2009年11月 紙パ技協誌
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第63巻 第11号 和文概要一覧


紙と環境配慮 ―社会全体の環境負荷削減のための配慮―

環境省 総合環境政策局 環境経済課 橋本 一洋

   いわゆる古紙配合偽装問題から脱却し,真によりよい環境を構築していくためには,単に製紙会社が信頼回復のための取組を行うだけではなく,偽装の背景となった課題について社会全体が相互に改善を図っていく必要がある。また,適切な環境コミュニケーションを推進し,企業の環境保全に向けた取組や製品の環境価値が,その他の性能や価格などの要素と同様に購入の際に適切に評価される環境を構築していく必要がある。
  本報では,古紙利用の環境優位性及びさらなる古紙利用の推進の必要性を踏まえつつ,グリーン購入法において従来の画一的な判断の基準ではなく,消費者,製造者共に選択権があり,市場での消費を通じて消費者と製造者の環境への配慮と品質のバランスが確立されていく仕組みの実現を目指し規定された総合評価指標方式について紹介する。
(本文2ページ)


既設ツインワイヤフォーマの最新の改造

株式会社小林製作所 製紙機械設計部 向井 正仁

  ロールタイプトップワイヤの新聞マシンがブレードタイプのトップワイヤフォーマに改造された際に,両タイプの比較検討が行われた。ロールフォーミングは,一般的に地合は悪いが歩留りが高いと言われている。一方ブレードフォーミングは,歩留りは悪いが地合が良いと言われている。これは多分,それぞれのフォーマータイプに特有な圧力領域の違いによるものである。
  この2種類のフォーマ形態における脱水メカニズムを解明するために,予測数値モデルを使って解析が行われた。この数値モデルは,原料とフォーミングワイヤの両方に関する正確な濾水抵抗データを必要とする。解析内容は,ワイヤ間の圧力領域,予測圧力勾配そしてせん断の違いの評価である。
  ロールタイプトップユニットが一定圧力フォーミングと,そして低せん断で高い脱水速度特性を示すことと対照的に,ブレードタイプは湿紙が複数のせん断を受け,次第に増加する圧力パルスの変化による紙層形成を示すことが明らかになった。
  本報では,その解析結果と紙サンプルの物理的および構造的特性の比較調査を報告する。
(本文7ページ)


2PM ミニシュープレスの操業経験 三菱製紙株式会社 八戸工場 製造部紙一課 田口 大輔

   三菱製紙八戸工場は本州北端の太平洋岸にある八戸市の海岸沿いに位置し,パルプから紙への一貫工場として,板紙,アート紙,コート紙,上質紙等を生産する年産90万tの当社の主力工場である。抄紙機は7台(うち2台はオンコーター)を有しており,このうち2号抄紙機,6号抄紙機において,2007年8月に増速,増産,操業性改善,省蒸気を目的にミニシュープレス改造をおこなった。
  既設マシンへシュープレスを導入する場合,一般的なスタンダードシュープレスでは高線圧に耐えうるためにロールが大型で高重量となり,それを運搬する天井クレーンの改造,大型油圧ユニット設置など改造スペースの拡大,駆動動力の増大といった問題点がある。これらの問題点を解決した装置がミニシュープレスである。
  本報では2号抄紙機におけるミニシュープレス改造の概要,効果及びトラブル事例について紹介する。
(本文13ページ)


ワイヤーシェーキング装置(フォームマスター)導入によるクラフト紙の紙質改善

中越パルプ工業株式会社 高岡工場能町 抄紙部第一抄紙課 濱   毅

  中越パルプ工業高岡工場能町の3号マシンでは,クラフト紙を抄造しているが,年々品質要求が厳しくなってきている。その品質対応の一手段として最近各マシンで導入されている,ハイスピード型ワイヤーシェーキング装置を2008年6月に導入することとした。
  この装置は,地合改善に効果を発揮する上,縦伸びなどの品質向上にも繋がると言われている。
 本報では,本装置導入による品質に及ぼす効果について報告する。
(本文18ページ)


