2010年7月 紙パ技協誌
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第64巻 第7号 和文概要


2009年度フォローアップ調査結果(2008年度実績)と温暖化対策関連情報

日本製紙連合会 技術環境部 池田 直樹

  日本製紙連合会は1997年より「環境に関する自主行動計画」を定め,積極的に活動している。その中の1つとして地球温暖化対策(CO2排出抑制対策)があり,2007年9月に2度目の改定をした以下の2目標を掲げて取組んでいる。
  @  2008年度〜2012年度までの5年間平均で,製品当り化石エネルギー原単位を1990年度比
     20%削減し,化石エネルギー起源CO排出原単位を1990年度比16%削減することを目指す。
  A  国内外における植林事業の推進に努め,2012年までに所有または管理する植林地面積を70万haに
     拡大することを目指す。
  今回は2009年度フォローアップ調査結果(2008年度実績)について報告する。
  また,関連情報として,日本におけるエネルギー消費量,CO排出量およびそれに占める紙パルプ産業の位置づけや,改正省エネ法と製紙のエネルギー原単位ベンチマーク,排出量の試行的実施実績検証結果,温暖化関連情報についても触れた。
(本文1ページ)


コンプレッサーの高性能化と省エネ

株式会社IHI 回転機械セクター 回転機械設計部 田中 洋行

  圧縮空気は工場の生産設備等で,その使いやすさから非常に多くの用途がある。この圧縮空気を発生させるコンプレッサは,生産設備の中でその電力消費量の占める割合が大きい為(約10〜30%),省エネ推進のためにはコンプレッサの動力に関する検討が重要となる。
  汎用型コンプレッサ(1,400kW以下)動力低減の手がかりとなる以下について,簡潔に紹介する。
    ・コンプレッサの種類とその特徴 ・コンプレッサ選定のポイント
    ・ターボコンプレッサの改造事例 ・性能劣化の原因とその対策
(本文21ページ)


構内空気系の運用見直しによるコンプレッサー省電力

王子製株式会社 日南工場 施設部 電気計装課 中野 賢治

  王子製紙グループ各工場では,省エネ量目標を,「対総エネルギー割合(省エネ率)1.5%以上」として活動に取り組んでいる。日南工場においても,目標達成のために,インバーター化やプーリー変更,間欠運転,高効率機種への変更,フロー改善など,さまざまな手段を実施してきた。しかし,コンプレッサーの省電力については,エアー漏れ改善程度にとどまっていた。コンプレッサーの消費電力は工場全消費電力の約6%を占めており,もう一歩踏み込んだ取り組みが必要であった。
  今回は,コンプレッサーの配管ライン併用および圧力設定変更により省電力を達成できたのでその概要を紹介する。
(本文27ページ)


反射断熱塗料による省エネ・CO2削減へ向けた取り組み事例

株式会社コスモトレードアンドサービス 直売部 露木 輝之,青山 洋光

  世界的に大きな環境問題として取り上げられている温室効果ガス削減については,政府レベル,企業レベルそして個人レベルにおいて様々な取り組みや活動を行っている。
  しかしながら,その削減スピードや取組姿勢には世界各国において温度差があり,また今後の経済情勢の回復基調と併せ,温室効果ガスの排出量は更に増加することが懸念される。
  今日における環境問題への対応は,企業の経営要素として看過できないファクターとなっており,折しも日本政府が温室効果ガスの削減目標を具体的に示したことに呼応して,単なる環境対応PRに留まらない迅速かつ総合的な施策を取ることを社会全体から求められている。
  本稿では,その対策として極めて有効な反射断熱塗料として,アメリカNASAのセラッミック技術を応用した反射断熱コーティング材「スーパーサーム」を取り上げ,材料採用時における一般的な注意点や,施工事例紹介を交えながらその特徴と効果を解説する。
(本文30ページ)


