2010年6月 紙パ技協誌
 
第64巻 第6号 和文概要


冷却塔ファン制御変更による省エネルギー

北越紀州製紙株式会社 関東工場 勝田工務部動力課 青柳 良隆

  地球温暖化対策により温室効果ガス排出量の削減が重要となっている。そのため,化石エネルギー使用量の削減及び省エネルギーへの取り組みが急務となっている。当社でも全社を挙げて様々な省エネルギーを実施してきた。
  関東工場勝田工務部においても,CO排出量削減,エネルギーコスト削減,既設重油ボイラの老朽更新の目的から平成18年9月にバイオマス発電設備の営業運転を開始した。この結果として,CO排出量削減に大きく貢献した。
  更なる削減に取り組むため付属設備の冷却塔ファンに注目した。この設備は,夏季以外は冷却能力に余裕があり,この時は冷却塔ファンの停止運用を行っていた。全部で4台のファンがあるが,1台停止が限界であり,2台停止すると冷却塔出口温度は上がり過ぎてしまう。省エネルギーを実施するためには,ファンを細かに調整可能な制御を必要とした。そこで,インバータを導入して,ファンの回転数を自動制御することで余裕分の削減を達成できた。この取り組み及び省エネルギー効果について紹介する。
(本文3ページ)


KPエバドレン排水の嫌気性処理
  -UASB法を用いた高負荷処理-

栗田工業株式会社 清川 智弘,徳富 孝明
三菱製紙株式会社 梅田 一郎,扇谷  浩

  紙パルプ産業分野では,省エネルギー化,環境負荷低減のための取り組みの1つとして,紙パルプ製造工程から排出される排水の処理に,嫌気性処理(メタン発酵処理)の導入が進められつつある。嫌気性処理は好気性処理と比較して,曝気が不要で余剰汚泥の発生量が少ないという特長を持つ,省エネルギーかつ省廃棄物の技術である。さらに,処理によって発生するメタンはボイラ等の燃料など,化石燃料の代替エネルギーとして利用が可能であり,創エネルギー技術である。そうした背景の下,クラフトパルプ製造工程で発生するKPエバドレン排水を処理対象として,国内では実プラントがいくつかの工場で稼動をはじめている。KPエバドレン排水は,好気性処理されることがほとんどであり,好気性処理の対象負荷として大きな割合を占めるので,導入による環境負荷低減へのメリットは大きい。
  KPエバドレン排水は,メタノールを主体としており,嫌気性処理において特殊な排水であるため,通常の排水処理での嫌気グラニュールと比較して,その強度は低下する。そこで,強度向上剤を用いて,グラニュール強度を向上させることを試みた。
  今回,三菱製紙株ェ戸工場にてKPエバドレン排水を原水として,テスト機を用いて強度向上剤の効果について現場実証試験を実施したので,その結果を報告する。
(本文8ページ)


ガスタービン導入,省エネルギーの取り組み

王子板紙株式会社 岐阜工場 工務部 早川  誠

  王子板紙株式会社中津川工場は中芯専抄の抄紙機1台を有し,月間12,000t中芯原紙を生産する段ボール原紙工場である。工場で使用する蒸気と電力はボイラー・タービン発電設備で発生した蒸気のエネルギーを有効利用し発電を行い不足分は購入電力で運用していた。ボイラー・タービン発電設備は設置後40年が経ち劣化が著しく劣化対策工事を施さないと継続した安定運転が困難な状況にあった。加えて汽力発電設備はエネルギー効率が低い上に燃料が高騰し,工場にとってエネルギー費用削減も重点課題となっていた。
  今回,効率の低い既設ボイラー・タービン発電設備を停止し,総合効率の高いガスタービンコジェネレーション設備の導入した事例と省エネルギーへの取組み及び環境対策への取組み事例について紹介する。
(本文13ページ)


