2010年10月 紙パ技協誌
第64巻 第10号  和文概要


古紙処理用省エネルギー型高性能スクリーンの紹介
―MAX(0,1,2)及びMaxSaver―

相川鉄工株式会社 技術部 奥村 順彦
技術営業部 安田 圭児

  相川鉄工はスクリーンメーカーとして今まで数多くのスクリーンを開発,販売してきた。その中で得られた技術を生かし,新しいアウトワードスクリーンとしてMaxFlowスクリーンシリーズを開発した。このスクリーンのコンセプトは大容量処理,高除塵率,低動力原単位である。一見シンプルに見える構造であるが,この構造こそ相川鉄工が培ってきた技術の賜物であり,無駄を省き,機能性を追及したデザインである。内蔵するバスケット,ローターはNW Super―2,GHCローターを標準としている。除塵効果が高く,大容量処理が可能なNW Super―2バスケットと低周速でも高いバキューム力,優れた目洗い効果を発揮するGHCローターを採用することで非常に小さな動力原単位で高性能なスクリーンを実現している。MaxFlowは多種多様の操業条件,設置目的に対応可能なよう,4種類のスクリーンが用意されている。本書では各MaxFlowスクリーンシリーズの特長,適用例を報告する。
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インテンサパルパ導入による省エネルギー実操業報告

株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー 原質機械技術部 鈴木 隆之

  古紙処理システムを構成する様々な機器の中で,パルパは多くの動力を消費する機器の1つであり,システムの最初に位置するパルパの運転効率が上がれば,システム全体の動力原単位の削減に繋がる。
  昨年度佐々木賞を受賞した弊社の低濃度パルパ『インテンサパルパ』は,従来のパルパと比べて低い動力原単位で粗選スクリーン出口並みの品質が得られるため,1次丸穴スクリーンをバイパスし,直接スロットスクリーンで処理ができる。またインテンサパルパは動力原単位が従来のスロットスクリーンの約4分の1まで削減可能になったLPスクリーンと組合せ,システムを簡素化することで,古紙処理システムの補機類含めた動力原単位を大幅に削減することができる。
  実際にこのシステムを採用され,大幅な省エネを達成した日本大昭和板紙株式会社秋田工場様の省エネについて紹介する。
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ニッププロファイルのオンライン・モニタリング
―ロールカバー埋込み式圧力センサー―

ゼリウム・テクノロジー社 ウイリアムS.バターフィールド

  抄紙機操業中,回転しているプレスのニッププロファイルを測定するシステムはこれまで存在しなかった。スマート®システムは圧力センサーをロールカバーに埋め込むことによって,世界で始めて操業中の実際のニッププロファイルのオンライン・モニタリングを可能にした。
  プレスニップの不具合は,紙品質・操業効率の低下,操業コスト上昇など直接的に生産性を低下させる原因となるため,ニップ状態のリアルタイム・モニタリングが可能なスマート®システムは,抄紙機の操業安定化・効率化を実現するために有益なツールとなる。
  本稿に於いてスマート®システムによってニッププロファイル不具合の原因の特定ならびにその対応がリアルタイム・安全・容易・効果的に実行できるようになり,生産性が改善された事例を紹介させていただく。
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大型高速抄紙機用高露点型密閉フードシステム

株式会社 シラトリエンジニアリング 技術部 鳩貝  隆

  紙パルプ産業は典型的なエネルギー多量消費型であり,これまでも製紙工場では生産効率の向上をはじめ木材繊維の高歩留りや古紙リサイクル,各種設備のエネルギー効率向上などの努力を重ねてきた。特に近年はマシンの大型化が進み,高速・幅広の傾向が顕著化する中でより一段とエネルギーコスト管理が求められる様になってきた。同時に室内環境の改善も課題となっている。当社ではそうした要求に対して,長年培ってきた研究開発力と多くの納入実績から得たノウハウをもとに新技術の開発に取り組んでいる。ここでは,高露点型密閉フードシステムの概要を紹介する。
(本文16ページ)


