白老工務グループ  近藤  浩樹

  紙の品質は,輸入紙の参入による廉価品の拡大,また反面,高品質,高機能化による国内外での競争の激化など市場での品質要求は非常に厳しくなってきており,欠陥検出器へ求められる検査性能も飛躍的に増している。
  白老事業所8マシンは日産235t,最大抄速580m/minの上質紙抄造マシンである。欠陥検出器は透過反射併用方式でのF面検査のみであり,W面にある汚れ欠陥の検出能力が低く,ユーザーからの品質要求に応えることが困難となってきたため,本年5月に欠陥検出器の性能向上を図ることとなった。
  本稿では,従来の検査システムでは実現できない狭い設置スペースという問題に対して,検討を重ねた結果,オムロン製の省スペース型欠陥検出器(スーパーNASP―SF)を国内1号機として採用し,本システム導入の最大の目的であった「品質管理強化」両面検査及び色の付いた製品の確実な検査につなげるシステム構築を図ることができた。その経緯と導入効果について報告する。
(本文22ページ)


新型QCS Experion MXに備わるダイアグノスティック機能

ハネウェルジャパン株式会社  紙パルプ営業技術部  増田  淳一

  製紙業界やそれらに関わる企業は,近年劇的な変化を遂げている。ハネウェルではそれらの変化を理解し,どのような技術が製紙業界に更なる貢献ができるのかを知り得るため,多くのユーザーにインタビューを重ねてきた。
  そして,コンセプトとして,3つの「分かり(扱い)易い」と「トータルコストの削減」を掲げた。
  3つの「分かり(扱い)易い」とは,以下に挙げるものである。
  1)  分かり易いオペレーション
  2)  分かり易いメンテナンス
  3)  分かり易いサービス
  これに伴って,操作性や可視性の向上,新設計スキャナの構造,拡張性の向上,メンテナンス性の向上,リモートサービス機能の強化によるコストの削減の他に,流れ方向や幅方向の多変数制御,制御の最適化よる製品の安定化や原料等の節約,エネルギーの省力化等の実施により,製品の品質向上を伴った「トータルコストの削減」ができるのである。
  結果,ユーザーのニーズに対応すべく新型QCS Experion MXを開発し,2010年9月に発表した。このQCSについては各種紙面で紹介しているが,本稿ではメンテナンスやサービスに注目し,この新型QCSのコンセプトの他に,ダイアグノスティックを強化する機能,ダイアグノスティックツール,そして新たなリモートサービス形態についても紹介する。
(本文29ページ)


No.1カッター欠陥検出器,ソーター制御装置更新

日本大昭和板紙株式会社  吉永工場  工務部工務課  大森    徹

  50M/C白板製品向けであるNo.1カッター欠陥検出器,ソーター制御装置は,1987年に設置され23年目を迎え,保守契約も終了しており,精度維持及びメンテナンスが難しい状態であった。
  同製品は医療・食品用途向けの需要が多い為,それまで検出が困難であった淡色欠陥(色斑点等),フェルト脱毛や,虫混入品の流出防止に効果を発揮した実績のある,欠陥検出器のカラー化を行うと共に,操業の安定化を図るべくソーター制御装置更新を行った。
  本稿では,今回導入したカラー欠陥検出器,カッターソーターシステムの更新事例について述べる。
  具体例として,カメラ仕様に関しては,
  1)  表面はカラー検査,裏面はモノクロ検査の混在システム
  2)  カメラの台数:表面12台→6台,裏面12台→3台
としており,1)は淡色の欠陥検出に非常に効果的で,2)はメンテナンス時間及び費用削減が期待できる。
  また,ソーター制御装置としては,
  (従来)2台のPCでカッター制御と上位通信であった
  (更新後)PLCでこれらを並列処理とした
ことにより,操作性・メンテナンス性が向上した。(本文35ページ)


八戸工場:電装設備の大震災復興

三菱製紙エンジニアリング株式会社  設計技術部  松川  法夫

  本年3月11日14時46分に三陸沖を震源とする深さ約24km,マグニチュード9.0の東北地方太平洋地震が発生した。三菱製紙株ェ戸工場では「震度5強」であり,発生とほぼ同時に東北電力66kV送電線が停電し,県の工業用水道も断水した。14時49分に青森県の太平洋沿岸に津波警報が発令され,八戸港へは15時30分頃に津波の第一波が到達し,16時40分過ぎに最大規模の大津波が来襲した。防波堤のある八戸港内の津波の高さは6.2mであったが,港の北に位置する八戸工場では8.4mの高さが測定された。
  今回,地震による被害は比較的軽微であったが,この大津波により工場敷地の大部分が冠水し,その被害は甚大なものとなった。特に,電気計装設備の被害は大きく,その復旧・復興に多大な労力を要した。
  本稿では,八戸工場の被害状況の説明と,今まで行ってきた電気計装設備の復旧作業を基に,
  1)  パワープラント,トランス,電源スイッチ盤,DCS,変換器盤,モーター及びローカル計器類,電気室,制御盤・機器の復旧
  2)  通信リンクの対応
  3)  早期復旧のポイント
  4)  設備の復旧状況      等について報告する。
(本文40ページ)


