2010年1月 紙パ技協誌
 
第64巻 第1号 和文概要


イオン交換樹脂法を用いた脱塩素脱カリ装置概説
    ―回収ボイラー電気集塵機捕集灰(EP灰)の溶解液より塩化物イオン及び
    カリウムイオンを除去する装置の概要説明―


日本錬水株式会社 機能品事業部 岡村 恒則

  クラフトパルプ製造プロセスにおける,蒸解に有用なソーダ分(「Na」),および硫黄分(「S」)を回収する蒸解薬品回収工程において,回収ボイラーに供給される黒液中の(「Cl」),カリウム分(「K」)が,燃焼灰の溶融温度を低下させ,燃焼ガスに同伴し,過熱管等に付着し,燃焼ガス通路を閉塞させ,ボイラーの操業を阻害すると共に,熱効率の低下や,高温部位の腐食速度を増進させることが問題提起されている。
  このため,多くの回収ボイラーにおいては,本来黒液に再溶解し回収されるべき燃焼ガス電気集塵機補修灰(EP灰)を一部系外に抜き出すことにより,回収工程内に蓄積・濃縮された「Cl」,「K」濃度を調整している。しかしながら,このEP灰の系外廃棄操作により,本来回収すべき,チップ蒸解に有用な「Na」,「S」も多く含まれており,薬品ロスを生じることから,EP灰中の「Cl」,「K」を選択的に除去する装置の開発が望まれてきた。弊社が北越製紙株式会社殿と共同開発した『イオン交換樹脂法・脱Cl脱K装置』の第一号機を平成16年1月に,同社新潟工場殿に納入させていただき,その後,日本製紙株式会社岩国工場殿,王子製紙株式会社富岡工場殿に納入し,この度,『紙パルプ技術協会・佐々木賞』を受賞させていただいた。
  本稿は,佐々木賞受賞の御礼とともに,改めて『イオン交換樹脂法・脱Cl脱K装置』の概要をご紹介させていただくものである。
(本文30ページ)


ADC型ダブルコニファイナー
―実績およびメリット―

相川鉄工株式会社 技術営業部 望月 英雄

  現在,製紙原料のリサイクル回数の増加に伴い,製品の叩解方法も従来の「フリーネスを落とす」事を意識したものから,「繊維の切断を極力避けながら紙力を上げる」事を意識したものに変わりつつある。また,さらなる課題は省エネルギーである。このためには「無駄な繊維カティングを避けながら効率の良い叩解をする」ことが必要で,叩解を行う際,設備機器を見直すことにより大幅にエネルギーロスを省けることができる。
  この状況の中でリファイニング工程の省エネを目標として,弊社は平成14年度に「ADCダブルコニファイナー」を上市した。その後,省エネルギーリファイナーとして皆様のご愛顧を賜る事ができ,実操業ラインで多数のADCダブルコニファイナーが稼動中である。OCC,ONP,BKPなど原料処理工程に於いて強度アップ,省エネルギーを達成している。本稿では,テスト結果を交えながら実操業ラインにおける使用状況,並びに各実施例の中からJOCCとLBKP原料の操業メリットについてご報告する。
(本文36ページ)


植林事業へのバイオIT技術適用の可能性

王子製紙株式会社 研究開発本部 森林資源研究所 佐々木慎弥

  近年,ヒトゲノム完全解読プロジェクトをはじめとして250種の生物ゲノムが解読されてきており,猛烈なスピードで生物情報が蓄積されている。それにともない大量の生物情報の中から生物学的な意味を抽出する情報処理技術(バイオIT)が注目されている。
  当社では,バイオIT技術を駆使して大量の生体情報の中から有用情報(バイオマーカー)の抽出ならびに応用を試みている。ユーカリの成長が良いのか悪いのか,材質が良いのか悪いかなど遺伝的潜在能力を調べるためのSNPバイオマーカー,栄養状態やストレス状態を調べるための代謝物・転写物バイオマーカー開発を行っている。これらのバイオIT技術を現場に応用することにより,既存の植林技術(育種,育林技術)の改良ならびに加速化を目指す取り組みについて紹介する。
(本文41ページ)


