2011年9月 紙パ技協誌
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第65巻 第9号 和文概要


パルプ漂白研究の今と昔

王子製紙株式会社 開発研究所 岩崎  誠

  筆者が,その開発に関係した,
  1)  中濃度酸素漂白(中濃度パルプの酸素漂白としては,
  わが国で始めて苫小牧工場に導入されたが,当初の脱リグニン率が達成できず苦労し,最終的に確立)
  2)  キシラナーゼ処理漂白(LUKPを自製したキシラナーゼで処理をして,
  後段の塩素添加率を低減することを目的に,わが国では最初であり,世界でも酵素を
  自製して行なう試みは始めて)
  3)  ECF漂白での退色問題と対応(L材のECF晒に変換した際,ある状態での退色が
  問題となった。それの原因究明=ヘキセンウロン酸と,それに対する対応策を見出し,各工場に導入した)
の話と,その後に,若手の頑張りによって,酸素漂白では三段酸素晒,キシラナーゼ処理の排液からのキシロオリゴ糖の製造の検討,退色原因物質であるヘキセンウロン酸を効率よく除去でき,漂白薬品の削減にも効果のある過硫酸処理の開発についても述べる。
(本文2ページ)


KP操業技術アンケート調査結果(その1) 未晒工程

紙パルプ技術協会 パルプ技術委員会
王子製紙株式会社 渡部  司,内田 洋介
北越紀州製紙株式会社 田中 哲也

  パルプ技術委員会では,紙パルプ業界内での技術情報の提供及び共有を目的に2009年度(2009年4月〜2010年3月)のKP操業状況について国内30KP工場を対象にアンケート調査を行い,得られた結果を取り纏めたので報告する。前回データを取った1998年は,ダイオキシン対策として全国各工場の漂白設備をECF化へ移行し始めた時期であったのに対し,今回の調査はECF化がほぼ完了した時期にあたる。
  報告内容は以下のとおりである。
  1)  パルプ品種別生産量と使用樹種について
  2)  チップの受入基準と前処理について
  3)  蒸解工程では,蒸解方式,連釜能力,蒸解条件,安定操業対策等について
  4)  洗浄・精選工程では洗浄段数・洗浄機形式及びノット処理について
  5)  酸素脱輪リグニン工程及びその後の洗浄設備については,酸素脱リグニンの方式,
  操業条件,洗浄管理指標等について
  6)  未晒工程まとめ
  前回1999年に実施されたアンケート報告との対比を中心に報告する。
(本文9ページ)


KP操業技術アンケート調査結果(その2) 漂白工程およびアフター処理(晒再選)工程

紙パルプ技術協会 パルプ技術委員会
日本製紙株式会社 浅野 康雄

  パルプ技術委員会が実施したKP操業技術アンケート調査結果報告のうち,漂白工程およびアフター処理について報告する。BKP工程は28工場,48系列(うちL:29系列,N:15系列,L・N切替え:4系列)あり,酸素脱リグニン工程がすべての系列で設置されていた。
  ECF漂白の系列は40系列,前回調査時の3系列から大幅に転換が進んだ。漂白シーケンスは3段と4段が多く,ほぼ80%を占める。トップステージは25系列がD段であるが,A段とZ段も計15系列あった。80%の系列でアルカリ抽出段を過酸化水素または過酸化水素と酸素で強化し,また,90%以上の系列で過酸化水素が使用されていた。一方,ハイポの使用系列が11系列あったが,コンベンショナル漂白に限られた。
  漂白工程入口カッパー価はLBKP10.0,NBKP12.0で前回調査時と変わらなかった。ECF工程の全有効塩素原単位はLBKP33.4kg/t,NBKP47.0kg/tでコンベンショナル漂白より高い数値であった。COD発生量はLBKP11.8kg/t,NBKP12.7kg/t,前回調査時よりも改善した。
(本文20ページ)