震災復旧対応における横河電機の機器洗浄サービス

横河フィールドエンジニアリングサービス株式会社  リペアセンター
呉本元一,迫園欣巳

東北地方太平洋沖地震で被害を受けたCENTUM  SYSTEMは,製品を直接製造する重要な設備であり,操業停止となった被災工場の早期復興・生産再開実現に向け,今回初めての経験となる塩害DCSカード復旧対応事例として,日本製紙株式会社石巻工場殿向に実施した「機器洗浄サービス」についての紹介である。
  日本製紙株式会社石巻工場殿は未曾有の大津波に襲われ,全設備の1階部分が水没し,約2週間は工場構内立入り禁止となり構内は海水と汚泥・瓦礫に覆われた。当初,建屋1階に設置され冠水した計装電子機器類は全損と思われたが,客先要請を受けて3月末に初めて入構した際に,動力設備のカード類を取外し,リペアセンターに急送し洗浄作業に取りかかった。
  洗浄・動作検査の結果,被災後数週間経過後の状態であっても,電源並びにバッテリーラインを外れた水没時非通電のカード類は,正常に動くことが確認された事実に基づき,本格的救済作戦を開始した。
  現地よりリペアセンターへ送付したDCSカードの外観は汚泥や紙などが付着,カード内部も汚泥が一面に付着したカードが数百枚あり,通常の洗浄では汚れを落とすことができず,圧力洗浄・手洗い洗浄・特別清掃等を実施した。特にコネクタピンなどの接触不良が多数あり,汚れの状態を1枚毎細密に確認することで予想以上に苦戦しながらの復旧作業となった。
  塩害品については時間が経つとともに,通常の汚れ(塵埃等の付着)よりも劣化速度が早まり腐食の進行が激しくなる。いかに早く洗浄処置を行い,基板上の不純物を除去することにより,劣化の進行を抑えるかということを最大の目的に実施した,項目別劣化診断〜劣化進行抑制の特別精密清掃を紹介し,洗浄後の復旧可否状況,復旧率(6月末時点で49%),新規購入と比較したコストメリットと全ての洗浄作業に要した所用期間に関して述べる。
(本文47ページ)


タービン負荷最適配分システムの紹介

東芝三菱電機産業システム株式会社(TMEIC)  産業第二システム事業部  システム技術第二部  外山  和久

  地球温暖化への対策が世界規模で急務となる中,複数のボイラ,タービン,および発電機(BTG)から成る自家発電設備が稼動して大量のエネルギーを消費する産業のひとつである製紙・パルプ工場においても,省エネルギーとCO2削減に向けて様々な取り組みがなされている。
  これに応えるべく,エネルギー供給機器を常に最適な運転状態に制御して,省エネルギーの実現を可能とするタービン負荷最適配分システムについて紹介する。
  具体的には,現在の需要値を確保するように蒸気タービンの負荷分配最適値を「タービン特性式」を用いて演算し,制御を行い,その結果としてボイラの発生蒸気量を削減するものである。また,シミュレーション機能を有することを特徴の一つとするこのシステムの導入手順に関しても説明しているので,是非参考として頂きたい。
(本文53ページ)


食品工場のトレーサビリティシステム
―品質保証体制強化への取り組み―

株式会社山武  アドバンスオートメーションカンパニー  営業本部営業技術部
戸田  篤,沼山雄一郎

  近年,消費者の食品の安全・安心に対する関心は益々高まり,食品メーカは,Hazard Analysis and Critical Control Point(HACCP)やISO9001などの導入による衛生・安全性や品質の管理が必要になってきた。さらに,生産・加工・流通の各段階で履歴を明確に出来るトレーサビリティシステムを構築し,原材料から製造工程を経て出荷流通に至る品質保証を実現することにより,企業ブランドの維持・向上を図ることが可能になる。
  食品工場は,原材料種類が非常に多いだけでなく,季節,温度,移り香による影響や頻繁に変わる外装(パッケージ)の管理など,他の業種とは異なるシステム構築の難しさがある。
  本稿は,食品工場におけるトレーサビリティシステム構築上の課題として以下の3点を挙げた。
  1)  迅速で精度の高いトレーサビリティの実現
  2)  作業ミスの防止
  3)  業務効率化
  これらをManufacturing Execution System(MES)の導入により解決し,より確実で効率的な品質保証を実現する手法について,原材料受入,在庫管理,小分け計量〜投入,製造プロセス,充填包装,出荷〜物流の各工程に沿って具体的に述べる。言うまでも無く,単純にシステムを導入するだけで十分満足のいくメリットを得られるものではない。導入の目的を明確にし,それぞれの工場に適したシステムを構築することが大切であると考える。
  MES導入により,人・設備・運用・システムを適切に融合させ品質保証体制を更に強化していただきたい。
(本文58ページ)