抄紙用ワイヤーの製造工程と使用上の留意点

日本フイルコン株式会社 製紙製品事業部 技術サービス部 芝端 豊,安岡達彦,佐野明宣

  抄紙用プラスチックワイヤー(フォーミングファブリック)は,その抄紙技術の進歩・発展と歩調を合わせながら多機能・高性能化要求に応えてきた。3重織や3.5重織に代表される多重織がまさにそれである。また現在はより高い要望に応えるべく生み出された新世代の3重織・3.5重織が市場にて好評を博している。しかしこれら優れた多重織も高度な生産技術の確立,厳しい抄造条件に適合する仕様選定,正しい使用技術を理解し使いこなす事等のどれか1つでも揃わなければ,その能力を十分に発揮出来ないばかりか,逆に操業的にも大きなマイナスとなる。
  今回,実操業で大きな影響を与える,抄紙用プラスチックワイヤーの
  (1) 製造工程
  (2) 選定時の考慮事項
  (3) 使用上の注意事項 の3点に関して解説する。
(本文22ページ)


プレスパート用具の設計基本コンセプト

イチカワ株式会社 技術部 石井 啓文

  当社は創業以来,製紙用プレスパートの専門メーカーとして,プレスフェルトを主幹に,シュープレスベルト,トランスファーベルト,洗剤等の販売供給をしている。抄紙機プレス部についてはオープンドローに始まり,トライニップやトランスファーツインバーといった「マルチニップ」化,ロールプレスから「シュープレス」化,さらに現在では次世代マシンといわれる「プレスパート完全ノードロー」のマシンが登場し,大きな技術的革新が遂げられている。このマシンの変遷に伴い高速化・広幅化は急速に進行している。一方,原料条件は環境対策等を背景に古紙や添加剤の増量化も進み,劣悪化の方向にある。
  このように使用条件は年々過酷化の方向にあるが,用具品質も高度複雑化する顧客ニーズに適応するべく品質改良を進め,大きな変遷を遂げている。用具の三大要求機能である「搾水」・「走行」・「紙質」については,フェルト,ベルト,トランスファーベルトの各用具で果たすべく機能役割について明確にしたい。
  特に,シュープレスでの搾水については,フエルト単体でなく,ベルトとのコンビネーションで役割分担するとの観点で捉える必要がある。上質系マルチニップ及び完全ノードロープレスを具体的事例として,各用具の設計の基本コンセプト,及び,最新品質仕様も説明したい。
  今後も日々高まる顧客ニーズに対し,先見性を持って常に先行対応していくことが我々が生存できる唯一の道と確信している。
(本文29ページ)


シュープレスへのグルーブドベルト導入による省エネ

王子板紙株式会社 佐賀工場 工務部抄紙課 中里  覚

  佐賀工場1号マシンは,1997年に増産対策の一環として3Pにシュープレスを導入した。導入当初のベルトはプレーンベルトであった。2000年10月に脱水能力向上を目的として,グルーブドベルト(250cc/m2)の使用テストを実施したが,何も変化がなく,グルーブドベルトは費用面の問題があったためにプレーンベルトの使用を継続していた。
  しかし,ボイドボリュームを大きくし,スプラッシュ量を増やしたほうが脱水には有利ではないかと考え,2005年6月からグルーブドベルト(アルバニー製400cc/m2)の使用を再チャレンジした。
  結果は良好で,ドライヤー蒸気消費量が減少し,マシン蒸気原単位が約15%程度向上した。また,ニップでの搾水を毛布で吸収する必要も無くなり,フェルトサクションルーツの停止による省電力も実現した。
  グルーブドベルトの使用再開は,ボイドボリューム400cc/m2品から始め,現在は450〜470cc/m2品を使用しており,操業性に問題はない。今後はこれに満足することなく,さらなる省エネ,高効率化を目指して,ベルト仕様とフェルト仕様の最良の組み合わせを見つけるために,検討とテストを継続したいと思っている。
(本文35ページ)


