2011年2月 紙パ技協誌
 
第65巻 第2号  和文概要


通紙エンジニアリングの紹介 ―ウェットからリールまで―

株式会社小林製作所 製紙機械設計部 渡邉 啓太

  近年,通紙システムは,抄紙機の高速化に伴いウェットパートからリールまでの全ての場所における対応が問われると同時に,確実な通紙が要求されている。また,通紙時間を短縮することは,製品ロスを減らすことに直結し抄紙機の効率化に寄与できる。簡単な操作で誰もが確実に通紙を行なえるようになれば,省力化(究極的にはこの意味での省人化)につながる。さらに,これらの要求に応えることは,オペレータが通紙テールに触れる機会をできるだけ減らすことになり,安全に直結する。弊社は,抄造品種,操業条件,マシンアレンジメント等を考慮した,抄紙機の各パートにおいて要求される様々なアプリケーションに対応する通紙機器を有しており,最適な通紙機器の選択およびアレンジを提供できる通紙エンジニアリングを有している。
 弊社が日本の製紙業界において長年にわたり蓄積してきたプロセスノウハウと熟練技量,および弊社米国提携先Paperchine社が旧ベロイト社技術を継続発展させたものとの融合である,ウェットからリールまでの通紙エンジニアリングを紹介する。
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ドレネージ装置の基本概念と省エネの可能性

本山振興株式会社 装置事業部 寺島  仁

  ドライパートは,密閉フード,給排気,熱回収設備の充実もあり,近年,格段に乾燥効率が向上している。
  ドレネージ・システムとフード・ベンチレーションシステムは,湿紙の乾燥において密接な関係があり,その条件に沿ったドレネージ・システムでなくてはならない。ドレネージ・システムの基本概念に変化はないものの,その品質やエネルギーコストに重要な役割を果たしている。乾燥能力を最大限に発揮させ維持する為には抄造条件の変化に伴うドレネージ・システムの現状の正確な把握が不可欠であり,それがエネルギーコストの削減にもつながると考え「ドレネージ・システムの基本概念と省エネの可能性」と題し報告する。
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N1マシンの操業経験

王子製紙株式会社 富岡工場 大嶋 紀安

  富岡工場N1マシンは2008年11月より試運転,2009年2月より営業運転を開始し,同年12月には抄速1,650m/min連続操業,日産1,050tを達成した。現在は,1,700m/min連続操業に向け,増速トライアルによる問題抽出,対応を行っている段階である。
  特徴的な設備概要としては,設計抄速(駆動能力)1,800m/min,ワイヤー巾:10,020mm,坪量範囲50〜70g/m2,製品最大取幅9,180mmの薄物塗工紙に対応した高速広幅オンマシンコーターであり,A3,微塗工を中心とした幅広い品質要求に対応すべく,片面ロールコーターとブレードコーター,ソフトカレンダーとマルチニップカレンダーを併設していることが挙げられる。
  本稿ではN1マシンドライセクションに焦点を絞り,設備概要,及び営業運転を開始してから現在に至るまでの操業経験について紹介する。
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N6マシンの操業経験 ―ドライヤーリール―

日本製紙株式会社 石巻工場 抄造部 永田 敬貴

  日本製紙石巻工場のN6マシンは,平成19年11月1日に営業運転を開始後順調に立ち上がり,現在は1,600m/分で主に微塗工紙,A3コート紙の生産を行っている。本マシンはワイヤ幅9,450mm,抄速1,600m/分,生産量1,005t/日といずれも当社最大のオンマシンブレードコータ,オンマシンカレンダのマシンである。N6マシンは既存マシン以上の効率や省力性を追求し数々の新技術を導入することで高い生産性,コスト競争力を有するマシンを目指して建設された。
  本報告ではN6マシンのドライヤからリールパートに関する最新設備概要及び,その操業経験について報告する。
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新潟工場 N9マシンの操業経験

北越紀州製紙株式会社 技術開発部 吉川  磨

  新潟工場N9マシンは,北越紀州製紙4台目の大型オンマシンコート抄紙機として,2008年9月1日に営業運転を開始した。N9マシンは高速・広幅化による高い生産性の実現をコンセプトに,新潟工場6,7,8号機で培ってきたオンマシンコート技術に加え,オンマシンカレンダーでのA3グロス品質の確立,ギャップフォーマー,タンデムシュープレス,サイザーの操業確立,そして高速対応の通紙装置の安定化等に取組み,日産量,抄速共に順調に伸ばしてきている。
  N9マシンは現在,常用運転最高抄速である1,600m/minを実現しているが,更なる安定操業を目指し,高速抄造故の,様々な課題への取組みを実施継続している。中でも,高速下での安定した通紙性は,マシン効率を追及する上でも重要課題であり,通紙装置のセッティング,通紙方法,通紙設備の管理等,順次改善してきた。その中で,自動化が進んだ通紙設備については,設備の最適なセッティングと,そのパフォーマンスを維持するメンテナンスの重要性は痛感する所である。本稿では,ドライヤーからリールまでの操業経験を,ドライパートの通紙と枠替を中心に紹介する。
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最新板紙抄紙機のコンセプト ―軽量化の流れ―