八戸工場における省エネルギーへの取り組み

三菱製紙エンジニアリング株式会社 設計技術部 中山  豊

 三菱製紙八戸工場では,様々な省エネルギーへの取組みを続けており,ここ5年間の概要を紹介する。
  またその一例として,51,52スーパーカレンダーにおいて,2008年6月に省蒸気および温水排水量削減を目的に温水設備の改造を行った。独自の温水回収・再利用フロー設備を導入していたが,2台のスーパーカレンダーから並列に温水を回収して再利用するのは実操業上で問題が多かったため,温水フローを極力シンプル化して省蒸気,排水量の削減,および操業性の向上に繋げることができた。本報告ではこの温水設備フロー改造による省蒸気および排水量削減について紹介する。
(本文36ページ)


草の根省エネ活動の推進

王子製紙株式会社 富士工場 施設部動力課 高見  仁

  近年の原油価格高騰に伴いエネルギーコストは上昇し,紙生産コストに占める割合も大きくなり収益に大きな影響が出ている。温暖化防止に向けCO2排出量を削減するために,日本製紙連合会は,自主行動計画目標を『2008年度から2012年度の5年間平均で,製品当たり化石エネルギー原単位を1990年度比20%削減し,化石エネルギー起源CO2排出原単位を16%削減することを目指す。』(2007年9月改定)とした。また,王子製紙グループ各工場では,省エネ量目標を『対総エネルギー割合1.5%以上』として活動に取り組んでいる。しかしながら,省エネの活動において新しい取り組み内容が減少し,富士工場においても2007年度の省エネ実績は,対総エネルギー割合1.4%と目標1.5%を下回る結果となった。そこで2008年度は,目標の必達を命題として,省エネ活動に取り組み,対総エネルギー割合2.7%を達成した。
  本稿では,同工場が取り組んだ省エネ活動を紹介する。
(本文41ページ)


歩留用ポリマーの設計思想
  -抄造環境に適合する高機能エマルジョンRX-

ハイモ株式会社 湘南研究センター 平田 和之

  微細繊維分の増加,中性抄造化による炭酸カルシウムの使用比率の増加,抄紙マシンの高速化といった抄造環境の変化により,ウエットエンドプロセス薬剤である歩留向上剤には単なる歩留向上だけでなく,紙の品質向上も要求されている。従来のエマルジョン製品は,超高分子量では水中で分子同士の絡まりが起きやすく地合性の問題から,分子量を抑えた製品が供給されてきたが,高分子が収縮した構造をとり,拡散性に優れるNDポリマーの加工技術を応用することにより,エマルジョン製品においても,高い歩留性能と地合性制御が達成できる超高分子量,高拡散性エマルジョンポリマー(RXポリマー)を開発した。
  本報では,RXポリマーの特徴をNDポリマーと比較しながら,ハイモが現在考えている歩留向上剤に対する設計思想について報告する。
(本文44ページ)


表面サイズ剤の技術動向

ハリマ化成株式会社 製紙用薬品事業部 酒井 一成

  表面塗工薬品の一つである表面サイズ剤は,紙へのサイズ性付与を目的に使用され,紙の要求品質や使用環境によって様々な種類が適用されている。表面サイズ剤の効果的なサイズ発現には,サイズ剤を紙表層部に均一に分布させることが重要であり,そのサイズ効果は塗工液中での安定性や原紙特性などによって影響を受ける。
  製紙業界では,中性化,クローズド化が進行しており,塗工液中の電気伝導度やカルシウム濃度の上昇,原紙の中性化や低サイズ化を引き起こしている。このような状況の中,塗工液中のカルシウム濃度が高い製紙工場においては,汚れやサイズ低下の問題が発生する可能性がある。また,中性化によって原紙中のアルミニウム量は減少するため,アルミニウムを介して定着するとされているアニオン性表面サイズ剤のサイズ効果は得られにくくなってきている。さらに,原紙の低サイズ化によって塗工液は浸透しやすくなるため,サイズ度の低い原紙において,紙表層部に表面サイズ剤を分布させることは困難になりつつある。
  本稿では,これら表面サイズ剤の技術課題に対する取り組みや考え方を報告する。また,内添薬品から表面塗工薬品への移行が急速に進んでいる中国での表面サイズ剤の技術動向についても紹介する。
(本文49ページ)