オントップフォーマの操業経験

日本大昭和板紙株式会社 足利工場 工務部 林田光一郎

  近年,ユーザーの高速コルゲーターによる品質要求は厳しくなり,中芯原紙においてもそれは例外ではない。足利工場3号抄紙機の中芯原紙は草加工場品や他社製品と比較して地合品質が劣っており,特にフロック地合による段割れ問題も発生していた。そこでこの問題を解決するため現状よりも良好な地合を形成させ,品質改善とコストダウンを図るためにはワイヤーパートの改造が不可欠と判断しオントップ化に取り組み,VIPT製の「デュオフォーマーD」を採用することとした。また原質工程においては離解機の能力不足のため未離解片の混入が多くなり,表層面の品質に影響するため,調成フローの見直しとテール系完成工程に叩解機を導入した。
  2007年1月にワイヤーフォーマーのオントップ化改造を行い,地合品質改善と紙質強度アップを図ることができたが,改造立ち上げ後の初期には紙切れ発生やロール偏磨耗の問題が起こっており,その後対策により問題を解消している。
(本文38ページ)


N1マシンの操業経験

王子製紙株式会社 富岡工場 抄造部 山田 幸広

  王子製紙株式会社富岡工場N1マシンは,薄物化という国内塗工紙マーケットの需要の変化への対応を図ると共に,当社の洋紙生産体制の弱点であった薄物塗工紙分野での競争力強化を図るべく新設された,オールオンラインコンセプトの最新鋭マシンである。2008年11月より試運転を開始し,本年2月より順調に営業生産に入っている。
  本稿では,約半年という短い期間であるが,試運転から現在までに得られたウェットパートに関する操業経験について報告する。
(本文43ページ)


最新の印刷技術動向

凸版印刷株式会社 製造・技術・研究本部 モノつくりセンター 牛田  弘

  印刷技術は8世紀には誕生し,15世紀にはグーテンベルグの銅版印刷が近代印刷技術の基礎が確立した。  その後,情報伝達手段として活用され,20世紀には庶民が大量消費するようになり,長きに亘り技術革新を続けてきた事になる。最近では情報伝達手段の地位が情報端末にとって代わられた感があるが,実は我々の生活になくてはならない電子機器の製造技術は印刷関連技術が応用されている。
  近年,インクジェットという技術が従来の印刷技術に取って代わるという,大きな転換期に来ているとも考えられる。本稿では従来の印刷技術の課題を提示し,新たな技術によって解決できるかどうかを検討する。
  またこの動向は市場の印刷物に求める内容が変化してきた要因が大きく,市場の変化が,印刷物にも影響する様子を紹介する。即ち,新しい印刷技術は,これまでの大量生産技術の進化から少し方向を変えて,より個人指向へと向かう市場のニーズによってオンデマンド対応に向けて開発され,印刷物は量産性と個別性とに2極化すると考えられる。こうして新しい技術は印刷業のビジネスモデルや事業形態をも変えていく。
  最後に,印刷産業において今後も印刷技術が多方面の産業を支える技術として展開していく様子を報告する。 (本文49ページ)


米国TAPPI PaperCon '09 参加報告
  ―2009年5月31日〜6月3日セントルイス(アメリカ)にて開催―

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

  2009年5月31日〜6月3日に米国・セントルイス市で,米国TAPPIのPaperCon'09が行われ,これに参加したので概要を報告する。PaperConはTAPPIにとっては,我々の年次大会のようなものである。今年から諸般の事情によりPIMA(Paper Industry Managing Association)との合同開催となった。日本の紙パルプ技術協会は元々両方を含んだ構成となっている。会議には展示会も併設されている。
  また,大会の前後でコーンからのバイオエタノール工場,ノースカロライナ州立大学を訪問したのであわせて報告する。
(本文53ページ)


ドイツ紙パルプ技術協会・年次大会 参加報告
  ―2009年6月23日〜6月25日ヴィースバーデン(ドイツ)にて開催―

紙パルプ技術協会 豊福 邦隆

  2009年6月23日〜25日にドイツ・ヴィースバーデン市(フランクフルト近郊)で,ドイツZellcheming(ドイツ紙パルプ技術協会)の年次大会が行われ,これに参加したので概要を報告する。本来,ドイツは製紙の先進国で,本年は104回目の年次大会で,毎年同じ時期に,同じ場所で行なわれている。ヨーロッパ全土から1,500〜2,000人が参加し,景気が悪いといわれるわりには盛況な大会であった。併設される展示会は,大変規模が大きく,ヨーロッパでは最大といわれるような賑やかなものであった。
  また,大会の前後でフォイト社の研究センター,ドイツ国内の製紙工場を訪問したのであわせて報告する。
(本文60ページ)


