2010年11月 紙パ技協誌
 
第64巻 第11号  和文概要


製紙業界向け表面欠陥検査システム

オムロン株式会社 検査システム事業部 シート検査事業推進課 中田 雅博

  初期の頃のシート表面欠陥検査装置は,欠陥を検出すれば単純にブザーやランプでそれを知らせ,欠陥個所にマーキングをするだけのものであった。オムロンが1989年に開発した欠陥録画システムで欠陥の可視化により現場対応が迅速なったと考える。本稿では,昨今の市場環境の変化と製紙業界向け商品の変化を記述する。また,検査の基本的原理である『欠陥を検出機能』『検査データの蓄積機能・データの活用例』について具体的活用方法を紹介しながら解説する。NWCS・ダートカウンタのような周辺装置の紹介と検査装置を核に結合させたシステムを紹介する。
(本文2ページ)


カンバスクリーナーの操業経験

王子板紙株式会社 富士工場 大川 淳司

  王子板紙富士工場8マシンは中芯原紙を抄造しており,日産は440トンである。近年原料事情などにより,抄紙用具の汚れが多くなり,一部汚れが紙面上に付着することにより再仕上げ・損紙量が増加してきた。再仕上げ・損紙量が増えることにより,仕上げ歩留まりの低下・加工費の増加等コストアップを招いてしまっている。汚れを解析すると,多くはドライパートで発生しており,過去様々な汚れ防止対策(設備改造含む)を実施してきたが,大きく減少させることはできず操業の安定化が図れなかった。
  このような状況のなかで,他工場で実績のあるKGK社のコンビクリーナーを2006年5月に導入したところ汚れ起因による再仕上げ・損紙量が減少した。このクリーナーの特徴は他と比べ超高圧であり,カンバス洗浄能力が高い。
  本報ではコンビクリーナーの導入の経緯と操業経験・トラブル事例及び効果について紹介する。
(本文8ページ)


ウォータージェット式リール枠替装置の操業経験

王子エンジニアリング株式会社 富士事業部 鈴木 智丈

  王子製紙富士工場は,1908年(明治41年)富士製紙株式会社第八工場として操業を開始,長年蓄積してきた古紙再生技術を活かし,一部品種を除き古紙配合率100%での白板紙と印刷用紙の生産を展開している。N2マシンは2001年10月より営業運転を開始,古紙配合両面塗工カード・特板・コート白ボールを生産する当社の主力白板紙抄紙機である。
  N2マシンのリール枠替はスプールにテープを巻き付ける方式(テープ式)を採用しているが,テープの厚み(約1.0mm)でスプール下巻に型が付き,下巻損紙発生の主要因となっている。
  そこで,2009年4月に枠替の安定化及び枠替時の下巻損紙削減による効率向上を目的として,ウォータージェット枠替装置を設置した。本報では,その改造の概要,操業経験ならびに導入効果について報告する。
(本文12ページ)


ValZoneメタルベルトカレンダの適用拡大
―塗工板紙用プレカレンダから非塗工上質紙用仕上カレンダへ―

メッツォペーパージャパン株式会社 岩永  圭

  メッツォペーパー社は紙・板紙の品質と生産効率を飛躍的に向上させるため,加熱ベルトと加熱ホットロールの間で長いニップドウェルカレンダゾーンをもつValzoneメタルベルトカレンダを開発し,市場に投入してきた。このメタルベルトカレンダにより低ニップ圧でかつ両面同時カレンダ処理が行え,良好な品質と嵩のセーブを同時に達成できる革新的な新カレンダ技術を確立した。
  塗工板紙のプレカレンダとしての適用のみならず,近年ではさらに,非塗工板紙への仕上げカレンダ,上質コート紙向けプレカレンダ及び,非塗工上質紙への仕上げカレンダへの適用へと発展している。
  本報ではメタルベルトカレンダでの優れたカレンダリング効果,有益性について報告する。
(本文15ページ)


6マシンリール改造(ソフトドラム)の操業経験

中越パルプ工業株式会社 川内工場 製造部 原口 博一

  川内工場6マシンは,1986年に上質紙マシンとして操業開始し1994年にオール塗工紙に移行し主に微塗工紙の抄造を行なっている。カレンダー設備も稼動当初からのハードニップカレンダーであったが最近の新設マシンを含むオンマシンコータにおいては,高平滑・高光沢・嵩高のニーズに対応できる弾性ロールを使ったソフトニップカレンダーが主流になってきた。
  2009年5月に幅広い品質グレード(高平滑・高光沢・嵩高)の製品をオンマシン仕上で製造するためにソフトカレンダーを設置した。本報告では同時に,幅広い品質グレードの製品に対応するためにリールにソフトドラムを採用したので設備概要及び,その操業経験について報告する。
(本文21ページ)


シリウスリール
―シリウスリールにおける特徴と最新枠替え方式について―

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 塗工・仕上機械技術部 鳥井 理史

  近年,コーターおよびカレンダーのオンライン化,マシンの高速化・大型化により,リールにおいても巻きロール径の大型化に加え,紙の表面性を損なわない適切な巻き取り品質が求められている。それらの要求に答えるべく開発されたのが,Voith社の「シリウスリール」である。巻き取り品質以外に,高い成功率の枠替え装置・システムも生産効率を上げるために欠かせないものである。枠替え装置・システムにおいて次の項目が求められている。
  1)  高い枠替え成功率
  2)  運転条件(紙坪量,マシンスピード)の違いによる影響をうけない
  3)  損紙(紙片,テール,下巻き損紙)が少ない
  Voith社では上記の要求を満足させるために開発された高圧水カット方式による自動枠替えシステム“エコチェンジW”を現行シリウスリールに装備している。本稿では,シリウスリールの構造および特性,可動リールドラム“センソロール”による理に適ったニップ圧制御を説明すると共に,枠替え装置における古くからあるグースネック方式,テーピング方式での課題点を再確認し,従来のエコチェンジWより改良・適正化された新方式のエコチェンジWを紹介する。
(本文25ページ)