炭酸カルシウム高配合紙用新規PAM系紙力剤

星光PMC株式会社 製紙用薬品本部 飯田嗣郎,下吉孝幸,関口尊文,小国正祥

  近年,世界的な景気後退の影響を受け,紙の国内需要は減少傾向にある。日本国内の製紙メーカーでは収益の改善や国内外でのコスト競争力を強化するため,紙の効率的な生産を目的とし,生産拠点の集約化や古紙利用率の増大が進められており,新設した大型高速マシンを筆頭に高速マシンを積極的に稼働していくと考えられる。このような状況下,紙の生産性や品質を維持することは容易でなく,これらを補う紙薬品への要求は益々強まっている。解決手段の一つであるPAM系紙力剤を使用する場面がこれまで以上に増えていくと予想される。
  今般,我々は炭酸カルシウム高配合紙用のPAM系紙力剤として,填料よりもパルプへ優先的に定着することや填料の粒子径を制御すること,即ちPAM系紙力剤の定着場所と機能発現のバランス制御が紙力や歩留りの向上に重要であると考え,幾つかのモデル実験を行った。その結果,PAMのイオン性(密度)や分子量によって,パルプや炭酸カルシウムへの定着性,炭酸カルシウムの凝集性が異なることを見出した。  ここで得られた知見をもとに開発した新規PAM系紙力剤は,炭酸カルシウムを過度に凝集させずに高い歩留まりを維持し,紙力向上効果に優れることが確認された。
(本文54ページ)


サーモグラフィーを活用した生産設備の安全操業監視とその事例紹介

NECAvio赤外線テクノロジー株式会社 システム技術部 佐田 達彦

  日本の製造業におけるエネルギー問題は京都議定書での温室効果ガス排出量削減率6%により大きく影響を受けている。製紙業界においても同様に,操業における温室効果ガス問題は重要な課題であるとともに資源の有効活用として,サーマルリサイクル,RDF(ごみ固形燃料),RPF(廃プラスチック固形化燃料),バイオマスエネルギー,などの活用を検討することで様々な環境対策を推進している。しかしながら企業としての安全,安心,やさしさなどを実現する上で生産設備の安定操業と効率運転の確保が必要条件となっていることも言うまでもない。
  今回は,赤外線サーモグラフィの測定原理やその特長を説明することにより製紙業における活用法を,受講いただける業界の方々に自ら発見していただくとともに,サーモグラフィーやデータロガーを利用した生産設備の安全操業監視とその事例紹介を行うことにより近年の省エネルギー,環境問題対応に役立てていただきたい。
(本文59ページ)


資格・管理区域不要のβ線坪量計

ナノグレイ株式会社 宮下  拓

  製紙工業の非接触計測分野において,放射線源を用いた厚さ計,レベル計,密度計などが使用されている。これらの計測器では,資格や管理区域の設定が必要であり,放射線障害防止法上の許可や届出が必要であった。ところが,2005年6月の法令改正において設計認証制度が新設され,放射線源装備機器の内,安全性の認証を受けたものは,「表示付認証機器」となり,主任者の選任・管理区域の設定が不要という1種の規制緩和が行われた。「表示付認証機器」は,従来の放射線源装備機器が必要とされていた労働基準監督署への届出,測定,教育訓練,健康診断,放射線障害防止予防規定なども不要である。「表示付認証機器使用届」は,従来の「届出」と全く異なり,添付書類不要でA4書式1枚を使用開始後30日以内の郵送で良い。加えて,許可事業所において「表示付認証機器」を導入しても,既設の放射線源装備機器と別枠になり,許可使用の変更とはならない。このように,「表示付認証機器」は従来の放射線源装備機器に比べ,格段に手続きが簡便で短期間で済むようになり,密度計,レベル計などの使用が拡大している。
  弊社はすでに「表示付認証機器」としてガンマ線密度計PM-1000,ガンマ線レベル計TH-3000,ガンマ線レベルスイッチTH-2000などを販売してきたが,今回,「表示付認証機器」のβ線坪量計SX-1100を開発した。「表示付認証機器」であることに加え,@β線源ユニットや検出器ユニットがコンパクトであること,A測定スポットが約Ø8mmと小さく,詳細なプロファイルが得られることが特徴である。不織布やプラスチックフィルムなどの坪量(厚み)測定に使用できる。
(本文64ページ)