工業用インクジェット印刷
―塗工顔料供給者の視点からの市場動向と考察―

オミヤインターナショナルAG ヴェッサ クッカモ,フィリップ ハンジカー

  デジタル印刷でのビジネス環境は現在急速に変化をしています。新しい技術の産業用インクジェット印刷が高級オフセット印刷を大量に供給できる従来の高級オフセット市場で最も高い成長率が期待できます。高級オフセット市場では取引とダイレクトメールの事業が現在デジタルカラー印刷での高い潜在需要を示しています。高級オフセット印刷用の紙の選択での挑戦はイメージ品質,紙の取り扱い特性とコストの間の正しいバランスを発見する事です。塗工インクジェット紙の水準はコスト要求に対応できません。従って,新しい紙のグレードが開発されなければなりません。塗工インクジェット紙の将来のデザインは炭酸カルシウム顔料,塗工層の2重の空隙構造と原紙の吸収性に基づくものです。塗工はハイソリッドで行われ,それは応用により柔軟である事を意味します。バインダーの量は最小限に減少し,従ってコスト構造は最適化されます。将来の塗工インクジェット紙は新しいビジネス環境の必要を満たし,デジタル印刷の成長を完全にする工業規模テストで示されます。
(本文21ページ)


モーノポンプの寿命に影響を与える要因

兵神装備株式会社 技術部 河村  武

  1軸ねじポンプは,多種多様な液体を強力に吸引し,そして,スムーズに吐出する。そのスムーズダイナミクスゆえに,製紙,食品,自動車,水処理分野など多くの分野で液体移送用として利用されている。たとえば,製紙工場では,コーティングカラー,パルプ,薬液,染料などを移送するために使用されている。これらの千差万別な液に使われる1軸ねじポンプの寿命に影響を与える要因について,選定段階からの検討を踏まえて述べる。
  1軸ねじポンプの心臓部であるローター・ステーターの寿命は,移送液の性状(スラリー性,粘性,液温)に大きく影響する。その条件に合ったポンプの選定(回転速度や吐出圧力の制限)を設けている。その条件を越えて使うと,予想以上に寿命が短くなったり,破損にいたるケースがある。また,1軸ねじポンプの回転偏心運動を受け持つユニバーサルジョイントについては,ピンジョイントが世界的にも主流となっており,その変遷についても述べる。
  ポンプを安全に長くお使いいただくために,ポンプの特性を知り,定期的なメンテナンスをおこない,ポンプ前後の配管設備などを含めた維持管理をすることにより,より最適な寿命が得られると考える。
(本文25ページ)


高精度クロムめっき被覆コーターブレードの開発
―高品質塗工紙を具現化しうる新規ブレードの開発―

株式会社 野村鍍金 ブレード係 岸  洋文

  弊社は1916年以来,表面処理業を営み今日に至っているが,その間に培われた技術を基盤に1990年に製紙業界の抱えるテーマ“コーターブレードの長寿命化”に着手し,「特殊なクロムめっきを被覆した長寿命被覆コーターブレード」を開発し,当時は少なくともSK材の3倍以上の長寿命を有するコーターブレードを今日迄販売してきた。販売当初より,2009年6月末までの約19年間に納入したベント及びベベルタイプを合わせたコーターブレードの累計は,187,605枚に及んでいる。長寿命以外の弊社製コーターブレードの大きな特徴として,クロムめっき固有金属特性に由来する塗工紙の面質向上やストリーク低減効果があり,未だに各製紙会社殿で大変ご好評頂いている。しかしながら,顧客のコスト及び品質に対する改善要求は,年々厳しくなっており,弊社製のコーターブレードの更なる延長化とストリーク低減を目指して,長年開発を継続した結果,従来品の紙塗工品質を維持したままで,長寿命化を厚膜化と皮膜構成材によって達成し,また高プロファイルの再現性を刃先形状の高精度化で達成した“高精度クロムめっきコーターブレードの開発に成功した。
(本文29ページ)


HC900ハイブリッド・コントローラ
―品質制御システム向けハネウェル社の最新コントローラ―

ハネウェルジャパン株式会社 HPS マーケティング&ビジネス開発 森川 良麿

  ハネウェル社のQCS(Quality Control System)は,紙パルプ,プラスチック製品,金属製品などの品質制御システムとして日本でも多数の納入実績を有しているが,そのコントローラとしてハネウェル社の最新のHC900ハイブリッド・コントローラが採用された。
  HC900ハイブリッド・コントローラは,高度なループ制御/ロジック演算機能を備えたコントローラであり,広範囲なプロセス設備の制御とデータ管理のニーズに適合できるモジュラー設計となっている。優れたPIDループ制御機能と,融通性の高いロジック演算機能を有しているため,あらゆるプロセスニーズに対して最高のパフォーマンスを発揮できる。各種アナログ処理演算とロジック・ブロック演算は独立に高速スキャンされていることにより,アナログ制御とロジック演算を完全に統合し,パフォーマンスを妥協することなく優れたプロセス制御機能を実現する。
  HC900はコンパクトでユニークな特長を有しており,ここにその製品の概要を紹介する。
(本文33ページ)