連釜新チップフィードシステムの操業経験

中越パルプ工業株式会社 川内工場 製造部 金ヶ瀬和幸

  川内工場の連釜は2001年にLo-SolidsTM改造後,順調に操業していたが,近年使用材の構成が変化して嵩比重の低い材種の配合が増えた影響により,日産能力が低下する傾向が顕著になってきた。また,インラインドレーナー詰まりにより連釜停止に至るというトラブルが発生するようになっていた。
  これら問題の解決を目的として,本年5月に連釜チップフィード系をCOMPACT FEEDTM(metso paper社)に改造した。第一種圧力容器5基が廃止されてプロセスがシンプルになった結果,C3循環流量の制御が可能になり,チップシュート液面の制御性が格段に向上した。
  また,この新しいシステムではチップシュート充填率の管理という概念が取り入れられ,高圧フィーダー回転数とC3循環流量の両方を生産量によって制御する方式も同時に採用された。これにより高圧フィーダーの充填率を上げることが可能となり,生産のボトルネックになっていた高圧フィーダーを更新することなく,連釜能力の最大化を図ることができた。まったく新しいシステムの採用ということで稼動時の調整には時間を要したが,COMPACT FEEDTMの採用と供給系機器のサイズアップにより,現在では非常に安定した操業が可能となり,チップフィード系で起きていた諸問題は解決された。
  昨今の厳しい状況のなか,今後更に多様化していくチップソースに対応していくための条件の一つが,今回の改造によって整ったと考えている。
(本文45ページ)


新KP設備の操業経験

北越紀州製紙株式会社 新潟工場 工務部パルプ課 杉浦 太郎

  北越製紙(株)新潟工場は9号抄紙機を新設し,平成20年9月に営業運転を開始した。9号機は年産35万tで計画され,それを含む工場バランスによりLBKP増産量は日産500tで計画した。
  このパルプ増産に対応すべく,チップハンドリング設備の増強,浸透釜設置を始めとする連釜の改造,プレッシャーディフューザー増設,未晒・晒ラインの新設,キルン苛性化設備の新設,酸素製造設備(PSA)の新設,エバポレーターの新設などを行い,平成20年5月に全ての工事を終えて増産体制を整えた。
  本報では,連釜,未晒・晒,キルン苛性化について,設備の概要とこれまでの操業状況を報告する。
(本文50ページ)


カタラーゼ抑制剤によるDIP過酸化水素漂白の効率化

日本製紙株式会社 勇払工場 原質課 吉津 正毅
日本大昭和板紙株式会社 技術本部 角  幸嗣

  カタラーゼは,好気性生物のほとんどの生物に存在する酵素で過酸化水素を酸素と水に分解する。パルププラントにおいて,好気性バクテリアなどの増殖により工程内にカタラーゼが増える事が知られており,過酸化水素漂白工程にカタラーゼが多量に存在すると漂白を阻害し,目的の白色度とするためにより多くの過酸化水素が必要となるためランニングコストを悪化させる。殺菌剤によるバクテリアの抑制や,高温処理により失活させる事でカタラーゼの作用を抑制できる事が知られている。またキレート作用を利用したカタラーゼ抑制剤でもカタラーゼの作用を抑える事が可能である。今回,弊社石巻工場HDIP1において,カタラーゼ抑制剤を用い,カタラーゼによる阻害を抑える事で過酸化水素漂白を効率化した事例を紹介する。
(本文55ページ)


