2010年2月 紙パ技協誌
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第64巻 第2号 和文概要


搾水と最新のフェルトの動向
―搾水を追求して進化するフェルトデザイン―
日本フエルト株式会社 技術第3部 佐藤 文夫

 シュープレスなどの技術革新によって抄紙機の性能は急速に進歩した。同時に抄紙用具であるプレスフェルトも進歩し,その高機能化も進んでいる。プレスパートにおける搾水理論は1980年代までに体系化され,そこにある「圧力の均一性」,「再湿潤」,「流れ抵抗」に対する性能の向上を目指して開発を進めてきた当社の最新のフェルトを本報告で紹介する。
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ワイヤーの最新技術動向
―最新の三重織りワイヤーの状況―
アルバニー・インターナショナル・ジャパン株式会社 大喜多鋼治

 近年,特に古紙を多く含む紙にとってその品質はより重要となって来ている。そのニーズに応えるべく我々はSSB三重織りワイヤーを市場に供給し続け,現在でもそのシェアは年々増加傾向である。しかしながら,更なる表面性向上,リテンション,地合,ワイヤー寿命の長期化,安定化等ワイヤーに要求される性能は多岐に渡り,要求されるレベルも更に高まっており,SSB三重織りワイヤーについても様々なコンセプトのもとで改良が急ピッチで進められている。今回我々は欧州を中心とした海外のワイヤーデザインの動向についてSSB三重織りワイヤー及び最新のワイヤー開発状況について報告する。
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各種フォーマーに採用されているセラミックス
株式会社堀河製作所 技術部 飛田  亮

 長期にわたり,ブレード材質の主流はアルミナセラミックスであったが,近年抄紙機の高速改良化及びそれに伴うプラスチックワイヤーの品種改良が進むに従い,脱水機器用ブレード材質も尚一層の耐摩耗性,耐ヒートショック性が強く要求されている。特に,アルミナセラミックスの耐摩耗性については問題ないが耐ヒートショック性については,抄き出し直前のラン運転時のプラスチックワイヤーとブレード表面の摩擦熱は高抄速,高テンション部に於いて数分間で180℃以上と急激に上昇し,その直後の白水流入で急激に冷却されるため,アルミナセラミックスに過大なクラックが顕著に見受けられることもある。
 その対策方法として,抄き出し直前のシャワーリング量の増強を行う事が重要であるが,抄紙機種によってはシャワー水の振り切れ等が発生し時としてプラスチックワイヤーがドライな状態になり易くクラック発生の要因となるため,耐摩耗性は基より耐ヒートショック性に重点を置いた材質選定が必要である。
 私共としては40年以上にわたる数多くの実機上での使用例とこの間のデータから各種フォーマに使用されているセラミックス材質の種類と特徴,材質の選定基準,保守管理の方法などについてできる限り標準化しユーザーの皆様の参考に供したいと念願している。
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石巻工場 N6マシンの操業経験
―ヘッドボックス,フォーマー,プレス―
日本製紙株式会社 石巻工場 抄造部抄造三課 原   淳

 日本製紙石巻工場のN6マシンは,平成19年11月1日に営業運転を開始後,計画通りの抄速・日産を達成し,現在は1,600m/分で主に微塗工紙,A3コート紙の生産を行っている。N6マシンのヘッドボックスとフォーマーにはそれぞれmetso製オプティフローII,オプティフォーマーLBを採用,プレスパートにはこれまでの当社シュープレスの実績から,隣接するフォーマー・ドライヤーとはメーカーが異なるvoith(VPIT)製のタンデムシュープレスを採用した。本報告ではN6マシンのウェットパートに関する最新設備概要及び,その操業経験について報告する。
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新潟工場 N9ウェットパートの操業経験
北越製紙株式会社 新潟工場 工務部抄造第7課 山田 慎吾

 新潟工場N9マシンは,2008年9月1日に営業運転を開始し,広幅・高速・薄物マシンとしてA3の抄造を行っている。N9はこの広幅・高速という特徴を活かし,高い生産性によるコスト競争力のあるマシンを目標に成長を続けている。
 N9マシンの特徴的な設備としては,当社では初めて導入したギャップフォーマ,シュープレスをストレートスルーに2基配列したタンデムシュープレス,高温,高ニップでオンライングロス抄造を可能にした4スタックソフトカレンダ,高速での安定通紙を可能にした通紙装置などが挙げられるが,本稿では,特にウェットパートのヘッドボックスからプレスに焦点を絞り,N9設備概要と操業経験について紹介する。
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三島工場 N10マシンの操業経験
大王製紙株式会社 三島工場 日置  亨

 N10マシンは低米坪化,古紙高配合化に適応した高速オンマシンコーターを設計コンセプトに最新鋭の技術を導入し,平成19年9月に営業運転を開始した。品種によりブレードコーターとロールコーターで塗工方式を切り替え,さらにオンラインでマルチニップカレンダーを設置したことにより,既存マシンに対して優れた品質の製品を生産しており,当初の計画を達成できている。
 稼動後,約2年が経過した今回は,断紙低減による生産性の向上,既存マシンとの品質・操業性の比較について報告する。
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富岡工場 N1マシンの操業経験
王子製紙株式会社 富岡工場 田窪 哲也

 富岡工場N1マシンは08年11月より試運転,09年2月より営業運転を開始し,同年6月には抄速1,600m/min連続操業,日産1,000tを達成し,現在に至っている。
 富岡工場N1マシンは,設計抄速(駆動能力)1,800m/min,ワイヤー巾:10,200mm,坪量範囲50〜70g/m2,製品最大取幅9,180mmの薄物塗工紙に対応した高速広幅オンマシンコーターである。A3,微塗工を中心とした幅広い品質要求に対応すべく,片面ロールコーターとブレードコーター,ソフトカレンダーとマルチニップカレンダーを併設している。
 本稿ではN1マシンの設備概要及び営業運転を開始してから現在に至るまでのトラブルとその対応について述べる。
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通紙エンジニアリングの紹介
―ウェットからリールまで―
株式会社小林製作所 製紙機械営業部 松井 伸至

