2011年3月 紙パ技協誌
 
第65巻 第3号  和文概要


プロセスのトータルチューニングによる装置安定化
―オペレータのスキルアップによる総合的な取り組みについて―

出光興産株式会社 製造部 石油技術センター 藤井 憲三

  装置の安定化は,運転の効率化,生産性の向上,品質の均質化,安全性の確保に繋がり,装置産業にとって重要な要素である。プロセス産業の運転の根幹を占めているプロセス制御技術は,社会環境の変化や技術進展に伴い急速に高度化している。このような状況下で,高度制御と呼ばれるモデル予測制御手法が大型プロセスを中心に導入されている。導入と同時に制御の基本であるPID制御は高度化と密接に関係した技術としてその重要性が見直されている。また,直接導入対象の装置ではないが制御のレベルを向上させたいと言ったニーズが高まっている。筆者らはこのような観点から,PIDパラメータのリチューニング問題を明らかにし,装置を安定化させる目的で近年活発に取り組んでいる。その結果PID制御の制御性能が向上し,プロセスの運転に費やすオペレータ負荷の低減や装置のパフォーマンス向上の具体的な例が現場から報告され始めている。一方,この様な制御技術に対し,DCS更新時のタイミングで新たに,制御ループの見直しを行い新たな技術基準を用いて設計することにより,制御の性能や安定性を大きく改善するアプローチを開始している。このリエンジニアリングの具体的な内容は,全ての制御ループの制御ループの健全性(位相特性)を見直し,最適に設計することである。また,チューニングに際しては,数多くのループを所定の期間に実施しなければならない為に,迅速に実施する必要がある。そこで,チューニングを2つのステージに分けて迅速かつ正確に実施する手法を開発し,実際にスチレン装置(以下,SM装置)に適用し,通常のPIDパラメータ同定方式の手法に比べ,数倍の速度でチューニングできることを検証した。また,DCSの更新時と合わせて実施することにより,10%のループ数の設計変更も平行して実施できた。このようなアプローチにより,単純更新であったDCSに安定化(省力化)と省エネの付加価値を付与することができ,低コスト,高性能型の手法の有効性が確認できた。
(本文14ページ)


リアルタイム原単位表示システム構築をめざし

王子特殊紙株式会社 東海工場 施設動力部 青木 正充

  特殊紙業界の昨今の状況では,原材料コストの上昇に加え,顧客の細かい要求に応えるためには,より一層少量,多品種の生産とならざるを得ず,いかにして効率的な生産を行うかが,課題となっている。
  このほど,横河電機PI Systemを導入する事により,プラントの生産・運転状況に関する必要な情報を計装・制御システム(DCS・PLC)経由でリアルタイムに収集,蓄積し,集中的に管理を行い,さらには原単位(コスト)を見える化することにより,製造現場のコスト意識をあげ,運転を最適化する取り組みをおこない,改善効果を確認することができた,実例を紹介する。
(本文19ページ)


QCSキャリパー計の最新技術

日本製紙株式会社 石巻工場 工務部 菅原  隆,小林 徳幸

  抄紙プロセスにおいて,紙厚管理は,最重要課題の一つである。従って,オンラインにて品質を測定するQCSにとって,キャリパー計は重要かつ不可欠なセンサである。しかし,従来の両面接触式キャリパー計では,紙の両面を挟み込んで紙厚を測定するため,穴や傷などの紙面へ与える影響の問題,接触子の磨耗や汚れによる測定精度の悪化の問題があり,長年に渡り測定方式の改善を要求する声が多かった。QCSメーカー各社は,これらの問題を解決するため,光学原理を応用して紙を挟まなくても測定ができる非接触式キャリパー計のリリースを開始し,国内におけるQCSの実績が多い横河電機も新型キャリパー計を発表した。それは,共焦点光学系及び光の色収差を応用して紙厚を測定する光学式キャリパー計(Optical Caliper計,以下OC計)であり,紙面へのマーキングや傷,センサ接触子の磨耗や汚れの堆積など保守上の問題を改善することが期待できる。
  本稿では,横河電機製OC計を石巻工場の最新鋭マシンである,N6M/CのQCSへ導入したので,その経緯と測定状況について報告する。
(本文24ページ)