7号抄紙機 中芯原紙巾方向水分制御装置の操業経験

レンゴー株式会社 八潮工場 製紙部製紙課 千葉  司

  レンゴー(株)八潮工場7号抄紙機は,坪量115〜160g/m2の中芯原紙を抄造している。同抄紙機は,1991年に稼動を開始してから,日産1,000tを超える原紙を全国に供給し続けている。
  今回は,近年高まりつつある低坪量化による抄速向上や原紙の品質要求に対応すべく,幅方向水分制御装置を導入した。機種選定に際しては,省スペースに対応するコンパクトな設計と,ドライヤーパート後段に設置したことによる効果的なプロファイル矯正を目的として検討を行い,YOKOGAWA社製の幅方向水分制御装置を採用した。本報では,設備概要,操業経験及び導入効果を中心に報告する。
(本文59ページ)


シングルシュープレスの操業経験

王子製紙株式会社 春日井工場 新井田和輝

  春日井工場No.4M/Cは,上質紙,中質紙,A2・A3原紙,微塗工中質原紙を生産する多品種小ロットマシンであり,その生産品種の中に一般紙と比較して低密度な紙(以後,嵩高紙)も含まれている。一方,嵩高紙の抄造には,プレスニップ圧の低減,紙厚向上剤の投入といった操業上の制約があり,その結果,生産性の悪化や製造コストの増加といった問題が生じていた。この解決策としてプレスでの搾水性を維持したまま,薬品に頼ることなく嵩高紙を抄造可能なプレスの開発を進め,その初号機として2008年1月に「シングルシュープレス+ベルトスムーザー」を春日井工場No.4M/Cに導入した。本報では「シングルシュープレス+ベルトスムーザー」の設備とその導入効果について報告する。
(本文64ページ)


ウェットエンドの各種測定とその解析

王子製紙株式会社 製紙技術研究所 権藤 知久,山本  学

  製紙工程のウェットエンドに起因する問題には欠点の発生,脱水不良,リテンションの低下等があり,製品歩留まりの低下,断紙および乾燥不良による生産性低下,流失原質の増加といったトラブルにつながる。
  生産性の低下は,ただちにコストの圧迫につながるため早期解決が求められる。しかし,問題点を明確化して解決に至るまでのプロセスは,近年の製紙産業で進められる高速抄紙化,用水使用の効率化,利用古紙原料の拡大,コートブロークの配合量増加,等の背景に加えて填料および数種類の薬品が添加される系の状況が複雑さを極めるため,状況把握が難しく困難な過程となる。
  ただし,このような複雑な系のなかにも秩序が存在し,生じている現象には原因が存在する。したがって,この複雑に絡み合う状況を紐解き,因果関係を明らかにする解析の過程は対策に取り組むうえで重要となる。
  本報では,ウェットエンドの対策のプロセスについて紹介し,問題を見極めて対策を実施するために必要な調査とその解析の重要性,それを難解にする要因について,ウェットエンドで測定するデータの相互間での連動性を用いて説明する。
(本文67ページ)


バイオマスボイラーの操業経験

日本製紙株式会社 岩国工場 御宿 誠一

  当社岩国工場は,年間76万tの生産能力で塗工紙・情報用紙を主に生産しており,当社グループ内に於いても重要な基幹工場のひとつである。世界的に環境保全への要求が高まる中,当社グループでは環境憲章を定め地球温暖化防止対策の推進を掲げており,化石エネルギー起源のCO2排出原単位を2010年度までに1990年度比16%削減することを明言している。これを達成する為,燃料転換を目的として設置したボイラーは,グループ全体で11缶となり,岩国工場バイオマスボイラーについては,グループ内で5缶目に設置された。今回は,このバイオマスボイラー(循環流動層ボイラー)の概要並びに試運転以降の操業経験から注意点と主なトラブルについてそれぞれ報告する。
  さらに操業上の注意点として,燃料中の塩素濃度に対するこれまで以上の配慮の重要性について述べると共に,重要なパラメータである炉床温度管理と他箇所の温度管理と両立させる為に取っている工夫について報告する。
  主なトラブルについては,ガス式空気予熱器管で発生した腐食と,火炉天井管・火炉壁管の減肉についてそれぞれ報告する。
(本文71ページ)