メッツォペーパージャパン株式会社 エンジニアリング本部 赤澤 貴志

  コンテナボード業界においては軽量化が続いて行くことは明確であり,軽量化(低価格),高速化(高性能・高効率),古紙原料の活用(環境配慮)による原料中灰分の増加の傾向に対する適切な中芯,ライナーボードのコンセプトの選択が必須となる。
  今回紹介するValFlo Pro2層式ヘッドボックス,VacuBalanceフォーミングボード及びValFormerシューブレードハイブリッドフォーマを使用する新しいコンセプトは,軽量コンテナボードの生産を1,400m/minレベルまで速度範囲を引き上げることを可能とし,従来の多層抄き合せマルチフォードリニア方式に代わるコンパクトで高速な手段である。また改造の場合において,ギャップフォーミングより投資コストを低く抑えることができる利点も有している。
  また,Metso社のSymBeltシュープレスは豊富な実績に裏付けされ,搾水能力の向上,ベルトの長寿命化,消費動力の低減が実証されている。
  ValSprayサイザは非常にコンパクトに設計されており,紙パスも垂直に近くできるため,設置スペースが少なくて良い特徴があるため,既存のドライヤを撤去して設置する場合に,従来のフィルムサイザに比較して,省スペースであり,改造投資コストを低く抑えることができる。
(本文25ページ)


薬剤による板紙の操業性向上

ハイモ株式会社 湘南研究センター 境 健自,村田奈穂,古塩弘行,三井翔平

  板紙の生産性向上のため,濾水性を向上させるには,濾水剤により適度なフロックを作ることが有効である。しかしながら,更なる歩留や濾水の向上を求めて,濾水剤用ポリマーの単純な高分子量化を行うと,過度に繊維を凝集させてしまい,地合が荒れるだけでなく,逆に乾燥性や搾水性の悪化が生じたり,紙力に対して悪影響を及ぼすケースがある。
  上記課題に対し,弊社では板紙用濾水剤として単純な高分子量化ではなく独自の合成技術により,ハイモロックFR-740を開発,上市している。さらに歩留剤開発で培った技術も応用し,新規濾水剤(ディスパージョン(DR)タイプとFRタイプ)も開発した。
  FR-740等FRタイプの濾水剤は,特殊な分散型複合化高分子ポリマーである。非常に幅広い分子量分布や電荷密度を実現しており,凝集作用主体の高分子量成分から,凝結作用主体の低分子量成分まで持ち合わせている。その結果,過度に凝集せず締まった均一なフロックを形成する。よって,濾水を向上させつつ,直鎖型高分子カチオンポリマーよりも地合や乾燥性の良いフロックを形成することができる。
  さらに板紙の多様な条件にも対応するために,DRタイプの新規濾水剤は,FR―740よりも凝集力を高めながら歩留剤より凝集力を低め,分子内相互作用を利用して直鎖型ポリマーと異なった特徴を示すように設計した。紙力等への悪影響を軽減し,濾水性と乾燥性において優れた性能が期待できる。本稿ではFR-740,及び新規濾水剤の,板紙に対する効果について報告する。
(本文30ページ)


高速・広幅製紙機械向けカーボンロールの設計と動フレ抑制技術

三菱樹脂株式会社 先端素材事業部 葭谷 明彦
トーカロ株式会社 永井 正也,重村 貞人
サンレイ工機株式会社 山中 正信

  円筒状の炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)をロールシェルとして使用したロールは“カーボンロール”と呼ばれ,鉄,アルミと並ぶ第三のロールとして定着してきた。近年の製紙機械は紙幅10m程度にまで広幅化しており,運転速度は2,000m/minのレベルになっている。広幅で高速という条件は,装置内のロールにとっては正に過酷な条件であり,それを克服するためにカーボンロールが採用されている。しかし,ただ単にカーボンロールを使えばよいと言うわけにはいかない。高速安定運転を実現するためには,適正な設計に基づいて,かつその設計を高度に具現化する製造技術により製造されたカーボンロールが必須となる。
  本稿ではカーボンロールの原料として最適な超高弾性率ピッチ系炭素繊維を用いた高速・広幅製紙機械向けロールの設計の考え方を説明し,次に我々が提案する動フレの抑制技術について具体的な測定データを交えて紹介する。これらを踏まえて面長10mL,抄速2,000m/minの製紙機械向けのロールの設計を行ってみたところ,鉄ロールと比較して,@ ロール径は1/2,A 重量は1/6,B 慣性モーメントは1/25に低下させることが出来る事が分かった。当該ロールを採用することにより,著しい小径化・軽量化・低慣性モーメント化が達成され,製紙機械のコンパクト化,省エネ,そして何よりも安定したロール回転による安定操業に貢献することができる。
(本文35ページ)