紙表面につく傷の生成機構と耐傷性の要因(第1報)
  -変形および破壊形態の観察と評価-

北越紀州製紙株式会社 齋藤  実,数森 康二
東京大学 大学院農学生命科学研究科 江前 敏晴,磯貝  明

  光沢紙は,その高い光沢が高級感を与えることから,高品質な画像印刷用途や化粧品などの高級紙箱などに使用される。しかし高い光沢性及び平滑性のため,紙の表面に傷が生じた場合,欠陥部分そのものが微小であっても,傷の部分だけ反射光が散乱しやすい傾向にある。その結果,人の目による傷の認識が容易となる問題が挙げられる。このような傷の発生を抑制することは重要であるが,傷の発生機構はほとんど解明されていない。
  本報告では,キャスト光沢紙の「傷の大きさ・傷の形状」について着目し実験を行った。始めに,レーザー顕微鏡(LSM)を用いて,実際の傷の形態観察を行った。次に,表面引掻き試験を行い,生成した傷の観察画像を解析して得られた傷の形態的特徴(形状,大きさ)を同一の引掻き強度で比較することにより,各種塗工紙の耐傷性の評価を行った。LSMによる観察の結果,塗工層表面に発生する傷は,「塑性変形タイプ」と「脆性破壊タイプ」に分類できることがわかった。また針引掻き試験の結果,塗工層表面は,凹みやすい(塑性変形しやすい)もしくはヒビ割れしやすい(脆性破壊しやすい)の2つの異なる傾向を示すことがわかった。オフセット印刷用に使用されるキャスト光沢紙は凹み傷が多い塑性変形タイプ,インクジェット印刷用キャスト光沢紙は脆性破壊タイプの傷になり易い傾向が見られた。しかし実際の傷は,これらの両方の要因が組み合わさっている場合が多い。これらの関係を議論するために,傷の変形断面積及びヒビが発生する荷重測定を行った。変形断面積が低いこと及びヒビ発生荷重が高いことの両方が,傷を抑制するために必要であることが,今回の結果から推測される。
(本文68ページ)


スギ間伐材炭化物の紙への添加と吸着特性
  -未利用木質バイオマスの有効活用-

東京大学 大学院農学生命科学研究科 福井  浩,竹村 彰夫
山陽製紙株式会社 辰巳 和久
東京都立産業技術研究センター 瓦田 研介

  わが国の森林は戦後に植栽されたスギ,ヒノキを間伐する時期を迎えている。特にそれら間伐材は紙や,繊維板,製材等への利用のみならず,一部廃材と共にバイオマスボイラー等での燃焼による電力等への利用がなされている。これら針葉樹は今後増加する可能性が高く,有効活用を更に考える必要がある。
  一方,京都議定書には2010年までに温室効果ガスを1990年と比較して6%削減し,うち約3.8%を森林による吸収で削減する目標値を定めているが,今後は森林吸収量の目標である1,300万炭素トンの達成に向けて,2007年から2012年の6年間で,計330万haの間伐を行うこと等を目標として間伐を推進しており,地球温暖化防止森林吸収源10ヵ年対策(農林水産省)には木炭等の普及,啓発,利用についての指針も示されている。
  このような背景から,間伐材などの未利用木材を熱処理によって新しい機能を付加させる取り組みがなされており,特に簡易で安価な熱処理方法として木材の炭化がある。木炭は主に燃料として古くから使用されているが,近年では住宅床下の調湿や脱臭,河川などの水質改善に利用されている。
  スギ,ヒノキを含む未利用木質バイオマスの炭化による吸着性能の付与に関する研究は多数行われているが,木炭を紙に添加することで木炭の吸着性能を活用した機能紙の開発に関する研究は少ない。そこで,本研究ではスギ間伐材から木炭を調製して細孔分布および吸着性能を調べ,さらに,NBKPに調製したスギ木炭を添加し,手すき紙を作成後,ホルムアルデヒドやエチレン等の吸着特性等を検討した。その際,梅酒製造で排出される梅種子を炭化して得られた炭化物を添加した手すき紙と比較することで吸着性能を評価した。
(本文77ページ)