カサ比重の低いチップを用いた連続蒸解釜操業の最適化
メッツォペーパージャパン株式会社 ファイバービジネスライン プロセス技術 具   延

  カサ比重の低いチップを用いた連続蒸解釜の操業では,チップシュートの液レベルが変動しやすいこと,及びそれの制御が難しいことがある。蒸解釜の操業を最適化させるために,チップのカサ比重に応じてチップシュートの充填率を任意に調整できるCOMPACT FEEDTMを取り入れることによってこの問題を解決できる。釜の全横断面に渡る温度・アルカリプロファイルをより均一に保ち,釜上部でチップコラムを均一に形成させ,より均一な蒸解をさせるには,COMPACT COOKINGTM G2蒸解システムの取り入れが有効な手段である。DiConnシステムの導入により,より多くのフラシュ蒸気を発生させ蒸気原単位を低減させる。また,黒液中の固形分濃度が上げられエバで黒液濃縮に使用する蒸気が減らせる。
(本文31ページ)


KP操業アンケートに対するAndritz社ファイバーライン技術の提案

アンドリッツ社 技術営業部 第1グループ 萩原 幹児,木田 裕己

  頂いた国内KP操業アンケートから多くの重要なポイントが見られた。
  この10年間いくつかの工場では設備の更新及び大型化は進んでいるが,未だ多くの古い設備が更新時期を過ぎているにも関わらず使用されている現状が見られた。コストダウンの一環として原料であるチップ材の大きな変更が行われている。省エネに対する工場の取り組みも大きく進んでいるが,原油の価格は上がり続け,蒸気,電力を含めさらなる省エネに取り組むことが操業現場には求められている。
  本原稿では,Andritzの最新KP技術の紹介,及びKP操業アンケートに記載されている意見や要望に対してAndritz社が所有しているファイバーラインについて省エネ技術をいくつか紹介する。
(本文36ページ)


白液電解ポリサルファイド蒸解法

日本製紙株式会社 総合研究所 黒須 一博

  白液の電気分解によるポリサルファイド(PS)製造技術,および蒸解工程をはじめとするクラフトパルプ(KP)プロセスへの,この技術の応用について紹介する。
  KPにおいて収率の向上は重要なテーマであり,古くからPS蒸解が実用化され,また修正蒸解が実用化,発展してきた。しかしながらこれらの要素を単純に組み合わせることは合理的ではなく,完成度の高い収率向上技術の実現を求めて,当社では新規PS製造技術として1996年より白液電解法の開発に取り組んできた。本法では極めて高効率でPSを生成することができると共に,高純度の苛性ソーダが副生するという特徴があり,白液の分割添加を基本とする修正蒸解と組み合わせることで,理想的な収率向上技術となる。また副生する苛性ソーダは,酸素脱リグニンなど蒸解以外の工程にも活用でき,非常に完成度の高いKPプロセスを実現できる可能性がある。
  本稿ではこれらの具体例やアイディアと共に,白液電解の技術的な課題と,その解決に取り組んできた開発経緯について述べる。
(本文42ページ)


新漂白剤「モノ過硫酸」のオンサイト製造およびパルプ漂白への応用

三菱ガス化学株式会社 東京研究所 腰塚 哲夫

  我が国の本格的な無塩素漂白(ECF漂白)は1998年に北越製紙叶V潟工場で始まった。その後,各社もECF漂白への転換を開始した。ECF漂白方法としては,二酸化塩素,オゾン,酸素,過酸化水素を組み合わせた漂白シーケンスが採用された。このECF漂白方法の問題点として,製品の褪色性が悪化することが明らかになった。特に,酸性抄紙,パルプ中のヘキセンウロン酸,硫酸バンドの3者が揃うと褪色性がより悪化する事が分かった。我々はヘキセンウロン酸を効率的に除去できる薬剤について検討した結果,モノ過硫酸が効率的に除去できることを見いだした。モノ過硫酸は高濃度過酸化水素と高濃度硫酸を反応させて生成させることができるが,反応熱が大きいこと,腐食が大きいこと等の問題により今まで工業的に連続的に製造する方法は確立されていなかった。我々は,これらの問題を克服して工業的に連続的に製造する方法を確立した。この方法を利用した世界で初めての実用装置が,王子製紙兜x岡工場で採用された。
  その後,モノ過硫酸を導入した漂白シーケンスは,1)褪色問題を解決する,2)コストダウン,3)パルプの高白色度化,4)生産増が可能である,等の特徴が認められ,2工場で採用され,更に2工場で採用される見込みである。
(本文48ページ)