オンライン測定による紙の構造特性と印刷適性予測に関する新技術

メッツォオートメーション株式会社  プロセスオートメーションシステムズ
露口  東,マルク  マンティラ,マルコ  トスカラ,ユッカ  ソルサ

  今日の製紙会社の課題は,より安価な原料及び生産コストで印刷用紙の表面品質を従来と同様,あるいはより優れた品質で生産することである。
  メッツォはこの目的を達成するために,昨年,最新のカメラ技術をベースにした測定技術を開発した。
  これはフォーメーション測定,及び,オンラインでスキャンニングする光学,画像処理に基づいたウェブ検査機能であり,光学キャリパー,フォーメーション,繊維配向,表面構造等の測定が含まれる。これらの新しい測定技術を用いてオンラインでの紙の特性を知ることによって,印刷適性を予測しながら印刷工場からの古紙の排除あるいは削減ができる。
  本論文で私たちが重点を置いている紙の基本特性は以下の通りである。
  1)  Formation(フォーメーション)
    紙の印刷適性,操業性や最終品質に影響を与える最も重要な適性のひとつである。
    光学式フォーメーション測定に関して原理から実績例まで説明する。
  2)  Fiber Orientation(繊維配向)
    紙の寸法安定性,紙の強度特性,紙のカーリング,シートとして使用時の操作性,コピー機適性等に影響を与える。その測定原理に触れる。
  3)  Surface Topography(表面形状)
    印刷適性を予測する最も重要な測定は,実際の表面形状である。強度な表面むらは,印刷アプリケ―ターから印刷表面へのインクの転写を妨げるものである。
    工場テストより,コート紙生産でのブレードの交換時期の予測することが可能になった事例を紹介する。
  また,新しく開発した固定式フレームは,全ての最新センサーが搭載出来るため,いままで諦めていた小規模マシンへの測定及び制御の導入を可能にする。また,2番目の測定機器としても,安価で安定した測定を可能にするものである。
(本文62ページ)


八戸工場における塗工紙中性紙化の技術確立(前編)

三菱製紙株式会社  八戸工場  中性紙技術調査チーム

  近年では,印刷用紙のほとんどが中性から弱塩基性で製造される中性紙となっており,酸性紙を探す方が難しくなりつつある。更には,毎朝目を通す新聞用紙でさえ中性紙化が進んでいる。1980年代は世界的に図書館での書籍の劣化が世間の注目を集め,日本においても印刷用紙は劣化の原因物質である硫酸根を最小限とする,保存性に優れた中性紙化への転換が望まれた時期でもあった。
  日本国内においても,既に特殊紙分野では中性抄紙は行われていたが,大量に生産される一般印刷用紙では中性抄紙化はまだ黎明期にあった。三菱製紙株式会社は中性紙を市場で最も早く開発した訳ではないが,取り組みを開始してから比較的早く,中川工場での上質紙に続き,八戸工場の塗工紙においても,工場全体での中性紙転換を果たすことができた。また,欧米とは目的を異にして,抄紙工程の中性抄紙化と,塗工工程の中性紙化を同時並行で進めてきた。
  中性紙への現場試験開始から約30年,中性紙転換から20年以上経過した事から,本報告では技術の継承・保存を目的に塗工紙をメインとした八戸工場における中性紙の開発について,前編・後編の2回に分けて当時の背景と技術の流れを纏めた。(本文67ページ)


光照射によるECF漂白パルプのヘキセンウロン酸除去技術の開発

日本製紙株式会社  総合研究所  辻(勝川)志穂,宮脇正一,小柳知章

  ヘキセンウロン酸(HexA)はキシランに由来し,それ自体は無色であるが,酸性条件下で分解・重合して着色するため,酸性抄紙に特有の紙の黄変化(退色)の原因物質である。キシランの多い広葉樹のECF漂白パルプではHexAの残留が多く,除去の方法として,加温酸処理とオゾン処理があるが,十分でない場合があった。
  今回,これらの既存の方法と組み合わせが可能な新たなHexA除去方法として,光(紫外線)照射について検討した。その結果,漂白済みパルプに低圧水銀ランプで光を照射すると,パルプに含まれるHexAが減少することを見出した。この反応は酸性条件下で効率が高くなり,種々の酸でpH調整したパルプスラリーで効果が得られた。
  また,主波長が異なるランプを用いて検討した結果,HexA除去効率とパルプ強度(パルプ粘度)維持のバランスから,光源としては254nmの主波長を持つランプが適していることが分かった。必要とする照射時間は初期のHexA含有量に依存した。しかし,pH3の条件下で254nmの光を照射することによって,各種ECF漂白済みパルプのHexA量を塩素漂白レベル(1mmol/kg以下)まで低減することができた。
  これらのパルプは未照射のパルプと比較してHexAに由来する酸性紙特有の熱退色が抑制されることを確認した。しかし,現状では多大な電気エネルギーを必要とする上,長時間の光照射はパルプ粘度の低下と中性紙での退色を招く。効率を向上し,短時間処理を可能にすることが今後の課題である。
(本文77ページ)