シーケンサの最新技術と当社取組み

三菱電機株式会社 名古屋製作所 FAシステム部 堀  誠司

    今日の製造業では,グローバル競争の激化に伴う製品価格の下落,製品ライフサイクルの短期化などにより,生産設備に対するより一層のコストダウンや生産効率化が求められており,オープン化・マルチベンダ化が可能で,拡張性・柔軟性の高いシーケンサへのニーズは増大している。
  当社はこのようなニーズに応えるべく,シーケンサの高機能化,高性能化,品揃えの拡充,信頼性強化等を行い,FA分野での用途拡大・採用拡大を図ってきた。また,最近では生産設備だけに留まらない,生産現場全体のトータルコスト削減を実現する仕組みも必要とされており,シーケンサでもこのような要望を見据えた取組みを行っている。
  本稿では,シーケンサシステムの中核をなすCPU,ネットワーク,エンジニアリングソフトなどの最新製品及び,ループ制御とシーケンス制御の同時実行が可能な計装シーケンサを紹介し,生産現場のコスト削減に向けたシーケンサの取組みについて述べる。
(本文29ページ)


現場業務へのIT安全導入事例紹介

株式会社日鉄エレックス 営業本部 安全IT推進グループ 木吉 英典

  当社は,平成18年から約4年間にわたり,厚生労働省,労働安全衛生総合研究所,日本鉄鋼連盟と共に,主として装置産業職場におけるリスク低減の管理的対策の一つとして,『IT安全』の検討〜実証試験〜普及活動に関わってきた。
  その中で,IT機器・システムの機能と安全作業との関係について検討を加えながら,当社を含む多くの製造現場の安全作業実現に向けて取り組んできた。
  本報告では,まず,『IT安全』を導入の立場で紹介し,当社を含む様々な現場業務に導入した下記4つのIT機器システムについて,特徴や当社での導入ポイントなどについて紹介すると共に,クレーン作業への総合的な活用例を紹介する。
  ・教育訓練支援システム「e杖くんLite」
  ・同時多極通信,一斉放送システム「EMS ip」
  ・防爆型無線IP電話「e防爆IPフォン」と防爆無線LANアクセスポイント「e防爆Lite」
  ・騒音抑制型イヤホン兼マイク「e耳くん」
(本文36ページ)


2M/C DCS更新事例

中越パルプ工業株式会社 高岡工場 川崎 通孝

  2M/CにDCSを導入してから22年近く経過し保守上の問題等から数回,更新を行っている。1996年に導入した横河電機製μXLシステムは,2000年に受注停止,2010年には保守が終了となる。また,操業で重要な制御として使用しているパネル計器(電子式,空気式調節計),現場型調節計は設置から20年近く経過している為,更新又は整備が必要であった。操業安定の面から近年で故障対応が困難と考え2009年10月秋季停止時に電子式,空気式調節計を撤去し横河電機製CENTUM VP Smallへの更新を行った。
  B/M計と同メーカのDCSを導入したことによりシステムが統合され,幅広いソフトウェアを作成することが可能となりオペレータの監視,操作効率の向上となった。また,帳票機能を強化したことにより操業状態の管理,突発故障時の原因追求に必要なデータを容易に解析できるシステムとなり操業安定を継続する為に幅広く活用している。
  ここでは,今回導入したCENTUM VP Smallの更新事例を報告する。
(本文43ページ)