最新のB/M計制御技術
―省エネ,生産性向上―

横河電機株式会社 P&Wソリューション部 藤井  誠

  地球温暖化防止に向け,全ての産業に省エネ対策が求められている。紙パルプ産業はコージェネレーションシステムにはじまり,最近ではバイオマス燃料などの非化石エネルギーの利用拡大や,熱回収設備や抄紙設備にエネルギー効率の高い装置を導入するなど,継続的な改善がなされている。
  B/M計は,抄紙工程において紙品質を測定・制御するシステムとしての役割を担ってきたが,近年では省エネルギーや生産性を向上するための機能に期待が高まっている。弊社のB/M計は日本のお客様の操業環境に適した各種機能を開発してきたが,本稿では,多くの抄紙機に共通するテーマとして,紙厚プロファイル制御と水分プロファイル制御について省エネと生産性向上の観点から実例を交えて紹介する。
  新紙厚プロファイル制御(有限整定応答制御)は既存のアクチュエータを使用した場合においても,ダイナミックかつベストな操作を実現することで,紙厚プロファイルの整定時間を短縮し,生産性向上に貢献する。紙厚プロファイル操作端 インダクションプロファイラは,小型で大容量の新型コイルにより,高速応答を実現した。出力リミットの制約を減らすことが可能なため,上記の新制御方式の性能をさらに引き出すことができる。
  水分プロファイル操作端 エアウォータプロファイラは,特長的な三流体スプレー機構によりドライヤの後段に設置することが可能である。多量の水を噴霧する従来の加湿から,最小限の噴霧量におさえる補湿を実現し省エネに貢献する。
(本文30ページ)


ドライヤーパートの変遷とカンバス

敷島カンバス株式会社 技術部 田中 基博

  弊社は2008年にドライヤーカンバス製造100周年を迎えた。1908年に純綿平織りの国産初のドライヤーカンバスを製造以来,抄紙機の高速・広幅化をはじめとした技術革新や国内製紙会社の方々の様々なご要望にいち早く対応し,品種バリエーションと品質・サービスにおいては,この分野で国内トップメーカーとしての地位を維持している。
  また最近では,高品質の塗工紙を高い生産性で製造する画期的な大型高速マシンが国内で4台設置された。
  これらのマシンにおいても,弊社の長い歴史で培ったドライヤーカンバスの製造技術と品質設計のノウハウを活かし,高機能カンバスを開発した。ご採用いただいたマシンは,いずれもドライパートでは大きな問題もなく非常に順調にスタートいただいた。
  今回は抄紙機,特にドライパートの技術的な変遷とそれに対応して進歩してきたドライヤーカンバスについて,また最新の高速広幅抄紙機におけるカンバスの必要性能と使用状況について報告する。
(本文36ページ)


カチオン性ポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤による
紙力効果発現機構に関する包括的な研究

荒川化学工業株式会社 製紙薬品事業部,京都大学大学院 農学研究科 榮村 拓史,
京都大学大学院 農学研究科 山内 龍男

  内添法によるカチオン性ポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤(PAM)の添加の強度向上メカニズムを詳細に理解するために,漂白した広葉樹クラフトパルプからの紙の力学的性質に及ぼすPAM含有量と繊維の叩解度の影響,さらに繊維壁内でのPAMの深さプロファイルを幅広く検討した。本研究でのPAMの歩留まりは,叩解度によらず,約1%以下の低添加率レベルでは非常に高かった。しかし,高添加レベルでは叩解度の減少につれて歩留まりは減少した。スパッタエッチングを組み合わせたATR/FT―IR測定,およびESCA測定により,叩解度の増加に伴いPAMは繊維壁のより内側に分布する傾向が示唆された。未叩解および軽度に叩解したパルプからの紙において歩留まったPAMは力学的な結合面積を増加させると共に,結合面積あたりの応力保持能(force holding capacity)をある程度増加させた。他方,高度に叩解したパルプからの紙においてはPAMの添加は光学的接触をさらに増加させたが,繊維間の力学的な結合面積は増加させなかった。力学的単位結合面積あたりの結合強度の増加は,軽度に叩解したパルプからの紙において,PAM添加による強度向上の主要な要因であった。高度に叩解したパルプからの紙においてPAM添加が引張強度の向上にあまり影響しなかったことは,叩解度に伴って繊維の表面上および表面付近のPAM含有量が減少したことに関係する。未叩解および軽度に叩解したパルプからの紙において,PAM添加による引裂き強度の増加は結合面積の増加よりもむしろ力学的な単位結合面積あたりの結合強度の増加に由来するだろう。他方,中程度および高度に叩解したパルプからのよく結合した紙に対して,歩留まったPAMは結合面積の増加にもかかわらず,一定の引裂き強度を,あるいはむしろ引裂き強度の低下をもたらしたが,これはおそらく応力集中が原因であろう。
(本文43ページ)