1RB芒硝溶解フロー改善による省エネ
  -芒硝溶解フロー改善による省電力及びV/E伝熱面清浄化-

日本製紙株式会社 旭川工場 工務部原動課 鈴木  悟

 回収ボイラーで燃焼する黒液はなるべく高濃度にして水分を除去する事が望ましい。しかし高濃度にするほど高粘度となり,各所の詰まりや燃焼量不安定等のトラブルが起き易くなる。この問題を解消するため,濃黒液で芒硝を溶解する工程を濃度55%の中間黒液で溶解するフローに変更した。その結果,高濃度黒液用スクリューポンプを低濃度黒液用渦巻ポンプに置き換える事ができ,290MWh/年の省電力が得られ,かつ濃黒液系統のトラブルが減少した。更に中間黒液で溶かした芒硝が晶析する事でV/E伝熱面のスケールが除去された為,V/E1缶洗浄インターバルを4時間から12時間に延長し,洗浄セクション循環ポンプをその間停止すると共に,濃縮時間拡大に伴い黒液濃度を0.6%上げた。その結果,回収ボイラー炉内に持ち込まれる水分3,078t/年が削減され,トータルで原油換算317kl/年の省エネを達成したので,その事例について紹介する。
(本文19ページ)


平ベルト駆動システムを採用した省エネ送風機
  -新駆動方式を採用した送風機の特徴とメリット-

株式会社ミツヤ送風機製作所 那須事業所 技術部 美野輪健一

  ベルト駆動はプーリの比により欲しい回転速度を容易に得られるため,送風機への伝動手段として多く使用されている。その殆どはVベルトであるが,Vベルトの伝動ロスは大きくベルト掛け送風機の効率を下げている。新型ベルト駆動送風機では,ベルト駆動で最も伝動効率が良く高伝動を得られる高力平ベルトを使用し伝動ロスを大幅に減らすことにより送風機の消費電力を6〜11%低減した。
  省エネ・省メンテ・エコ・クリーンなど新型ベルト駆動送風機「エコファン」の特徴とメリットを紹介する。また,既に設置され使用中の送風機の現地省エネ改造も行っており,省エネ効果を確認している。併せて改造工事の実施事例を紹介する。
(本文24ページ)


省電力への取り組み

中越パルプ工業株式会社 高岡工場能町 施設動力部電気計装課 東野 公則

  高岡工場能町ではKPとDIPを製造し,抄紙機5台・塗工機1台にて,上質紙・塗工紙・高級白板紙・クラフト紙などを抄造している。またISO14001環境マネジメントシステムに基づき,環境保全活動や省エネルギーの推進に積極的に取り組んでいる。省電力に関しては,インバータ化,操業見直しによる設備停止や設備改善,フローの見直し,省エネタイプの照明の採用等実施しながら,年間目標達成を目指している。本報では更なる省エネルギーを目標としてQCサークル活動で現場と一緒に取り組んだ,インバータ化工事について報告する。
(本文27ページ)


古紙パルパー〜スクリーンにおける最新機器導入による省エネ

日本大昭和板紙株式会社 秋田工場 工務部工務課 伊藤寿巳男

  日本大昭和板紙秋田工場の古紙処理設備は,ライナーマシン用の古紙パルプを生産しており,昭和56年に1系列設置後,平成3年にかけて古紙パルプの増配及びライナーマシンの増産に伴い増強し,現在では,ライナーマシンの約8割の古紙パルプを生産している。古紙処理設備は,段古紙100%の1,2系と段古紙+雑誌古紙の3系と合わせて3系列を有している。又,1,2系については,平成16年にパルパーを統合し,1台のパルパー原料をスクリーン工程2系列へ供給し操業していた。
  今回,この1,2系について,パルパー〜スクリーンに最新機器を導入する事により,パルパー出口離解度を
上げ,後工程でのスクリーン台数削減,更にフローの簡素化による付帯設備停機等,大幅な省エネルギーを達成出来た事例を紹介する。
(本文32ページ)


段ボール古紙処理 スクリーン集約化による省エネ

レンゴー株式会社 淀川工場 製紙部製紙課 古賀 麗理

  レンゴーでは2001年に環境目標として「エコチャレンジ009」を定め,創業100周年を迎えた2009年度まで省エネや廃棄物の削減および資源の有効利用などを押し進めてきた。活動の最終年度にあたる2009年,これまでの取り組みを一層強化する為,新たな環境目標「エコチャレンジ020」を制定した。「エコチャレンジ020」では温室効果ガスの中でも最も環境への影響が大きいCO排出量を2020年度までに1990年度比で32%削減することを目標の一つとして活動に取り組んでいる。
  本稿では,淀川工場で一般段ボール古紙処理のテール原料処理ラインを集約化することを目的にテールスクリーン(HDスクリーン・サトミ製作所製)を導入した結果,省エネ効果が見出せたと同時に,産廃の発生量を削減することが出来たのでその事例を紹介する。
(本文36ページ)


欧州製紙産業訪問(ABTCP年次大会参加後)