パルプ濃度計の校正・検定について

大王製紙株式会社 三島工場 電気計装部 長尾 敏之

  せん断応力を測定原理とする濃度計は通常使用する一般計器と異なり計器校正が難しい。しかしパルプ配合の適正さを維持するためにはこの濃度計の機能維持が重要な要因である。
  当社はパルプ濃度の適正化のため,濃度計およびプロセスに関する問題点抽出とその対策について長年にわたり取り組んできている。これまでは濃度計設置場所(直管長),制御方法について改善を進めてきた。近年パルプ配合適正化のため流量計の精度検査を実施してきたが,本年の取り組みの中で新たに計装として濃度計の性能保証を目的にせん断応力を測定原理とするすべての濃度計について錘検定を開始した。全濃度計をA,B,Cランクに区分けし,Aランクは1年,Bランクは3年,Cランクは5年周期で錘検定を計画し現在進行中である。対象機種は三島工場の中で使用台数の多い「Metsoブレード式」,「Metso回転式」,「Dezurik回転式」について錘テストの実際について発表する。また三島工場での使用実績が特に多いMetsoブレード式濃度計について「温度特性」のデータについても報告する。
  本発表に先立ち,これまで当社で実施してきた濃度計に関る問題点と改善事例について,DezurikおよびMetsoブレード式濃度計の取り付け位置(直管長),プロセスに起因する濃度変動事例を併せて説明する。
(本文50ページ)


電気制御システムと計装制御システムの融合

東芝三菱電機産業システム株式会社 産業第二システム事業部 システム技術第二部
太田  宏,上野  敬

  製紙工場等の生産現場において,電気制御システムと計装制御システムはあらゆる設備の運転に必要不可欠なものとなっている。制御対象が大きく異なることから両者の仕様と用途は区別されている。この異なる2つのシステムが融和し,協調できる部分の可能性と電気・計装の統一プラットフォームである鞄月ナ製ユニファイドコントローラnvシリーズ及び高速オンラインデータ収集装置(ODG)の適用について説明する。また,電気・計装の操業データを一括監視・管理することを可能としたリアルタイムデータベース(PLANETMEISTER)の電気・計装システム融合に適用できるGUI新機能の紹介を行う。
  一般産業分野では,電気担当と計装担当の部門統合が近年推進されているが,産業システムの電気・計装監視・制御のエンジニアリングを業務の範疇としている当社(東芝三菱電機産業システム梶jでは,電気・計装監視・制御,エンジニアリングの営業・技術・設計・品質管理が業種毎に組織構成されており,電気・計装・計算機技術者が集結しているため,融合システムの検討・提案に適した環境が整備されている。この環境により電気・計装統一エンジニアリング及びエンジニアの統合についての取組みを紹介する。電気・計装制御システムが互いの特長を共有することにより,特徴ある融合システムを構築することが可能となり,新設,増設,更新等あらゆる場面にマッチするシステムソリューションを提案することができる。加えて,統一されたハードウェアプラットフォームであるユニファイドコントローラnvシリーズは,従来機種と比較して性能が向上しており,電気・計装両分野での適用範囲拡大の可能性が今後も期待される。
(本文54ページ)


高性能フィルム製造プロセスにおける効率改善と歩留まり向上ソリューション

横河電機株式会社 営業本部営業技術統括部 山本 邦雄

  一般的に高性能フィルムは,液晶・半導体・電池などの市場で使用されている材料である。高性能フィルムを製造する会社では,他社との競争を勝ち抜くためには,フィルム製造プロセスにおいて迅速な改良・改善をおこなうことが必須である。
  現状のフィルムプロセスは,従来の化学産業と同様の「バッチ型」のプロセスと,「組立加工型」のプロセスを組み合わせた形態であり,各会社の工場で,バッチプロセスの制御部分には,DCS(もしくはPLC計装),組立加工型プロセスの制御部分には装置の組み込みPLCと検査機が利用されている。
  従来の組立加工部分の装置は,各々がスタンドアローンで監視・制御を実施しており,各装置が持っているデータの連携はおこなわれておらず,一部人手によって紙に実績データを記述している。
  市場要求に対応するためには,収集できる情報は可能な限り自動または手動で収集し,一箇所に集め製造にかかわる人たちみんなが状況を見えるようにして,製造・品質管理・生産データを迅速に活用できる仕組みを構築することが必要となってきている。
つまり,歩留まり向上・死蔵在庫の低減などの生産性向上やクレーム処理・短納期要求などの顧客ニーズに迅速に対応することで,他社との競争優位性が構築でき,他社との競争を勝ち抜くことができるようになるのである。
  本稿では,高性能フィルム製造管理プロセスで競争優位性を構築するためには,どのような課題がありどのように解決できるのかについて述べている。
(本文61ページ)