紙中薬品の分布状態の分析(V) ―両性紙力剤のパルプ繊維への定着状態の可視化―

荒川化学工業株式会社 開発統轄部 開発推進部 井口 文明,澤畠  忠
同  製紙薬品事業部 研究開発部 榮村 拓史

  従来,製紙用薬品(サイズ剤,紙力剤)の効果の発現は,紙中にどれだけの薬品が存在しているかに左右されるとの考え方があった。一方で,メーカーからは,より少量で効果を発揮する薬品が求められている。そうしたニーズに応えるには,紙への薬品の定着量だけでなく,紙中での微小部位における存在形態と定着状態を調べることが非常に重要であると考えられる。これまで我々は紙中のサイズ剤や紙力剤について分析を行ってきており,効果発現メカニズムの解明に繋がる情報が得られつつある。本報では,両性紙力剤のパルプ繊維への定着状態の可視化を試みた。ポリアクリルアミド系の両性紙力剤ポリマーは,水溶液中において特定の条件(pH,電導度)下で凝集してポリイオンコンプレックス(PIC)を形成すると考えられている。しかしながら,これまで水溶液中における状態は明らかになっていなかった。そこで位相差顕微鏡,及びSPM(走査型プローブ顕微鏡)によるPICの形態,及びパルプ繊維への定着状態の観察を試みた。さらに,顕微ラマン分光装置により,成紙中におけるのPICの分布分析も実施した。その結果,PICの形態やパルプ繊維への定着状態が確認できたため報告する。
(本文41ページ)


帯磁性イオン交換樹脂による色度・溶解性有機物除去装置

伊藤忠マシンテクノス株式会社 佐々木邦康
前澤工業株式会社 根本 雄一

  帯磁性イオン交換樹脂(MIEXR樹脂)は,水中の有機物をイオン交換によって除去することができるため,用水や排水中の有機物や色度が除去でき,海外においては浄水処理の前処理や排水処理として導入されている。
  今回,製紙会社から排出される有機物濃度の異なる2種類の排水を使用し,MIEXR樹脂による有機物及び色度の除去試験を行った。
  その結果,MIEX®処理によって,色度,DOC(溶解性有機炭素),COD(化学的酸素要求量)が除去でき,低濃度の排水では色度が60%,CODが40%程度除去でき,高濃度の排水においては色度が90%,CODが70%も除去することができた。したがって,製紙会社において,排水の再利用やCODや色度対策としてMIEX®処理システムが十分適用できることを明らかにした。
  さらに,本稿では,オーストラリアにおいて実際に製紙会社で稼働している施設についても紹介しており,MIEX®処理システムを用いることで,15%の用水の削減,放流水量の削減が図れるほか,凝集沈澱処理等の他処理システムに比べ省スペース化や省エネルギーも図れることを報告する。
(本文46ページ)


製紙スラッジ焼却灰(PS ash)から微粒子酸化チタンの創製

愛媛県産業技術研究所 福垣内 暁
リンテック株式会社 永島 孝作
愛媛大学農学部 松枝 直人,逸見 彰男

  PS ashに含まれる顔料用酸化チタンの光触媒活性能向上のために,アルカリ処理と酸処理を組み合わせた「微粒子化プロセス」を用いて,PS ashに含まれる顔料用型酸化チタンの微粒子化を試みた。アルカリ処理されたPS ash(Alk―sample)のSEM観察及びXRD分析から,酸化チタンの形態が粒子状から繊維状に変化し,かつ,結晶構造もアナターゼからチタン酸ナトリウムへ変化したことが認められた。Alk―sampleを塩酸,硝酸及び硫酸の3種類の酸で処理したサンプルのXRD分析,XRF分析及びSEM観察の結果,いずれの酸処理サンプルにも,粒子径が10〜14nmのアナターゼ型酸化チタンの生成が認められた。酸処理サンプルのBET比表面積測定を行った結果,いずれの酸処理サンプルとも大きな値を示し,258〜288m2/gであった。酸処理サンプルのアセトアルデヒド除去試験を行った結果,硫酸で処理されたサンプルが,UV照射によるアセトアルデヒドの分解活性が最も高い結果であり,PS ashに含まれていた顔料用酸化チタン(FA―55W)と比較して,アセトアルデヒド減少速度が,9.1倍,CO2生成速度が,3.6倍と光触媒活性能が飛躍的に向上した。塩酸及び硝酸で処理されたサンプルは,硫酸で処理されたサンプルと比較してアセトアルデヒドの分解活性は低い結果であったが,これは,生成された酸化チタンの結晶度の違いによるものと考えられた。
(本文54ページ)