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

  2009年10月26日〜29日にブラジルでのABTCP(ブラジル紙パルプ技術協会)年次大会に参加後,欧州に渡り,スペイン,オーストリア,ロシアの紙パルプ技術協会および製紙工場を訪問したので報告する。北欧諸国やドイツに比べ,日本にはあまりなじみのない国々であるが,それぞれの国で特徴があった。
(本文39ページ)


広葉樹晒クラフト上質紙の創製(後編)

木島 常明

  後編では,4段晒法の採用によって高白色度パルプの製造に成功し,高品質の「広葉樹晒クラフト紙」の創製に至ったことについて述べたあと,この製法が何故洋紙の主流になり得たかに触れ,洋紙製造技術におけるその位置付けについて述べる。
  水野成夫氏,志村文三氏らは,用途が限られていたため当時未だ在積量が充分にあった広葉樹から,クラフトパルプを製造して製紙原料に利用しようと考えた。広葉樹は針葉樹と比較して繊維が短く,紙としては強度的に問題があるとの説が一般的だったが,彼らは「パルプの処理の仕方によっては良質の紙にすることが出来,強度以外の面でむしろ優れた特性を付与できる」と考えて挑戦した。幾多の困難を克服しての「創製」だが,クラフト法との組合わせは広葉樹の組成・形態から考えて誠に理にかなったものであった。紙の強度をもたらす繊維間結合の接着剤的役割を果たすヘミセルロースが広葉樹には多く,しかも繊維表面に比較的多く分布している。このへミセルロースはSP蒸解では多量に分解除去されるが,KP蒸解では除去され難いため,紙にした時の接着剤としての効果が大きい。そのため「針葉樹-SP」の紙と比べて,繊維自体は短くても紙としての強度は遜色なく,しかもその繊維形態ゆえに,地合い,嵩だか,こわさ,不透明性など今までの紙よりもむしろ優れている点が多かった。そのため印刷用途向けの「銀環」,包装その他加工用途の「KYP」の両銘柄とも市場の評価が極めて高く,その後この方法は国内の洋紙生産の主要製法となった。現在では世界的にも広葉樹は洋紙の主要原料である。針葉樹に比較して成長も早いことから,植林によって製紙原料の相当部分が賄われるようになっており,しかもバイオ技術の進展とも相俟って,紙パ産業は「持続可能な循環型素材産業」を目指して進みつつある。
(本文45ページ)


ポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤の添加によるリサイクルパルプからの
紙の強度の回復とその繊維壁内分布

荒川化学工業株式会社 製紙薬品事業部,京都大学大学院 農学研究科 榮村 拓史
京都大学大学院 農学研究科 山内 龍男

  乾燥紙力増強剤の添加によるリサイクルパルプからの紙の強度の回復と,紙力増強剤の繊維壁内分布の関係を検討するために,広葉樹および針葉樹の漂白クラフトパルプについて,乾燥,再湿潤,離解によるリサイクルを最大30回行い,そのリサイクルパルプから市販のカチオン性ポリアクリルアミド系紙力剤(PAM)を含有する紙と含有しない紙を作製した。PAM添加による引張強度の増加幅は,ほぼ同じPAM含有量にもかかわらず3回目のリサイクルまで急激に増加した。その後さらにリサイクル回数が増加すると,全PAM含有量は徐々に減少するにもかかわらず,強度増加幅はほぼ一定になった。繊維のごく表面のPAM含有量をESCAで測定した。さらに,繊維壁内のPAMの深さプロファイルをATR/FT-IRとスパッタエッチングを組み合わせて測定した。ESCAおよび,スパッタエッチングを組み合わせたATR/FT-IRから得られた結果は,リサイクル回数の増加に伴いPAMは繊維壁の内部よりもむしろ繊維表面付近に分布しやすくなる傾向にあることを示唆した。リサイクル回数の増加に伴う,凍結乾燥したウェットシートの散乱係数の減少は,湿潤状態の繊維に付いている外部フィブリルの減少を示唆しており,この結果はSEM観察とも一致した。したがって,リサイクルに伴う繊維壁内のPAM分布の変化は,リサイクルにより引き起こされた外部フィブリルの減少に起因しているといえる。そのため,この変化がPAMによる引張強度の増加幅に影響したのだろう。これらの結果は,繊維表面付近に存在するPAMが,その添加による強度の向上に関して,非常に重要であることを示唆した。
(本文61ページ)