新光学式キャリパ計が実現する,これからの紙厚測定

横河電機株式会社 システム事業センターP&Wソリューション部 堀口 伸也
ABB Ltd. Research and Development Department ランボッド ナイミモハセス
Private Consultant オキ ヘルストローム

  紙の品質管理において紙厚の精度良い測定と制御は不可欠であり,従来はこの目的のために主に両面接触式のキャリパ計が使用されてきた。しかしながら,BM計の主要センサの中で唯一接触式のセンサであり,アプリケーションによっては紙に接触することに起因する様々な課題を抱えていた。近年,BM計メーカ各社からレーザ式キャリパ計が提案されて注目を集めている。しかしながらこの方式には両面接触式とは異なる独自の問題点があり,紙厚測定・制御のソリューションとして定着するまでには至っていない。
  新しく開発された光学式キャリパ計は,新たな試みとしてレーザ方式ではなく共焦点技術を採用した。さらにできるだけメンテナンスフリーの状態で安定して精度良く測定できるように,様々な機能が取り込まれている。新しいセンサではレーザ方式の多くの弱点が克服されており,従来の両面接触式キャリパ計では紙への接触による問題があったアプリケーションに最適である。従来にないきめ細かい測定と既存のセンサを超える精度・安定性がフィールドで確認された。このセンサはレーザ三角法が原理的に持つ問題を克服しており,両面接触式センサで紙への接触による問題があったプロセスにおいて,紙厚測定の革新的な手法を製紙会社各社にご提供する。このまったく新しい原理のセンサの実現により,紙厚測定技術は新しい時代の幕を開ける。
(本文37ページ)


第77回紙パルプ研究発表会の概要

紙パルプ技術協会 木材科学委員会

  第77回紙パルプ研究発表会は,2010年6月17〜18日の2日間,東京都江戸川区「タワーホール船堀」で開催された。産官学各界からの発表件数は合計39件で,口頭発表が27件,ポスター発表が12件であった。参加者は230名であった。発表内容の概要をまとめた。
(本文42ページ)


第3回2010日中紙パルプ技術交流シンポジウム開催報告

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

  一昨年の第2回開催に続き,紙パルプ技術協会と中国造紙学会の共催による「第3回2010日中紙パルプ技術交流シンポジウム」が5月17日〜18日と東京大学農学部弥生講堂で開催された。日本では初の開催であり,中国側参加者は約110名,日本側参加者は約130名であった。日中各9件,合計18件の講演が行われた。シンポジウム後,中国側参加者は,都内の研究所や富士地区の工場の見学を行った。
(本文57ページ)


広葉樹ECF漂白パルプのヘキセンウロン酸と褪色との関係(第2報)
―ヘキセンウロン酸の褪色機構とサイズプレス処理による褪色抑制―

王子製紙株式会社 基盤技術研究所 第一研究部 河江 綾乃,内田 洋介

  ヘキセンウロン酸(HexA)を除去することなく,無塩素漂白パルプの褪色を防止する方法を見出す手がかりを得るため,まず,HexAの褪色機構を調査した。その結果,HexAの褪色反応は少なくとも二段階の反応から成り,初期反応はHexAの酸加水分解であり,後期反応はHexAの酸加水分解物の一つである,5―ホルミル―2―フランカルボン酸(FFA)の二次反応であると推測された。このうち,後期反応のFFAによる二次反応は特に褪色へ寄与が大きく,FFAの二次反応を抑制できれば概ね褪色を抑制できることも示唆された。
  FFAの二次反応を阻害する化合物を探索した結果,クエン酸,酒石酸,リンゴ酸,琥珀酸,グルコン酸,マロン酸,イタコン酸といった低分子ポリカルボン酸やその塩,あるいはポリアクリル酸(PAA)のような高分子ポリカルボン酸に褪色抑制効果が認められた。これらのポリカルボン酸を添加する方法としては,ポリカルボン酸の塩をサイズプレスにより外添する方法が適しており,紙質に影響を与えることなく,褪色を抑制することができた。
(本文70ページ)