 近年,通紙システムは,抄紙機の高速化に伴いウェットパートからリールまでの全ての場所における対応が問われると同時に,確実な通紙が要求されている。また,通紙時間を短縮することは,製品ロスを減らすことに直結し抄紙機の効率化に寄与できる。簡単な操作で誰もが確実に通紙を行なえるようになれば,省力化(究極的にはこの意味での省人化)につながる。さらに,これらの要求に応えることは,オペレータが通紙テールに触れる機会をできるだけ減らすことになり,安全に直結する。弊社は,抄造品種,操業条件,マシンアレンジメント等を考慮した,抄紙機の各パートにおいて要求される様々なアプリケーションに対応する通紙機器を有しており,最適な通紙機器の選択およびアレンジを提供できる通紙エンジニアリングを有している。
 弊社が日本の製紙業界において長年にわたり蓄積してきたプロセスノウハウと熟練技量,および弊社米国提携先Paperchine社が旧ベロイト社技術を継続発展させたものとの融合である,ウェットからリールまでの通紙エンジニアリングを紹介する。
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アンドリッツの板紙抄紙機
―河北永新紙業(中国)新マシン稼動―
アンドリッツ株式会社 川上 千明

 アンドリッツAG(本社オーストリア,グラーツ市)は,製紙機械において1995年まではエッシャーウイス社のライセンシーとして製紙機械の製造・販売を行ってきた。1996年以降ティシュマシンの分野に集中することや,ティシュマシンにおけるフォイト社との共同研究開発を2000年以降行っていた。その結果,ヨーロッパ,北米,中国を中心に40台以上の高速ティシュ抄紙機を納入することができた。さらに2005年,板紙抄紙機ビジネスを再スタートさせたことで2007年に,古紙処理設備から抄紙機までの一貫板紙製造設備(抄紙機は,3層フォードリニア多筒抄紙機で,ワイヤー幅6,200mm,設計抄速1,100m/分,生産能力35万トン/年)を中国,河北永新紙業(Hebei Yongxin Paper)から受注することができ,2009年4月完成,スタートした。古紙処理設備および板紙抄紙機の仕様,コンセプトおよびスタートアップ状況を報告する。
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高濃度ポリサルファイドを用いた新蒸解システムの開発(第2報)
―蒸解薬液の多段添加を行う修正蒸解への適用―
日本製紙株式会社 渡部啓吾,清水正裕,黒須一博,南里泰徳
筑波大学 大学院生命環境科学研究科 大井 洋

 クラフトパルプの収率向上技術の一つとしてポリサルファイド(PS)蒸解があるが,工程内のナトリウムとイオウのバランスを崩さないためには白液からPSを生成する必要がある。日本製紙は現在,白液から効率よくPSを生成する方法として,膜電解による白液電解法を開発している。また近年,白液を分散添加して通常蒸解よりも低温で長時間蒸解することを基本とする全缶等温修正蒸解(ITC蒸解)が実用化され,多くのプロセスに導入されている。しかし,修正蒸解法にPS蒸解を組み合わせると,分散添加によって蒸解初期に添加する白液の量が減るために,蒸解初期のPS, NaOHおよびNa2Sの濃度が低下し,Na2S濃度は白液からのPS生成によってさらに低下する。
 本報告では,実証電解槽が設置された工場の蒸解を想定した実験を行った。その結果,白液電解法では,PS生成時のNa2S濃度低下を最低限に抑制しつつPSの濃度を上げることが可能となり,蒸解薬液を分散添加しない通常蒸解において,空気酸化法PS蒸解の約1.5倍の収率向上効果が得られることがわかった。さらに,工場の修正蒸解を想定した実験では,空気酸化法によるPS蒸解と修正蒸解を単に組み合わせると,PS蒸解による収率向上効果の一部が失われるが,膜電解によるS分(Na2SとPS)の濃縮効果を反映させる工夫を加えた新しい修正蒸解法においては,さらに大きな収率向上が期待できることがわかった。
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広葉樹ECF漂白パルプのヘキセンウロン酸と褪色との関係(第1報)
王子製紙株式会社 製紙技術研究所 河江 綾乃,内田 洋介

 日本において典型的な86%ISO前後のECF晒クラフトパルプについて,その褪色原因を調べた。その結果,海外で一般的な90%ISOを越す晒クラフトパルプの場合と異なり,パルプ中に残留した僅かなリグニンが褪色に関与することも認められたが,やはり主原因はパルプ中に残留したヘキセンウロン酸(以下,HexA)であり,HexA量が多いほど褪色が進むことがわかった。他方,同じ白色度のECF晒クラフトパルプであっても,漂白シーケンスによって残留するHexA量が異なり,特にD―ECF漂白シークエンスで漂白した場合にHexAが多く残留することも判明した。これは二酸化塩素がパルプ中のHexAよりもリグニンと優先的に反応するためであり,対策としては,漂白前のパルプ中のHexA量/リグニン量の比をあらかじめ低くしておくことが考えられた。漂白前のパルプ中のHexA量/リグニン量を制御する工程として蒸解工程に着目して調査した結果,蒸解後のカッパー価を最適化することでこの比を低く抑えることができ,D―ECF漂白シークエンスであってもHexA量の少ない晒クラフトパルプを製造できることがわかった。
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