2011年10月 紙パ技協誌
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第65巻 第10号 和文概要


新しい古紙利用率目標の策定について

日本製紙連合会 上河  潔

  循環型社会の構築に向けて,日本製紙連合会は,1991年度以降4次にわたって古紙利用率の自主的な目標を策定し,その達成に努めてきた。2005年に策定した「2010年度までに古紙利用率62%の目標達成に努める」という現行目標は2年前倒しで達成するとともに,目標期間が2010年度末で終了するため,一昨年10月以降,今後の目標について検討を行った。
  新しい利用率目標を策定するにあたって,目標年度については,計画期間5年間の2015年度とした。利用率目標については,技術的に配合可能な理論的限界値の範囲内で,紙・板紙の生産・需要量,古紙の回収量,古紙の輸出量等の動向を踏まえつつ,中国の製紙産業の急激な成長に伴い一層グローバル化した古紙の需給環境や古紙利用が環境に与える影響等も考慮し64%とした。
  製紙業界は,@DIP施設の能力の維持,Aオフィス古紙,雑がみ等の利用技術の向上,B古紙配合率検証制度の適切な運用,C省エネ,CO2排出削減対策の推進など,今後とも古紙利用の一層の推進に積極的に取り組むこととしている。
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印刷資材のリサイクル適性評価と印刷物への応用

有限会社サステイナブル・デザイン研究所 西原  弘

  本稿では,1999年度に通商産業省国庫補助事業としてスタートし,12年にわたり,印刷,印刷資材,製紙,古紙,ユーザー業界(出版)が参画して進めてきたリサイクル対応型紙製商品開発促進対策事業の概要,成果,制度的応用の状況を紹介し,最後に今後の課題について若干の考察を行った。
  1)  リサイクル対応型紙製商品開発促進対策事業の概要では,体制・財源,背景と目的,経緯及び特色について整理した。
  2)  印刷資材のリサイクル適性評価手法の開発では,製本用ホットメルトシール,UVインキ及びファンシーペーパー・抄色紙の評価手法の概要を紹介した。
  3)  リサイクル適性評価の制度的応用では,日印産連,国等のグリーン購入関連制度への事業成果の活用状況をまとめた。
  4)  おわりにかえてでは,今後の課題について若干の私見を述べた。
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古紙回収を促進していくために
―消費者啓発の必要性―

全国牛乳パックの再利用を考える連絡会 平井 成子

  国内の古紙回収量は,公益法人古紙再生促進センターによると,2010年には78.3%(21,715千トン)となっている。それに対して利用率は,2010年62.5%と,2010年までに62%という目標値を達成しているが,昨今では環境問題やリサイクルに対する関心の高まりに加えて,自治体のごみ減量化対策の強化等から古紙の回収が増えてきており,回収率が利用率を上回る実態となっている。今年に入って,2015年度までに古紙利用率を64%とする新たな目標が発表されたが,古紙利用率を高めるには用途に応じて古紙の一定の品質が求められるため,排出段階できちんと分別する必要があり,消費者の一層の理解と協力を得なければ実現できない。
  牛乳パックなどの紙パック(飲料用紙容器)は,両面ポリエチレンフィルムが加工されているため,回収が始まった当時は古紙に混ぜてはいけない禁忌品扱いで,回収ルートがなかったという経緯があるが,消費者への徹底した啓発により,現在の回収システムが確立し,また紙パックを原料とする製紙技術も発展し,まだまだ受け入れは可能という状況である。
  全体の紙生産量のわずか1%程度の紙パックだが,古紙の需給安定を目指すための一つの事例として紹介したい。
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脱墨剤の基礎と機能化

株式会社 日新化学研究所 研究部 下山 竜吾

  2009年度に古紙回収率は79.7%,古紙利用率は63.1%という過去最高の水準に達し,日本の古紙利用は一貫して右肩上がりを続けてきたが,2010年度は景気後退の影響もあり減少している。2000年以降,古紙回収率は古紙利用率に比べ伸びが著しく,その伸び率の差はそのまま中国をはじめとする海外への古紙輸出量の伸びと相関している。環境保全,資源保護の立場から洋紙向け古紙利用率のさらなる向上が望まれるが,そのためには低品質古紙の一層の利用促進が必要不可欠である。
  低品質古紙の再生技術は,粘着物の除去技術をはじめ近年めざましい進歩を続けているが,脱墨剤についても時代背景の変遷とともに高機能化を続けており,弊社も脱墨剤メーカーとして様々な要求に応えその発展に貢献してきた。
  本稿では,様々な背景とともに変遷を遂げてきた脱墨剤の基礎知識とその機能化について述べる。
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製紙工場の白水,排水処理技術と原質機器の省エネルギー技術