ポリアクリルアミド樹脂系紙力増強剤添加紙の動力学的性質
  ―紙力剤の種類及び添加法の影響―

荒川化学工業株式会社 製紙薬品事業部,京都大学大学院 農学研究科 榮村 拓史

京都大学大学院 農学研究科 山内 龍男

  カチオン性あるいは両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(PAM)を内部添加あるいは外部添加法で加えた手抄き紙を調製した。まず,全反射FT―IR測定とスパッターエッチング処理を組み合わせた分析法を用い,上記のPAM添加紙内における繊維壁内深さ方向のPAM分布を検討した。内部添加紙におけるカチオン性及び両性PAMはいずれも,繊維壁表面近傍に多く分布する一方,壁内部にも分布するが,両性PAMにおける繊維壁表面近傍の分布は顕著であった。上記のPAM添加紙の動的粘弾性を140〜260℃の温度域で測定した。内部添加紙においてはカチオン性及び両性PAMのいずれも,さらに後者では溶液及び懸濁液状態で添加してもtanデルタのピーク高さで表される高分子的挙動はほとんど検出されなかった。他方,外部添加紙ではその特徴的な高分子的挙動が明瞭に見られ,PAM含有量が多くなるにつれ,また,特に懸濁液状態で添加した両性PAMの場合で,顕著であった。これらの結果は,内部添加紙中のPAMはほぼ分子状態で散在するが,外部添加紙中のPAMは相を形成して存在することを示唆する。なお,210℃付近でのtanデルタが示すピークは高分子固体としてのPAMのガラス転移現象によると考えられ,示差走査熱量計による測定結果もこの考えを支持した。
(本文67ページ)


塗工紙の印刷網点部で発生するモットリングの要因解析
  ―光学的ドットゲインのムラの影響―

日本製紙株式会社 研究開発本部 研究企画部 河崎 雅行
                    技術研究所 石崎 雅也,吉本 孝士

   塗工紙のオフセット印刷物の品質問題の一つにモットリング(印刷濃度の濃淡ムラ[不均一性])があり,紙要因として表面粗さ(表面凹凸のムラ),インキ(ビヒクル)や湿し水の吸収ムラ,地合い等に由来する紙厚のムラなどが知られている。市販塗工紙を調査した結果,網点部で発生したモットリングの要因はインキの転移ムラで概ね説明できたが,一部の試料ではインキの転移ムラが小さくてもモットリングが劣る場合が見られた。そこで塗工紙の更なる品質向上に役立てることを目的として,その要因や発生メカニズムを解明する検討を行った。
  光学顕微鏡を用いてモットリングの濃部と淡部を詳細に観察した。印刷濃度に影響する要因には,網点部ではインキ皮膜の面積に関係する機械的ドットゲイン(実際の網点太り)に加え,光学的ドットゲイン(見かけの網点太り)もあり,これには印刷媒体の面内方向(X―Y方向)の光拡散が影響する。そこで,印刷した罫線の微小濃度プロファイルを測定し,モットリングの濃部と淡部の光拡散の違いを調べた。またモットリング,紙の面内方向の光拡散ムラ,塗料による原紙の被覆ムラそれぞれを数値化し,それらの関係を定量的に調査した。
  その結果,網点部のモットリングにはインキの転移ムラに加えて,光学的ドットゲインのムラも影響することがわかった。特にA2グロス調コート紙に標準的な条件で印刷され,網点の形状が概ね均一である場合に発生するモットリングに関しては,光学的ドットゲインのムラが大きく影響すると考えられた。光学的ドットゲインのムラは紙の面内方向の光拡散ムラに起因することがわかった。紙の面内方向の光拡散ムラの要因は,塗料による原紙の被覆ムラ,塗工顔料と原紙のパルプ繊維の光拡散の違いなどであると考えられた。モットリング対策の一つとして塗料による原紙の被覆ムラを抑制することは,インキの転移ムラに加えて光学的ドットゲインのムラを小さくする観点からも重要であると考えられた。
(本文80ページ)