計装工事・計器メンテにおける現状と課題

旭国際テクネイオン株式会社 技術本部 沖本 正則

  計装工事及び計器メンテナンス業界は,経済発展の波に乗って成長し,日本経済の苦難の時期を乗り越えて来たが,今後の経済収縮期に向けて設備投資の減少に伴う工事の減少や厳しいコスト削減要求等,難しい舵取りの必要な時期を迎えている。当社は計装工事/計器メンテナンス/OEMでの装置メーカーの集合体の会社として,石油化学他様々な業界で,サービスを提供してきた。本稿では,工事会社としての現状の課題や今後の取り組み等について説明する。
(本文66ページ)


カメラを利用したセンサ ―カメラ撮影技術を利用したオンラインQCSセンサ―

ハネウェルジャパン株式会社 紙パルプ営業技術部 阿久津卓也

  ハネウェルの紙パルプ部門では,QCS用オンラインセンサの開発は常に行なわれてり,これまでに数々の新製品を発表している。紙に媒体を透過または反射させる従来方式のセンサは,これまでに抄紙機で多数採用され製紙会社殿に少なからず貢献させて頂いたのではないかと考えている。
  しかしながら視覚による評価が必要となる地合,繊維配向,表面性等は,これまで光学方式や圧力感知式のセンサをラインナップしてきたが,測定し表示する数値と操業オペレータがイメージする内容とを完全に一致させる事は,難しい状況であった。勿論各種のラボ計との相関が出ていてもこの問題は発生する。それは規格として定義されている評価法と操業オペレータが意図している品質基準が若干異なっている事からきているからであろう。
  そこでハネウェルでは,QCSのオペレータステーションで,これらを視覚的に表現できないかと考え,カメラ方式のセンサ開発に至った。勿論従来から定義されている規格による評価を否定するものではなく,それらの測定値や弊社独自評価数値等も表示し,その上で撮影した写真イメージを直接操業者にスキャン毎に提供するものとなっている。ここでそのカメラを使用した,地合,繊維配向,表面評価3種類のカメラセンサを紹介させて頂く。
(本文71ページ)


印刷ブランケットの表面構造が印刷光沢度とインキのタックへ
及ぼす影響について

日本製紙株式会社 総合研究所 川島 正典
メイン大学 ダグラス W. バウスフィールド

  表面構造が異なる印刷ブランケットを用いて,印刷時の速度やインク量を変化させて印刷光沢度とインキのタックへ及ぼす影響を調査した。その結果,印刷光沢度はブランケットの表面構造によって大きく影響を受け,粗い表面を持ったブランケットでは印刷光沢度が低く,逆に平滑な表面では印刷光沢度が高いことが分かった。
  またそれぞれのブランケット上での印刷インキにかかる圧力の変化を経時で測定したところ,インキタックはブランケットの表面粗さにより影響を受け,表面が粗いブランケットではインキのタックが低く,逆に表面が平滑なブランケットではインキのタックが高くなることがわかった。さらにシュミレーションモデルを組み立てて解析を行い,印刷直後のインキフィラメントの高さを実際の測定データと比較したところ,ブランケットの表面粗さと印刷光沢度の両者に高い相関があることが分かった。
(本文76ページ)