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 原質機械技術部 江口 正和

  古紙利用率の上昇や品質維持,向上を目的に紙に含まれる繊維以外の無機・有機物の増加は,原質工程内の循環白水や排水の濃度を上げ,その汚さを増している。清水・排水原単位の削減要求や適切な白水・排水処理が行われていないこと,水バランスの崩壊による取水・排水のアンバランスもその原因のひとつである。また,最終廃棄物量削減のため本来は廃棄すべき排水スラッジを系内に一部循環したり,最終製品に抄き込む等の施策のために系内白水の汚れに拍車を掛けている例も見受けられる。白水の汚れは,メインテナンスタイムの増大,汚れによる紙切れの増加,機器処理能力の低下,品質低下などの災いをもたらす。製紙工場内の清水・白水・排水処理やそのバランスは本来,どうあるべきか?製紙工場全体のWater Managementについて弊社の考え方を紹介する。
  また,東日本大震災による電力不足のため今夏に予想される大幅な省エネ要求に役立つ,原質省エネ技術もその一部を紹介する。
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最新の古紙処理技術紹介
―古紙回収率アップにより発生する問題への対応―

相川鉄工株式会社 営業・技術本部 青嶋 和男

  世界的な環境保護運動の高まりから製紙業界では他産業に先駆けて省資源,省エネルギーに取り組んできた。その一環が古紙利用率のアップであり,当初の62%という目標を達成した本年,新たにこれからの5年間で64%の古紙利用率にチャレンジすることになった。省資源,省エネルギーは製紙業界のみならず,全ての産業に要求されている。そのような背景から製紙業界ではリサイクルアップに取り組んできている。今までは古紙利用率として目標を設定し,前倒しで実現してきた。実際に本年は62.5%と言う高い古紙利用率を達成できている。そこで次の5年間での目標を64%としたことから各社達成するための対策が必要になった。
  実際には,今後の全紙・板紙の生産量が本年と同じと仮定すると1,147BDT/Dの古紙を今まで以上に再利用しなければならなくなる。しかし板紙に関しては既に92.8%再利用していて限界に近いことから,DIPを中心とした利用率のアップが求められることになる。
  このような背景から既に限界にきていると考えられている古紙を再利用するための新しい技術が求められる。そこで本稿では最新の古紙利用技術を紹介する。
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KP操業技術アンケート調査結果
(その3) 更なるレベルアップに向けて
―「安全」および「現場の課題とニーズ」―

紙パルプ技術協会 パルプ技術委員会
三菱製紙株式会社 北村 宗弘

  今回のアンケートに新たに盛り込んだ標記のテーマについて,まとめた結果を報告する。
  パルプ技術委員会は国内パルプ製造技術のレベルアップに資することを目指し,セミナー,RTD等の企画,実施に取り組んでいる。今回のアンケートでは,従来の製造設備・ハード面の調査に加え,それを運転する現場管理者の現在の関心やニーズの大きさの可視化に取り組んだ。今回の結果を基に,更なる発展に向け,より現場の関心の高さやニーズの大きさに合った,また,不得意な分野を推進する上で役立つ取り組みを目指していく。
  クラフトパルプ特有の7つの重大災害および2つのリスクについて対策状況を調査した。全体としては事故防止,再発防止に適切に取り組まれているが,今回の調査が,先進例を参考にし,自らの現場を見直す機会となり,作業者の安全確保にいくばくかでもお役に立てることを願っている。
  「安全」「環境」「品質」「コストダウン」「生産効率改善」「操業安定・事故防止・老朽化対策」の6分野,51テーマについて現場管理者の関心の高さと具体的な推進計画の有無を調査した。関心の高い共通のテーマ,関心は高いがなかなか関心の高さの割には具体的な推進計画を立てにくいテーマを可視化した。
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工場周辺水域の生物多様性評価の取り組み

株式会社日本紙パルプ研究所 西田 高志

  紙パルプ産業は原料や用水,エネルギーの供給から排出した二酸化炭素の吸収や排水の浄化に至るまで生態系サービス(生物多様性からの恩恵)によって支えられている。そのため,生物多様性が失われた場合,野生生物だけでなく我々の活動にも多大な影響が出ることが知られていることから,生物多様性の保全は二酸化炭素の排出量削減と同様に注目を集めている。しかしながら,二酸化炭素の排出量であれば明確に定量評価することができるが,生物多様性については定義づけが難しく,定量評価する方法は未だ一般化されていない。そのため,企業による生物多様性の保全活動は,「生物多様性を保全するための方法」を数値化または可視化したものが主体となっており,その活動の「結果としての生物多様性」を直接評価した例は少ない。
  当研究所では,日本国内で生物多様性保全の重要性が社会的に認知される以前(1994年)から生物試験法の技術ならびに各種化学分析技術の確立,産業排水の生物影響評価を通じて生物多様性保全に取り組んできた。そして,さらなる先進的な取り組みとして,工場周辺水域の生態調査を実施し,生態学的手法を用いて生物多様性の数値化・可視化を試みたので報告する。
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製紙工場廃棄物のエネルギー転換(WTP)とペレット化