GL & V/川之江からの省エネルギー技術提案
―少ない投資で大きな効果―

川之江造機株式会社 営業部 矢野 順一

  省エネルギー・省資源の重要性が強く認識され,あらゆる産業において強力に推進されはじめてから既に久しい。日本の産業界においても,広く省エネルギー・省資源技術の導入と実施がなされ,顕著な成果をあげていることは周知の通りである。国内の紙パルプ産業界においても,バイオマスボイラーの導入をはじめとした省エネルギー・省資源技術により,大きな成果をあげている。今回,GL&V/川之江造機は,比較的小さな投資で,すぐに効果を発揮し,投資回収期間の短い省エネルギー技術を紹介する。
(本文55ページ)


「Direct TorqueTM測定方式」及び高品位「メタル対メタル・シール」装着新型回転式パルプ濃度計

メッツォオートメーション株式会社 プロセスオートメーションシステム事業部
土肥 清幸

  濃度計の中で回転式タイプは,過去60年以上に亘りパルプ&製紙工場では非常に多くの取付け箇所に率先して選定されてきた歴史がある。これまで,多くの濃度計が市場に導入されて来たが,その測定原理はどれも根本的な箇所は改善されずそのままであった。
  今,特に性能と保守の技術的改革の時期にきており,抜本的によりよい測定方式に基づいた解決策が求められていると言える。
  そのためには,これまでのトルク変位測定の原点であった「Force balance=力平衡方式=コイル励磁,背圧バランス(=ブルドン管又はベローズ)」の概念に頼らず,新しい概念に基づいて開発をする必要性があった。
  今般,メッツォはパルプスラリー内で生じた剪断力をトルク特性として変換する際に,従来その変位を捉えるための基準になる力学的な作用点(支点)に使用されていた弾性ラバーに改善の余地があるということに焦点を当て,その解決方法を見出すに至った。それはシール材の硬度を上げれば解決するというものではなく,「シール材は性能と同時に回転変位を生じさせる機能をも持ち得なくてはならない」という通常は矛盾した理論の中に答えがあった。
(本文59ページ)


連続走行紙における剪断ジワ発生要因の解析

王子製紙株式会社 基盤技術研究所 小林 孝男

  抄紙機や輪転機などの連続走行紙(巻取紙)の搬送において,紙要因によるシワのトラブルはその発生メカニズムが判然としないため対応に苦慮する場合が多い。そこで,シワがローラに乗り上げて折ジワにつながる前段階としての剪断ジワが,紙要因で発生する条件について,紙の走行性の観点からFEMを用いて理論的な考察を行った。
  その結果,配向角の傾きやテンションのプロファイルといった紙由来の要因により,走行紙の横移動を生じる可能性があることが判明した。これは,張力が負荷されることによって紙が駆動ローラ上で剪断変形し,その状態のまま摩擦搬送されることによって起こると考えられる。
  さらに,紙の張力と横移動によって生じた剪断ジワが,ローラ上に乗り上げて折ジワへと成長する過程を解析する手法についても検討を行った。シミュレーションによって幅広の紙で折ジワを再現するには,膨大な要素メッシュ数を必要とするが,シワが乗り上げる場合に紙が塑性変形することに着目し,弾塑性解析を応用することで折ジワの発生を追跡可能であることを示した。
(本文64ページ)