アンドリッツ株式会社 技術営業部 福沢民雄,吉永睦男,吉田 令

  日本は省エネルギー技術において世界をリードして来た。しかし今日は,地球温暖化防止のため,様々な業界で,化石燃料依存からの脱却,CO2排出量削減に向けた,より先進的な方策がとられなければならない。
  エネルギー多消費型の紙パルプ産業も例外ではなく,例えばバイオマスの有効活用などが行われている。ところが,製紙工場より排出される廃棄物を工場内エネルギー資源として自己完結型循環再利用する面においては,更なる技術改良,効率改善の余地がある。
  欧州においては,1)廃棄物の埋立規制,2)廃棄物処理並びに輸送費の高騰,3)化石燃料(石油および天然ガス)の高騰,等の諸般の事情により,製紙工場より発生する廃棄物の回収並びにエネルギー転換に対する研究開発並びに設備投資が活発である。アンドリッツグループは,製紙産業はじめ他産業にも応用,貢献できる環境改善技術,省エネルギー技術,新エネルギー技術の開発に注力し,そうした新技術を実用化している。
  本稿では,アンドリッツグループが有する技術の中から,@製紙工場にて発生する各廃棄物の処理並びにエネルギー転換に関するWTP(Waste to Power)技術,A木屑・廃材・間伐材,廃プラスチック類などを有効利用するペレット化技術,について紹介する。
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バイオマスボイラとその関連設備における耐摩耗・耐食肉盛溶接事例

株式会社ウェルディングアロイズ・ジャパン 技術部 福本 宏昭,後藤 武俊

  近年,製紙業界各社において,流動層ボイラを基軸としたバイオマスボイラ発電設備が重油ボイラの代替設備として導入され,二酸化炭素排出量削減および化石燃料原単位低減に向けた取り組みがなされている。バイオマスボイラとして最適な特性を有する流動層ボイラであるが,一方で,摩耗・腐食による設備の損耗も激しい。当社では,自社製造の溶接材料および溶接装置により,顧客ニーズに合わせた耐摩耗,耐食肉盛サービスを展開しており,バイオマスボイラ発電設備を導入された事業者様からの耐摩耗関連での引き合いを頂いている。本報では,当社が経験した発電系統と各部位の損耗事例および延命策を紹介し,併せて,設備延命のための耐摩耗材および施工法選定の一助としての基礎資料を提供する。
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第78回紙パルプ研究発表会の概要

紙パルプ技術協会 木材科学委員会

  第78回紙パルプ研究発表会は,2011年6月14〜15日の2日間,東京都江戸川区「タワーホール船堀」で開催された。産官学各界からの発表件数は合計37件で,口頭発表が26件,ポスター発表が11件であった。参加者は226名であった。発表内容の概要をまとめた。
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ヘキセンウロン酸除去に効果的なモノ過硫酸処理の排水への影響

三菱ガス化学株式会社 桑原 英子,腰塚 哲夫
筑波大学大学院生命環境科学研究科 梶山 幹夫,大井  洋

  クラフトパルプをECF漂白し,酸性下で抄紙した紙の褪色が問題となることがある。その原因の一つがパルプ中に残存するヘキセンウロン酸(以下,HexA)であり,モノ過硫酸(カロ酸,H2SO5,以下,MPS)がそのHexAを効率良く除去する薬剤であることが明らかにされた。しかし,MPSは安定性があまり良くないため,これまで工場では使用されなかった。近年,MPSの工業規模での製造方法が確立されたことから,MPSはクラフトパルプ漂白の第一段階の漂白薬剤として使用され始めた。一方,このようなMPSによる効率の良いHexA除去は排水の環境負荷増大とパルプ収率の低下をもたらすことが懸念される。そこで,使用薬剤の違いによる排水の環境負荷の比較を行うため,MPS処理,高温酸処理(以下A*処理),および二酸化塩素処理(以下D処理)におけるHexA除去量,K価低減量およびろ液中のTOC濃度の関係を求めた。その結果,MPS処理時に系外に排出される有機物量はA*処理やD処理時よりも小さいことがわかった。また,除去されたHexA量に対してろ液中のHexA由来物質から換算されるHexAの量は,A*処理の場合ほぼ同量の関係であったが,MPS処理とD処理ではパルプ中から除去されたHexA量に対してろ液中のHexA由来物質から換算されたHexAの量はかなり少なかった。この結果によりA*処理とMPS処理では薬剤とHexAとの反応機構が異なることが示唆された。また,排水中の有機物濃度はD処理>MPS処理だったことからD処理によりHexAは分解除去されて洗浄水中に排出されるが,MPS処理ではHexAが分解するのみでパルプ中に残存すると推察をした。さらに,クラフトパルプを完全漂白した場合,MPSを導入したECF漂白シーケンスの総発生COD量は小さかったことから,MPS処理を導入した漂白方法は環境負荷が少ない漂白方法であることが明らかとなった。
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